3 years later〜虹の向こうに〜   作:nami73

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 マダツボミを前にセイヨは必勝を期してベトベトンを投入。だが、過去を乗り越えていたのはカオルコもまた同様であった。
 さらなる努力と根性の果てに身につけたほのおテラスを前に、セイヨもここぞとばかりの大勝負に打って出た!


PNTT Fighting! 決勝戦 シングルバトル3 セイヨvsカオルコ④

「あーッと!セイヨ選手、キュートなダンスをしたかと思えば膨大なZパワーを一緒に踊っていたピカチュウへ送り込んだーッ!こ、これはーッ!?」

 

「スパーキングギガボルトでも、1000まんボルトでもないぞッ!」

 

 ダンッ!と両手でテーブルを突きながらダンデは身を乗り出していた。

 

 

 

 時は遡る。

 3年前、上級クラスから実技試験免除枠としてセキエイリーグに参加したセイヨであったが結果は3回戦敗退。それこそ現在相対しているカオルコと名家出身同士のぶつかり合いの末に敗れてしまった。

 視線を地に伏せるは一瞬あればよい…ポケモンゼミで学んだ全てを総動員してこの結果、となれば導き出される答えは1つしかなかった。

 

「今こそ学び舎を飛び出し、新たな知見を得、血肉とする時!」

 

 主席として卒業し、広い世界へ羽ばたいたセイヨがまず行ったのはカントー地方での旅。

 各地のジムを巡ったのはリーグ挑戦と言うよりは、ジムバッジを集める為の旅そのものの感覚を掴むことの方が目的としては主であった。

 

「(彼もこうやってあちこち渡り歩いているのかしら?)」

 

 ゼミを去っていったどこかひ弱な印象を禁じ得ない同級生に暫し思いを馳せながらのセイヨの旅はちょうど半年、バッジを4個ゲットした段階で打ち止めとして実家に帰ることにした。

 理由としてはバッジ集めを間に合わせるのは出来るが、コレでは長丁場のリーグ戦で最後まで勝ち抜くのは不可能であると察したからだ。

 

 

 

 実家に帰ったセイヨはさらに半年をポケモンたちの休養とメンテナンス期間を兼ねた人生初のアルバイトに充てた。カントーの外に出る為の資金稼ぎとしてポケモンゼミを目指す未来の後輩たちへの指導で産まれて初めて自分で賃金を得た。

 旅費などいくらでも出すと言う両親に感謝を伝えながらも、旅を通して自立心の芽生えたセイヨには無用であった。

 ポケモンゼミの学費もいつか返さねばならないとも思う。後に勉強を教えた子たちが皆無事にお受験をクリアしたということで、オールド・ガールとしての需要を果たせた安堵と、人に物を教えることへの興味がわずかに芽生えながらもセイヨは新天地であるアローラ地方へ旅立った。

 

 

 

「そうそう!いい感じピカ〜♪」

 

「そ、そうピカー…?」

 

 アローラへ渡ったセイヨが訪れたアーカラ島にある『ピカチュウの谷』…そこの管理人ピカーラと、ゲットしていたピカチュウがきっかけで知己となったことから試練を経て彼女の奥義を教えてもらった。

 その辺りでちょうどPNTTの話を聞き付け、選考会に参加したのが今に繋がっている…。

 

 

 

「王者の星が私を呼ぶ!熱い血潮の燃え尽きるまで、ゼンリョクひとすじ命をかけた…チーム<マナーロ>の旗のもと!!」

 

 時を戻そう。本来なら最後の一節は『優藤聖代の名のもとに!!』と締めるのだが、今回は自然と節を変えていた。

 それはこの試合において、一度折れかけた闘志を蘇らせてくれたというだけではない。

 結成からここまで共に戦い抜いてきたチームの仲間たちへの敬意からだ。

 

「ぴっか〜!」

 

 Zパワーを纏ったピカチュウを胸に受け止める。

 

「いくわよーッ!!」

 

 ピカチュウを抱きながらセイヨは空高くジャンプする。

 

「なッ!?」

 

 カオルコが見上げる月下のセイヨが、空中で大回転。

 その勢いのまま振りかぶり、左足を高々と掲げてゆく!

 

 

 

「あーッとセイヨ選手!助走なしのハイジャンプ!!」

 

「からの空中で大回転!!」

 

「ピカチュウを構え投球姿勢に入ったーーーッ!!」

 

 ジッキョーに重ねるダンデの調子はともかくとしてカルネもセイヨの強烈なムーブにゴクリと生唾を呑む。

 

 

 

「ひっさつのぉぉぉ!!ピカチュートォォォォォ!!!」

 

 全身ことごとくをフルに使い込むダイナミックなフォームでセイヨはピカチュウを放り投げる。狙いは無論、マダツボミただ一点あるのみ。

 

「ぴぃぃぃかぁぁぁぁぁ!!!」

 

バチバチバチバチバチバチバチィィィィィ!!!

 

 放り投げられたピカチュウは放電しながら前転を開始、自らと、放つ電撃をまるごと魔球へと姿を変えて飛び掛かるのだ。

 

 

 

「なぁサトシ、セイヨさんのひっさつのピカチュートはピカーラさんのとはかなり違くないか?」

 

「うん。ピカーラさんのはピカチュウをその場で投げて、Zパワーですげぇパワーになったボルテッカーをバンチョーとやってたけど。」

 

 バンチョーとはサトシとカキ、ホシの兄妹が出会ったピカーラと一緒にいた色違いのピカチュウのことだ。

 頭の体毛をリーゼント風に整形していたのが印象的だ。

 

「セイヨさんはきっと教わったZワザの動きをより実践的にアレンジしたんだろうね。」

 

「ぴかっぴ?」

 

 話に入るシゲルにサトシたちが向けば、ピカチュウも首を傾げる。

 

「話を聞くにあのZワザのルーティン的に一旦空中へ放り投げてからピカチュウのZパワーを推力にして突撃するではエネルギー効率に若干の無駄が生まれると見た。それを補い、さらには一発の破壊力をより多く稼ぐためにセイヨさんは自らあの"大回転ハイジャンプ魔球"をZワザのルーティンとして組み込んだと見たね。」

 

 この辺りの理論展開はやはりシゲルの独壇場と言えた。

 サトシたちもおぉ〜、と唸るよりなかった。

 

 

 

「あらまぁ〜、あのお嬢様があんな無茶苦茶やるなんて…。」

 

 言い切ってからカスミはさもありなん、と思い直す。

 霧で視界を奪われるような山奥にあるポケモンゼミで『愛のムチ』と称して成績の低い生徒に嫌がらせをしていたセイヨもあそこで自分自身にシゴキを入れていたと考え至ったからだ。

 

 

 

「そちらが魔球で来るならば…マダツボミ!」

 

「つぼぅ!」

 

 マダツボミはつるのムチを両手の葉に絡め、それを重ね合わせる。

 肩幅に股を開いてから右脇を締める姿はさながらバットを構えた野球選手のそれだ。

 カオルコにもまた名士の意地がある。退くなどはありえない。

 

「打ち返すッッッ!!!」

 

「打ち取るッッッ!!!」

 

 麗しき2つの声がシャウトする。

 電撃を帯びた魔球に対し、マダツボミはつるのムチをフルスイング。

 もとよりまっすぐぶつかりに来る球筋だ。バットを当てることはそう難しいことではない。

 

バチチチチチィィィ!!

 

「つ、つぼぉ…!!」

 

「コーチと鍛え上げた私とマダツボミを甘く見ないでちょうだい!!足から地面へ流してしまえばこんな電撃…!!」

 

 それは3年前、サトシのピカチュウに対しても威力を発揮したでんき技封じであった。

 ピカチュウの電撃を浴びても足をアースの役割として地面に逃がすことで事実上カオルコのマダツボミにはでんき技も通用しないのだ。

 が…!

 

 

 

「今のマダツボミはテラスタルによってほのおタイプになっています。そりゃあほんらいのくさ、どくエネルギーも問題なく扱えますがやはり表層に出てくるテラスタイプは無視できないでしょう。」

 

 ナンテが語る通りであった。

 アースとして扱うためのマダツボミの両足までほのおのテラスタルエネルギーがしっかり覆い尽くしていてはせっかくの電撃封じも効果を発揮しきれない…。

 

 

 

「ピカチュウ!私たちのゼンリョクをぉぉぉぉぉ!!!」

 

「ぴッッッかぁぁぁぁぁ!!!」

 

 マダツボミのつるのムチによるバッティングで暫し勢いを殺されたが、それでも魔球と化したピカチュウは止まらなかった。

 

ズバァァァァァン!!

 

「つぼぁ〜ッ!!」

 

「マダツボミッ!!」

 

 迸るZパワーの奔流を電撃を通して叩き込まれたマダツボミの体が吹っ飛び、宙へ舞う。

 ピカチュウが地上へ着地してすぐにセイヨもまた優れた体幹でトレーナーサークル内にて着地する。

 

「ま、まだ…まだ…!」

 

 そうして頭から落着したところからすぐ起き上がるマダツボミを見てはピカチュウは構えを取る。

 

パァァァァァン…!

 

「くぅッ…!」

 

 直後、ほのおのテラスタルジュエルが霧散しうつ伏せに倒れたマダツボミへジュンが駆け寄れば、

 

「マダツボミ、戦闘不能!ピカチュウの勝ち!!よって勝者、チーム<マナーロ>セイヨ選手!!」

 

 審判として努めて普段通りの声音で左手を伸ばし差しながらコールした。

 

 

 

「シングルバトル3決着ーーーッ!!セイヨ選手、渾身のZワザと大回転ハイジャンプ魔球の合わせ技で見事セキエイ大会からのリベンジを達成!!チーム<マナーロ>の優勝へ王手をかける2勝目をもたらしましたーーーッ!!」

 

「相手の土俵に乗ってひっくり返したかと思えば完璧にメタを張り、メタを破られてはいい意味で開き直ってゼンリョクのパワー対決に持ち込んだ…互いが互いを知るが故に手に汗握る試合になったね。」

 

「そうね。まさに真剣勝負の妙味が詰まってる感じ。」

 

 激闘を演じた両者に明確な差はない。

 また戦うとなれば違う結果が見えてくることだろう…そうダンデもカルネも頷きながら話していた。

 

 

 

「おっしゃあ〜!!セイヨさんが勝ったぜ!!」

 

「ピカチュウもナイスファイト〜!」

 

 これには駆け付けた級友たちも飛び上がりアローラのスクール生たちと喜びを分かち合う。

 

「あのー?よく分かんないんですけど、サトシとお友達の皆さん側が勝ったんですよね?」

 

「あぁ、はい!あと1回試合に勝てばサトシたちが優勝です。」

 

 ハナコに簡潔に説明しながらもククイ博士はそう簡単にはいかないだろうと内心予測する。

 ネクストサークルに入ってからのカントー側の鎧武者から放たれる空間を歪ませかねないほどの覇気、プレッシャーを感じ取っていたからだ。

 

 

 

「ピカチュウ!」

 

「ぴっかぁ!」

 

 走ってきて胸に飛び込むピカチュウをセイヨはしっかり抱き留める。

 勝利の余韻を共有しながらフィールドに背を向け、トレーナーサークルを出て歩き出せばピカチュウを左腕1本に抱き直し、高々と右手のVサインを掲げる。

 それはまさしく自分こそが2勝目を挙げたのだというアピールと同時に、

 

「勝つのは私たち、チーム<マナーロ>よッ!!」

 

 ぶち上げる勝利宣言。

 

オオオオオオオッッッ!!

 

 観客を盛大に盛り上げてから枠線を出てベンチに戻ってゆく。

 

「目立ちたがり屋だな。」

 

「チャンピオンに気をつかう必要はなくってよ?」

 

 すれ違いでジェニーと握り拳を突き合わせる。

 言外にシングル1へ回さずに決めてしまえと無茶振るセイヨに、ジェニーはフフ、と笑みを向けてからトレーナーサークルへと向かう。

 

 

 

「最後は勢いとパワーで押し切られた…完敗ね。」

 

 マダツボミを両腕で抱えながらベンチへ戻るカオルコは決して視線を俯かせはしなかった。

 負けこそすれどカントー代表選手。胸を張って引っ込むまでが責務なのだ。

 

ガチャン!ガチャン!ガチャン!

 

 すれ違う鎧武者と目が合った、ような気がした。

 すぐにサムライの視線はこれから戦うジェニーを睨むように前進する先へ戻る。

 

「一転攻勢…勝つのは我ら…チーム<セキエイ>なり…!!」

 

 聞き取ったカオルコは思わず向き直り、目を丸くする。

 豪奢な甲冑を常日頃から身に纏い、他者とのコミュニケーションも怪しかった巨漢が、チームへの帰属意識の厚さを垣間見せたのが意外だったからだ。

 

 

 




 PNTT決勝戦 シングルバトル3
 セイヨvsカオルコ
 シングルバトル 6C3Dルール

 セイヨ     カオルコ
 ゴローニャ● スピアー●
 ガラガラ◯ ハッサム●
 →Aベトベトン
 Aベトベトン● マダツボミ◯
         (テラスタル使用)
 ピカチュウ◯ マダツボミ●
 (Zワザ使用)

 勝者 セイヨ
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