3 years later〜虹の向こうに〜   作:nami73

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 シングルバトル3は美少女対決の大詰め、最後の最後に競り勝ったのはセイヨだった。
 リベンジを成し遂げ、チームの優勝に王手をかけジェニーへとバトンを託す。
 立ち塞がる相手は強大なる鎧武者、サムライだ。


PNTT Fighting! 決勝戦 シングルバトル2 ジェニーvsサムライ①

「うひぃ〜〜〜!ただいまァ!!間に合ってまスカ?」

 

「ドンピシャドンピシャ!ちょうど今からジェニーさんの試合始まるよ!」

 

 アローラ地方メレメレ島のアイナ食堂。

 配達から帰ってきたバイトのスカル団が汗だくになりながら帰って来れば、店内の視線はマオたちスタッフ含めて皆テレビ中継に釘付けであった。

 決勝の晴れ舞台でジェニーがフィールドに立つからだ。

 

「おほ、出てきた出てきた!」

 

「頑張れよ〜姉ちゃん!」

 

 さながらパブリックビューイング…肝心のモニターは食堂備え付けのあまり大きくなく、画質もそこまでではないのが泣きどころではあるが馴染みのお客さんで席が埋まり、皆で観戦する流れにマオはほっこりとしていた。

 ジェニーも確かに店の一員として受け入れられてると感じて嬉しいのだ。

 

 

 

「これよりシングルバトル2、チーム<マナーロ>ジェニー選手vsチーム<セキエイ>サムライ選手の試合を行います!!」

 

 鎧武者からの刺すような視線にジェニーは応じる。

 いかにハウ以上の巨体に加え、放たれる殺気が凄まじくとも動じるいわれはない。こちらからも睨み返す。

 

 

 

「さぁー、優勝へ王手をかけたチーム<マナーロ>から出てくるは1回戦でマリィ選手を破り、今この決勝の舞台でもシングルバトル2にて再登場のジェニー選手!よく鍛えられたポケモンたちとジェニー選手自身の巧みな指示で高いパフォーマンスを発揮して見事優勝を決めるか!?」

 

「ジェニー選手と言えば1回戦では途中体調を崩してたみたいだけどそこは大丈夫かしら?」

 

「大丈夫さ。なんたってあの時もみんなのエールを受けて立ち上がり、持ち直したからな。」

 

 ムフー、と鼻息を立てながら腕組みするダンデにカルネもならば心配はないか、と笑みを浮かべた。

 

「対するチーム<セキエイ>からは1回戦はイリマ選手、準決勝はコトネ選手を相手取り、どちらもメガカイロスによる3タテを飾る豪快な勝ちっぷりです!決勝でもその凄まじいいくさ人ぶりで逆王手をかけるか!?」

 

「彼の勢いは本物よ。少しでも綻びが生まれれば、そこから一気に崩されるでしょうね。」

 

 1回戦、ネクストサークルからイリマの受けた蹂躙劇を見ていたカルネだからこそ出せる実感のこもったコメントだった。

 

 

 

「いけ、ドラピオン!」

 

「どぅらぁぁぁ!!」

 

「ゆけ…カイロス!!」

 

「マカセロス!」

 

 ジェニーはドラピオンを、サムライはカイロスを先発させる。そして、

 

「一意専心…乾坤一擲…!!」

 

 それはこれまでの2戦と全く同じ流れであった。

 左の籠手の手の甲部分にあるカバーを外し、キーストーンを起動させる。

 カイロスが虹の繭に包まれていく…!

 

 

 

「やはり初手メガシンカで来たか!!」

 

 アローラ側ベンチでカキが叫ぶ。

 ネクストサークルのサトシはと言えば、こうして直接バトルを見る鎧武者姿のサムライ自身へ意識を向けていた。

 

「(一体どんな特訓をしてきたんだ?)」

 

「ぴかぁ…!」

 

 ピカチュウもサトシと同じ合点に至る。

 サムライの甲冑は身を守るためでなければ、当然ただのパフォーマンスという訳でもない。

 

「1回戦から試合記録を見続けてきて、今こうして実物を見て確信したことがある。彼の鎧は防護目的と言うよりは、己が内から吹き出す闘気を封じるためのもの…!」

 

 彼らと同じ着目から言語化に至ったのはナンテである。

 ただ、鎧の隙間から漏れ出るむせかえるような圧の闘気、その源流までには辿り着きようがなかった。『それ』を隠すための鎧か?とも思ったがそこの確証も見つからない。

 

 

 

「ここだ!戻ってこいドラピオン!」

 

 サムライのメガシンカに合わせてジェニーはドラピオンを引っ込める。

 

「いけ、ボーマンダ!!」

 

「ぼぁまぁぁぁぁぁッ!!」

 

 交代先のボーマンダが姿を見せると同時に虹の繭から解き放たれたカイロスはメガシンカを完了。

 

ガキキキキキィ!!

 

 メガカイロスとなり頭のハサミを打ち鳴らし、翅音を立てながらホバリング。

 その体が僅か萎縮したように見えたのはボーマンダのいかくの効果だろう…。

 

 

 

「初手メガシンカを読んでたな。」

 

 流石に過去2度も同じ手を使えば読まれるだろうとはシンジでなくても思うことである。

 

「サムライさんはお構いなし、みたいですね。」

 

 ジロウも続ける。カイロスを引っ込める様子は見られない。

 

 

 

「ジェニー選手、カイロスのメガシンカを読みまんまとボーマンダのいかくを入れて攻撃力のダウンに成功!連続3タテ劇の主役をどう攻略するのか!!」

 

 

 

「いくぞボーマンダ!」

 

 相手が初手から切り札を投げてくると言うならばジェニーの取る手段は1つであった。

 Zリングを起動させ、ゼンリョクポーズを決めてゆく。

 

 

 

「いいわよジェニーさん!目には目を、切り札には切り札を!」

 

 中身を飲み干したペットボトルを思わず握り込みながらセイヨが吠える。仮に相討ちだとしてもこれまで好き放題に暴れ回っていたメガカイロスを仕留めたとなれば一気に場の空気を支配できるというものだ。

 

「それにしても、どうしてメガカイロスをあそこまで突出させれるんだろう?」

 

 もっともな問いがハウの口から出る。

 これまでの試合記録から、カイロスこそがサムライのエースであるのは疑いようもない事実だ。

 それが変わらずジェニーにも襲いかかる様は、エースポケモンに対しての扱いとしてはいささか『軽い』ように見えた。

 

「もしかして、メガカイロス以外に切り札が別にいる、とか?」

 

 過去の試合を思い返せばエビデンスは枚挙にいとまがない。ホップのザマゼンタなどはその最たる例だろう。

 ハウの仮説に、皆反論立てようがなかった。とにかく今はジェニーを信じるのみである。

 

 

 

「翔けろボーマンダ!Zの風と共に!!」

 

 Zパワーを身に纏ったボーマンダが空高く飛び上がる。

 

カキンカキンカキンカキンカキン!

 

 見上げるカイロスは絶えずハサミを打ち鳴らし続ける。その極まった眼光に恐れも怯えもない。

 

「不退転…これぞ我がカイロス!!」

 

 羽音と共に飛び立つカイロスがボーマンダへと追いすがる。

 

 

 

「両選手、いきなりエース同士の空中決戦だーーーッ!!」

 

 

 

「叩き込め!ファイナルダイブクラッシュ!!」

 

「チェェェストォォォォォッッッ!!」

 

「ぼぉまあああああッ!!」

 

「マカセロス!!」

 

ズッガアアアアアン!!

 

 ボーマンダのZワザとカイロスのすてみタックル。

 両者持てる最大火力で以ての衝突は空中でエネルギー爆発を起こしバリアフィールドを軋ませる。

 

「がぼまッ!」

 

 爆風の中からそれぞれニュートラルポジションへ落着する。

 ボーマンダは立ち上がり、カイロスはハサミをカキンカキンと打ち鳴らすが、体の方は起きるに至らなかった。メガシンカが解除されてゆく…!

 

「カイロス、戦闘不能!ボーマンダの勝ち!!」

 

 審判のコールにボーマンダは安堵の籠るニヒルな笑みを浮かべた。

 

 

 

ジェニー、残りポケモン6体。ダウン可能数残り3体。

 

サムライ、残りポケモン5体。ダウン可能数残り2体。

 

 

 

「試合早々にジェニー選手はZワザ、サムライ選手はメガシンカとそれぞれいきなり切り札を行使!!競り勝ったのはZワザ、ボーマンダです!!メガカイロスの進撃を止めましたーッ!!」

 

「でもボーマンダもタダでは済んでないわね。」

 

「あぁ。メガシンカしてカイロスの特性がかいりきバサミからスカイスキンに切り替わったところに差し込んだいかく分のパワーダウンがなければ相討ち、下手したら押し負けてたかもしれん。」

 

 スコア上数的アドバンテージは取れたが実質ボーマンダも死に体同然…ジェニーの現状は1回戦のマリィ戦と同じ形だとダンデは続ける。

 違うところは対戦相手と、体調を崩すような素振りの見られないジェニー自身の様子であった。

 

 

 

「退却よ、カイロス。」

 

 倒れたカイロスをボールへ戻す。次なるポケモンを繰り出す前にサムライにはやらねばならないことが出来た。

 

「ぬうううんッ!!」

 

「むッ…!?」

 

 内なる闘気の噴出がそれまで2mを越す巨漢の全身を覆っていた甲冑を弾き飛ばす。

 

 

 

「なんだ!?鎧を脱いだのか!?」

 

 やはりいの一番に声を荒げるのはカキだった。チーム<アローラ>での役回りとして型に定まったと言っていい。

 スイレンとしては丸坊主に筋骨隆々とした上半身に汗でひっつく白シャツと短パン1枚の大男は、物々しい雰囲気を醸し出していた鎧武者の中身として相応しさがありながらも、その丸顔と同じく丸い両目にどこか愛嬌も見出していた。

 

「ううむ、やはりあの鎧は闘気を抑え込むためのもの。今のサムライ選手からは鎧を着ていた時の5倍、いや、10倍ほどのオーラが噴き出ている。」

 

 トレーナーの放つ意志のエネルギー…その呼称は人ごとに違う。闘気、覇気、オーラ、それに波導と様々だ。

 ポケモンバトルの世界におけるトレーナーの、人間の役割とはポケモンに指示を出すことに終始するものではない。実際に戦うポケモンと苦楽を共にし、勝利への執念を燃やすことにこそ真髄があるとナンテはチームで説いてきた。

 本来なら立ち上がれないダメージを受けたはずのポケモンがトレーナーの励ましにより奮起し立ち上がる…そんなよくある光景もまた人の側の意志のエネルギーの発露であるとなれば分かりやすい実感としてサトシたちに浸透していった。

 

 

 

「この姿を披露するはチャンピオン級の相手であるとばかり思っていたがよもやよもや…いや、お主もまたそれにふさわしき実力者と見た!」

 

 サムライが1つの境地に至るきっかけは古の武門の出に伝わるデバイス『愛芽鎧』を発見したことに端を発する。

 このようにメガシンカを会得するトレーナーが持つキーストーンを加工して装飾品として扱うのが『メガシンカデバイス』であり、サムライの取得した鎧も大昔に作られたそれであった。

 もっとも、左籠手に装備されていたキーストーンに気付いたのは随分後のことになるが。

 

 

 

 3年前、サトシと出会った後に念願のマサラタウン出身トレーナーを相手にしての勝利を収めた後、根城にしていたトキワの森から旅立ったサムライは訪れた古戦場に打ち捨てられていた甲冑を広い、甲冑師に依頼して修繕してもらいその身に纏う事にした。

 ポケモン同様自らの心身も鍛錬するためである。

 武者修行の中でサムライもまた己が闘気がポケモンへ伝播してカタログスペック以上の力を発揮するという確証を得ていたからだ。

 

 

 

「油断大敵…拙者をメガシンカ頼りの半端者と侮ると痛い目を見るでござるぞ!」

 

 サムライが投げ込むボールからは、またも翅音。

 3つの節に分かれた胴体に発達した大顎がボーマンダをロックするように向けられる。

 同じくわがたポケモンでありながらまるで生物的に異なるアプローチを重ねたフォルムのクワガノンが次鋒として姿を現した。

 




 『サムライ』
 13歳。ポケモントレーナー。
 サトシが初めてポケモンバトルを行ったトレーナーでむしポケモンを好んで扱う。
 エースのカイロスはメガシンカも扱えるパワーとスピードを併せ持ったファイターだ。
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