3 years later〜虹の向こうに〜 作:nami73
キングラーを倒されたサトシはすかさずゼニガメでドククラゲを倒し返す。
続けて戦うは鳥ポケモン対決、サトシのピジョットには、オニドリルを相手にだけは決して退けぬ理由があるとカスミもタケシも知っていた。
時は遡る。
3年前、セキエイ大会を戦い終えたサトシはオーキド博士からおつかいを頼まれ、オレンジ諸島を目指す旅路についた。
そのすぐに通りかかったトキワの森ではオニドリルが一族の群れを引き連れて当時ピジョンであったピジョットの同族たちが暮らす住処を荒らし回っていた。
「あのオニドリルの奴、また襲ってくるかもしれない。ピジョット…お前はこの森に残って、ポッポたちを守ってやってくれ。」
「ぴじょお。」
「用事を済ませたらすぐ帰ってくるから。」
そんなオニドリルへ共に立ち向かい、撃退した後に縄張り争いの激化を鑑みたサトシは森へピジョットを置いてゆくことを決断。
「ピジョット!頑張れよーッ!!」
「ぴじょおおおッ!!」
「ぴぃかぴ〜かぁ〜!!」
「ぴっじょお〜!!」
手を振りながら群れの仲間を引き連れて飛び去るピジョットをサトシたちは見送る。
カスミもタケシも、人並み以上にポケモンに対する深い愛情を持っている。
ポケモン側の事情を受けてトレーナーとしてではなく、友として彼らを送り出す選択の出来るサトシの背中がまた大きくなった…そんな感覚がしていた。
そこからいくらかの時を経てピジョットはサトシの元へ舞い戻り、現在に至る…。
「けぇ〜ッ!」
ズブゥッ!!
「ぴッ、じょッ…!」
「ピジョット!!」
「ぴっかぁ!!」
時を戻そう。
オニドリルのくちばしによるじごくづきの連打がはがねのつばさによるガードを突き破り、ピジョットのお腹へ突き刺さった。
「どちらもノーマル、ひこうタイプであくタイプのじごくづき、はがねタイプのはがねのつばさは得意な技レパートリーではない…となればやはり守る側の方が攻める側と違いダメージを受ける分エネルギー消費が激しくなる…!!」
オニドリルのくちばしがヒットしたのもはがねのつばさを発動するのに不可欠な翼の硬質化、そのためのはがねエネルギーの枯渇によるものであった。
ナンテは、ヒロシのタイプエネルギー技術の習熟度に舌を巻く。
「フィニッシュだキャメル!!」
ギュルルルルルルルゥゥゥ!!
「あーッとオニドリル、ピジョットのお腹にくちばしを突き刺したまま激しく回転!そのまま空高く飛び上がったーッ!!」
「オニドリルごとピジョットもぐるぐるされちゃってる!アレじゃあ外からの指示を聞くどころじゃあない!」
イミテはキャメルの荒技の妙を見抜き、膝を打つよりなかった。
「ぴじょあああああ…!」
「ピジョットー!!」
「ぴかっちゅ〜!!」
オニドリルの回転に巻き込まれたピジョットはイミテの推察通り周囲の喧騒どころではなかった。
主人や同期の声すら風切り音に遮られ届いていない。
「いけキャメル!ドリルくちばしシュート!!」
「けぇあッ!!」
ギュルルルルルルルゥゥゥ…!!
「フィニッシュ!!」
ズッガァァァン!!
空高く舞い上がったキャメルは勢いそのままに急降下、ピジョットを背中からフィールドへ叩き付ける。
落着の衝撃でモヤが起こり、その中から大きな翼をバサバサと動かしてキャメルがニュートラルポジションへと悠々戻った。
「強烈な一撃!!オニドリルのドリルくちばしで回転に巻き込まれたピジョットは起き上がれるのかーッ!?」
「む…!キャメル、パワーを溜めるんだ!」
「けぁぁぁ…!!」
パァァァァァ…!!
モヤをかき消すように眩い光が夜空目掛けて舞い上がればヒロシはピジョットの健在を確信。
すぐさま指示を飛ばせばキャメルもまた同じ光をその身に纏う。
「俺のピジョットはこれくらいじゃあへこたれたりしないぜ!」
「みたいだね!」
起き上がり羽ばたいてゆっくりと宙へその身を再度踊らせるピジョット、体がいくら傷付こうともその双眸から闘志が消えることはない。
ことオニドリルに対してだけは決して退くわけにはいかない…そんな意思をサトシは汲んだのだ。
「ぴかぴかっちゅ!」
「けぁ!」
レオンの激にキャメルは頷いて見せる。
同じ鳥ポケモン同士、本領のひこう技のぶつかり合いで負けるわけにはいかない!
「ピジョット!!」
「キャメル!!」
「「ゴッドバード!!!」」
「ぴぃぃぃじょおおおおおッ!!!」
「けぇぇぇぇぇぇぇッ!!!」
眩い光と共にピジョットとオニドリルはフィールド中央で正面衝突。
カッ…!!ドドォォォォォ…!!
2体のゴッドバードがぶつかり合い、凄まじいエネルギー爆発が夜を照らす。次いで爆風がバリアフィールド越しにスタジアム中を駆け巡った。
「あーッと、凄まじい衝突だ!ゴッドバード同士の対決、競り勝ったのはどちらか!?コレで決着はついたのかーッ!?」
ブァサッ!
軽やかな身のこなしで鶏冠を晒しピジョットは健在をアピール。
爆風が収まったのを見計らってジュンがフィールドに入れば、仰向けに倒れ、目を回したキャメルがそこにいた。
「オニドリル、戦闘不能!ピジョットの勝ち!!」
「ぴじょおおおッ!!」
いかに強力であろうともオニドリルにだけは負けられない。そんなピジョットの意地の雄叫びがバトルを見る全てのものの耳を打った。
サトシ、残りポケモン5体。
ヒロシ、残りポケモン4体。
オオオオオッ!!オオオオオッ!!
「やはりチャンピオンのポケモン強し!!攻め込まれながらも同技対決で一気に切り返しましたーッ!!」
「レベルや技のキレ以上に今のピジョットには精神的なところが大きくプラスされていたと思うな。」
「オニドリルへの対抗意識ですか?」
「それもあるでしょうね。もう1つ挙げるなら、チャンピオンのポケモンとしてのプライド。」
まだまだ成長の余地を残しながらもいいチャンピオンになった、そうサトシの姿を見るカルネは目を細めた。
「ピジョット、一旦戻れ!」
「サトシの奴、随分小刻みにポケモンを入れ替えるな。」
「そりゃあそうだろうさ。後に控えてるのを考えれば少しでも物量で押すべきだし。」
ゼニガメに引き続きピジョットを引っ込めるサトシの姿に対するシゲルの言にカキはあぁ、と思い出す。命をすててかからねばならぬ相手のことを。
試合を見るタケシもこの辺りの数的アドバンテージの取り方からサトシの成長を具に感じ取っていた。無鉄砲な面は抜けきっていないが、勝負の世界に生きるチャンピオンとしての一面が着実に醸成されてきているのだろう。
それと同時に、長い付き合いでサトシをよく知るが故の不安も過ぎる。
「こういうちょっと有利って展開がむしろ危ないんだよな。」
絶体絶命といった状況からの一発逆転で競り勝つ技術こそ人並み以上に練り上げてきたサトシであるが、反面有利な展開を保って勝ちを手繰り寄せる戦い方は3年前の時点では完全に未熟な領域であったのだ。
「キャメル、お疲れ様。」
ボールにキャメルを回収しながらヒロシは思案する。交代を繰り返すサトシの意図そのものは見えていた。
なんてことはない。こちらのルギア…シルバー対策として物量攻めを狙っているのは見え見えだ。
となればヒロシは如何にサトシのパーティを削るかだが…。
「「(パワーで押していくしかない!!)」」
対峙する両者の方針がピタリ一致する。次のボールをホルダーから取り出し構えれば、
「リザードン、キミに決めたッ!!」
「ジッポ、キミの出番だッ!!」
「「ぐるぅぅぅおッ!!」」
ニュートラルポジションに降り立つ同士ですぐさま睨み合い。
「「ふふ、はッ!」」
ピカチュウに引き続きリザードンも投げるタイミングが丸被りとなれば、サトシもヒロシも不敵どころか変な笑いが出てしまっていた。
つくづく『似た者同士』だな、と。
『あーッとここでまたもやミラーマッチ!チャンピオンサトシとヒロシ選手、同時にリザードンを投入ですッ!!ミラーマッチといえばメタモントレーナーとして高名なイミテさん!このマッチアップ、どう見てますでしょうか?』
『うーん…私もメタモンを通して相手のポケモンの育て具合を計ることには人一倍自信あるつもりですけど、やっぱり同じポケモンを使って周りと差をつけるには、4つの技とポケモン自身の鍛え方に大きな化学反応を起こす必要がある…この盤面もどちらがより大きく差を見せられるかにあるんじゃあないかなって思ってます。その為には、トレーナーの判断力も必須。』
『なるほどッ!ポケモンのみならずトレーナーの一挙手一挙動にも目が離せないと言うことですね?』
『そうでーす。』
「ぎゃう!ぎゃう!」
「そうねリサ。あなたのボーイフレンドが負けるはずない。」
峡谷に備え付けられた液晶モニターから中継を見る数多のリザードンたち、その中でピンクリボンをオシャレで着けるリサと共に試合を見るのはリザフィックバレーの管理人であるジークだ。
一時期ここに身を置いていたサトシのリザードンの出番となればリサは笑顔で巨体を飛び跳ねさせ、仲間たちも熱いバトルに触発され空に向けかえんほうしゃを放っていた。
「ぐるぅぅぅぅぅ!」
リザードンが気合いじゅうぶんに咆哮しながら夜空めがけて火炎を吐けば負けじとジッポもそれに対抗して見せる。そうして両者改めてジロリと睨み合った。
同じリザードン同士、相手に取って不足なし!
「うむ!どちらのリザードンもよく育てられておる!こりゃまた楽しみな勝負になりそうじゃのう!」
「ですね。ここでサトシが競り勝てば前半戦を2体差でクーリングタイムに持ち込める。」
オーキド博士とククイ博士が固唾を呑んで戦況を見守る中、電光掲示板のビジョンに直結するドローンロトムがこちらを映してるとなれば呑気にハナコは満面の笑みでピースを向けていた。
この母にしてあの息子ありなのか?どこか能天気なところがよく似たハナコとサトシにバーネット博士は目を輝かせながら試合を見る愛息の頭を優しく撫で、守るように後ろに立っていた。
「リザードン、真っ向勝負だ!いくぜ!!」
「ジッポ、パワーなら負けちゃいない!思い切りやろう!!」
「「ぐるぅぅぅ!!」」
「「かえんほうしゃ!!」」
シュボボボボボァァァァァ!!
ピカチュウ同士の10まんボルト同様、リザードン同士口から吐き出す猛烈なかえんほうしゃをぶつけ合う。
「「ぴっか〜〜〜!!」」
ピカチュウとレオンが『突撃〜!』と囃し立てれば、リザードン同士はかえんほうしゃを吐きながらドシンドシンと真っ直ぐ走り、
ガッシィィィッ!
両手を組み、額を擦り付ける。
がっぷり四つの力比べに入れば互いに目一杯力を加えてゆく…!
バチィッ!!
磁石の同じ極のように一旦離れる。
力比べは、とりあえずは互角…となれば、技の応酬へと移行するのみ!
「リザードン!」
「ジッポ!」
「「きりさく攻撃!!」」
「「ぐぉぉぉぉぉ!!」」
シャキキキィン!!
号令を受け三本指の先の爪を先鋭化させた両者は翼をはためかせ滑空。
再度フィールド中央で間合いに入り合えば、
ザザザザザァァァッ!!
きりさく攻撃の斬撃ラッシュ。互いに両手を振りまくっての本格的な肉弾戦に突入した。
『ピジョットの帰還』
3年前、ワールドチャンピオンとなり帰省していたサトシが骨休め中にトキワの森を訪れ、ロケット団からいつものように襲撃を受けていた中、颯爽と訪れたのがピジョットだった。
サトシはその場でピジョットを歓迎、仲間として帰還を受け入れたという。