3 years later〜虹の向こうに〜   作:nami73

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 クーリングタイムを終え、早速サトシはフシギダネにテラスタルを、ヒロシはバタフリーにキョダイマックスを使用。
 キョダイマックスに圧倒されながらもサトシは耐え凌ぎ、フシギダネ必殺のソーラービームをお見舞いした…!


PNTT Fighting! 決勝戦 シングルバトル1 サトシvsヒロシ⑥

 パルデア地方で会得したテラスタルを活かしてのフシギダネの必殺技『ゴールデン・ソーラービーム』はテラスタルに加えフシギダネの特性『しんりょく』、さらには一緒に戦ったひばりのブイとイズによるてだすけを受けたパワーアップが積み重なりそれまででも絶大な決め手として扱っていたソーラービームをさらに高い次元へと引き上げた。

 初めて発動まで漕ぎ着けた時はわざわいポケモンたちを助け出さねばならないということで無我夢中だったが、そこからサトシがひばりからのサポートなしでこの必殺技を使えるようにしたいと考えるのはポケモントレーナーの性であった。

 が、アローラに着きチーム<マナーロ>に参加してからもゴールデン・ソーラービームに必要なひばりのサポートに代わるピースは見つけられないでいた。

 

「お前のフシギダネは本当ならとっくの昔にフシギバナまで進化してるどころか、その2倍、いや、3倍のレベルに到達していると言っていい。」

 

 サトシとタケシの間で時は遡る。

 フシギダネだけの話ではないが、と合宿中のポケモンたちの健康チェックの折相談したタケシとのやり取りだ。

 サトシのフシギダネは3年前、明確に進化を拒絶してフシギダネのまま強くなる選択をした。

 意地っ張りで負けず嫌いなところはサトシのポケモンたちは皆共通で大なり小なり持ち合わせていたがフシギダネはそこにさらに頑固さも兼ね備えていた。

 

『フシギダネ、あの力欲しくないの?』

 

『だにゃ!』

 

『ごめんなフシギダネ、俺、お前が進化するって決めて勝手に喜んじゃってさ。』

 

『だねだ…!』

 

『俺、フシギダネの気持ちを大事にしたいんだ!だって、こいつの生き方はこいつのものだろう?』

 

 グレンタウンに向かう道すがら訪れた進化の兆し、森のフシギバナによる『進化の儀式』に際し、枯れた大木に真っ赤な花々を咲かせる圧倒的な自然への干渉力を前にしてなお明確な拒絶を見せたフシギダネの気持ちにサトシは寄り添った。

 以降、フシギダネは進化することなく現在までサトシの頼れる仲間であり、友達のままだ。

 

「うーん…。話を聞くにそのゴールデン・ソーラービームだったか?そいつに必要なのは3つのエネルギーリソースだろう。テラスタルと特性しんりょくで2つ賄うとして、残り1つ…そうだなぁ。今のフシギダネにとって無用の長物と化してる進化のためのエネルギー、なんかはどうだ?」

 

 どうやって引き出すかだが、と付け加えるタケシにサトシはストンと合点がいったようだった。

 

「進化のためのエネルギー、かぁ…サンキュータケシ!やってみるよ!」

 

 

 

「それから抽選会の為にナンテさんと一緒に合宿を離れるまで、サトシはクワッスのトレーニングと並行してフシギダネの必殺技の為の進化エネルギーを引き出す特訓をしてたんだけど、ようやく完成に漕ぎ着けたみたいだな。」

 

「ほぉー…。」

 

 ナンテとしても合宿中にサトシとフシギダネの特訓風景自体は何度か見ていた。

 相手がチャンピオンということと、サトシからサポートを求めてくる様子もなかったので特に口出しはしなかった。

 

「テラスタルにより元のタイプとテラスタイプを一致させたことにより2倍…特性しんりょくによるパワーアップが1.5倍…さらにフシギダネが内包していた進化エネルギーが加われば、あのソーラービームは最低でも通常の3.5倍以上の破壊力となりますな。」

 

 つくづくサトシを敵に回さずに済んでよかった、とナンテは戦々恐々の苦笑いを浮かべる。

 そんなナンテのサラッと口走る計算に、学のあるシゲルやセイヨは深く頷くよりなかった。

 

 

 

「だねゃッ!」

 

 渾身の一発を撃ち終えたフシギダネがニュートラルポジションへ戻る中、ゴールデン・ソーラービームを叩き込まれたパピーは観客席まで飛ばされるところをバリアフィールドに受け止められヒロシの後方に落下する。

 強烈なくさエネルギーの奔流は、受け止めるに最良であるはずのむし、ひこうタイプですら何の意味も為さずに体力を奪い去っていた。

 

「(キョダイマックス状態だったらばあるいは…?)」

 

 ヒロシの脳裏に一瞬浮かぶも、そこをケアするのも含めてのサトシの立ち回りであるとなれば無意味な仮定を頭から振り払った。

 

「バタフリー、戦闘不能!フシギダネの勝ち!!」

 

 

 

サトシ、残りポケモン5体。

 

ヒロシ、残りポケモン2体。

 

 

 

ウオオオオオッ!!オオオオオッ!!

 

「とんでもない威力のソーラービームが炸裂!!相性有利で受けたバタフリーですがたまらずダウン!!これでヒロシ選手のポケモンはあと2体です!!」

 

 

 

「お疲れ様パピー…やるねサトシ。本当に3年前とは大違いだ。」

 

「ヒロシだって。まだまだこれからなんだろ?」

 

 言葉を交わし、互いに不敵な笑みを向ける。

 ここまでの試合の流れはハッキリ言って双方共に予測通りの展開と言えた(感覚派のサトシとしてはなんとなくそうなるはず、と言語化してのことでもないが)。

 

「やっぱりバレてたか。」

 

「ぴかぁ…。」

 

 回収したパピーのボールをホルダーへ戻し、次のボールを手に持つ。すると、

 

 

 

「なんだ?」

 

「風が…。」

 

 カキとスイレンがにわかに吹き荒れ始める風に気付く。

 元々の天気は雲一つない晴れ、にも関わらず雨雲が頭上に発生していけば両陣営としてもここまでの『予定調和』をハッキリ知覚する。

 

「"ポケモントレーナー・ヒロシ"の本領はここからと言うことか。」

 

 ナンテが呟く。『嵐が来る』と直感した。

 

 

 

「勝負はここからだよ!キミに頼んだ!!」

 

 ヒロシがボールを勢いよく放り投げる。

 

「シルバーーーーーッ!!!」

 

「るぎゃあああああッ!!!」

 

 白銀の翼を雄々しく広げ、嵐を呼ぶ『海の神』が降臨する。

 

「来たな…シルバー…!!」

 

 呟きながらサトシは、ゆっくりと帽子のツバを後ろに回す。完全に無意識のうちのことだった。

 

 

 

「ヒロシ選手、ここでついに伝説のポケモンルギアを投入ッッッ!!残りポケモンの数に差が付いている中、どう巻き返しを図るのか!?」

 

「サトシくんのポケモンたちはヒロシくんのチームをいい感じに倒してこそ来てるけど、それぞれ決して無傷って訳でもない。しんりょくが発動してるフシギダネなんかがいい証拠ね。」

 

「詰めを誤れば一気にひっくり返される盤面、そこで相手がよりによってルギア、かぁ…。」

 

 カラカラな喉にゴクリと唾液を送り込むイミテ。乾きとしては焼け石に水であるが呑まないよりはマシだろう。

 カルネも水分補給を、流れる汗を忘れてフィールドに見入っていた。

 

 

 

「だぁねだねぁ!!」

 

 『かかってこいやぁ!!』…そんな感じのニュアンスの啖呵を切っているであろうことはサトシのフシギダネを知るならばすぐに分かるほどの発奮。

 当然、引き下がることなど頭にはない。

 

「ぴかぴか〜…。」

 

「伝説のポケモンだからって怯んだりしないぜ、なぁフシギダネ!!」

 

「だーね!!」

 

 そんなフシギダネを引っ込める選択肢は、やはりサトシにもなかった。

 ルギアを引き摺り出せたらば、あとはいけるところまでいくだけだ!

 

「やどりぎのタネだッ!!」

 

ポポポポ〜ン

 

 フシギダネは走り、シルバーの足元から球根より種子をいくつも発射する。

 白銀のボディに付着する種子が芽吹き絡み付こうとするも、シルバーは構わず口の中に空気エネルギーを溜め込んでおり、

 

「エアロブラスト!!」

 

ボハアアアアアアアッ!!

 

 荒々しい竜巻のブレスを足元へ吐き降ろす。

 

「だンねぁ〜!!」

 

「フシギダネーッ!!」

 

 種子と一緒に5mを越すシルバーに比べればあまりにもちっぽけなフシギダネは吹き飛ばされ、

 

ギンンッ!!

 

 テラスタルで強化されたつるのムチを伸ばしてパピー相手のように捕まろうとするのも発光したシルバーの双眸から放たれた不可視のサイコパワーにより蔓が千切られ、空中のバリアフィールドに激突。そのまま落着する。

 

「だ、だねぁ〜ふッしッ…!」

 

 なおも立ち上がらんとガッツを見せるも四つ足に力が入ることはなく、フシギダネは意識を手放してしまった。

 

「フシギダネ、戦闘不能!ルギアの勝ち!!」

 

 

 

サトシ、残りポケモン4体。

 

ヒロシ、残りポケモン2体。

 

 

 

ウッシャアアアアアッ!!ダッシャイ!!

 

「ヒロシ選手、まずはルギアで1体突破!!チャンピオンサトシはやどりぎのタネで体力の回復を狙ったようですが空振り、エアロブラストで種ごとフシギダネを倒されたーーーッ!!」

 

「うーん…。」

 

「何かひっかかる?」

 

「え、あ、はい。サトちゃん、いや、チャンピオンとは昔旅をしてるところに会ったことあってバトルもしてるんですけど、こういう場面で回復とか、そういった守りに入るような選択肢を取るようなタイプのトレーナーではなかったよなー、なんて。まぁ、3年間で戦い方の引き出しが増えたってだけなんでしょうけどね?」

 

「ふーん。」

 

 サトシと両手で数えられるくらいの付き合いであるのはカルネもイミテも変わらない。

 そんなイミテの違和感はカルネも共有するものであった。

 

「私もそう思うわ。」

 

 カルネはイミテに微笑みかけながら頷いてみせた。

 

 

 

「戻れフシギダネ!よく頑張ったな、ゆっくり休んでくれ。」

 

 フシギダネをボールに戻したサトシは見上げてくるピカチュウと目が合う。

 言外に『僕が行こうか?』と申し出ているような気がした。

 

「お前は最後にどっしり構えといてくれよ。ヒロシにはレオンもいるんだしさ。」

 

「ぴっか!」

 

 どうやら当たっていたらしい。ピカチュウは笑顔を向けフィールドを向き直る。

 同じピカチュウを使うトレーナー同士、向こうがレオンを温存するならばこちらもそうするまでなのだ。

 

「頼むぞゼニガメ!キミに決めたッ!!」

 

「ぜにぜ〜に〜!」

 

 フシギダネに続けてルギアに立ち向かうべく繰り出したはゼニガメ。トレードマークのサングラスはまだサトシが預かっているままだ。

 

 

 

「サトシくんとしても流れ自体は予測通り、と言ったところかしら?」

 

「予測なんて上等なことするタチじゃありません。アイツの場合は勘ですよ、野生の勘。」

 

 例え相手が師であってもほぼ無意識にサトシへの毒吐きが止まらないのはカスミ自身付き合いの長さからどうしようもない。

 カンナとしてもそんなカスミのサトシ評は真実味があると受けながらも、言い切ってからバツが悪そうにする愛弟子にクスリと笑みを浮かべていた。

 

 

 

「ぜにぃ〜…!」

 

 ドククラゲのプラダとのバトルで受けたダメージは大きいながらゼニガメもまた闘志を燃やす。全身からは青白いオーラが放たれていた。

 

「"げきりゅう"、か。」

 

 フシギダネがピンチの時にくさエネルギーを増幅させる特性しんりょくならば、ゼニガメのそれは同じ条件でみずエネルギーを増幅させる特性『げきりゅう』が持ち味の1つであった。

 ヒロシは心内で兜の緒を締めるように集中し直す。

 

「シルバー、サイコキネシスで捕まえるんだ!」

 

「飛べゼニガメ、回転ジェット!!」

 

「ぜにッ!」

 

 外に出した体の部位を甲羅の中へ引っ込めてから水流を噴射しながらの回転飛行は、すぐさまシルバーの視界からゼニガメの姿を消失させる。

 

 

 

「スピードが上がってるな。」

 

「げきりゅうでゼニガメのみずエネルギーがパワーアップしてるのね。だから噴射する水流の威力も上がってる。」

 

 瞬く間にシルバーの背後に回るゼニガメの回転ジェットにジェニーが言及すればセイヨがそのカラクリをすぐに見抜く。

 それでも険しい表情が抜けないのはエスパータイプ、こと伝説のポケモンルギアを相手に意識外からの攻撃などは望むべくもないというところからだ。

 

 

 

「ハイドロポンプを喰らわせてやれーッ!!」

 

「ぶしゅうううーッ!!」

 

 空中で頭と両手足を甲羅から出し、ゼニガメはシルバーの首筋めがけ水流弾を発射する。

 

ギロリ!!

 

「ぜにうッ!?」

 

 それと同時にシルバーは振り返り、ハッキリとゼニガメを捕捉。

 闇雲に気配を探ったのではない。『最初からそこにいたのを分かっていた』ように。

 

「カルネさんとの試合で見せたやつかッ!」

 

「サイコ・リンクさ。エアロブラストー!!」

 

「るぎゃあああああ…!!」

 

ボッシュアアアアアアアッ!!

 

 再度放たれる竜巻のブレスが、パワーアップされているはずの水流弾をかき消してゼニガメを襲う。

 

「ぜにゃあ〜〜〜!!」

 

「ゼニガメッ!!」

 

「ぴかぴか〜!!」

 

 エアロブラストは空中のゼニガメに直撃し、甲羅からフィールドに落着。上体をどうにか起こそうと踏ん張るも力尽きてしまう。

 

「ゼニガメ、戦闘不能!ルギアの勝ち!!」

 

 ハイドロポンプの水流弾をかき消し、ただの水飛沫としてその身に浴びるシルバーは、倒れたゼニガメを一瞥してからサトシを見下ろすのだった。

 

 

 

サトシ、残りポケモン3体。

 

ヒロシ、残りポケモン2体。

 

 

 




 『ポケモンの進化に対するポケモン自身の意識』
 ポケモンの大半は自分が生活してゆく中でレベルアップを重ね、新たな技を覚えるのと同じように進化して姿形が変化するのを自然のこととして受け入れる精神構造をしている。
 当然ながら例外となる個体もおり、性格的なところから進化や新たな技の習得による変化を拒むポケモンに対してどう向き合うかもトレーナーの腕の見せどころといえよう。
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