3 years later〜虹の向こうに〜   作:nami73

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 ルギアのシルバーを倒し、引き続いてレオンに打ちのめされるリザードンはそれでも倒れない。
 それはサトシとの、かつての自分自身との誓い。
 燃え上がる闘志は今、死闘の果てに何をもたらすのか…!?


PNTT Fighting! 決勝戦 シングルバトル1 サトシvsヒロシ⑩

 リザードンの記憶の情景が色鮮やかに染まるのは心無い前の主人との縁を完全に切り、サトシにゲットされたところからであった。

 元々は『弱い』と粗雑に扱われ、迎えに来るから外で待てと言われ、雨に打たれ衰弱していたところを救われたのも大きい。

 サトシのポケモンとなってからはピカチュウたち頼りになる仲間にも恵まれ数多の戦いを潜り抜けた。

 そんな日々の中でもしこりとして残り続けていた元主人からの呪詛の言葉…お前は弱い、役に立たないと捨てられ、死にかけた忌まわしい記憶が、次第にはぐれポケモンであったヒトカゲの中で渦巻き、それが顕在化したのがリザードに進化してからだ。

 

『やったなヒトカゲ!いやリザード!おめでとう!』

 

『りざぁ?』

 

 暴れるナッシーの群れを撃退したことで進化してすぐに喜び、抱きついてきたサトシの顔面にかえんほうしゃを吐きかける。

 

『うあちゃちゃ!元気だなぁリザード!』

 

 自分は強くなったのだ。そんな全能感からくる驕りは、いつしか主人であるサトシすら軽く見るようになり、リザードンに進化することで最盛を迎えた。

 マサラタウンにサヨナラバイバイして日が浅いルーキーの主人にこの制御下から外れたリザードンを従える術がないままという関係が動いたのは、カントー地方の旅を終え、オレンジ諸島に旅の舞台を移してからのことである。

 

『リザードン、俺さ。まだまだレベル低いかもしれない。お前、弱いポケモンって相手にしないだろ?きっと、俺もレベル低いトレーナーだから相手にしてもらえなかったんだろうなってさ。でもさ、いつかお前と一緒に戦うの夢なんだぜ?お前と一緒に戦って、そして、絶対に勝つんだ!』

 

 強さの証を腹に巻くニョロボンに痛めつけられ、弱り冷え切った体を摩り続けるサトシが語りかける言葉に去来するのは、見るもの全てが色鮮やかになってからの記憶…。

 世界の美しさを見せてくれた温もりを与えてくれる彼の心持ちこそが、信ずるに値する本当の強さだと気付いたのだ。

 朝日と共に完全復活を果たしたリザードンは、改めてサトシのポケモンとして転戦し、そこにはもう反抗してふて寝するような姿は見られなかった。

 本当の強さを知る主人の元にさえいれば自分はどこまでも強くなり、勝ち続けることが出来る…そんなような、リザードに進化してからとはまた違った全能感というのは、真っ向から叩き潰されるものなのだろうかと後にリザードンは思うようになる。

 

『この娘バトル苦手なんだけど…。』

 

 リザードン保護特区リザフィックバレー…そこにサトシが招かれたことでリザードンに突き付けられたのは、自分は満足に人を背に乗せて飛ぶことが出来ず、施設内の同種に軽くあしらわれ続けた。

 挙げ句の果てには管理人ジークのパートナーで、あまりバトルに意欲を見せない雌のリサにすら一投のもとに切り捨てられるというもはや清々しいほどに無様で残酷な現実であった。

 

『分かる、分かるニャ。ニャーには分かる。強くなりたい…強くなりたい…世界で1番強くなりたい!うぅ〜分かるニャ!ニャーも昔はそうだった!なぁニャ、今だって!』

 

『強く生きたい!』

 

『心に太陽!』

 

『今夜は満月!』

 

『『『なんだか分かる〜!!』』』

 

 水の中に叩き込まれ、己が弱さを突き付けられたリザードンの中に湧き上がるのは正しく強さへの渇望。

 その真っ直ぐな情念は、ピカチュウゲットの為に毎度襲って来るロケット団の胸をも打った。

 そんな彼らのマッチポンプじみた襲撃は…特に関係なく、苦手な水の中に体を浸からせたまま一晩中耐え抜いたリザードンのやる気をリザフィックバレーは受け入れた。

 

『俺としては…お前なんかもういらない。』

 

『サトシ!』

 

『弱いリザードンなんて…いらない!』

 

 開かれた新たなる強さを得る為の道…サトシは、敢えてリザードンが最も忌み嫌う口調で以て突き放す。

 声をあげるカスミの隣で、タケシはそんなサトシの意図をすぐに理解した。

 

『ほら行けよ。リザードン、お前の行き先はこっちじゃない。あっちだ!』

 

 群れの中を指差す主人の背中が泣いている…。

 男とは、顔で笑い、背中で泣く生き物なのだ。その馬鹿馬鹿しい習性は、人もポケモンも変わらない。

 リザードンは、サトシの背中に強く頷いた。

 

『リザードン…強くなれよ。』

 

『ぴかぴ!』

 

『サトシ!』

 

 ポツリ、一言呟いてサトシは走り出す。

 カスミとタケシが追いかける中ピカチュウは振り返り、リザードンとサムズアップを送り合った。

 こうした別れを経てサトシのリザードンは、更なる強さを手にし現在に至る…。

 

 

 

「ぐるぁぁぁぉぉぉ!!」

 

「リザードン!そのままちきゅうなげだ!!」

 

ぐるん!ぐるん!ぐるん!ぐるん!

 

 満身創痍の体に咆哮して鞭を打つ。雲を突き抜け、月下に翼竜のフォルムが夜空へ真円を描き出す。

 

「させるかぁ!!レオン、後のことは考えなくていい!!ありったけの放電を浴びせてリザードンを止めるんだ!!!」

 

「ぴぃぃぃかぁぁぁ…!!」

 

 ヒロシの声にレオンの瞳がキラリと光れば、

 

「ちゅうううううッ!!!」

 

バチチチチチチチィィィィィッッッ!!!

 

 

 

「リザードン、ちきゅうなげのルーティンに入るもヒロシ選手のピカチュウ、そうはさせじと大放電ーーーッ!!」

 

「ヒロシ選手としても出し惜しみなしだ!」

 

 後に控えるピカチュウ対決も、目の前のリザードンを倒せなければ画餅にしかならない。

 ヒロシの采配にイミテも正しいと理解を示す。

 

 

 

「ちゅううううッ!!」

 

バチチチチチチチィィィィィッッッ!!

 

「ぐぉるぅぅぅッ…!」

 

「ぴかーぴかぁ!!」

 

「負けるなリザードン!」

 

「ぐぅ…!」

 

 ここ一番のところでサトシに、リザードンに去来する、ヒトカゲであった頃のフラッシュバック…。

 

「お前は、俺の自慢のリザードンなんだ!!」

 

「ぐぅぅ…!!」

 

 フラッシュバックはリザードに進化し、始まったすれ違いへ移り、

 

「今こそ見せてやろうぜ!!強いお前のすげぇパワーを!!!」

 

「ぐぅぅぅ…!!!」

 

 最終進化に至り、すれ違いの果てに再び寄り添いあった日々が…

 

「ぐるぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

シュッボアアアアアッ!!

 

 リザードンの中で大きく弾け、放つ灼熱の炎でレオンの放電を飲み込んだ。

 

「な、なにィッ!?」

 

 

 

「「あの技はッ!?」」

 

 

 

「懐かしいわね…。」

 

 スタジアムにてカスミとタケシが叫ぶ中、ジョウト地方のフスベシティにあるジムの自室にてイブキは笑みを浮かべる。

 ソファに寛ぐ右手は相棒のカイリューを撫でる。かつてサトシのリザードンと戦った個体だ。

 

 

 

「あーーーッと!!リザードン、またもチャンピオンサトシを悲しませまいと持ち堪えたッ!!それだけはありません!全身から激しく発火!ピカチュウの電撃をシャットアウトだーーーッ!!」

 

「アレは、フレアドライブ?」

 

「だとしたらちきゅうなげのルーティンは崩れているはず。おそらくは、もうかのエネルギーをそのまま発火現象に置き換えたんだわ。」

 

 見上げる彼方、夜空に現出するは真円にて描かれる地球、我らが母星の外周をなぞるように明るい灼熱の炎はさながら宇宙を照らす太陽か。

 その熱は、間違いなくカルネを、いや、バトルを観る全てを熱く燃えたぎらせた。

 

 

 

「そこだぁ!!!必殺!!!ほのおのちきゅうなげ!!!」

 

「ぴ、ぴッかぁぁぁッ…!!」

 

「レオーン!!」

 

 地球のエネルギーを内包した灼熱のリザードンは炎の柱となり、フィールドのセンターサークルへ急降下。

 

「コレが俺たちの、最後のゼンリョクだぁぁぁぁぁッ!!!!」

 

「ぐるぁぁぁぁぁぁぁッッッ!!!!」

 

 右手にレオンの尻尾を掴んだのを力一杯振り抜き、思い切り叩き付ける。

 

ズッッッガアアアアアアアン!!!!

 

 背中から落着したレオンの中心部より生まれた巨大なクレーター、そのクレーターすら形を保てぬほどのフィールドの表土を丸ごとひっくり返す大破壊は衝撃波としてスタジアム中に響き渡った。

 

「ぐるぅ…!」

 

バチチィッ!

 

「あぁっ、リザードン!」

 

 競技用の白線も判別できぬほど崩壊したフィールドにどうにか着陸するリザードンは、全身からのスパークに苦しみ片膝を突く。

 無理もなかった。本来ならばとうの昔に戦闘不能になっているダメージをここまで気力だけで戦っていたのだから。

 

ガララァッ!

 

「ぴかぴ!」

 

「ヒロシの、レオン…!」

 

 その相手のレオンが下敷きにされた表土を払い除け、起き上がって来るのを見てはサトシも流石に背筋が凍った。

 リザードンのゼンリョクすら倒すには足りぬのか、と。

 

「ぴぃ…かぁ…!」

 

「流石だね、サトシ…。」

 

 この試合中もう何度口にし、胸に思ったか分からない素直な感想。

 ヒロシは、しっかりと目に焼き付けた。今後戦い続けるライバルの姿を。

 

「ちゅあ、がぁッ…!」

 

 自ら表土の中より姿を見せる。それが、レオンに残された最後のパワーであった。

 目を開き、最後まで見届ける。

 敬愛する主人と共に全力を出し切ってなお、この場では勝てなかった誇るべき好敵手たちの顔を。

 

ドサリ…!

 

 黄色いボディが大の字に倒れる。

 決して背を向けることなく力尽きたレオンへ駆け寄るジュンは確信と共に最後のジャッジで試合を締め括った。

 

「ピカチュウ、戦闘不能、リザードンの勝ち!よって勝者、チャンピオンサトシ!!」

 

 

 

ウ…!

 

ウ…!!

 

ウオオオオオオオオオオ!!!

 

「試合終了ーーーッ!!ほのおのちきゅうなげ一閃!!ヒロシ選手最後の1体が倒れたことでチャンピオンサトシの勝利が決定!!そしてこの瞬間ッ!ポケモンナショナルチームトーナメントの優勝確定!!記念すべき初回大会において、ポケモンバトル最強地方の栄誉に輝いたのは…アローラ代表チーム<マナーロ>ォォォォォ!!!」

 

 カルネもイミテも感無量の拍手をする。『いい試合を見せてもらった』と爽やかな笑みを向け合った。

 

 

 

「リザードン!」

 

 勝ち名乗りを受けたことで緊張の糸が切れたのだろう。リザードンが身体をぐらつかせ、左に倒れ込むところへサトシは身体を捩じ込んだ。

 肩を貸す形で密着する自慢のエースの体温は、真夏の熱帯夜でも心地よいと思えた。

 

「ぐるぅる…。」

 

「リザードン。やっぱお前最高だぜ!」

 

 試合を決めた殊勲者を労い、ボールに戻す。

 そこにレオンを抱きかかえたヒロシも歩み寄る。

 

「負けたよサトシ。きっと3年前も、リザードンにまともに戦われていたらこうなってたんだろうな。」

 

「あの時はあの時、今は今、だろ?」

 

「ぴーかちゅ。」

 

 『そうだよ。』とピカチュウも続けたように聞こえたヒロシが右手を出し渋る。

 3年前とは違って今やサトシはチャンピオン。礼儀作法としてサトシの側から握手は持ちかけるものなのだ。

 

「対戦ありがとう、ヒロシ。またバトルしようぜ。」

 

「うん!きっとね!今度は負けないよ。」

 

「ヘヘッ!」

 

 そんな作法はともかくとしてサトシがスッと差し出す右手にヒロシはすぐさまに応える。

 感じる手のひらの厚味は変われど、その温もりは昔と変わっていなかった。

 

「サトシー!!」

 

「みんな!って、うわわ!?」

 

 ベンチから走ってきたチームの仲間たちが瞬く間にサトシを取り囲みもみくちゃにしていく。

 そして今回は優勝を決める勝利を挙げたのだ。それだけでは終わらない。

 

「よーしいくぞー!せーのッ!!」

 

「「「「「「「わーっしょい!わーっしょい!わーっしょい!」」」」」」」

 

「うひゃ〜!!」

 

「ぴかぴか〜!!」

 

 

 

「おっと、チーム<マナーロ>のメンバーがチャンピオンサトシを胴上げしております!まさに歓喜の時です!!」

 

「いいわねああいうの。まさに青春だわ。」

 

 フルバトルに因んで6回、宙を舞うサトシとピカチュウをカルネは微笑ましく見つめていた。

 

 

 

「はい皆さん。整列から表彰式から色々あるんです。そろそろ落ち着きましょうね、ってあらら!?」

 

 サトシの胴上げを終えたところにパンパン、と手を叩きながら整列を促すナンテの周りにもチームの皆が取り囲む。

 今度はそこにサトシも混ざっている。

 

「こういうのは監督もやらなくっちゃ!」

 

「えぇ〜っ!?」

 

 サトシが言うので素っ頓狂な声を上げるナンテ。この流れは完全に想定外であった。

 

「いくぜみんな!そーれ!」

 

「「「「「「「「わーっしょい!わーっしょい!わーっしょい!」」」」」」」」

 

「あら〜!!」

 

 有無を言わさずの胴上げでナンテも宙を舞う。

 主人の情けない声にテディはやれやれと言う仕草でその様を見ていた。

 

「らいらい。」

 

 

 




 PNTT決勝戦 シングルバトル1(後半戦ハイライト)
 サトシvsヒロシ
 シングルバトル フルバトル

 サトシ    ヒロシ
 フシギダネ◯ バタフリー●
 (テラスタル使用) (キョダイマックス使用)

 フシギダネ● ルギア◯

 ゼニガメ● ルギア◯

 ピジョット● ルギア◯

 リザードン◯ ルギア●

 リザードン◯ ピカチュウ●

 勝者 サトシ
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