3 years later〜虹の向こうに〜 作:nami73
そこから月日は流れて12月、PWCSはマスターズトーナメントの日を迎えるのであった…!
「ブラックナイト事件から主催のマクロコスモスが事実上の運営凍結となり3年の空白期間を明け、ガラルチャンピオンダンデが同社の代表に就任することで新たな船出を迎えましたPWCS…ポケモンワールドチャンピオンシップス!4月から11月までのランクマッチ期間を経て出揃った上位8名、通称"マスターズエイト"が一堂に会し、ここシュートスタジアムにてバトル世界一の称号…"ワールドチャンピオン"の栄誉をかけて今宵戦います!!それも今年はミレニアム!!ポケモン歴2000年の節目の"ミレニアム・ワールドチャンピオン"であります!!全国のポケモントレーナー、ポケモンバトルファンの皆様、こんにちは!!本日はPWCSマスターズトーナメントの開会式から、トーナメント初戦の様子をお送り致します!放送席の実況には私、ジッキョー!!解説と素敵なゲストにはこのお二方に来ていただいております!!」
「皆さんこんにちは。ジョウトリーグチャンピオンのワタルです。今日はよろしくお願いします。」
「ホウエンリーグチャンピオンミクリ…この日をずっと待ち侘びていたよ。」
「チャンピオンワタルはポケモンGメンとして、チャンピオンミクリはコンテストマスターとして、バトルの世界以外でもマルチに活躍する名選手であります。お二方、本日はよろしくお願いします!」
ジッキョーに2人は軽く会釈を返す。
どちらもその兼ね合いにしている仕事側の事情が立て込んだことを理由としてランクマッチの数をこなせずにランクを落とし、今こうして放送席へ呼ばれている。
それぞれ別に抱えていた仕事に徹するよりなかった2人に悔しさがないと言えば嘘になる。
どこまでいっても彼らの本職はポケモントレーナーであるからだ。2人とも次こそは、という情熱に燃えていた。
ワオオオオオオ…!!
フィールド部分に隣り合わせる形に配置されたお立ち台は開会のセレモニーに合わせて用意されたもので、試合が始まるとなればすぐに撤去出来るよう組み立て式になっている。
そこに7色のスポットライトが目まぐるしく当てられればいよいよ今年のマスターズエイトが姿を見せる運びとなった。
『さぁPWCSマスターズトーナメント!ポケモンバトルの頂点を決める、ランキング上位8名!1000年に1度の夢舞台に集いし"ミレニアム・マスターズエイト"の紹介です!!』
台座の中からせり上がり、姿を見せるは茶髪のショートヘアで赤いシャツに深緑色のジャケットを合わせた精悍な青年だ。
『第8位のタクト選手がトーナメント参加辞退を表明。急遽繰り上がりで参加が決まりました第9位!1997年度ホウエンリーグサイユウ大会優勝!!キンセツシティのテツヤ選手!!』
イェアアアアアアア!!
声援に応えるようにテツヤは手を振って見せる。
声を上げるのはどちらかといえばバトルにうるさい中年層の男性が中心だ。
玄人好みの技術に秀でている証左といえよう。
『第7位!開幕戦ではワールドチャンピオンにリベンジを許すも、チャンピオンクラス相手に善戦!確かな爪痕を残し続けてのランク入りは1997年度カロスリーグミアレ大会優勝!!"最強メガシンカ"アラン選手!!』
キャアアアアアアア!!
「アラーン!頑張れー!!」
「はりはりやあ〜!!」
舞台に姿を現す黒一色のコーディネートに主に飛ぶは黄色い声。
後ろがYのサスペンダーと左右に広がったトゲ状の髪が特徴的なマノンが相棒であるハリマロンの『ハリさん』と一緒に負けじと声を張り上げていた。
『第6位!故郷のシンオウ地方から幾多のリーグ挑戦を経て四天王キクコに師事し、ポケモンリーグの聖地カントー地方にてリーグ本部のお膝元に鎮座するはトキワジム所属!!ジムリーダーシンジ!!』
ヨッシャアアアアアアア!!
声援の色はバランスが良い。当の本人はせり上がる足場からただ一点、舞台の中央部のみを厳しい視線で見つめる。
客席へのパフォーマンスなどとは全く無縁の男である。
『第5位!アラン選手とともに今大会もカロス勢から堂々マスターズエイト入り!!自らの女優生活に裏打ちされた7色の演劇殺法でワールドチャンピオンの座を狙います!!"vedette reine(ウデット・レーヌ)"カロスリーグチャンピオンカルネ!!』
「カルネ!俺だー!結婚してくれー!!」
リーグチャンピオンのお出ましともなれば声援の量も圧も先の3人とはまるで違う。
スタジアム全体を揺るがすほどの熱狂の中、カルネは変わらず羽飾りをアクセントとした純白のコスチュームから抜群の立ち姿を見せていた。
『第4位!もはやその存在は押しも押されもせぬ"聖域"!!天空に舞うはまさしく守護竜!!その慈愛と厳しさを兼ね備えし瞳の先に狙うはもちろん、ワールドチャンピオンの座ただ1つ!!"シンオウの女神"シンオウリーグチャンピオンシロナ!!』
オオオオオオオオオオ!!!
続けて姿を見せるは黒一色の衣装をアクセントとした眩しいばかりの金髪…!
「シロナー!俺だー!結婚、はしなくていいや。」
絶対的な強さと美貌の中にどこか憎めない隙があり、愛さずにはいられないと思わせるのもシロナが生来持つスター性の発露と言えよう。
『同率第2位!空白の3年間で目覚ましい成長を重ね、開幕戦の引き分けを除いて全勝!!ポケモンナショナルチームトーナメントでもイッシュ代表を率いてチーム<ヒガキ>を3位入賞に導いた"昇竜姫"!!イッシュリーグチャンピオンアイリス!!』
オオオオオオオオオオ!!!
「うおお、アイリスたーん!!」
アルティメット・ドレスに身を包みシュートスタジアムに再び竜姫が姿を現す。
開幕戦の時よりまた少し背が伸びていてアイリスは得意げに胸を張っていた。その胸のサイズ自体は特に変化はない。
『同率第2位!PWCS復活開催の立役者!こちらも開幕戦以外は全勝でランクマッチを通過!!その実力に一切の翳りはありません!!此度は挑戦者としてワールドチャンピオン奪回へと臨みます!!"無敵の男"ガラルリーグチャンピオンダンデ!!』
ダンデ!ダンデ!ダンデ!ダンデ!ダンデ!
せり上がる足場から姿を見せると同時のリザードンポーズ。
オオオオオオオオオオッ!!!
お決まりのパフォーマンスに分かっていても、いや、分かっているからこそ人々は熱狂するよりない。
観客の多くはガラルの住人、故郷の英雄にかける思いはやはり大きいのだ。
『そして第1位!3年前、チャンピオンダンデの無敵時代に終止符を打ち、今回はワールドチャンピオンとして挑戦者たちを迎え撃ちます!!その瞳はただただ見果てぬ夢の為にあり!!"永遠のドリーマー"アローラリーグチャンピオン!敢えてこう呼ばせてもらいます…マサラタウンのサトシィィィィィ!!!』
ドワオオオオオオオオオオ!!!!
故郷の英雄に対して以上に客席からは声が上がる。
ポケモンバトルをこよなく愛する国民性に世界一強いワールドチャンピオンを蔑む声質などありはしない。
「あはは!」
「ぴかぴか〜!」
舞台中央部、花形のポジションから姿を見せ、両手を振りながら360℃に爽やかな笑顔を振りまくサトシとピカチュウには、誰しも毒気を抜かれてしまう。
これもまた、彼らが生来持つスター性であろう。
『これまでの大会同様、チャンピオンサトシも他7人と同じ1回戦から連覇を、王座防衛を狙います!チャンピオンサトシ、一言お願いします。』
アナウンス越しにジッキョーの声にサトシは頷く。
刹那、肌に感じ取るはプレッシャー…!トーナメントを戦う7人が、みな一様にサトシを見ていた。
いや、正確にはサトシが背負うワールドチャンピオンの肩書を見ていた、が正しいだろう。
ブルルと全身が震える。武者震いだった。
「俺は、俺たちは絶対に勝つ!誰が相手でもゼンリョク勝負あるのみ!!そしてまた、マスターズトーナメントの優勝ゲットだぜ!!」
「ぴっぴかちゅー!!」
ワアアアアアアア…!!!
少ない語彙力なりに簡潔に敢闘と優勝を宣誓すれば、スタジアム全体が声援でまた揺れた。
7人はサトシから視線を外し、はるか先の電光掲示板へと目を向けた。
『さぁそれではいよいよ対戦カードの発表です!!』
ドォルルルルル…!!
コンピューター制御によるランダム機能で液晶内の中ではスロットマシンのリールのようにトーナメント参加者の顔写真が激しく上から下へ流れ移り変わってゆく。
ピピピーン!!
『開幕セレモニーのすぐ後!ますまはAブロック!第1試合、オープニングゲームはチャンピオンサトシvsテツヤ選手!!』
「サトシくん。再戦の機会がこんなに最高の舞台とは!」
「俺も最高の気分です!」
互いに爽やかな笑みを向ける。サトシからすれば願ってもない相手だ。
ピピピーン!!
『第2試合はシンオウ対決実現!チャンピオンシロナvsジムリーダーシンジ!!』
「よろしくお願いします。」
「こちらこそよろしくね、シンジくん。」
儀礼的な挨拶、その中に両者から渦巻くは必勝を期す波導。どちらが勝ち上がってきてもおかしくないとサトシは思えた。
ピピピーン!!
『Bブロック、第3試合は前回のオープニングゲームと全く同一のカード!チャンピオンダンデvsアラン選手!!』
「よう!また思いっきりやり合おうぜ。」
「はい…!」
気さくなダンデにアランは軽く頭を下げて応える。
どこか覇気がないように見えるのは、PNTTからずっと引き続きであった。
ピピピーン!!
『そして第4試合に女性チャンピオン対決、チャンピオンカルネvsチャンピオンアイリスとなりました!!』
「最近はずいぶん調子がいいみたいね。ここはひとつ胸をお借りするわ。」
「そんな…!胸を借りるのはこっちです!」
慌てる様子のアイリスにカルネはクスリと微笑めば、アイリスもニヘラと笑みを返す。
お茶目な軽口だと分かったからだ。
『以上がマスターズエイト1回戦の対戦カードとなります!オープニングゲームはこの後13時からスタートであります!!』
開幕セレモニーが終わり、第2試合以降に出番となる6人は共用の控え室へと移り、サトシとテツヤはそれぞれフィールドのベンチへと入る。
「んむんむ。」
大会期間中、参加者が利用できるケータリングサービスから受け取ったおにぎりをサトシは頬張る。
ふと対戦相手側のベンチを見ればテツヤはサイユウ軒のカップラーメンを啜っていた。互いに試合前のエネルギー補給は万全である。
マスターズエイト集結の舞台が迅速に撤去されれば、フィールド各所に審判団が走って行き配置につく。
そうして中央部の審判サークルにはライド用装具を付けたギルガルドに乗るベテランジャッジのダンペーが入った。今大会の主審だ。
「時間です!両選手、トレーナーサークルへ!!」
ダンペーの指示に従い、サトシもテツヤもベンチを後にする。
そのままトレーナーサークルへ入れば、両者改めて戦闘モードの視線を向け合った。
「これよりPWCSマスターズトーナメント1回戦第1試合!チャンピオンサトシvsテツヤ選手の試合を行います!!試合ルールはシングルバトル!試合方式は6C3D!メガシンカ、Zワザ、ダイマックス、テラスタルは試合中、どれか1つを1度のみ使用可能!!」
上空をドーム状にバリアフィールドが覆う中、ダンペーに2人は準備良し、とアイコンタクトを送る。
「それでは、試合開始ィィィィィ!!」
高らかに告げられたジャッジ。
サトシのマスターズトーナメント連覇を目指す戦いが、今始まった。
『ダンペー』
51歳。ガラル地方ポケモンリーグ所属の審判。
経験豊富なベテランで、ガラルの公式戦においては引っ張りだこの名審判。
相棒のギルガルドとともに激しいバトルを的確にジャッジしていくぞ。
今章より毎日投稿に切り替えていきます。読んでいただけたら嬉しいです。