3 years later〜虹の向こうに〜   作:nami73

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 ポケモン歴2000年にちなんだミレニアム・ワールドチャンピオンを決めるマスターズトーナメントがついに始まった。
 初戦からサトシが登場。相手はかつてホウエンリーグにて敗れたテツヤだった。


最終章!マスターズトーナメント 1回戦 サトシvsテツヤ①

カシャリンコ

 

「わー!ありがとうございますシロナさん!カルネさん!」

 

「こちらこそ。」

 

「なんとなくこう来ると思ってたわ。」

 

 共用控え室に引っ込んだアイリスはシロナとカルネを誘って記念撮影。デジャヴを感じながら2人は快く応じていた。

 この辺りのはしゃぎようは3年前と変わっていないアイリスである。

 

「なんだか楽しそうだな。よし、いっちょう俺たちもやるか!」

 

「えっ…。」

 

「……。」

 

 ダンデの思いつきに対してアランは返事に窮し、シンジに至ってはあからさまにイヤそうな顔をする。

 

「そっか、ならリザードンと撮るよ。キバナもいつもやってるし…。」

 

「分かりました!撮ります!撮りますから!」

 

 2人から色良い返事が来なかったので気落ちするダンデの後ろ姿から醸し出される哀愁に、アランもシンジも根負けを余儀なくされた。

 

カシャリンコ

 

 右腕にアランの、左腕にシンジの首へ鍛え抜かれた二の腕を回して真っ白い歯を見せ破顔するダンデ。

 先の女性チャンピオン3人の写真が3年前とほぼ同じ構図だったのもあるが、左右の2人のなんとも言えない表情がアクセントになり、女性陣のものよりSNSでウケが良かったのは皮肉な話であった。

 

 

 

「いくぜ!ルガルガン!キミに決めたッ!!」

 

「わおおおん!!」

 

「いけッ!ダーテング!!」

 

「だぁぁぁッ!!」

 

 

 

「チャンピオンサトシはルガルガンたそがれのすがた、テツヤ選手はよこしまポケモンダーテングを先発に送り込みました!ワタルさん、ミクリさん。この対面どう見てますでしょうか?」

 

「ポケモンの相性としてはいわタイプのルガルガンに対して弱点を突けるダーテングからテツヤ選手が出し勝ちとは見れますが、やはりそういうセオリーを覆す戦い方こそがサトシくんの十八番ですからね。」

 

「それだけではないね。チャンピオンはPNTTの準決勝からずっと公式戦においてはかつて敗れた因縁の相手と対戦し、それら全てに勝利してきている。トレーナーとしても今が1番ノリにノッている状態だよ。テツヤ選手もまた、ランキング一桁台に乗せるほどの猛者でもあるからまずは序盤の差し合いからだろう。」

 

 

 

 時は遡る。

 サトシとテツヤの因縁は3年前に端を発していた。ホウエンリーグに参加すべくサイユウシティへ辿り着いたサトシと出会い、知己となったのがテツヤであった。

 

「うわ!コレは!サイユウ軒じゃあないか!もしかして、きみたちも行くのかい?」

 

 グルメに目がないハルカの強い推しでホウエン地方ベスト3に入るラーメン屋へ向かう中、路地裏でくらやみポケモンヤミカラスの群れに襲われたサトシたち一行に助太刀したのが縁の始まり。

 テツヤもまた食通であり、件の店に同席と相なった。

 

「そうか、サトシくんもサイユウ大会に出場するのか。じゃあ、僕たちはライバルって訳だね。」

 

「よろしくお願いします!」

 

「いきなり強力なライバル登場カモ!」

 

 結果的にはカモ、どころではなかった。

 ポケモンの強みを過不足なく活かし、相手には掴みどころを与えず立ち回るテツヤのバトルスタイルは長丁場のリーグ戦にもフィットしており、その安定感はサトシを相手にしても揺らぐことはなかった。

 

「決めるぞピカチュウ!アイアンテールだ!!」

 

「ちゅあああああッ!!」

 

「ニャース!アイアンテールだ!!」

 

「ぎにぃあああああッ!!」

 

 ベスト4をかけた舞台で2人は直接対決の時を迎え、ラス1となるサトシのピカチュウとテツヤニャースの最後の技の応酬…ピカチュウのアイアンテールはニャースの脳天を打ち、ニャースのアイアンテールはピカチュウの喉元を射抜く。

 双方共にフィールドの岩場に背中をぶつけて落着し、一度はどちらも立ち上がって見せるもピカチュウが力尽きてしまう。

 

「ピカチュウ、戦闘不能!ニャースの勝ち!!よって勝者、テツヤ選手!!」

 

 追い込みこそはしたものの届かず、サトシは敗戦。ホウエンリーグへの挑戦はベスト8に終わったのだった。

 

 

 

 時を戻そう。この試合はサトシにとってもやはり雪辱戦の面が強いのは言うまでもない。

 

「先手必勝!ルガルガン、アクセルロック!」

 

「わぉんッ!」

 

 文字通りアクセル全開、瞬時にトップスピードへ到達する鮮やかなオレンジ色のボディは自らをいわの弾丸と見立ててダーテングへ飛びかかる。

 

「ダーテング、ねこだまし!!」

 

「だぁい!!」

 

パァンッ!!

 

「ぎゃうッ…!?」

 

 長い鼻に白髪、両手の先の3枚の葉を重ねた団扇を目の前で叩けば、鼻先まで来ていたルガルガンの動きがたまらず止まる。

 

『ダーテングのねこだまし!ルガルガンは怯んで動けないーッ!!』

 

「ルガルガン!」

 

「ダーテング、リーフブレード!!」

 

 ねこだましに一役買った両手の団扇が緑色のくさエネルギーを発し鋭利な刃となれば、

 

「だぁぁぁい!!」

 

ズッバァァァ!!

 

 勢いよくアッパーの形で振り上げる。効果は抜群、ルガルガンのボディが宙にて回転…、

 

ズッガァン!!

 

 刹那、テツヤの脳内で警戒アラートが鳴った時には既にダーテングは主人の右手側より吹っ飛ばされ、最後方のフェンスに叩き付けられていた。

 

「わぉぉぉッ!!」

 

 ルガルガンはというと、リーフブレードの斬り上げ攻撃を受けてからすぐに体勢を立て直して着地。

 すぐさまダンペーがギルガルドを飛ばしてダーテングのチェックに走れば、

 

「ダーテング、戦闘不能!ルガルガンの勝ち!!」

 

 サトシが先手を取ったことを告げた。

 

 

 

サトシ、残りポケモン6体。ダウン可能数残り3体。

 

テツヤ、残りポケモン5体。ダウン可能数残り2体。

 

 

 

オオオオオオオッ!!オオオ?

 

 あっという間の決着に観客は湧きながらもイマイチ状況が掴めていない。

 あまりに速すぎる展開に目がついて行けていなかった。

 

「ち、チャンピオンサトシ、まずは1ダウン奪いました、が、ルガルガンは一体何をしたのでしょうか?」

 

「カウンターですね。」

 

 サラリと答えるワタルにミクリはうんうん、と頷く。

 やはりリーグチャンピオンともなれば一瞬の攻防を見逃したりはしないのだ。

 

 

 

「リーフブレードで斬り上げを喰らって、技のダメージに加えて回転のエネルギーもプラスしてのカウンター攻撃…お見事ね。」

 

「仮にあのリーフブレードが振り下ろす形だったとしても頭の上の岩もまた振り下ろされる形でカウンターは決まっていたでしょうね。」

 

「あのアクセルロックは撒き餌だったんだ。カウンターに繋げる為の。」

 

 シロナが流れを話し、カルネはifの想定からも接近戦に持ち込んだ時点でダーテングに逃げ場はなかったことを考察。

 アイリスは最初の一手の時点からサトシの狙いを見抜く。

 彼女たちと同様のことを放送席のワタルが説明する中、フィールドの電光掲示板が見せるハイライトには、まさしく強者たちの推察したままのやり取りがスローモーションで映し出されていた。

 

 

 

「兄様!サトシがやりました!」

 

「アレくらいはやってもらわなくてはな。」

 

「るがぅ。」

 

 サトシのルガルガンのカウンター、その切れ味をよく知るグラジオは満足げに笑みを浮かべる。

 彼のルガルガンもご満悦だ。

 

 

 

「戻れ、ダーテング。」

 

 サトシの戴冠に繋がる必殺の一手、そのビジョンが浮かぶのが遅れたのはテツヤの痛恨であった。大舞台に呑まれた、とは思いたくなかった。

 ホウエンリーグからチャンピオンリーグを転戦する中でプレッシャーへの耐性には人一倍自信があるのだ。

 

「戻れルガルガン!」

 

 ダーテングを仕留めたルガルガンをサトシは引っ込めてゆく。

 

 

 

「ルガルガンのダメージも決して小さくはないみたいだな。」

 

「効果抜群の一撃ですからね。」

 

 ダンデの分析にアランも頷く。

 壁にもたれかかり、腕組みで試合を見るシンジも言葉は発しないがサトシの交代を適切であると思った。

 

 

 

「ゆけーッ!!」

 

「頼むぜ!キミに決めたーッ!!」

 

「「ぱーおーん!!」」

 

『あーッとここで今大会初となるミラーマッチ発生!チャンピオンサトシとテツヤ選手によるドンファン対決だーッ!!』

 

「「ドンファン!ころがる攻撃!!」」

 

「「ぱごーーーッ!!」」

 

 体を丸めての突進形態は黒い皮膚により回転すれば車のタイヤのようなフォルムに早変わり。

 

ガツン!ガツン!ガツン!ガツン!

 

 それぞれニュートラルコーナーより発進。瞬く間に幾度となく互いのボディをぶつけ合わせる。

 

『両陣営素晴らしいデットヒート!!どちらも決して譲りませんッ!!』

 

「(なんてパワーだ…!)」

 

 テツヤは努めて表情の平静を保つ。ミラーマッチとは同じポケモンでバトルをする性質上ポケモンやトレーナーのレベル差がハッキリと出て来る。

 見た目こそ派手に、互角にやり合っているように映るが、当の本人たちやエキスパートらからすれば両者の差は一目瞭然。スピードもパワーもサトシのドンファンが上回っていた。

 

「ならば技の応酬で上回るまで!」

 

 ポケモンバトルはパワーだけでするものではない、とは技巧派トレーナーの共通認識だ。テツヤもまた自らを技巧派の内として定義している。

 

「いっけードンファン!そのまま押し切るんだ!!」

 

ギュルルルルルゥ!!

 

 テツヤのドンファンの背後にサトシのドンファンがピッタリと付く。

 ダンペーの左手側のフェンスギリギリまで引き付けてからのカーブにサトシのドンファンが合わせようとボディを左に傾ける、その時だった。

 

つるるりんっ!

 

「ぱごぁ!?」

 

『あーッとチャンピオンサトシのドンファン、バランスを崩したッ!転倒かッ!?』

 

「ぴかぴ!ぴーかかちゃあ!」

 

「あぁ…フィールドが凍ってる!」

 

 危うく曲がり切れずにフェンスへ突っ込むところであったサトシのドンファンはすんでのところで丸めた体を元に戻して突進形態を解除。辛うじてバランスを取り戻し踏み止まった。

 が、それは動きが止まったということに他ならない…!

 

「今だ!ドンファン!じしん攻撃!!」

 

「ぱぅごぁぁぁぁぁッ!!」

 

 まんまと相手をクラッシュ寸前まで追い込み、距離を取ることに成功したテツヤのドンファンもまた突進形態を解除しており、上体を振り上げては両前脚を勢いよく地面に叩きつける。

 

ドゴァ!ガガガガガ!!

 

 轟くじめんエネルギーの衝撃波による追撃だった。

 

「ドンファン!はかいこうせんだ!!」

 

「ぱぁぁぁぁぁ…!!」

 

バビビビビビビビ!!

 

 サトシのドンファンはそこからも応戦。

 口から橙色の強烈なノーマルエネルギーを光線として発射。じしんの衝撃波を突き破り、

 

「ぱごぁ!?」

 

 テツヤのドンファンに命中した。

 

「ドンファン!?」

 

 たまらず叫ぶテツヤ。

 幸いなことにドンファンはどうにか起き上がり、戦闘続行可能とダンペーに視線を送った。

 

 

 

「テツヤくんのドンファンはこおりのキバの冷気を利用して走行ルートを凍らせ、後から追って来るサトシくんのドンファンをスリップせしめた。さらにそこからじしんを撃ち込んだまではよかったけれど、やはりチャンピオンのポケモン。パワーでひっくり返した訳だ。」

 

『みずタイプはこおりタイプに通ずる、そのまた逆も然り』とはミクリの持論である。

 

「流石にじしんの衝撃波を突き破ってそのままミラーマッチを制するまではいかなかったみたいだな。」

 

 サトシのドンファンの一発がはかいこうせんという技そのものに一家言あるワタルも頷く威力であるのは変わらない。

 

 

 

「「戻れ、ドンファン!!」」

 

 互いにドンファンを引っ込める。

 サトシははかいこうせん後の反動を嫌い、テツヤはシンプルにダメージ過多の為だ。

 

「次はこいつだ、ゆけッ!メタグロス!!」

 

「めぇたぁ〜!!」

 

 ドシン!重量感溢れるクリアボディを煌めかせてメタグロスが降り立つ。

 

「来たなメタグロス…なら俺は!」

 

 勢い良く振りかぶり、サトシが繰り出す3体目に…

 

「ゴウカザル、キミに決めたーッ!!」

 

「むっきゃーッ!!」

 

 

 

「…!」

 

 平静を保ったままシンジの瞳が僅かに見開き、またすぐ切れ目に戻る。

 試合を見るのに夢中な他のマスターズエイトは誰もそんなシンジの表情の変化に気付くことはなかった。

 

 

 




 『サイユウ軒』
 サイユウシティにあるラーメン屋で、ホウエン地方でもベスト3に入る名店。
 あっさりとした見た目の中にスープのコクと麺を調和させた一品が自慢であり、現在はカップラーメンとしてメニューを全国展開している。
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