3 years later〜虹の向こうに〜   作:nami73

257 / 302
 先発のルガルガンでまずは1ダウンを奪うサトシ。
 そこから互いにドンファンを繰り出しミラーマッチとなるもここでもサトシがテツヤとの地力の差を見せつけてゆく。
 どちらもドンファンを引っ込め、テツヤはメタグロスを、サトシはゴウカザルを繰り出した。


最終章!マスターズトーナメント 1回戦 サトシvsテツヤ②

「ゴウカザルとメタグロス…ほのお技ではがねタイプに、エスパー技でかくとうタイプに、それぞれ弱点を突き合える対面か。」

 

「と、なれば求められてくるのはトレーナーの戦略、独創性だね。」

 

 ワタル、ミクリがコメントを残す中、大方の予想通り先に動き出すのはサトシであった。

 どこまでも停滞とは無縁の男、それがサトシに対する共通認識と言っていい。

 

 

 

「ゴウカザル!マッハパンチ!!」

 

「むっきゃ!!」

 

 大地を蹴り抜き、頭の炎をゆらめかせながらゴウカザルは瞬時にトップスピードに入りメタグロスへ殴りかかる。

 

『チャンピオンサトシ速攻!!ルガルガン同様ガンガン攻めの一手だーッ!!』

 

 

 

「サトシくんはやっぱり攻めのバトルスタイルね。先制技のスピードに乗せて戦術を組み立てていき、相手を翻弄し圧倒していくスタイル。」

 

「サトシの中に戦術なんて概念があるかどうかは謎ですけどねー…。」

 

 カルネの分析にアイリスは苦笑い。これに関しては一定期間行動を共にしてきた仲にしか理解できない領域であった。

 側から見れば罠を張り巡らせ、そこに引っかかった相手を冷静に刈り取っているように見えても実際のところは単なる思い付きという綱渡り…その場の閃きこそがサトシの生命線であることを知っているのは、マスターズエイトの中ではアイリスともう1人くらいのものである。

 

「……。」

 

 そのもう1人であるシンジも壁にもたれかかりながら特にコメントを残すことはない。

 

 

 

「メタグロス、バレットパンチ!」

 

「めぇたぁ!!」

 

 サトシの速攻、その流れはテツヤには見えていた。

 メタグロスは鋼鉄の両前足を駆使して拳の弾幕を展開。構わずゴウカザルはそこに右拳を突き出してゆく。

 

バチィィィィィッ!!

 

 拳と拳がぶつかり合い、互いの技エネルギーがスパークする。

 この瞬間の硬直こそテツヤの狙いであった。

 

「今だ!サイコキネシスッ!!」

 

 ギィン!とメタグロスの双眸に紫色のサイコパワーが宿る。視界の内にいたゴウカザルのボディをまんまとキャッチして見せた。

 

「むきゃッ!?」

 

「ゴウカザル!!」

 

「メタグロスのサイコパワーからは逃げられないよ!!」

 

 空中でもがくゴウカザル、しかしサイコパワーによる拘束で思うように体を動かすことが出来ない。

 

 

 

「メタグロスのサイコキネシス!効果は抜群だーッ!!ゴウカザル、なす術なしかーッ!?」

 

「むむッ!?あれは!!」

 

「そういうこと、か。」

 

 それが計算か、閃きかはワタルもミクリも分からない。

 ただ、サトシのゴウカザルがここですんなり終わるなどということはないとだけはハッキリと分かった。

 

 

 

「ゴウカザル、見せてやろうぜ!燃えるような俺たちの輝きを!ゼンリョクを!!」

 

 サイコキネシスで捕まったゴウカザルの頭上にサトシが放り投げるは黒いデバイス…

 

 

 

「テラスタルオーブ!!」

 

 甲高い声とともに膝を打つのはアイリスだ。

 

 

 

「いっけー!!テラスタル!!」

 

「ぴかちゅかちゅ〜!!」

 

 テラスタルオーブからの輝きがクリスタルとなりゴウカザルを包み込む。

 

「むきゃあ〜〜〜!!」

 

 真っ赤なほのおのテラスタルジュエルを頭に被りクリスタルの中から飛び出す姿、テツヤはハッとさせられる。

 

「ほのおテラス、ということは…!!」

 

「むきやぁッ!!」

 

『チャンピオンサトシ、ここでテラスタル発動!!ゴウカザルはサイコキネシスから脱出ーッ!!』

 

 全身を拘束するサイコパワーを己が腕力で振り切り、フィールドに着地する。

 戦慄が冷や汗となり、テツヤの額から流れた。

 

 

 

「サイコパワーへの低い耐性を弱みとするかくとうタイプとしてのゴウカザルの側面がほのおテラスによりほのおタイプ単体となることで消失し、サイコキネシスによる拘束を解くことが出来たわけだな。」

 

 ダイマックスの奥義を極めたダンデとしてはそれに並び立つシステムの運用法、戦術というのも興味深いものであり、仕事の合間に調べ上げていた。シンプルにポケモンバトルが大好きなのだ。

 

 

 

「ゴウカザル、かえんほうしゃ!!」

 

「きゃぼあああああ!!」

 

 テラスタルジュエルの輝きが口から吐き出す灼熱の炎をより煌めかせる。

 無論見た目だけではない。その威力もまた増量させているのが一目瞭然だ。

 

「(下手に避けても追撃を喰らうだけか!)」

 

 この辺りの割り切りはチャンピオンリーグを主戦場としているトレーナーならではの素早い判断である。

 無傷で切り抜けることを早々に諦めれば、

 

「ラスターカノンだ!」

 

「ぐろあああああッ!」

 

 鋼色の光線をブレス攻撃に対し正面衝突させ、相殺によりダメージの低減を狙った。が…

 

ぼっふぁぁぁぁぁッ!!

 

「めぇたぁ〜〜〜!?」

 

「うッ!メタグロスッ!」

 

 ラスターカノンを一方的に突き破りかえんほうしゃがメタグロスに直撃。

 吹き飛ばされるボディがフェンス手前で踏みとどまれたのは500kgを超す重量級ポケモンであるからに過ぎなかった。

 

「メタグロス、戦闘不能!ゴウカザルの勝ち!!」

 

「うっきゃあ!!」

 

「いいぞーゴウカザル!」

 

「ぴっかぴっかぁ!」

 

 ダンペーのジャッジにゴウカザルは『よっしゃ!』と喜んでいた。

 

 

 

サトシ、残りポケモン6体。ダウン可能数残り3体。

 

テツヤ、残りポケモン4体。ダウン可能数残り1体。

 

 

 

『メタグロスダウーンッ!!これでテツヤ選手は2ダウン目、あと1体ポケモンを倒されればそこで試合終了、チャンピオンサトシの準決勝進出が決まります!!』

 

「お疲れ様、メタグロス。」

 

 メタグロスを労い、ボールに戻しながらテツヤは己の甘さを痛感する。

 サトシに対し、知己である以上に心の奥底で『1度勝った相手』という認識が残っていた。

 それがバトルに綻びを生んだのだ。

 

「(手を抜く気なんてなかった…だが、ここまで押し込まれるとは思ってもいなかった…だからこんなことになっているんだ。)」

 

 握り込むボールがピクピク、と揺れる。

 打ちのめされて沈む時間はないのだ、そう相棒が伝えてきたような気がした。それに、まだ勝負はついていない!

 

「ぴかぴ!」

 

「あぁ、分かってる。」

 

 サトシもピカチュウも分かりきっていた。追い込まれたテツヤが投げ込む起死回生の1体は…

 

「一気にひっくり返してやるさ!頼むぞ!ニャース!!」

 

「にゃあッ!!」

 

 羽飾りのついた青い帽子に真っ赤なスカーフ、そしてサポーター代わりに履いているのが自身の異名そのままとなる『長靴をはいたニャース』…。

 手持ちポケモンチームのエースとして君臨する相棒に、テツヤが懐から取り出し向けるは、

 

「テラスタルオーブ!」

 

「こうなってしまえば温存はなしだ!いくぞニャース!!」

 

「にゃああッ!!」

 

 ニャースが帽子を脱ぎ捨て、トレードマークである長靴すら置き去りにして空高くジャンプ。

 野生時代に群れを追われ、その際の後遺症をカバーすべくテツヤがはかせた事情を知るサトシは目を見開いて見上げる。

 

「雷の輝きを手足と変えて!嵐を友とし駆け抜けろ!!テラスタル…雷獣モード!!」

 

「雷獣モード…!?」

 

 飛び上がったニャースめがけテツヤはテラスタルオーブを放り投げる。

 

「にゃあああああッ!!」

 

 ゴウカザル同様クリスタルに包まれ、すぐに姿を見せるニャースの様子が少し違っていた。

 

バチチチチチィッ!!

 

『テツヤ選手もテラスタルを発動!しかしこッ、これはーーーッ!?』

 

 頭に浮かぶ雷模様をあらわすでんきのテラスタルジュエル、それはいい。

 羽付き帽子を脱ぎ捨てたのもテラスタルに邪魔だからだろう。

 問題はニャースの四肢…両手脚をカバーするように眩い電撃が絶えず迸っていたのだ。

 

 

 

「あれは…でんきタイプのテラスタルかしら?」

 

「はい。でも、あんなことが出来るなんて!」

 

 テラスタルを知るアイリスはシロナに答えながらニャースの形態に驚きを隠せない。

 発生するテラスタルエネルギーのコントロールにより、湧き上がるタイプエネルギーを任意の場所へ纏うというのは発想すらなかった。

 同時に、自分でも活用出来ないか?そう思案を巡らせる辺りは強さに貪欲たるチャンピオンの思考回路であった。

 

 

 

 テラスタルポケモン同士の対決となり、ニャースが両手を振りかぶる。

 

「テラスタルパワー!10まんボルト乱れ撃ち!!」

 

「にゃにゃにゃにゃにゃ…!!」

 

 空を取ったまま引っ掻くようにニャースが両手を連続でスイングすれば、爪が物を切り裂いた形の電撃が数多フィールドへ降り注ぐ。

 電気を帯びた飛ぶ斬撃の雨だ。

 

「あなをほるでやり過ごすんだ!」

 

「むっきゃ!」

 

 逃げ場はない、瞬時の判断がサトシとゴウカザルでリンクする。

 両手でその場に穴を掘り、地中へ逃れる姿にニャースは周囲を窺うことなく地上へ降り立つ。

 相手の攻め手は分かっていたからだ。

 

ボココッ!!

 

「ニャース!!」

 

「にゃあッ!!」

 

 真下、足元の地面が僅か盛り上がりを見せたところで軽くニャースは小さな跳躍。

 

「なにィッ!?」

 

 あなをほるによる回避からの奇襲、その攻撃ルートを完全に見破られたのはサトシとテツヤの経験の差…ワールドチャンピオンといえど13歳の小僧、いかに強烈であろうと一瞬のやり取りであれば21歳で10年以上のキャリアを持つテツヤが読み切れないではなかった。

 

「むっきゃあ!」

 

 地中から飛び出し、突き上げるような渾身の右拳を叩きつけに来たゴウカザルにニャースは両手を翳して応える。

 

『あーッとゴウカザル、あなをほる攻撃にガードを合わされたッ!!』

 

バチバチバチバチバチィィィッ!!

 

「むきゃあああああッ!?」

 

『電撃のカウンターがゴウカザルを襲う〜〜〜ッ!!』

 

 正確には両手のでんきエネルギーを押し付けたのだ。

 

「今だ!攻めるぞニャース!でんじほう!!」

 

「にゃあああ…!!」

 

 カウンターの形で電撃を浴び、動きが止まるゴウカザルを尻目に距離を置いて着地するニャースはテラスタルジュエルから両手へでんきエネルギーを集約させ、バチバチと激しく音が鳴るでんきの塊を生成。

 それを足元へ落としてゆく。

 

「にゃぎぃぃぃ!!」

 

 ニャースが迸る雷脚、その右を振り抜けば、地面を蹴り付ける。

 足にしなりをつけ、その反動を雷球へ伝えさらなる破壊力を付与するのだ。

 

「いけェ!!コレが僕たちの雷獣シュートだァ!!」

 

「にゃあああああッ!!」

 

ビジュアアアアアアッ!!

 

「くッ、ゴウカザル!ジャンプだ!」

 

「むきゃあッ!」

 

 迫る必殺シュートに対し、ゴウカザルはジャンプ1番飛び越しにかかる。回避し、大技直後のニャースに襲いかかる算段だ。

 

グゥン

 

「な、なにィッ!?」

 

「ぴかぁ!?」

 

『あーーーッと!ニャースの蹴り込んだでんじほうが浮き上がり、大きなノビを見せて〜〜〜ッ!?』

 

バチャチャチャチャチャアアアアアッッッ!!

 

「うぎゃあああ〜〜〜ッ!!」

 

「ゴウカザルーッ!!」

 

『ゴウカザルに直撃だーーーッ!!』

 

 

 

「ドンファンに変えるべきね。」

 

 一連の攻防を見てのシロナの見解、その一言目はこうだった。

 

「いかにニャースのでんきテラスが強力とはいえじめんタイプならば無効化できる…ここは無理をせずにサイクル戦で揺さぶる方が効果的だわ。」

 

 画面の向こうではでんじほうをぶつけられ、撃墜されるゴウカザルの姿が映し出される。

 誰がどう見ても旗色は悪い。シロナの言は正論としか言いようがなかった。

 

「これしきで引っ込むようでは奴もあいつもそこまでのトレーナーとポケモン…話になりませんよ。」

 

 そんなシロナに反論するようにシンジはこの場で初めて口を開いた。気付けば開いていた。

 シンジは一瞬目を見開き、口元に手をやった。

 

 

 




 『雷獣モード』
 テツヤが編み出したテラスタルの応用。
 増幅されたでんきエネルギーで両手足をカバーし、遠近問わず攻防一体の強化形態へと移行する。
 でんじほうの応用である雷獣シュートが必殺技だ。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。