3 years later〜虹の向こうに〜   作:nami73

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 トーナメントは反対のブロックに移り、第3戦はアランがまたもダンデに挑む形となった。
 サイクル戦で優位を取りに行くもやはりそこはダンデ。逆にアランのサイクルを読み切り鮮やかにダウンを奪うのだった。


最終章!マスターズトーナメント 1回戦 ダンデvsアラン②

「アラン選手、じしん攻撃を読んだのかケンホロウに交代するもその交代をさらに読まれて1ダウン!!チャンピオンダンデ、トレーナーとしての地力の差をアピールかーッ!?」

 

「あのドサイドン、その気になればバンギラスのように体内でのエネルギー運用でじしんを発動するくらいはわけないはず。それでいてわざわざフィールドを殴りつけるモーションを取り入れてるということは相手に"癖を読ませるために仕込んでいる"のかもしれないね。」

 

 ことパフォーマンスとなればコンテストマスターとして語ることを譲らないのがミクリだ。

 ドサイドンが振り上げ、フィールドへ叩きつけんとした左拳をケンホロウが出てきた瞬間に途中でピタリと動きを止め、ロックオンを済ませる流れは見事と褒めちぎる。

 

 

 

「仮にあのままじしんに合わせてのケンホロウへの交代が通ったとして、このすなあらし状態の中ケンホロウで何をするつもりだったんだ?あいつは?」

 

「ケンホロウにいわタイプ相手に打開できる技はないものね。強いて言うなら、フェザーダンスで攻撃力を下げにいく…?」

 

 共用控え室にいた時より明らかに饒舌になっているのは生で試合を観ているが故の興奮だろうか?そんなことをシンジに感じ、サトシとまた言い合いになった時に止めるための武器として頭の中の引き出しにしまいながらアイリスは自分の言ってる作戦の実用性の無さにすぐに気付く。

 ステータスにかかるデバフなどは交代によってすぐに解除されてしまう。そんなものの為に相性最悪の相手を前に立ち回りを強行するのは愚策でしかないのだ。

 

「まだまだコレくらいどうってことないぜ!アランはここからさ、そうだろうマノン?」

 

「え?あ、うん…。」

 

 明るいサトシに本来ならば一緒に乗りながら応援しなければならないのが自分の立場だと分かってはいるのがマノンだ。

 が、かれこれ半年以上もまとわりついたままのスランプを前に苦しみ続けるアランを前に悲壮感が勝ってしまっていた。

 

 

 

「せめてフェザーダンスで次に繋げたかったが…。」

 

 アイリスがパッと頭に浮かべていた『愚策』が通らなかったことを痛感しながら倒れたケンホロウを戻し呟く。

 それでも代わりの次の手は打たねばならない…。

 

「頼むぞ、キリキザン!!」

 

「きりっきぃ!!」

 

 

 

「おっ!キリキザンだ!」

 

 混じり気のない期待感のままにサトシが身を乗り出す。カロスリーグ決勝戦、皆は一様にサトシゲッコウガとメガリザードンXのラス1対決を印象に刻むが、要所要所でアラン側に流れを呼び込み、サトシ側に流れそうな空気を寸断するいい仕事をしていたのはこのキリキザンである。

 アランのキリキザンに痛い目を見させられた張本人としての思いも期待の要因としてあるのがサトシだ。

 

 

 

「はがねタイプならばすなあらしも関係ない!キリキザン!つるぎのまい!!」

 

「りきぃあ!!」

 

「むぅ…!」

 

 バンギラスが起こしたすなあらし状態にまんまと相乗りしている状況のドサイドンを相手にキリキザンは頭や両腕の刃を流麗に振り動き、戦いの舞をする。

 コレに対してダンデとドサイドンは動きを見せない。正確には見せられない、だが。

 

 

 

「がんせきほうの反動があるうちにパワーアップ、か。」

 

 定石通りの動き、それ以外の印象をアイリスが抱くことはない。問題はつるぎのまいを決めた後の立ち回りにあるのだ。

 

 

 

「いけ!キリキザン!!」

 

「りッきぃぃぃ!!」

 

 キリキザンがドサイドンめがけ一目散に走り出す。

 返す刀の攻め手としてダンデが講じるのはシンプルなものだ。

 

「じしん攻撃!!」

 

「どぅッさい!!」

 

 なおも左拳を振り上げ、効果抜群の一撃を狙いにいく。

 そこにキリキザンが懐まで飛び込んだ!

 

「アイアンヘッド!!」

 

「きざぁい!!」

 

ゴッツンコゥッ!!

 

 拳が叩き込まれるより先に硬質化させた頭を突き出すようにキリキザンがドサイドンの顎へぶっつける。

 

「どッさ…!」

 

 両の足で大地を踏み抜き、飛び上がっての1発に巨体がよろめく。ドサイドンの視界がチカチカと点滅する。

 

『キリキザンのアイアンヘッドは効果抜群!!ドサイドンは怯んで動けなーい!!』

 

「今だッ!!キリキザン、一撃で決めるぞ!」

 

「きりあッ!」

 

 飛び上がり鋼頭の頭突きを食らわせたキリキザンが両腕の刃に白く光るエネルギーを纏わせる。それは、一撃必殺を狙う渾身の斬撃…

 

「ハサミギロチンッ!!」

 

「りきぁぁぁい!!」

 

 

 

「ッ!!駄目だアラン!ハサミギロチンは!!」

 

 接近戦の間合いのまま、鈍重で怯んでいる状態…おおよそかわされることのないであろうドサイドンに対してのアランの一手は勝負を焦る性急なもの、という以前の問題だった。

 

「…やはりリザードン以外は使えないトレーナーか。」

 

 シンジの毒吐きは自身の声で聞こえなかったサトシである。

 

 

ガッキィィィン…!!

 

「き、りッ…!?」

 

「な…ハッ!!」

 

 キリキザンの両腕は確かに一撃必殺の刃としてドサイドンの首筋を捉えた。

 だが、当のドサイドンはピンピンしている…。

 

 

 

「あーッとドサイドン、ハサミギロチンを受けながらも全然効いていない模様!ワタルさん、コレは一体!?」

 

「至極簡単な話です。ドサイドンの方がキリキザンよりレベルは上…故に一撃必殺技は問答無用で効かないのです。」

 

「怯んだところからアイアンヘッドを連打していけばより大きなダメージをドサイドンに与えられたかもしれないねー…もったいない。」

 

 ワタルに続けるミクリは頬杖ながらに戦況を見る。といってもこの後の光景は分かりきっていた。

 

 

 

「どッさい!」

 

ドゴォッ!!

 

「きざぁッ!?」

 

 ドサイドンが両手でキリキザンを捉え地面へ押し付ける。

 ダンデはパフォーマンスとして好戦的な笑みを保ったまま冷徹な一手を置いた。

 

「じしん攻撃!!」

 

ドグラシャアアアアアッ!!

 

 フィールドの地面とドサイドンの両手に挟み込まれたところからの振動エネルギーの直通攻撃は、じしん攻撃の衝撃波を零距離から受けるのと同じこと。

 

 

 

「あぁーッ…。」

 

 クレーターを作りながらの強烈な圧力に晒されたキリキザンが耐えられる道理などはない。マノンは力無く呻くよりなかった。

 

 

 

「キリキザン、戦闘不能!ドサイドンの勝ち!!」

 

 

 

ダンデ、残りポケモン6体。ダウン可能数残り3体。

 

アラン、残りポケモン4体。ダウン可能数残り1体。

 

 

 

『ドサイドン連勝!!チャンピオンダンデ、盤石の立ち回りで2ダウン目を奪いました!!アラン選手ここから巻き返しなるか!?」

 

ウオオオオオオオ!!

 

「さっすがチャンピオンダンデ!!」

 

「やっぱ違うぜ!!」

 

 チャンピオンの圧倒的な試合内容に観客は沸き立ち続けている。その中で対戦相手にブーイングを飛ばすようなマナーの悪い者はいない。

 アランからすればヤジを飛ばしてくれる方がまだマシなところですらあった。

 

「すまん、キリキザン…。」

 

 

 

「アラン…。」

 

「ぴかちゅ…。」

 

 一撃必殺技の性質を失念しての痛恨のダウン。キリキザンをボールへ戻すアランの後ろ姿がサトシには煤けて見えた。

 ここでサトシは、アランが無くしている…背を向けている大切なものがなんなのか、朧げに掴み始めていた。

 

 

 

「戻れ、ドサイドン。」

 

 ダンデからすればこのままドサイドンで押して試合を決めるのも一向に構わない。

 だがコレは3年の空白期間を経て復活したPWCSのマスターズトーナメント、オーディエンスが求める構図を叶えてやるというエンターテイナーとしての一面を優先することにした。

 

「さぁアラン。3度目のリザードンタイムと行こうか!!」

 

「ッ…!いけッ!!」

 

 ダンデが引っ込めたドサイドンの次に、アランが倒れたキリキザンの次にそれぞれ投げ込むは皆が予想する通りの…

 

「「ぐるぅぅぅぅぅッ!!」」

 

 

 

ウオオオオオオオーーーッ!!

 

 リザードンだ。

 互いのエース同士でもあるミラーマッチの実現に観客のテンションもさらにぶち上がる。

 

 

 

「さぁー!!どこからでもかかってこいッ!!」

 

「ッ!ハァ…ハァ…!!」

 

 自信満々な笑みと共に両手を広げるダンデと、彼のリザードンを映す視界がグニャリグニャリと歪んで見える。動悸が激しくなってゆく。

 

「フゥーーーッ…!」

 

 瞑目し、大きく深呼吸しては無理矢理にメンタルの平静を整える。

 胸を抑えた左手を翳し、相棒と頷き合う。

 

「我が心に答えよ、キーストーン!!」

 

 キーストーンから放たれる7色の光…リザードンをメガシンカのエネルギーの繭が包みこむ。

 

「進化を超えろ!メガシンカ!!」

 

 

 

キャアアアアアーッ!!

 

 カロスリーグの優勝や2大会連続のマスターズエイト入りを通してアランにも個人的なファンは一定数ついていた。

 熱心なサポーターの黄色い声援はアランのメガシンカルーティンに完全アウェーな中で必死に声を張り上げる。

 

 

 

「ぐるぉぉぉあああッ!!」

 

 そんな中シュートスタジアムのバトルフィールドに三度漆黒の炎竜が姿を現す。メガリザードンX…それはアランの魂!

 

「げんしのちから!!」

 

「ぐぅぅぅッ!!」

 

 先に動くはダンデのリザードン。

 体内からのエネルギーを作用させ、フィールドの地面をくり抜いて岩弾を無数に生成し、一斉にメガリザードンへと発射する。

 既に2度ダンデとバトルしているアランとしては流石にこの手に慄く事はない。

 

「ドラゴンクロー!!」

 

ズバババババ!!

 

 緑色に輝くドラゴンエネルギーを両手の爪に纏わせ岩弾を切り裂きながら低空飛行。

 メガリザードンの得意な接近戦に持ち込む算段だ。

 

 

 

「ダンデさんのリザードンの技構成はだいもんじ、エアスラッシュ、りゅうのはどう、げんしのちから…げんしのちからでパワーアップしてから基本的には遠距離を保ち冷静に退き撃ちしていく戦法が得意、だけど接近戦に備えがないわけじゃあない。」

 

 アイリスの口から自然と漏れ出るダンデのリザードン評はシンジの調べたものとほとんど一致していた。この辺りは直接対決の経験がある分信憑性も段違いといえよう。

 データだけでは分からないポイントを探るためにシンジはこうして生で試合を観に来ているのだ。

 

 

「かみなりパンチだ!!」

 

「ぐぉるぅぅぅッ!!」

 

 両手に纏うエネルギーをドラゴンタイプのそれからバチバチと弾けるでんきエネルギーに切り替えてメガリザードンは接近戦の間合いへ飛び込み、拳を振るう。

 

ガッシィ!

 

「ぐるぅ!?」

 

 

 

「ダンデさんと一緒に長いこと戦ってきた中で近づいてくる相手への対処も完全に慣れっこになってる。」

 

 アイリスが語る通りに拳を振るうメガリザードンの腕をダンデのリザードンはあっさりキャッチしていた。

 

 

 

「ッ!?かえんほうしゃ!!」

 

「りゅうのはどう!!」

 

バッシュアアアアアッ!!

 

 ゾワリと背中を走る悪寒が過去の敗戦パターンをアランの脳裏に過らせた。

 交錯する朱と黒のかえんポケモン同士、メガリザードンは炎のブレスを、ダンデのリザードンは激しいドラゴンエネルギーの奔流を至近距離からぶつけ合う。

 

「ぐるぁぁぁ…!!」

 

 エネルギー爆発によるモヤから吹っ飛び出るは、メガリザードン…相手のニュートラルポジションから主人の鼻先のところまで弾き飛ばされる黒いボディには甚大なダメージが叩き込まれていた…。

 

「ぐるぅ!」

 

 ボールから繰り出され、降り立ったニュートラルポジションから動くこともなくダンデのリザードンはメガシンカした同種を苦もなく切り返して見せる。

 

「こんなもんじゃあまだまだ満足できないぜ?」

 

 げんしのちからにより引き出された潜在能力がメガシンカによるパワーアップで埋めたはずのレベルの差をあっさりと帳消しにしているのが分かる…トレーナー間においてもダンデとアランとでは腕前の差は歴然であった。それはアラン自身3年前から分かりきっていたこと。

 そこから力の差を埋め、追い越すための努力を以てしても依然差は埋まっていないと突き付けられてはいよいよ視界が本格的に歪み始めていった。

 

「(また負けるのか?俺は…。)」

 




 『フラダリ』
 44歳(3年前時点で)。悪の組織フレア団のボス。
 数ある資源を奪い合う世の中の醜さに絶望し、世界を破滅させようと目論んだ。
 3年前の最終作戦以後は作戦に用いた『伝説の巨石』の破砕と共に行方をくらましている(と、いうか常人ならばまず生きてはいないだろう。)。
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