3 years later〜虹の向こうに〜 作:nami73
2ダウンとなったカルネはサーナイトを繰り出し、エースの面目躍如とばかりにカイリューを撃破するのだった。
「お疲れ様、カイリュー。」
倒れたカイリューをボールへ戻す。
しんそくによる奇襲こそ切り返されたが、れいとうビームを受けたことからの凍結解除により多少なりともサーナイトのエネルギーを消費させることが出来たのはカルネ攻略において確かな収穫とした。
あとはここから勝ちの目を拾いに行くのみである。
「頼んだわよ…リザードンッ!!」
「ぐるぅぅぅぅぅッ!!」
『チャンピオンアイリスが繰り出すはリザードン!!ここで決着となるかーッ!?』
「むッ…!」
カルネは険しくアイリスを見た。
こちらへ手の甲を翳すように見せてくるはアルティメット・ドレスの裾より覗く左手首…そこに煌めくメガリングとキーストーン!
「なるほどね…。」
コレが可愛い後輩のやることならば微笑ましく見ることも出来よう。
しかし既にカルネにとってアイリスとは完全に同格のライバル…その意図を目の当たりにしては闘志が先に燃え上がった。
「それがお望みなら受けて立ちましょう!」
首元のアクセサリー、メガチャームを手に取れば虹色の輝きが繭となりサーナイトを包み込む。
対するアイリスもキーストーンへと手をかけた。
「イッシュの頂から世界の頂へ…!昇るわよリザードン!メガシンカ!!」
メガリングのキーストーンが同じく繭の中にリザードンを包み込めば、フィールドには進化を超えた輝きが満ち満ちる。
「さぁなぁ!」
サーナイトはメガサーナイトへと、
「ぐぉるぁぁぁッ!!」
リザードンは頭部に大きな角が1本生え、翼が大きくなり、さらに手首の部分にも小さな翼が生やして棘の追加された尻尾を振り乱す。
アランの扱うメガリザードンXとは違う姿だ。
「意外だな。アイリスのことだからてっきりXの方かと思ったがメガリザードンYとは。」
「何か考えあってのことじゃあないかな?アイリスちゃんなりに。」
そういうものかな、とワタルはミクリに視線を向ける。
自分の里に足繁く通うアイリスを半ば身内同然に思っているが故に若干過小評価が入ってないか?
そんなどこかおちょくるような視線のミクリにワタルは僅かに鼻息を鳴らし、毅然とした表情を見せながらフィールドへと見やっていた。
「考えたわねアイリス。ドラゴンタイプとなるメガリザードンXではなくYの方を使ってくるなんて。」
「いやぁ…あはは。」
先輩チャンピオンらが色々勘繰る中、メガリザードンYの真相というのはアイリス的にはなんとも間の抜けた話であった。
マスターズトーナメントに向けてメガシンカに必要なメガストーンを探すべくカロス地方にある『メガ島』に足を踏み入れたアイリスは、首尾よくリザードンの為のメガストーンを手に入れることに成功した。
そこまではよかった。
「(言えない…リザードナイトXとリザードナイトYを間違えて持って帰って来ちゃった、だなんて口が裂けても言えない。)」
不幸中の幸いと言えばリザードンの反応であった。
強さを追い求める種の本能からか、彼女はメガリザードンYの姿をすぐに気に入った。
だからこそアイリスはメガシンカに合わせた戦術も新たに構築してこの場に至るのだ。
リザードンのボディより打ち上がるのはパワーボールだ。
フィールド上空へと浮かべば擬似太陽として日差しをもたらす。メガリザードンYとしての特性『ひでり』の発動である。
「リザードン、かえんほうしゃ!!」
「ぐるぅぼあああああッ!!」
シュボアアアアアアアッ!!
強くなった日差しによりパワー増量されたリザードンのブレスを前にサーナイトは指示を受けるまでもなくその身を右手側に翻す。
「くッ!」
「10まんボルト!」
バリバリバリバリバリィッ!!
「ドラゴンクローよッ!」
「ばぁう!」
避けながらの放電攻撃をリザードンは両手の爪へドラゴンエネルギーを纏わせ薙ぎ払う。
タイプ相性を活かしたガード戦術を前にカルネはアイリスがしっかり防御も手厚いのだと再認識させられる。
「アイリス!カルネさんのサーナイトを相手に直線的な攻撃は通用しないぞ!」
ベンチから思わずサトシは声を張り上げていた。
相手の攻撃を回避する為の指示というのは余程明瞭かつ素早く反撃に転じることの出来る流れが見えていなければリスキーであり、その回避をしくじれば無条件で相手の連続行動を許す形となってしまう…そんな風潮を論理として提唱したのがチーム<マナーロ>にて監督を務め切ったナンテであり、いわゆる『かわせ!』と言う指示の退廃から、相手の攻撃はどう受け流して反撃に転じるかを創意工夫する前進的防御戦法が主流化しているのが現状のバトル環境だ。
カルネのメガサーナイトの回避挙動がそんな現在のセオリーに逆行していながらも機能しているのはひとえにサーナイトのポケモンとしての性質を知り尽くしたカルネであるが故に無理やり成立させているに過ぎない。
その辺りはアイリスとしても理解はしているだろうが、実際にヒョイヒョイと身軽にかわされながら反撃を合わされ続けていては自身の攻め手が暖簾に腕押しではないか?そんな錯覚が頭をもたげてきてもおかしくはない…。
「サーナイト、サイコキネシス!!」
「ッ!リザードン翔んで!!」
「ばぁう!!」
サーナイトの双眸が妖しい紫色に…サイコパワーを纏うのでアイリスは慌ててリザードンを飛翔させる。
ただ空中を取らせたわけではない。
「さ、んなッ…!」
翼を広げたリザードンの朱色のボディが先に打ち上げたパワーボールをバックに入れたことでサーナイトの視界に強烈な日光を叩き付けたのだ。
が…!
「甘いッ!!」
カルネとしては想定内。
両目で擬似的とは言え太陽光を直視してしまい視野がフラッシュバックしながらもサーナイトは両手から放つサイコパワーでリザードンのボディをキャッチしたのだ。
「もらった!」
カルネは右の握り拳を振るわせる。瞳には獰猛で、好戦的な光が宿っていた。
『あーーーッとメガリザードンY、メガサーナイトのサイコキネシスに捕まったーッ!!』
「ぐるぅ!うぅる!!」
「リザードン!」
「無駄よ!私のメガサーナイトの超能力の前には…!」
リザードンがもがいてみるも一向に拘束が解かれる気配はない。
本場のエスパータイプが放つサイコパワーに捕まってしまえばひとたまりもない…それはバトルの世界において半ば常識として広まっている話だ。
このままリザードンはサーナイトになぶり殺しにされて終わる…観客のほとんどがそんな決着を頭に浮かべるのも無理からぬことであった。
最悪の状況…アイリスにとっては絶好の好機だった。アイリスは、カルネの攻め手を読み当てたのだ。
「日輪の力を借りて、今必殺の…!」
「ぴかぴ!」
「この"熱量"は…!」
冬場の12月にも関わらず汗が滴り落ちる。
熱闘を間近で観続けている精神的なものではない。物理的な熱感が全身より発汗を促す中リザードンが放つとなれば…!
「アデクさんやバンジロウが使う"全身全霊のオーバーヒート"か!!」
「サン!!アタァァァァァック!!!」
「ぐぉるぐあああああッッッ!!!」
カッ!!ゴアアアアアアアッ!!!
パワーボールを間近に圧力を増大させた大熱波がフィールド中を隈なく熱しあげてゆく。
「さなッ…!」
いかにサーナイトがサイコパワーをカルネの精神とリンクさせ先読みのような身のこなしを見せられるといえど流石にフィールド全体を焼き尽くしに来られてはどうしようもなかった。
少なくとも、回避するという一点に関しては。
「ムーンフォースのエネルギーを!」
全身からの滝汗で化粧が流れ落ちるのも構わずカルネは熱波に負けぬ怒号を飛ばす。
「さぁぁぁなぁぁぁ…!!」
オーバーヒートの熱に晒されながらもサーナイトはサイコパワーによる身体拘束を解除。
両手をリザードンへ向け突き出し、フェアリーエネルギーボールを生成してゆく。
熱の奔流に対する壁代わりと、アイリス決死の攻めが緩んだ瞬間に渾身の1球を叩き込む算段だ。
「今よッ!!」
荒れ狂う熱波が弱まる、カルネとサーナイトの視線がリンクする。その視界には急降下する朱影が空を疾っていた。
「ううッ!?」
「大胆、クラァァァァァッシュ!!!!」
「ぐぉるぅあああああああッ!!!!」
アデク直伝の全身全霊オーバーヒートは確かに必殺技としてメガリザードンYと抜群の好相性であった。
『全身全霊のぉぉぉ…オーバーヒートだぁぁぁぁぁッ!!!!!』
『みぃぃぃぃぃよぉぉぉぉぉッッッ!!!!!』
だが自身がリザードンと完成させるより先にサトシがタクトとのランクマッチにおいて独学で放っていたのを見てしまっては、アイリスとしては既存の形に『+α』を加えずにはいられなかった。
そして導き出したのが『特殊攻撃力がダウンしたのなら間髪入れずに物理攻撃を叩き込めばいい』という結論であったのだ。
『オーバーヒート直後のドロップキック!!リザードン急降下だーッ!!』
「さなぁーッ!!」
必殺の一発の直後に足の裏を見舞って来る様にたじろぎながらもサーナイトは生成したムーンフォースを発射する。
なんてことはない。直撃すればよし、避けたならその先に改めて追撃を加えれば済む話なのだから。
ボシュアッ!
「なッ…!?」
フェアリータイプの技ははのおタイプには効果今ひとつ…とはいえ放たれたムーンフォースを一方的に貫通し、突き抜けるのはひとえにリザードンの質量の暴力であった。
「いっけぇぇぇぇぇぇぇッッッ!!!」
「ぐぉるぅるあああああああッッッ!!!」
ズッガァァァァァン!!
両足から飛び込む肉弾がサーナイトを捉える。
2体がそのまま右隣を吹っ飛んでいくのでカルネが振り返れば、最後方のベンチ横フェンスに巨大なクレーターが出来上がっていた。
「ぐるぅ〜…!」
全身全霊から渾身の蹴りをお見舞いしたリザードンはフェンスから離れ、のっしのっしとニュートラルポジションへ向かえば入れ替わりにダンペーがギルガルドを走らせる。
「さ、なぁ…!」
アイリスとしては取り立てて驚くでもなかった。
カルネのエースポケモンとしての意地から立ち上がって来ることなどは想定の範囲内であるのだ。リザードンも戻る最中に振り返り、臨戦態勢を取る。
全身から湯気が立ち昇り、明らかにパワーダウンしていてなおファイティングポーズを崩さず構えるリザードンへサーナイトは右手からエネルギーを放とうとして、
「な、がッ…!」
そこで意識を手放した。エネルギーはあえなく霧散し、うつ伏せに倒れ込むサーナイトのメガシンカが解除される。
彼女の容態を確認したダンペーは、本日最後のジャッジを宣告するのだった。
「サーナイト、戦闘不能!リザードンの勝ち!!よって勝者、チャンピオンアイリス!!」
ウッヒョアアアアアアアッ!!
『決着ゥゥゥーーーッ!!チャンピオンアイリス、メガシンカからの二段構えの必殺技でメガサーナイトを撃破!!セミファイナル進出決定ですッ!!』
「ッしゃあーーーッッッ!!」
会心の勝利にアイリスは全身を振るわせ、大きく飛び跳ねた。
シロナに続き憧れのカルネからも勝利して見せ、喜びを盛大に爆発させたのだ。
「お疲れ様、サーナイト。」
ボールに戻してからカルネは最後方フェンスのクレーターからサーナイトがダウンしたのは、肉体的なダメージよりかは思考へのダメージの方だと把握した。オーバーヒートによる熱波からメガトンキックに繋げられ、茹だるような熱とフェンスに叩きつける後頭部へのショックで意識を手放さざるを得なかったのだ。
ことサイコパワーを扱うエスパータイプにとって頭の中を揺さぶられるのは死活問題である。
「やられたわ。完全に私の負け。」
センターサークルにて遅れて合流するカルネにアイリスは右手を差し出す。
「カルネさん。対戦ありがとうございました。」
カルネは快く握手に応じる。
「こちらこそ。また思いっきりやり合いましょ。今度は私が勝つからね?…"アイリス"。」
「…!カルネさん…!」
それまでカルネはアイリスのことを"アイリスちゃん"とちゃん付けで呼んでいた。
カルネは、真に立派なチャンピオンとなったことをきちんとアイリスに伝えたのだ。
「さて皆さん!たった今をもちましてマスターズトーナメントはベスト4が決定!12月18日に行われるセミファイナルを戦うは
第1試合
チャンピオン サトシvsジムリーダー シンジ
第2試合
チャンピオン ダンデvsチャンピオン アイリス
となります!!ワタルさん!ミクリさん!本日はどうもありがとうございました!!」
ベスト4の試合日程と対戦カードが映し出される電光掲示板を見上げてからサトシはベンチへと向き直る。
そこには既にシンジの姿はなかった。用が済めば長居は無用と早々に立ち去るのも昔と変わっていないのだろう。
「ぴかぴ…。」
ピカチュウが左肩に飛び乗れば、サトシの左手は無意識下に伸び、その頭を撫でていた。
PWCSマスターズトーナメント 1回戦
カルネvsアイリス
6C3Dルール
カルネ アイリス
アマルルガ アーケオス
→ドリュウズ
→ルチャブル
ルチャブル● ドリュウズ◯
→ヌメルゴン
ヌメルゴン● ヌメルゴン●
サーナイト◯ カイリュー●
サーナイト● リザードン◯
(メガシンカ使用) (メガシンカ使用)
勝者 アイリス