3 years later〜虹の向こうに〜   作:nami73

275 / 302
 後半戦となり、サトシは再度ピカチュウを繰り出した。
 そこにシンジはラグラージをメガシンカさせてぶつけて強烈な一発を叩き込む。
 互いにポケモンチェンジしてから始まるワルビアルとドダイトスの一戦は、ワルビアルがあなをほるからの奇襲を敢行したのだった。


最終章!マスターズトーナメント セミファイナル サトシvsシンジ⑥

「あーーーッと!ドダイトスのギガドレインをやり過ごしてワルビアルのつばめがえしが炸裂ーッ!!効果は抜群だーッ!!」

 

「なるほど…地中へ潜ったワルビアルはそこでストーンエッジを操作して作り上げた岩弾の塊を即席で作成、待ち構えるドダイトスに対して囮の役割として先立って地中より打ち上げ、相手が食い付いてから本命の一撃を叩き込んだ…と。」

 

「クーリングタイム中のフィールド整備であなをほるによって掘られた地中ルートも埋め立てられてはいた…それでも一度掘り進められたルートを掘り返すのも、仕掛けの用意もわけないってことだね。」

 

 まんまとドダイトスに一撃入れて見せたサトシとワルビアルの策を、地中モニターの映像が電光掲示板に映し出される前にナンテとポプラは言い当ててしまう。

 2人にとって問題はすでに『つばめがえしをぶち当てた後』へと移っていた。

 

 

 

「手応えアリ!」

 

「…フッ!」

 

 握り拳を作るサトシにシンジは口角を吊り上げる。そこに『一本取られた』などという悔しさの感情は微塵もない。

 刹那、サトシの背筋に悟りが寒気として走った。

 

「このくらいは読んでいたさ。張り巡らせていたギガドレインを掻い潜り、一撃入れてくるくらいはな…!」

 

ガガガガガァッ!!

 

「ぴかぁッ!?」

 

 唸りを上げる大地にたまらずピカチュウは尻餅をつく。地面から生え茂る無数のつるがワルビアルを襲っていた。

 

「わッびッ!?」

 

「ワルビアル!!」

 

 ドダイトスに肉薄していたのがまずかった。

 瞬く間にワルビアルの四肢がつるに絡め取られて空中へ押し上げられる様は、まさしくシロナ戦の幕切れをデジャヴさせられた。

 

「お前ほどの相手とやり合うのに元より無傷の勝利など求めてはいない!やれドダイトス、ハードプラント!!」

 

「どぉぉぉぉぉだぁぁぁぁぁッ!!」

 

ギュオオオ…グッッッシャアアアアアッ!!

 

 数多のつるがワルビアルへ飛び掛かるように一斉に絡み付き、その全身を包み込み強烈な圧力にて締め上げる。

 程なくつるが地中へ引っ込んでいけば、背中から落着して倒れ込むワルビアルの姿だけが残った。

 ダンペー審判が駆け寄れば奇跡的に無事だったサングラスがズレ、目を回しているのが確認できた…。

 

「ワルビアル、戦闘不能!ドダイトスの勝ち!!」

 

 

 

サトシ、残りポケモン3体。

 

シンジ、残りポケモン3体。

 

 

 

ウホォオオオオオオッ!!

 

「残りポケモンが並んだ!こりゃあ、もしかしたらもしかするぞ!!」

 

 ここまでの試合運びに置いて、観客の幾らかに『シンジが勝つのでは?』というような予感が浮かぶのは無理もないことだった。現に初戦でサトシを相手と同様に格上であるチャンピオンシロナを破ってきたのだから。

 そのサトシにしたって、3年前は新興リーグのアローラチャンピオンというほぼ無名と変わらない扱いからダイゴやシロナにダンデといった先輩チャンピオン相手に勝利を収めて優勝まで登り詰めた実績がある。

 人の心理とは、目の前のサクセスストーリーを過去のそれに投影させたがるものなのだ。

 

 

 

「ジムリーダーシンジ!チャンピオンシロナ戦同様またもドダイトスで豪快なKO劇を見せてくれました!!ワルビアルがダウンしたことで残りポケモンがイーブンとなっております!!」

 

「高い防御力で相手の攻撃を受け止め、威力の高い技で仕留めるパワー戦法…まさしくジムリーダーシンジの流儀に最もマッチしたポケモンであるが故のパフォーマンスですね。」

 

「ここで押し切られちゃあワールドチャンピオンの名折れさね。」

 

 それまで主にシンジに向いていた空色の瞳が今度はサトシをジッと見る。

 老婆が若い男に目移りしている、などと意識にすら出してみれば後が怖い…それがジムリーダーポプラであり、誰がなんと言おうとも16歳なのだ。

 

 

 

「戻れワルビアル!ゆっくり休んでくれ。」

 

 ワルビアルをボールに戻すサトシはドダイトスへと視線をやる。

 耐えられこそしたがつばめがえしで与えたダメージは決して小さくないと見えた。

 

「頼むぜウオノラゴン!いけーッ!!」

 

「うぉがぁ〜ッ!!」

 

 魚の形をした頭から東洋の竜の形をした体へと途中からガラリとテイストの変わる異形こそを強みとしたかせきポケモンウオノラゴンがフィールドへと降り立つ。

 

『"古代ガラルの覇者"ウオノラゴン見参!!ここに来てチャンピオンサトシにマスターズトーナメント優勝をもたらした"栄光の6体(グロリアス・シックス)"の一角がピカチュウに続いて登場です!!』

 

「どぅ…!」

 

「ぴかぴ!」

 

「あぁ!!いけェ!ウオノラゴン!!」

 

 ドダイトスはハードプラントの反動により動きが取れない。それはまさしく絶好のチャンスと言えた。

 

「うぉぬらぁぁぁぁぁ!!」

 

 大きな頭を前傾にしてのっしのっしと爆走するウオノラゴンはその自慢の顎を開き、ドダイトスに襲いかかる。

 

「こおりのキバ!!」

 

ガッブアッ!!

 

「どぅだぁッ…!!」

 

 ウオノラゴンの冷気が込められた牙がドダイトスの背甲の樹に突き刺されば、そこから凍結が始まってゆく。

 ダメージに呻くドダイトスだが、その目はすぐにギラつきを取り戻す。

 

「ギガドレイン!!」

 

シュルルルゥ!!

 

「うあッが!?」

 

 再度伸ばした『山のつる』がウオノラゴンを吊し上げてゆく。そのまま締め上げ、体力を吸い尽くす算段だ。

 

 

 

「ううむ、なんとタフなドダイトスだ…ワルビアルのつばめがえしからウオノラゴンのこおりのキバと、続けざまに効果抜群の技を受けてなお耐え抜くとは。ジムリーダーシンジが反動ケアをせず居座らせたのもこのタフさを信じたからでしょうね。」

 

「だが、その辺はチャンピオンの坊やも読んでたみたいだね。」

 

 ポプラの言にナンテがサトシに視線をやれば、その右手には紫色のオーブが握られていた。

 

 

 

「そう来ると思ってたぜ!」

 

 テラスタルオーブを起動させ、躍動するエネルギーに対し微動だにすることなくサトシは輝きの中でも映える白い歯を見せる。

 

「見せてやろうぜウオノラゴン!俺たちの輝きを!!テラスタルだーッ!!」

 

 そのままオーブをウオノラゴンめがけ放り投げれば、クリスタルに包まれた2.3mのボディが輝き、その魚頭には竜の頭と羽をあしらったテラスタルジュエルが姿を見せる。

 

『あーーーッと!ここでチャンピオンサトシが切り札を使用!ウオノラゴンでテラスタル発動です!!』

 

「うぉらがぁぁぁぁぁッ!!」

 

 力の漲り具合に吼えるウオノラゴン。するとギガドレインを経由してドダイトスへと還元される体力、生命エネルギーの量がガクッと低下したではないか。

 

「ドラゴンテラスでみずタイプを打ち消したか…!」

 

「いけウオノラゴン!!ドラゴンダイブ!!」

 

「うおぁぁぁぁい!!」

 

 テラスタルジュエルが輝きを増し、増幅されたドラゴンエネルギーの発露がギガドレインを跳ね除け、ウオノラゴンは頭から急降下。

 

チュドオオオオオン!!

 

 全身に纏う竜の闘気が直撃すればドダイトスを爆心地としてエネルギー爆発が発生。

 

「うぉが!」

 

 2mを越す巨体ながら軽やかなバックジャンプを披露してニュートラルポジションへ戻るウオノラゴン。

 対してモヤが晴れた先には力尽きたドダイトスが自重を支えきれず四肢をだらりと伸ばし崩れ落ちていた。

 

「ドダイトス、戦闘不能!ウオノラゴンの勝ち!!」

 

 

 

サトシ、残りポケモン3体。

 

シンジ、残りポケモン2体。

 

 

 

ドワオオオオオオオッ!!

 

「ウオノラゴン!テラスタルパワーを存分に活かし強敵ドダイトスを撃破!!チャンピオンサトシ、並ばれてまたすぐに突き放しました!!」

 

「本来みず、ドラゴンタイプのウオノラゴンにとってくさタイプの技は効果が抜群であるタイプと今一つであるタイプの混合、両エネルギーの作用により結果的には相性の優劣が発生しない状態…即ち等倍でのダメージになります。それが、ドラゴンのテラスタイプを表面化させたことによりみずタイプ分の相性を無視することが出来たのです。」

 

「今度はジムリーダーの坊やが誘い込まれたわけだね。ドダイトスの消耗からギガドレインによる回復はせざるを得なかった。いいね。冷静に戦えてるじゃあないか。」

 

 ここにきてナンテは、サトシが自分のイマイチ乗り切れない展開においても勝利へ向けて一手一手を打ち重ねて行ける戦略的な粘り強さを会得しつつあることに気付く。

 『最強のライバル』であるシンジを相手に戦い続けているうちにサトシ自身も試合の中で成長している…そう感じ取っていた。

 

 

 

 ファーストポケモンをボールに戻すシンジの険しい表情は知らぬものからすれば不利な戦況に苦虫を噛み潰したように見える。

 しかし、身内からすればそれはそれは自然体かつ目の前の試合に全神経を振り向けた清々しい姿であった。

 レイジからしてもこうまで弟がバトルに熱中しているのを見るのは久しぶりであった。テレビ越しに観ていたシロナとの試合も白熱はしていたが、やはりサトシを相手となれば話は別なのだろう。

 

 

 

「もう一度だ、ラグラージ!!」

 

「らあああああじ!!」

 

『ジムリーダーシンジ、メガラグラージを再度投入!!ここにきてテラスタルvsメガシンカのバトル勃発!!ドラゴンテラスのウオノラゴンとメガラグラージ、一体どちらに軍配が上がるのか!?』

 

「ウオノラゴン!エラがみ!!」

 

「うおがあああ!!」

 

 下顎にみずエネルギーを纏わせながらウオノラゴンはラグラージめがけ一目散に走り出す。

 巨体に似合わぬそのスピードに、シンジはいつしか止んでいた雨を再度降らせるあまごいを初手に置くのは冗長だと察した。

 この辺りの思い切りの良さも非凡の証である。

 

「れいとうパンチ!!」

 

「らじらじらじらじらじ!!」

 

 即座に凍結拳のラッシュにてラグラージはカウンターを見舞う。

 ドラゴン単タイプとなっているウオノラゴンにこおり技は効果抜群という算段だ。が…。

 

ガリィ!ガガガガ、ガリィッ!!

 

「ッ…!?」

 

『あーーーッとウオノラゴン、エラがみでメガラグラージの氷のグローブを瞬く間に噛み砕くーッ!!』

 

 

 

「それだけじゃない!」

 

 ナンテが向く視線の先のウオノラゴン、その胴体の3対のトゲがテラスタルの輝きとは別に光り出している!

 

 

 

「うぁぁぁぁらッ!!」

 

 ウオノラゴンがトゲを勢いよく突き立てんとすれば、ラグラージは剛腕でガッチリとその刺突を防ぐ。

 

「エラがみ!!」

 

 そこにすかさずサトシは追撃を入れたがシンジは冷静であった。

 

「どろばくだん!!」

 

「なにッ!?」

 

「らあじぁッ!!」

 

ボパン!ボパン!ボパン!

 

 ラグラージが口から生成するじめんエネルギーの塊をウオノラゴンの顔面めがけ至近距離で破裂させる。

 その勢いに押されウオノラゴンは後退りさせられてしまう。

 

「うぅのぉ…!」

 

「大丈夫かウオノラゴン!?」

 

「あまごい!!」

 

「らじあああああッ!!」

 

ゴオオオッ!

 

 ウオノラゴンを後退させたチャンスをシンジは見逃さない。

 有利に立ち回る盤面の為に再度ラグラージは雨雲を呼び寄せる。程なくして再びフィールドに雨が降り始めた…。

 

 

 




 『ウカッツ博士』
 23歳。化石の復元に携わる科学者で、同じくガサッツ博士とコンビを組んでいる。
 サトシのウオノラゴンとの出会いは彼女との関わりがなければ起きなかった奇跡であるゆえに非凡なコンビなのは間違いない。
 彼女たちの迂闊でガサツなところに目を瞑れば、だが。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。