3 years later〜虹の向こうに〜   作:nami73

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 PWCSマスターズトーナメント決勝戦がついに始まる。
 必勝を期したダンデはマジコスを身に纏い、サトシは真の頂を見据える。
 1000年に一度のミレニアム決戦、その先発はピカチュウとドラパルトだ。


最終章!マスターズトーナメント ファイナル サトシvsダンデ①

「ドラパルト!ドラゴンアロー発射だ!!」

 

「めぎゃあい!!」

 

「ピカチュウ!10まんボルト!!」

 

「ぴぃぃぃ、かぁぁぁ…ちゅうううううッ!!」

 

バチチチチチィィィッ!!

 

 ドラパルトが狙いを定め、子機を発射するより前にピカチュウの電撃が突き刺さるのはいい。

 ダンデからすれば所詮は効果は今ひとつの1発に過ぎないのだ。が…。

 

「ッ…!?」

 

 ドラメシヤを展開さえ出来れば3方向を常に囲みながらのオールレンジ攻撃でピカチュウ自慢のスピードを殺せる…そう踏んでの強硬策があっという間にご破産となった事実にダンデは驚愕で目を見開いた。

 待機場所の突起から飛び出すことなく2体のドラメシヤは、10まんボルトを受けダウンしていたのだから。

 それになによりドラパルトが受けたダメージも想定より遥かに大きい…。

 

「突っ込めピカチュウ!!」

 

 サトシの指示が飛ぶのが皆の聴覚に入る頃には既にピカチュウは跳躍。ドラパルトを眼下に置き飛び掛かっていた。

 でんこうせっかのスピードを応用した瞬間加速だ。その速攻はダンデに熟考を許さない。

 

「く、シャドーボール!!」

 

「めぇぎゃあばッ!!」

 

 子機が使えない以上本体のみで戦うよりない。ドラパルトは口を開け、ゴーストエネルギーの暗球を生成しピカチュウめがけ発射する。

 その時には既にピカチュウの尻尾にでんきエネルギーが蓄積されていた。

 

「エレキネット!!」

 

「ぴっか!」

 

 右から左へ横一閃に振り抜く尻尾より放たれるでんきエネルギーはすぐさま蜘蛛の巣状に広がり、先に放たれたシャドーボールを包み込んで弾速を殺してしまう。

 その脇を掻い潜りピカチュウは上から下への縦回転に入りながらドラパルトを接近戦の間合いに捉えた。

 

「アイアンテールッ!!」

 

「ぴっかぁ!!」

 

「ドラゴンダイブで迎え撃て!!」

 

「めぁぎああ!!」

 

ガッキィィィン!!

 

 ピカチュウが回転の勢いを加えながら硬質化させた尻尾を振り下ろすところにドラパルトは全身から紺青のドラゴンエネルギーを発して迎え打つ。

 暫しの激突、技と技の鍔迫り合い…

 

「ぴっかぁぁぁッ!!」

 

ズゴアアアッ!!

 

 均衡はすぐに崩れる。

 ピカチュウがアイアンテールを振り抜き、ドラパルトの全身がフィールドの地面に叩き付けられ、思い切りめり込んだのだ。

 

「く…!」

 

 着地の際に尻尾をバネ代わりにしてニュートラルポジションまで跳ねて下がるのは、サトシのピカチュウ自慢の身のこなしを存分にアピールしている。

 ギルガルドを走らせるダンペーは地面にめり込んだまま沈黙しているドラパルトが、子機のドラメシヤともども目を回しているのを確認した。

 

「ドラパルト、戦闘不能!ピカチュウの勝ち!!」

 

 

 

サトシ、残りポケモン6体。

 

ダンデ、残りポケモン5体。

 

 

 

ウオアアアアアッ!!

 

『ドラパルト轟沈ーーーッ!!チャンピオンサトシがまずは1ダウンを取りました!!エースのピカチュウによる目の覚めるような速攻が決まったッッッ!!』

 

 実際、ドラパルトが戦闘不能まで追い込まれるのに1分とかからなかった。ジッキョーの語る通りの轟沈劇である。

 観客席からの声援が圧を増す中、ポケモンバトルを知る者たちは皆一様にサトシのピカチュウの脅威性を再認識していた。

 

『すばしっこくてパワーがあり、なによりしぶとい。』

 

 赤いほっぺに黄色いシャツ、ギザギザ模様のペット向きとされるのが一般的なフォルムの小さいねずみポケモンが、サトシのトレーナーのとしての在り方を最も鮮烈に体現するエースであるというのはまさに『希望』だった。

 どんなポケモンだろうと長所と短所を見極めてしっかり鍛え上げ、トレーナーとの結びつきを強めれば大舞台でも活躍できるという何よりの証左なのだから。

 

「ピカチュウ!戻れ!!」

 

 セミファイナルで終始マークされ続け、消化不良であった分をスッキリできたピカチュウはサトシの指示に即応。四つ足で走り主人の待つトレーナーサークルへ戻ってゆく。

 3年前に戦った決勝とはまるで正反対の立ち上がりだとダンデは自嘲する。エースバーンの特性『リベロ』を活用して電撃を封殺しにかかったが、2度目が通じるとも思えないとの判断からドラパルトに先発を託していたのが通用しなかったのだから。

 

「ゆけッ!エースバーン!!」

 

「んばぁぁぁッ!!」

 

「ルカリオ!いッけーッ!!」

 

「ばうあッ!!」

 

 ダンデがそのエースバーンに合わせてサトシが繰り出すのはルカリオ。リサーチフェロー時代からの精鋭で、ピカチュウとともに主人にバトル世界一の称号をもたらした戦友だ。

 

 

 

「チャンピオンダンデの2番手はエースバーン!チャンピオンサトシはピカチュウからルカリオへとポケモンチェンジ!!"栄光の6体(グロリアス・シックス)"によるワールドチャンピオン・ホットラインで魅せてきます!!」

 

「タイプ相性としてはかくとう、はがねのルカリオに対してエースバーンはほのおタイプ…セミファイナルで出てきたのと同じ個体ならば特性はリベロ。事実上4つのタイプを自在に使い分けることが出来るのでチャンピオンサトシ側からしても厄介な相手ですよ。」

 

「セオリーを覆す戦い方は、サトシちんもダンデちんも得意分野なのねん。」

 

 故にこの対面はいわば化かし合い…どちらが相手の虚を突けるかが肝だとマスタードは付け加えた。

 

 

 

「エースバーン!かえんボール!!」

 

「んばにぃあらッ!!」

 

 足元の小石を蹴り上げ、思い切りルカリオめがけてシュートする。

 ほのおエネルギーと空気摩擦の相乗効果で小石は強烈な燃える剛球へと変貌した。

 

「はどうだんだッ!!」

 

「ばぁぁぁ…うばッ!!」

 

チュッドン!!

 

 飛んでくる火の玉シュートにサトシは焦ることはない。

 ルカリオも両掌の間に青白く光る文字通り波導の弾丸を生成しては相討ちの形でかえんボールへとぶつけていき、その身はエネルギー爆発のモヤの中へと姿を消す。

 

バババババッ!!

 

『あーーーッと!かえんボールを相殺したルカリオがなんと!無数に飛び出してエースバーンに襲いかかったーーーッ!!』

 

「かげぶんしんですね。」

 

「かげぶんしんねん。」

 

「かげぶんしんだね。」

 

 放送席の解説とゲストは三者三様に意見を合わせる。エースバーンに動揺がないのも見えていた。

 

 

 

「ねっさのだいち!!」

 

「ばにぁぁぁ〜!!」

 

 エースバーンの頭部中央はエネルギー制御の肝となる器官であり、そこで技の出力を管理している。

 その真っ赤な中央部が土色に変色すれば、周囲の砂がエースバーンの放つじめんエネルギーに吸い寄せられてゆく。

 

「んばにんががががが!!」

 

 熱を持った砂球に対してエースバーンは左足を瞬く間に蹴り抜いた。

 さながらマシンガンのように打ち込まれたキックにより砂球は無数に弾け、飛び掛かってきていた無数のルカリオ…その悉くを捉え消失させていった。

 

「(手応えなし…ッ…!)」

 

 ねっさのだいちでかげぶんしんを一掃したエースバーンの正面、というかニュートラルポジションからルカリオ本体は一歩たりとも動いてはいなかった。

 厳密に言うならば、動けなかったが正しいか。

 

ボワアアア…!!

 

「ばぁう…!!」

 

 両手を空に掲げ、はどうを練り上げることに集中していたからだ。

 

 

 

「巨大はどうだん!?あんなに速く作れるようになってたのか!?」

 

「かげぶんしんは囮だったってことね。」

 

 ホップはマスターズトーナメントを通してサトシと知り合った身だ。兄を除けば知己としてサトシを推している。

 その時のバトルは何度も何度も見返してきていたが故に当時サトシの主力として固定メンバーに入っていたルカリオのパフォーマンスも完全に把握してあった。

 その記憶よりも遥かに巨大はどうだんの生成が速いことに驚愕を隠せなかった。

 

 

 

「ロータの町のオルドラン城…だっけ?サトシが波導の修行をしてたってとこ。」

 

「あぁ。アイリーン皇女が腕利きの波導使いを講師につけてくれたらしい。」

 

 習得している段階としては未だ初歩のところとはいえ、全くの無というレベルから比べれば天地の差であるとタケシは思う。

 太古の昔に勇名を轟かせた勇者アーロンと、その従者たるルカリオの魂の救済に一役買った『世界のはじまりの樹』を巡る冒険が今に繋がっているとなれば、それこそカスミからすればサトシの成長はカンナの訓示の通りであるといえた。

 もっとも、当時のサトシとしては幻のポケモンであるミュウに連れ去られたピカチュウを取り戻すために必死でしかなく、そんなところを強く意識してはいなかったが。

 ともあれ、波導使いとしての目覚めがルカリオを扱うトレーナーとしての習熟度向上に繋がっているのもまた事実だった。

 

 

 

「いけェ!巨大はどうだん!!」

 

「ばうううッ!!」

 

 かげぶんしんは正しく囮、ルカリオの何倍もの大きさの波導の塊こそが本命であった。

 リベロによるテクニカルなタイプ変化など関係なく、一撃でエースバーンを仕留めるための方策だ。

 

「メガシンカすらせずにコレ、か。」

 

 分かってはいたことだが改めて3年前のサトシたちとは別次元であるとダンデは思い知らされる。

 

「エースバーン!アレをやるぞ!」

 

「ばぁぁぁにぁ!!」

 

 土色に変わっていた頭部が元の赤へと戻ってゆく。本来のほのおタイプに切り替えたエースバーンは両手をクロスする。

 

ボウアアアッ!!

 

 すると、その背後に屈強なる灼熱の人影が現出したではないか。

 

 

 

「エースバーン、ここにきて凄まじいほのおエネルギーを放出!!こ、これはーーーッ!?」

 

「ダーリン、なにアレ!?」

 

「ほのおエネルギーを集約させた言うなれば"マジン"か…!」

 

「チャンピオンダンデのエースバーンは隠れ特性リベロにより通常の個体よりもタイプエネルギーの制御に長けています。その抜群のエネルギーコントロール技術で以てすればあれくらいの芸当は可能かと。」

 

 3年前の時点では不可能な領域である。タイプエネルギーの流動活用を会得したダンデゆえの荒業だ。

 

 

 

 巨大はどうだんを前にエースバーンはほのおエネルギーの"マジン"の両掌から回転しながら跳躍。

 はどうだん越しのルカリオを眼下に置き、回転による全身の運動エネルギーを左足一点に集中させ、振り抜く!

 

「くらえ!!かえんボール・爆熱ストーム!!!」

 

「ばぁぁぁんにゃあああああ!!!」

 

「構うなルカリオ!!かえんボールごとエースバーンにぶっつけろ!!!」

 

「ばぁぁぁうあああああ!!!」

 

 エースバーンが渾身の必殺シュートを撃ち下ろせば、ルカリオもまた両手を突き出し巨大はどうだんを解き放つ。

 両者の大技が空中で衝突する、その余波だけでシュートシティ全体が震えていた。

 

ドオオオオオオオッ!!!

 

 轟音と共にぶつかり合う技のエネルギー同士がスパークする。

 

「あらぁ〜!?」

 

 巨大はどうだんと爆熱ストームの激突は強烈な衝撃波としてバリアフィールドを透過して客席を襲った。

 観客のいくらかがまるで花弁のように外側に開くスタジアムの天井へと舞い上げられていった。

 

 

 

「予想はしてたがこりゃあ…思ってた以上に荒れるな…。」

 

 ルカリオもエースバーンもまだ次鋒に過ぎない。

 その激突からして客席に被害が及ぶでは、ここから先も規模の大きな戦いになるだろう…そう真面目に呟くタケシの鼻の下は弛緩していた。

 

「いや〜ん!まいっちんぐ〜!!」

 

 客席の一角にて、爆風によりタイトスカートを押さえている綺麗なお姉さんが視界に入ったからだ。

 引き連れている子供たちの引率のようだが詳しい事情は分からない…。

 

「はいはい。そっちじゃあなくて試合を見ましょうね〜。」

 

「いだだだだ!?」

 

 呆れながらのカスミはそんなタケシの右耳を引っ張って試合へと、現実へと引き戻す。

 

「うげぁ!?し、しびれびれ〜…!」

 

 追い討ちとばかりにボールから勝手に出てきたグレッグルがタケシの左脇腹にどくづきを突き刺す。

 これも3年前からお決まりのパターンであった。

 

「けッ!」

 

 

 




 『タケシのナンパ癖』
 綺麗なお姉さんに目がないタケシだが、その女性観としては実家のニビジムを経営する傍らで幼き弟妹たちの面倒を見てきた半生から、女性に求めるのは弟妹たちを受け入れてくれるかどうかで、かなりシビアである。
 なお、生活能力皆無なチャンピオンシロナにも構わずアタックしているため見た目も大いに加点基準であるようだ。
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