3 years later〜虹の向こうに〜   作:nami73

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 ルカリオとエースバーンは互いの必殺技をぶつけ合い、壮絶な相討ちに終わった。
 続けてぶつかるはゲッコウガとゴリランダー。
 ゴリランダーのド迫力パワーファイトを前に怯むことなくゲッコウガがこれを下し、試合はクーリングタイムに突入した。


最終章!マスターズトーナメント ファイナル サトシvsダンデ③

「ポケモン歴2000年を締め括るチャンピオン対決となったPWCSマスターズトーナメントファイナルマッチは、ただいま10分間のクーリングタイムに入っております!残りポケモン数としましてはチャンピオンサトシが5体、チャンピオンダンデが3体という形で前半戦を折り返しという形になりました。ナンテさん、マスタードご夫妻はここまで見てどうでしょうか?この試合は?」

 

「そうですね。やはりチャンピオンサトシの3年前と比べての大幅な成長がまず目を引きますね。きっとこの日に向けてずっと準備してきたのでしょう。真の世界一になるために。」

 

「この日に向けて、と言うならばダンデも同じであろう。残りポケモンにこそ差はつけられておるが要所要所で彼奴らしい技巧を見せつけておるからな。後半の成り行き次第では逆転もじゅうぶんあり得ようぞ。」

 

 愛妻ミツバの肩を抱きながらカカカと上機嫌に笑うマスタードの言にナンテは確かに、と首肯する。

 サトシの試合記録の中には序盤こそペースを掴むも終盤に向かうにつれて相手にペースを掴み返され、ジリ貧になってからの惜敗というパターンが目立っていた。

 要するにデータ上だと長期戦に関してはそれほど高い適性を持ち合わせていないのが分かる。

 それと比べればダンデのルーキー時代のデータは全く逆で、むしろ長期戦に強いトレーナーとして鳴らしてきている。

 正直なところ、2体差ではセーフティリードとはいえないのだ。

 

 

 

「もっと、ないのか?」

 

「あ、あぁ!あるぞ!」

 

 ベンチに腰掛けたダンデはタオルを頭に被りスポーツドリンクのお代わりを要求、ホップがすぐさま新しいペットボトルをクーラーボックスから手渡した。

 固形物は口にしていない。とにかく喉の渇きを潤すのが優先であった。

 

「ダンデくん…。」

 

 その様子を見つめながら呟くソニアは、ダンデが事前に祖母とコンタクトを取り何をしていたかも聞いていた。幼馴染を呼ぶ声にはそこに対しての問いかけも含んでいる。

 ダンデとて付き合いの長いソニアの意図が掴めないではなかった。

 

「多分、出すことになるだろうな…それくらい強くなってるよ、サトシは。」

 

 ダンデに対し、ソニアが口を開くことはない。それが野暮だと知っているからだ。

 ホップは、この2人のやり取りを兄が秘密裏に開発していた新必殺技の類だと勝手に解釈し、希望を見出していた。

 

 

 

 言葉少なく、沈痛な空気に支配されていたダンデ側ベンチとは対照的にサトシ側ベンチは自然体であった。

 サトシは水分はもちろん、おにぎりでエネルギーもバッチリ補給している。後半戦も抜かりはなしだ。

 

「かなりいい調子なんじゃあないか?」

 

「俺もそう思う。」

 

 タケシにも朗らかに言葉を返す。

 タオルドライ越しに頭のツボを押してマッサージするカスミもその中に増長の色は見えないので諫める目的で過度に指圧を強めはしない。

 

「カスミ、タケシ…ありがとうな。俺、こんな充実した感覚で試合出来るなんて久々だぜ。」

 

「ホント、感謝しなさいよね。あたしたちだってたまたま暇だっただけなんだから。」

 

「俺たちとお前の仲だ。カスミが言う通り個人的な都合はあるが、何かあるなら手を貸すのは当たり前さ。」

 

 パッ、とカスミがタオルを離せば手に持ってた帽子をサトシは被り直す。

 始まりの3人の和気藹々とした空気を見る中ピカチュウが気配に振り返れば、ちょうどドローンロトムが飛んできていた。

 

 

 

「「クーリングタイムシュウリョウ。リョウセンシュ、トレーナーサークルヘ。」」

 

 

 

「よし!!!いくか!!!」

 

 覇気を改めて滾らせながらダンデはベンチを出る。力の差を痛感すれども本質的には闘争心の塊なバトルマニアなのだ。

 

 

 

「いくぞピカチュウ!!!」

 

「ぴっかぁ!!!」

 

 サトシとピカチュウも元気よくベンチを飛び出す。

 カスミとタケシだけではない。

 

ケンジ…

 

ハルカ…マサト…

 

ヒカリ…

 

アイリス…デント…

 

シトロン…ユリーカ…セレナ…

 

カキ…マーマネ…スイレン…マオ…リーリエ…

 

ゴウ…コハル…

 

オモダカ…

 

 ここまでの冒険の中で出会って来た人やポケモンたち、それら全てへの感謝を胸に真の世界一を手にする…そうサトシは決意を固め直した。

 バトルマニアどもが今また、トレーナーサークルに入ればもはや誰も止められはしない。

 決着がつくまでフルバトルは終わらないのだ。

 

『さぁクーリングタイムを終え、これより後半戦に入ります!死闘を制し、"ミレニアム・ワールドチャンピオン"となるはチャンピオンサトシか!?チャンピオンダンデか!?』

 

「このPWCSではチャンピオン以外は皆無冠!!それは俺もまた然り!」

 

 ダンデはビシ!とボールを握る右手の人差し指でサトシを指す。

 

「いくぜワールドチャンピオン!男ダンデ、ここからが本領発揮だ!!一世一代の大勝負を見せてやるぜ!!」

 

「俺だって負けない!ダンデさんに勝って俺が正真正銘!天下無敵の世界チャンピオンになってやるんだ!!」

 

「ぴっ、ぴかちゅう!!」

 

ウオオオオオオオッ!!

 

 ダンデのマイクパフォーマンスにサトシも真正面から受けて立つ。

 サトシが目指すのはあくまでポケモンマスターであり、バトル世界一という称号の真偽などは本質的には行き掛けの駄賃でしかない。

 だが、それと真剣勝負に燃える気持ちは別なのだ。2人の応酬に観客も総立ちだ。

 

「これより試合を再開します!両者ポケモンを!!」

 

「いっけー!ジュカイン!!キミに決めたッ!!」

 

「じぃッかぁッ!!」

 

「頼むぜ!インテレオン!!」

 

「うぉれぉあッ…!」

 

シュババ!!

 

 ボールから飛び出すジュカインとインテレオンが即座に姿を消せば、バシュ、バシュ、とフィールドのあちこちで音だけがする。

 上空を徘徊するドローンロトムによりすぐさまスローモーション映像が電光掲示板のモニターに映し出されれば、そこには早速目にも止まらぬ高速戦に突入する2体の姿があった。

 

「突っ込めジュカイン!」

 

「させるなインテレオン!」

 

 ジュカインが腕の葉を構えて踏み込めばインテレオンは両手の人差し指から水流弾を噴射。

 葉を発光させたリーフブレードでねらいうちを掻い潜るジュカインだが、退き撃ちに徹するインテレオンとの距離は付かず離れずで間合いに飛び込むには至らない。

 

 

 

「ドローンロトムのスローモーション映像でようやく視認できるほどの超スピード同士のぶつかり合い!ジュカインは距離を詰めにかかり、インテレオンは逆に距離を空けにかかるので必死です!!」

 

「ジュカインがインテレオンを捕まえるか、インテレオンが逃げ切るか…目まぐるしいスピードで騙されがちですが勝負どころとしましてはシンプルですね。」

 

 所狭しとフィールド中飛び回る2体の姿をナンテもマスタードはもちろん、ミツバも見失うことなく肉眼で捉え続けている。

 攻防の最中、ジュカインがインテレオンの背後を取る…!

 

 

 

「よっし!!」

 

 カスミは快哉した。みずポケモン愛好家としてダンデのインテレオンに思うところがないではないがサトシ側の人間として領分はわきまえていた。

 

 

 

「じゅかあッ!」

 

 フィールドはダンデ側センターサークル付近、インテレオンがサトシと向き合う形でジュカインは右腕の葉刃を大きく振りかぶりながら跳躍。

 完全に獲物を捉えたという確信の鳴き声であった。

 

「アクアジェット!」

 

 そんなインテレオンの足元から水が湧く。

 両手の指同様に備えた両足先の噴出機構からの水流が全身を包めば、さながら渦潮のように勢いを放ちジュカインを弾き飛ばした。

 

「ぴかぁ!?」

 

「カウンターシールドかッ!」

 

 道理であっさりと接近を許したものだ、そう思いながらサトシは内心舌打ちする。

 さらに思い返せば、3年前もこのインテレオンはまんまと自分発案の一手を模倣して見せていた。

 

「よし!インテレオン!つららばり!!」

 

「うおれぁあ!!」

 

ドシュウーッ!!

 

 水流の勢いに空中へ押し上げられたままのジュカインめがけ、両手全ての指から氷柱がミサイルのように発射され、渦潮を飛び出して襲いかかった。

 

「じゅうッ…!」

 

 この場の流れでジュカインにとって気に入らないのは、トレードマークとして常に口に咥えている木の枝がつららばりで吹っ飛ばされ凍りついてしまったことだ。

 つららばりを切り払うので何度も振り抜いた左の葉刃が氷柱の水分に濡れてしまい切れ味に悪影響なのと、捌き切れなかった分が右肩や足に突き刺さったのは大した問題ではない。

 

「そこだ!リーフストームッ!!」

 

 ピンチはチャンス…インテレオンの足がカウンターシールドで止まっているところにジュカインは全身より無数のエネルギー葉を生成、周囲に吹き巻かせてゆく。

 

「インテレオンのアクアジェットなら!」

 

 無効にまでは出来ずともカウンターシールドの渦潮で多少のダメージ減殺は出来る、と踏んでいたダンデの目が見開かれる。

 吹き荒れる風と共に舞う無数のエネルギー葉が、ジュカインの右腕の葉刃へと集結していた。

 

『あーーーッとジュカイン!リーフストームとリーフブレードの合わせ技だーーーッ!!』

 

「カウンターシールドごと切り裂け!!リーフストーム・ブレード!!!」

 

「じぃぃぃッかぁぁぁッ!!」

 

 この時ダンデは、インテレオンがカウンターシールドのために足を止めることになる流れそのものがサトシの誘導かと思った。

 実際にはトレーナーとしての性質であるその場限りの閃き力にベットしただけの話なのだが、若い世代からの圧力に一度打ちのめされたダンデがこの試合の内に独力で気付くには無理な話であった。

 

バッシュアアアアアッ!!

 

「う、ぉれぉあ…ッ!!」

 

 周囲を水流が水車のように取り囲んで回るインテレオン式アクアジェットは、その本体を包み込む水柱ごと唐竹割りの要領で一刀両断された。

 リーフストーム・ブレードの太刀筋は水柱の中のインテレオンごと切り裂き、エージェントポケモンと分類されるほどに多機能を有した分細身で、耐久力に難を残したボディは効果抜群の強烈な一太刀の前にはひとたまりもなかった。

 

「じゅかッ!」

 

 全身を余すことなく使い右腕を振り抜いたジュカインは空中での身のこなしを軽やかに着地。ちょうど足元に落ちていた木の根の一部を見つけては拾い上げ、口に咥えてニュートラルポジションへ戻る。

 ゴリランダーのドラムアタックで使役されていた植物だ。インテレオンに台無しにされた『お気に入り』に比べると咥え心地は若干劣るがまぁ、ないよりはマシ、であった。

 

「インテレオン、戦闘不能!ジュカインの勝ち!!」

 

 そんなジュカインの背では、倒れて動かないインテレオンのジャッジが下されていた。

 

 

 

サトシ、残りポケモン5体。

 

ダンデ、残りポケモン2体。

 

 

 

ウホオオオオオオオイ!!

 

「目にも止まらぬハイスピードバトルは両者足を止めた瞬間に決着!!カウンターシールドごとジュカインの合わせ技が炸裂し残りポケモンの差は3体まで広がりました!!」

 

 放送席のジッキョーからしても肉眼で捉えきれないスピードの応酬は実況泣かせであり、両者自慢のスピードのままに早期決着となったのはありがたい話であった。

 

 

 

「戻れインテレオン。いい仕事だったぜ。」

 

 多少なりともダメージを通せたのは収穫としてダンデは功を労う。次なるボールを握る手の力が自然と増していった。

 

「次はこいつだ!!ゆけッ!!」

 

「ぐるおおおおおッ!!」

 

「なにッ!?」

 

 サトシ陣営からすればそれは青天の霹靂であった。ダンデの相棒であり、押しも押されもせぬエースポケモンたるリザードンがラスト1体手前の段階で出てきたのだから。

 




 『ジュカインの咥える木の枝』
 サトシのジュカインは常に口に木の枝を咥えている。
 これは生まれ故郷の巨大樹にいた頃からの癖らしく、今咥えているものが駄目になったら近場の木の枝を勝手に拝借しているとのこと。
 最近は同じ仲間であるサトシのドダイトスの背にある木の枝がお気に入りらしいよ。
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