3 years later〜虹の向こうに〜   作:nami73

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 世紀のリザードン対決を制したサトシ。だが喜びはあっという間に吹き飛んだ。
 ムゲンダイマックス…ブラックナイトの災厄を従えて襲い掛かるダンデとの死闘が続くことへの高揚が喜びを塗り替えたのだ。


最終章!マスターズトーナメント ファイナル サトシvsダンデ⑥

 ムゲンダイナの降臨に合わせて、スタジアム上空を飛び回り中継を映し流すドローンロトムらは、バトルの余波が襲ってこないのに加えて試合内容が把握できるギリギリまで高度を上げ上空を飛んでいた。

 いかに超大な規模のバトルになるとしてもそのやり取りを動画に収めるのは運営からすれば死活問題であるからだ。

 

「飛べリザードン!!」

 

「ぐるぅ!!」

 

 巨大な掌を指差しながらサトシが高らかに号令すれば、リザードンは翼を広げ飛翔する。

 覚えている技的に考えて、近づかないことには話にならないのだ。

 

「(コレがマジコスの威力、ってやつか。)」

 

 人工島パシオからの使者より『向こう側の貴方も着用している逸品』とかいうよくわからない言い回しで半ば強引に押し付けられた漆黒のマジコスは、今となってはダンデの全身によく馴染んでいた。

 それどころか放つ覇気がムゲンダイナに浸透することで心地良い一体感を得ている。悪くない感触であった。

 

「見えるぞ…俺にも"敵"が見える!!」

 

 ムゲンダイナを通してリザードンの飛行ルートが手に取るように分かる。

 それは元来ダンデ自身がリザードンのエキスパートである以上にその第六感を拡張し、その五感からサトシの域まで並んだことを意味していた。

 

「ムゲンダイナ!ダイアシッドだ!!」

 

ドパパパパパ…!!

 

 紺色と朱色が入り混じる体色、その朱色の部分から強烈などくエネルギーの対空砲火が全身より放たれる。

 

「ぐぉるぅ!」

 

 絶え間なく飛びかかるどくエネルギーの奔流を巧みに回避しながらムゲンダイナへ距離を詰めるリザードンはいい。

 ただ、問題はその全身からの砲火の行方にあった。

 

 

 

バチュッ!バチュッ!

 

ミシシシィ…!!

 

「お、おい…なんか様子が、変じゃねぇか?」

 

「えっ?」

 

パキィィィィィッ!!

 

「うわ!?うわわわわ!?」

 

 元よりムゲンダイナから放たれるエネルギーにより限界ギリギリであったバリアフィールド発生装置がダイアシッドの強烈な砲火にさらされ、完全にショート。

 毒液の雨が守る屋根をなくした客席に降り注いだのだ。

 

「皆さん!避難の際は慌てずに!!」

 

「押さないで!押さないでー!!」

 

 自衛手段を持たない客はスタジアムスタッフやダンペーが事前に動かしていた審判団の誘導により外部のパブリックビューイングへと避難してゆく。

 客席に残るは、にわかに規模が増したバトルにも怯まずその目に焼き付けようという良く言えば剛毅な、悪く言えばクレイジーな連中ばかりであった。

 

 

 

「ウルゥゥゥーーード!!」

 

「うおッ!?ザマゼンタ!!お前も直に試合観たいのか?」

 

「ムゲンダイナと因縁があるみたいだものね、その子。」

 

 ホップのボールより勝手に出て来たザマゼンタにさもありなんとソニアは理解を示す。

 バトルの余波に対してもこの子が庇ってくれるなら安心というものだ。

 

 

 

「リザードン!ドラゴンテール!!」

 

「ぐぉるぅばッ!!」

 

 掌のような形状の頭部の奥に渦を巻いた形で固定化されたボディがあり、その渦の中心部のコアが狙い目であった。

 砲火の雨を潜り抜けたリザードンはボディの上を取り、縦回転の勢いを尻尾に纏ったドラゴンエネルギーによる鞭打へと変えて振るい抜く。

 

バッチァァァッ!!

 

「ぐぅうッ!」

 

 間違いなくヒットした。が、コアから放たれる圧力を前に瞬く間にリザードンは弾き飛ばされてしまう。

 その際に全身から放たれる紫色のビームが2発、3発と次々に命中。蜂の巣にされた形のリザードンはフィールドに落着していった。

 

「リザードンッ!!」

 

「ぴぃかぁー…!」

 

 うつ伏せでお腹から墜落させられ、なおも立ち上がろうと両手に力を入れるところが限界であった。

 

「ぐぅるふッ…!!」

 

 リザードンは崩れ落ち、完全にノビてしまう…。

 

「リザードン、戦闘不能!ムゲンダイナの勝ち!!」

 

 

 

サトシ、残りポケモン4体。

 

ダンデ、残りポケモン1体。

 

 

 

「あーーーっと、ここでチャンピオンサトシのリザードンダウン!!PNTTから公式戦にて破竹の勢いであったエースポケモンの一角でしたが流石にリザードン対決の後にムゲンダイナは厳しかったかーーーッ!?」

 

「あの渦巻状にしているボディの中心部のコアが狙い目、とはいえそこはチャンピオンダンデとしても百も承知、といったところでしょうか。」

 

「サトシは残り4体。丁寧な攻めが求められようぞ。」

 

 観客の8割ほどがスタジアム外のパブリックビューイングに観戦スタイルを移す中、放送席はギリギリまで持ち場を放棄しない方針だった。

 仕事を通しながらこの世紀の決戦を見届ける…彼らもまたクレイジーである。

 

 

 

「戻れリザードン!」

 

 サトシは倒れたリザードンをボールへ戻す。

 チラとムゲンダイナを見上げれば、なんとなくではあるがまだまだ体力は有り余ってるように見えた。

 

「リザードンの分も頼むぜ。ゴウカザル!キミに決めたッ!!」

 

「うっきゃーーーッ!!」

 

 投げ込むボールが開かれれば空中で体を捻り、抜群のボディコントロールで軽やかな着地を見せるゴウカザル。

 頭の炎がメラメラと燃え盛るは熱き闘志の表れだ。

 

『ここでゴウカザルの登場!コレで初戦、セミファイナルに続き本トーナメント皆勤賞です!!この段階で両陣営フルバトル参加ポケモンが出揃い、ますますバトルも激化の一途を辿ることとなるでしょう!!』

 

「むきゃあ!むっきゃっきゃあああーッ!!」

 

 

 

「ゴウカザル、すごい気合いね!」

 

「リザードンとは仲良くやってるみたいだからな。」

 

 気合いじゅうぶんなゴウカザルの姿にカスミもタケシも笑みが浮かぶも、現状として見るはやはりムゲンダイナ攻略の糸口の行方であった。

 

 

 

「ゴウカザル!あなをほるだ!!」

 

 サトシの指示にゴウカザルは軽く垂直跳びから真下の地面を拳で掘り、瞬く間に姿を消す。

 ダンデからすればどこから攻めてくるか、などは関係のないことだった。

 

「ダイドラグーンで吹き飛ばせ!!」

 

キィィィーーーン!!

 

 顔面の中心部が発光すればムゲンダイナを中心として、その体色をした紺と朱のハリケーンがフィールドの地表部を丸ごと抉るように巻き上げてゆく。

 

 

 

ブオオオオオオオッ!!

 

 

 

「ウルゥゥゥーーードッ!!」

 

「ソニア!ザマゼンタの後ろに隠れて!」

 

 ダイドラグーンによりムゲンダイマックスのエネルギーとともに吹き荒れる強烈な土砂の嵐を前にホップは朽ちた盾をかざす。

 ソニアが言われるまでもなく盾の王となったザマゼンタの背後に退避すれば、ザマゼンタはそのフォルム通りにホップとソニアの盾となって嵐から守っていた。

 

 

 

「いやぁ〜ん!?」

 

「まいっちんぐぅ〜!」

 

 

 

「あなをほるで地中に潜るゴウカザルを引き摺り出すべくムゲンダイナはダイドラグーン!!地盤丸ごとひっくり返して巻き上がる土砂の嵐に客席に残った方々の中にも耐えきれず飛ばされる人多数!!」

 

ピシシシッ…!!

 

「あーーーッと!ひ、ヒビです!耐久テストとして両面からサイドンのつのドリルを当て続ける方式の、最高基準である審査をクリアしている放送席の窓ガラスに、ヒビがッ!!」

 

「これはここもいよいよ限界のようだのう。」

 

「らしいねえ。」

 

「こうなれば、比較的安全な選手ベンチに退避と行きましょうか。」

 

 ムゲンダイマックスのエネルギーにアテられ続け、悲鳴を上げ始める放送席の放棄をナンテが提案。3人は頷けばそそくさと一室を後にした。

 

「らいらい!」

 

「ほっときなさい。」

 

 途中、マスタード夫妻が分かれ道を逆方向に走り去るのをライチュウのテディが指摘するも、今は実況態勢を整えるのが先決とナンテは捨て置くことにした。

 マイクを持つよりなく、全くの無力であるジッキョーを放置するわけにもいかないからだ。

 

 

 

「ねぇタケシ。アレ…結構ヤバくない?」

 

「結構どころじゃあないくらいヤバいな。」

 

 ムゲンダイマックスのエネルギーを前に限界を迎えていたのは放送席だけではなかった。

 フィールドを見下ろす形で設置されている巨大モニターの立て掛けが崩れているのが見えていた。そしてサトシとの旅での経験上、ヤバいという前兆から思い浮かぶロクでもない展開の予想というのは大体的中するのだ。

 

グアッコオッ!!

 

「やっぱり〜〜〜!!」

 

 そのモニターが崩落し、エネルギー嵐に呑まれてこちらを薙ぎ払わんというように迫り来るのでカスミは叫んでいた。

 

シュパァァァァァッ!!

 

「ウルォォォーーード!!」

 

 慌ててベンチに飛び込み身を隠すカスミとタケシであったがいつまで経っても激突音がしない。

 恐る恐る顔だけチラと外の様子を窺えば、そこにはモニターをバラバラに切り裂く剣の王のザシアンと、黒い外套に身を包む青年の姿があった。

 

「大丈夫だったかな?」

 

「貴方は、タクトさん!」

 

 お節介だった、と照れ隠しに笑みを見せる青年をタケシは知っていた。といっても、3年前のシンオウリーグにてサトシと相対していた姿しか情報としてはないのだが。

 ともあれこの先荒れ狂うばかりの試合環境においてこれ以上にない助け舟だと思えた。

 タクトもまた、この一戦を間近で見届けんとするクレイジーであった。

 

 

 

「ゴウカザルの姿が…ない。」

 

 潜った地中丸ごとくり抜く形でエネルギー嵐を発生させたことにより、フィールドは両陣営トレーナーサークルの部分のみを綺麗に残しあとの地面の部分はバラバラの土砂として嵐の中を飛び交っている。

 その中にゴウカザルが見えないとなれば、ダンデの読みは1つしかなかった。

 

「跳んだなッ!!」

 

「いけゴウカザル!!パワー全開だぁッ!!」

 

「むきゃあああああッ!!」

 

 夜空に青白く輝くは星に非ず。己が魂の炎を極限まで燃やし尽くした闘猿の煌めきを現出させていた。

 

 

 

「あーーーッとゴウカザル!!あなをほるを使ったと思いきやいつの間にやらムゲンダイナの上を取っていたーーーッ!!」

 

「おそらくは地中ごとダイドラグーンで打ち上げられた際、吹き荒れて浮遊するまだバラバラになる前の足場代わりに使える地面を利用して跳躍したのでしょう。さらに上手いのは、しっかりコアを真下に捉えている。」

 

「ナンテさん!」

 

「どうも。お邪魔しますよ。」

 

 サトシ側のベンチにやって来た2人にタケシが驚けば、ナンテは右手を軽く上げて見せる。

 エネルギー嵐の影響で放送席が駄目になったことをカスミと察した。

 

 

 

「流石はサトシ。上手く立ち回りよるわい。」

 

「マスタードさん!」

 

 同じ頃、ダンデ側のベンチにマスタード夫妻は顔を出していた。

 ホップは前々からヨロイ島のフィールドワークをソニアに頼まれたことがきっかけで時折夫妻の道場を拠点として使わせてもらっている仲である。

 

「ザシアンにザマゼンタ、か。」

 

 サトシ側ベンチに現れたタクトの引き連れるザシアンと、こちら側にいるザマゼンタは共にムゲンダイナをジッと見つめたままだ。

 ガラルの伝承の主役たちが揃い踏みとなったこの場に、なにやら神話めいた気分を抱かずにはいられないソニアであった。

 

 

 

「それが噂の"凄いもうか"ってやつか!!」

 

 ダンデは胸が躍った。自分がムゲンダイナを持ち出したように、サトシもまたこの日のために最高の6体を選出してくれたという事実が嬉しかった。

 ピカチュウ…リザードン…ジュカイン…ゴウカザル…ゲッコウガ…ルカリオ…出揃った顔ぶれはまさしくサトシのゲットしたポケモンたちの集大成たるパーティメンバーであるからだ。

 

「ゴウカザル!!フレアドライブ!!!」

 

 地中という逃げ場のない空間ごとダイドラグーンに呑まれたことでダメージは甚大。故にサトシのゴウカザルの持つ『凄いもうか』を効率よく引き出す形になったのは全くの偶然であった。

 千変万化するバトルの中で起こる無数の偶然に対し、最適解を引く力の強さこそがサトシの真骨頂といっていい。

 

「むきゃあああああああッ!!!」

 

ズゴオオオオオン!!!

 

 極限の豪炎を身に纏い、自らを弾丸として急降下するゴウカザルは力の限りコアへ激突。並のポケモンならばひとたまりもない渾身の一撃だ。

 しかし、ムゲンダイナは並のポケモンでは、ない。

 

ゴアアアッ!

 

「うぐッきぃあッ…!」

 

 リザードン同様、膨大なエネルギーによる反射作用の前に押し返され、荒れ切ったフィールドに降り立つもそのままゴウカザルは倒れ込み、意識を手放してしまった。

 ダイドラグーンのダメージと、フレアドライブによる反動で体力を使い果たしたのである。

 

「ゴウカザル、戦闘不能!ムゲンダイナの勝ち!!」

 

 

 

サトシ、残りポケモン3体。

 

ダンデ、残りポケモン1体。

 

 

 




 『サトシのベストメンバー』
 ポケモン歴2000年を締め括るこの場面においてサトシがPWCSの決勝にセレクトしたのはピカチュウ、リザードン、ジュカイン、ゴウカザル、ゲッコウガ、ルカリオの6体。
 これはあくまでこの時におけるベストメンバーに過ぎず、少なくともピカチュウ以外はいくらでも入れ替わりが発生し、ポケモンごとに調子の浮き沈みもあるので決して最終的な結論パではない。
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