3 years later〜虹の向こうに〜   作:nami73

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 ムゲンダイマックスの進撃は続き、ジュカインも倒されてしまった。
 決して挫けぬサトシが次に繰り出すはゲッコウガ…いや、サトシゲッコウガだ。


最終章!マスターズトーナメント ファイナル サトシvsダンデ⑧

シュタタタタタァッ!

 

「こががががぁ!!」

 

「(今までの奴らの中でも、俺が戦ってきた奴らの中で誰よりも、ダントツに速いッ!!)」

 

 跳躍したサトシゲッコウガはムゲンダイナの頭に着地すれば、そのままボディを伝って疾走。狙いは当然渦巻く胴体の中心部に守られたコアめがけて一目散だ。

 無論、むざむざ行かせる道理などダンデにはない。

 

「ムゲンダイナ!弾幕を張れ!!」

 

バビビビビビ…!

 

 ムゲンダイナの全身から放たれる対空砲のビーム攻撃が四方八方からゲッコウガを襲う。

 

「つばめがえしッ!!」

 

ガキキキキッ…!

 

 それら全てを悉くゲッコウガは両手に走らせた青白いひこうエネルギーのオーラを振り抜いて切り払う。

 疾走してゆくスピードが低下することは、ない。

 

 

 

「サトシゲッコウガ、走る!走る!走る!ムゲンダイナのボディを道標に、迫るビームを弾きながらコア目掛けて一直線だーーーッ!!」

 

「流石はチャンピオンサトシ。常人ならばかげぶんしんを絡めた撹乱を入れたくなるところなのをダイマックス技の規模的に考えて封印し、コアへの到達から、打撃を与えるのにゲッコウガのリソースを振り切った訳ですな。」

 

 ナンテは唸った。ムゲンダイナという途方もない大敵を前に着実にダメージを積み重ねる選択を間違えずに打ち続けられるその胆力に。

 『コレがマサラタウンのサトシだ』と叫びたくなる衝動に駆られる。同時に、そんな内心に対して自嘲した。

 

 

 

「ムゲンダイナの上を走るということは、振り落とさんと下手に迎撃の放火が増せばそれらがムゲンダイナ自身を撃つ形になりかねない。なかなかどうして良き手よな。」

 

 サトシゲッコウガが駆け抜けるので視線を追うマスタードは呟く。その背から透けて見えるサトシの姿に新時代の到来を予感していた。

 そんなマスタードの凛々しい横顔は、愛妻としてミツバの心を躍らせた。

 

 

 

「見えた!アレだ!ゲッコウガ!」

 

「こがッ!!」

 

 首の部分を抜け、ムゲンダイマックスの渦巻くボディへ到達したところで中央部に見えるコアをサトシはゲッコウガ越しに視認する。

 

「いけぇーッ!!」

 

 届く!そう思ってからサトシの決断にゲッコウガは迷いなく空へ躍り出た。

 それは、正しく互いが寄せ合う信頼からくる確信であった。

 

「これ以上はやらせん!!」

 

 体を丸めた渦巻部分から一斉にムゲンダイナのビームが放たれる。

 コア目掛けて最短距離の跳躍を見せるサトシゲッコウガに対して当然の迎撃だ。

 

シュパパパパパパパ!!

 

 

 

「あれだけ撃っても当たらない!?」

 

 跳躍しながらもなおいあいぎりのノーマルエネルギーで成形した忍者刀で以てビームの雨あられを掻い潜るゲッコウガの立ち回りにホップは正しく神業を見ていた。

 今この時でこそダンデのサポートとしての立場ながらホップもいずれは、と頂を目指す身だ。現状世界の頂点に立つ男のポケモン捌きに魅せられていた。

 

 

 

「今だゲッコウガ!!みずしゅりけんッ!!!」

 

「こがぁぁぁッ!!!」

 

 背負った大型手裏剣を取り出し、瞬く間に膨大なエネルギーを纏わせてゆく。

 元々がみずエネルギーの塊であるところにサトシの燃え盛る闘志が合わさり赤熱化、さらにゲッコウガがクールな精神で包み込むことで3層構造の巨大みずしゅりけんが完成する。

 

「くらえええええッ!!!」

 

「こぁッがあああああッ!!!」

 

 急降下と共に巨大みずしゅりけんをコアへと突き刺すサトシゲッコウガ。

 確かな亀裂から、赤白いエネルギーが噴き出て天へ霧散してゆくのでダメージとしては多大なのは誰がみても明らかだ。

 

「ギ…!ギ…!ギ…!」

 

 が、それでもムゲンダイナは健在だった。

 

「な、なにィッ!?」

 

「弾き飛ばせッ!!」

 

「ギヤ゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛…!!」

 

キィィィィィン!!

 

「げがぁッ!?」

 

 コアから放たれる圧力によりゲッコウガは空中へ投げ出される。

 そこにムゲンダイナは『掌の指』に形容出来る5本の突起を丸め、特徴的な頭そのものを巨大な鈍器に見立てて振るい抜いた。

 

「やれムゲンダイナ!!押し潰せ!!」

 

「いあいぎりだッ!!」

 

 キズナ現象が生んだシンクロ状態であるが故にサトシの迎撃指示は口走ったらば即座にゲッコウガへと伝わる。

 打ち下ろされるムゲンダイナの頭を前に、エネルギーの忍者刀を形成して合わせられた事自体がトレーナーとポケモンの意識をシンクロさせているサトシゲッコウガならではの奇跡である。

 

パッキィ!!

 

「げがぁッ…!!」

 

 が、圧倒的な質量を前に忍者刀がポキリと折れてしまう。

 巨大みずしゅりけんの直後だったのが不味かったか?そんな思考が走ったがあまり意味のないことだった。

 いかにレスポンスで先を行くことが出来ても元来の質量差は如何ともし難い話であった。

 

ズッガァァァァン…!!

 

「ぐぅッ…!!」

 

 ムゲンダイナの頭部に押し潰される形でフィールドへ叩き付けられる。

 その強烈なダメージはゲッコウガを通してサトシにも凄まじい激痛をもたらし、膝がガクッと曲がった。

 

「ぴかぴ!?」

 

 

 

「あーーーッとムゲンダイナ、巨大みずしゅりけんをコアに叩き込まれても無事と凄まじいタフさを見せ、返す刀で弾き飛ばしたサトシゲッコウガを、あ、頭です!頭を丸めて押し潰したーーーッ!!」

 

「いかにエネルギーの形成技術に長けて受け止めようとも質量の塊を前にしてしまってはどうにもなりませんな。」

 

 語りながらもナンテの気掛かりはキズナ現象とやらによるポケモンからトレーナーへのダメージフィードバックにあった。

 似たような事例からセミファイナルの第2戦が消化不良に終わっているからだ。

 

 

 

「いかに完成されたキズナ現象とはいえ、ポケモンとトレーナーがシンクロしてる以上は一定の領域分を超えればダメージが浸透してくるのは避けられない。でも、バトルに出してた子たち全員とシンクロしてたあたしと違って、あくまでシンクロしてるのはゲッコウガだけだからコレでサトシがへこたれることはないわ。」

 

 シュートシティの病院から中継を観るアイリスの言葉にベルは胸を撫で下ろす。

 

「しかし虎の子のサトシゲッコウガですら仕留めるに至らなかった、となればサトシくんの気力にも影響はあるのではないか?」

 

「それ本気で言ってる?」

 

 お見舞いに来ていたアデクにアイリスは不敵な笑みを向ける。

 サトシがこれしきで参るようなタマではない…そんな思いを2人は共有した。

 

 

 

「ア゛ア゛ア゛…!!」

 

 ズズ、とムゲンダイナは頭を上げる。

 真新しく出来たクレーターの真ん中に仰向けで横たわるサトシゲッコウガからエネルギーが流出し、元の姿と目を回しているのを確認してからダンペー審判はジャッジを飛ばす。

 

「ゲッコウガ、戦闘不能!ムゲンダイナの勝ち!!」

 

 それは、このシュートスタジアムを文字通り崩壊させながらの死闘がいよいよ終局へ向かうことを意味していた。

 

 

 

サトシ、残りポケモン1体。

 

ダンデ、残りポケモン1体。

 

 

 

「はぁ…はぁ…戻れゲッコウガ!」

 

 激痛とともに全身から噴き出る不快な汗を忘れ、サトシはゲッコウガをボールへ戻す。

 足が笑うのを、気力だけで必死に押さえ込んでいた。

 

 

 

「ムゲンダイマックスを前にサトシゲッコウガ撃沈!!コレで両陣営残りポケモンあと1体ずつとなりました!!ミレニアムワールドチャンピオンの栄光に輝くは果たしてどちらか!?」

 

 

 

「流石ダンデさん…流石ムゲンダイナ…!」

 

 これまでの冒険で特に腕自慢な仲間を結集させたパーティも、残すはあと1体のみ。

 腰のホルダーへボールを引っ掛けた右手は、そのまま後ろに回していたツバを掴んで脱帽。

 

「最高だぜ!!」

 

 これでこそ『無敵の男』ダンデだと、サトシは脱いだ帽子をピカチュウの頭に被せる。

 そうしてフィールドを指差し、高らかに告げた。

 

「ピカチュウ!!キミに決めたッ!!!」

 

「ぴっかぁッ!!!」

 

 被された帽子を掴み、ちょうどいい塩梅に調整したピカチュウはその場でジャンプ。

 サトシは両手をクロスさせ、左手首のZリングを起動!

 

「ぴかちう!!」

 

 バシ!バシ!と右拳同士を、尻尾とサトシの左拳を合わせピカチュウはフィールドイン。

 

 

 

「あーーーッとチャンピオンサトシ!!最後の1体となったピカチュウを投入と同時にZワザの構えだーーーッ!!」

 

「いいですよコレは!リザードンの時から一貫して攻めあるのみの姿勢!!」

 

「回りくどい話は昔から苦手だったからな。サトシは。」

 

「ホントね。」

 

 ラス1対決となった途端に切り札を発動させるサトシとピカチュウ。

 彼らを誰よりも知るカスミとタケシにはその一見無鉄砲な様に、根拠のない自信とともに走り切るその姿勢こそが世界を獲るに相応しい勢いを体現しているように見えていた。

 今のサトシは、3年前とは違うのだ。

 

 

 

「はあああああッ!!」

 

 左手を振り抜き、右手を突き出した構えからサトシの全身よりZパワーがピカチュウへと注がれる。

 

 

 

「兄貴!!」

 

 

 

「分かってるさ!!」

 

 ベンチからのホップの声にダンデは頷いて見せる。

 これからかましてくるサトシの必殺の一撃、その破壊力はよく知っていた。

 

 

 

「10まんボルトよりでっかい100まんボルト…!!!」

 

「ぴっか!」

 

「いや!!もっともっと、もーーーっとでっかい俺たちの超ゼンリョク!!!」

 

 故に、その間隙を縫うことが肝要であるとも解っていた。

 

「ぴかぁッ!!」

 

「させるかッ!!」

 

 尻尾をバネに空高くジャンプするピカチュウが自身のZパワーを黒雲の中の雷と混ぜ合わせ必殺の一撃へと昇華させるそのルーティンの最中だった。

 

「撃ち落とせムゲンダイナ!!ダイドラグーン!!!」

 

「くッ…!」

 

「ア゛ア゛ア゛ギヤ゛ア゛ア゛ア゛ア゛ーーーア゛!!!」

 

 撃たれてからでは遅い…だからこそ撃たれる前に潰すのみ!ダンデは勝負の鬼として当然の一手を打ったのだ。

 

ドリュブアアアアアッ!!

 

 

「あーーーッと!!ムゲンダイマックスは必殺の一撃を許さない!!チャンピオンダンデ、最終局面でZワザによる攻勢を読んでいたーーーッ!!」

 

 頭部よりムゲンダイナはドラゴンエネルギーの竜巻を奔流として発射する。

 元より空中、しかもZワザの為に動いている最中だ。ピカチュウはかわすどころかガードすらままならなかった。

 

ドッゴオオオオオン…!!

 

「ピカチュウぅぅぅぅぅッ!!」

 

 

 

「ああッ!」

 

 冷徹なダンデの攻めにより空中に盛大なエネルギー爆発が咲く。

 ムゲンダイナとの体格差を考えれば、いかにサトシのピカチュウといえどもひとたまりもないとソニアは思えた。

 

「やったか!?」

 

 ダイドラグーンが直撃する様にホップは息を呑む。

 

「ダーリン…。」

 

「うむ。」

 

 寄り添うミツバにマスタードは力強く頷く。そうして一言、こう続けた。

 

「この勝負、見えたわ。」

 

 

 

「ぬうッ!?」

 

 モヤが内側より晴らされる。それ即ちエネルギーの発露であり、ピカチュウの無事をダンデに直感させた。

 

「ぴっか!!ぴかぴかぴかぴかぴかぴかぴか…!!!」

 

「ピカチュウ!お前ってやつは…!!」

 

 冷や汗はかいた。いくら自慢の1発があろうとも撃てなければお話にならない。

 それでもピカチュウは耐えてみせた。

 一介の電気ネズミが、伝承の怪物の渾身の一撃を前に耐え忍んだのだ。

 

「ホントに最高の相棒だぜ!!」

 

 

 

「ピカチュウ健在!!Zワザの発動は止まりませんッ!!ナンテさん、これは!?」

 

「言うまでもありません。ピカチュウは、チャンピオンサトシを悲しませまいと持ち堪えたのですよ。」

 

 7色の電撃に包まれるピカチュウを見上げ、ナンテもまたこの試合の決着を確信していた。

 

 

 

「ピカチュウ!!!1000まんボルトぉぉぉぉぉッッッ!!!!」

 

「ぴぃかぁぁぁぁぁぁぁッッッ!!!!」

 

 天へ拳を突き立ててサトシが吼える。サトシに応えピカチュウは現出させた7色の電撃を発射。

 会得したアローラ時代から3年前の時点で数多の強敵を打ち破ってきたサトシとピカチュウの絆の象徴…彼らのみに許された究極のZワザが、ムゲンダイナを襲った。

 




 『サトピカZ』
 アローラ時代のサトシが所有していたデンキZがベースとなり変異したZクリスタル。
 コレを用いてサトシとピカチュウは究極の奥義『1000まんボルト』を放つのだ。
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