3 years later〜虹の向こうに〜   作:nami73

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 ピカチュウの快進撃でアランを相手に圧倒するサトシ。
 想定外のレベルの差を見せつけられるアランを尻目に、サトシは長らく戦列を離れていた古参の仲間、ピジョットを繰り出した…。


PWCS開幕戦 因縁の対決!サトシvsアラン③

「さてナンテさん。チャンピオンサトシのピジョットとアラン選手のメタグロスの対面、どう見てますでしょうか。」

 

「はい。ポケモンリーグ公式記録に残されているものとして、チャンピオンサトシがカントー地方のジム戦の際に度々ピジョンを起用しているのは残っていますが、肝心のセキエイリーグでの出番はなく、それ以降公式記録としての起用はこの試合までありません。育成面で問題があったのかプライベートな問題かの事情はハッキリとはしていませんが。」

 

「あぁ、僕それオーキド博士から聞いたことあるよ。なんでもサトシくんがピジョン時代にゲットした確か、トキワの森だっけ?そこではその時すっかりオニドリル、オニスズメの縄張りが広がっていた時期らしくてさ。」

 

「あートキワの森ですか。あそこは一時期、鳥ポケモンの縄張り争いがかなり激しかったとポケモンレンジャーの知人から聞いてます。」

 

「それでさ?故郷に住む同種の群れを守らせてやりたい、っていう想いをサトシくんが汲んで、いつか迎えに来るからってピジョットをトキワの森に置いて別れたんだって。それからの経緯までは博士も知らないみたいだけど、いつの間にか帰ってきてたみたいだね。」

 

「そうなんですか。経歴を見るに結構な古参メンバーで、トレーナーの活動の主軸を担うような役割の一体をそうもあっさりと…いやはや、同業として頭が下がる思いがします。と、なればこの試合はつまりあのピジョットにとっては初の大舞台、となりますね。」

 

「サトシくんは自分よりもポケモンの願いや都合を何より優先するからね。1番の相棒であるピカチュウですら野生に帰すことを考えたのは一度や二度ではないみたいだよ。」

 

「くぅー!飛び出す友情エピソードにこのジッキョー猛烈に感動しておりますが責務は果たして参ります!この対面、大注目な展開が続きます!」

 

 

 

「カウンターシールドの肝は、ポケモンの回転運動にある…"回転"を活かすとなればこちらも負けてはいない!メタグロス!コメットパンチだ、いけッ!」

 

「ぐぅろぉぉぉ!!」

 

ギュルギュルギュルゥ!

 

 

 

「あーっとメタグロス、両腕を硬質化させてピジョットへ向けつつ全身を錐揉み回転!そのまま突撃だーっ!!」

 

「メタグロスの恵まれたボディとはがね、エスパーの複合タイプバランスを高い次元で両立させて成せる戦術。コレはさながら"スクリュー・ドライバー"とでも言えるでしょうか。」

 

「"スクリュー・ドライバー"か…。」

 

「よく勘違いされがちな話ですが、アラン選手は決してリザードンだけの偏ったトレーナーではない。これだけの創意工夫をこなせるのがそのなによりの証拠でしょう。」

 

「3年前もブリガロンのジャイロボールを使って上手いことダンデくん相手に立ち回ってたよね。」

 

「それも彼のトレーナーとしての基礎的なレベルの高さを表していますね。」

 

 

 

「くるぞピジョット!分かってるな!」

 

「ぴじょっ!」

 

 錐揉み回転しながら迫るメタグロスに、ピジョットは翼をはためかせながらかわすような仕草は見せない。

 それでもアランは、すんでのタイミングの回避をすると読んでいた。

 

「(コメットパンチの回避に神経を向けてるところに最速の切り返しでサイコキネシス…鳥ポケモンは空中での素早い立ち回りが肝になる、その動きを止める!)」

 

「はがねのつばさで受け止めろ!」

 

「なにッ!?」

 

「ぴじょおーっ!!」

 

ガキィィィィィ…!ギギギギギギィ…!

 

 ピジョットの羽ばたかせる大きな翼が硬質化すれば、その体を囲うようにガード体勢に入る。

 そこに錐揉み回転で突撃するメタグロスのコメットパンチが空中激突、鋼同士が打ち合った鈍い衝撃音でスタジアムが揺れ、黒板に指の爪を立てたような深い音が響いた。

 

「ぴぃじょお!」

 

「ぐろぁっ!?」

 

 ググ…。その激突の均衡は程なく崩れた。

 ピジョットが翼を力任せに広げれば、メタグロスはたまらず払い除けられ弾き飛ばされる。

 地面に激突するところで、自身のサイコパワーで姿勢を制御し持ち堪える。

 回避運動の先を狙っていたアランからすれば、この攻防は完全にアテが外れた、いや外された形だ。

 そんなアランだがさらに目を見開かされる。サトシが左手グローブを構えている、そこに煌めくのはキーストーン…。

 

「メガシンカか!」

 

「行こうぜピジョット!どこまでも空高く!メガシンカ!!」

 

「ぴぃぃぃじょおおおおおッ!!」

 

 キーストーンが輝き、ピジョットがエネルギーの繭に包まれその姿を変える。「進化を超えた進化」とされるメガシンカ、種の限界を超えた「ポケモンの進化」。

 人はそれを絆の発露とも形容する…。

 

 

 

「ここでチャンピオンがメガシンカを切ったー!!メガピジョットの登場です!!」

 

「これはアラン選手、完全に後手後手に回らされっぱなしですね。"最強メガシンカ"とは、彼のためにあるようなキャッチフレーズですから。」

 

「だけどアランも対メガシンカの場数は踏んでるみたいだからね。まだまだサトシくんも油断はできないんじゃあないかな。」

 

「油断する気もないでしょう。チャンピオンからすれば、いわばコレはリベンジマッチになりますし。」

 

「あはは、それもそうだね。にしても、"立場が人を育てる"とはよく言ったものだよ。立派になったね、サトシくんは。」

 

 そう独りごちるプラターヌ博士が向ける視線の先は、アランを捉えていた。

 

 

 

「(リザードンに変えるにしてもせめて一撃加えて少しでも五分に近い形に持ち込むしかない…。)メタグロス、もう一度いってくれッ!」

 

「ぐるぉぉぉぉぉッ!!」

 

ギュルギュルギュルギュルギュルギュルゥ!!

 

 

 

「あーっとメタグロス再度スクリュー・ドライバー戦法だーッ!」

 

「いえ、先程のものとはコメットパンチの硬度が2倍、突進速度が3倍、錐揉み回転の回転数が4倍にも跳ね上がっています。これはおそらく捨て身の一撃。だけどコレで仕留める、というよりはメガピジョットに少しでも手傷を加えるというのが狙いでしょう。」

 

 

 

「流石アランだぜ!ピジョット!迎え撃て!ねっぷう攻撃!!」

 

「ぴじょっ!ぴじょっ!ぴじょっ!」

 

ブオワァァァァァァ…!!

 

 メガピジョットの屈強な翼が激しく振るわれれば、熱気を孕んだ強風にスクリュー・ドライバー体勢のメタグロスが晒される。

 ググ…とメタグロスの突撃は徐々に勢いを弱められ、やがて…。

 

「ぐるぉ…!」

 

「メタグロス!!」

 

 メガピジョットにその鋼の拳が届くことなく撃ち落とされてしまった。さらにメタグロスの全身から湯気が湧き立っている。やけど状態だ。

 

「くッ…戻れ、メタグロス。」

 

 

 

「スクリュー・ドライバー破れるッ!たまらずアラン選手はポケモンをチェンジです!」

 

「いかに高い能力が自慢のメタグロスでも、真正面からメガシンカポケモンのパワーを前にカチ合うには厳しかったようですね。まぁアラン選手の少しでもメガピジョットに手傷を、という判断も決して間違ってはないですよ。」

 

「カラマネロもメタグロスもボロボロ、となったらアランに取れる手段は一つだね。」

 

「はい。メガシンカ対決。一日の長に活路を見出すしかないかと。公式記録的に、アラン選手の方がサトシ氏よりメガシンカ自体に触れて来た期間が長いと言えますからね。」

 

 

 

 振り返れば、序盤のエース同士の差し合いから中盤の殴り合いにかけてことごとく手の内を跳ね返されている。

 それでいて胸の内に芽生えるこの高揚感にアランは覚えがあった。

 カロスリーグ決勝戦。何度も打ち合うメガリザードンXと、サトシゲッコウガ。いや…今胸にあるのはあの時よりも、熱い。

 3年前の自分ならば焦燥に駆られていたことだろう。だが今は違う。追い詰められてなお、バトルへの楽しさが優っていた。

 リザードンのボールを放り、同時に左手首に巻くメガリングを構える。輝くキーストーン。

 

「我が心に答えよ、キーストーン!!」

 

 再度繰り出したリザードンを、メガシンカのエネルギーの繭が包む。

 

「進化を超えろ!メガシンカ!!」

 

 繭から出てくる漆黒のボディ。

 メガリザードンX。手傷を負いながらその闘志には、いささかの翳りもなし。

 

「サトシ!勝負はここからだ!!いくぞ!リザードン!!」

 

「ぐるぁぁぁぁぁっ!!」

 

「アランはここからが強いんだ!今度こそ勝つ!!頼むぜピジョット!!」

 

「ぴじょおおおおおっ!!」

 

 ここまで来れば両者に交代の、後退の選択肢はもうない。

 メガシンカvsメガシンカ。観客のボルテージも最高潮であった。




 『アラン』
 21歳。カロス地方指折りの強豪トレーナー。かつては悪の組織に身を寄せていた時期もあったが、サトシと熱い戦いを繰り広げる中で本当の強さを見出した好青年。
 エースポケモンは自身の異名「最強メガシンカ」にある通り、共に最強への道を歩み続ける事を誓った頼れる相棒のリザードンだ。
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