3 years later〜虹の向こうに〜   作:nami73

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 互いのドラゴンポケモンが同時に進化し、激化するドラゴン対決。
 老獪なゲンジの立ち回りを、スパートをかけたサトシの闘志が上回り、勝利したのは若きチャンピオンであった。


それぞれの戦い 女心男知らず、町外れにて①

 サトシのランクマッチとセレナのコンテストライブがそれぞれ同日に行われ、翌日はスケジュール的に完全オフということからミナモシティの喫茶店に集っていたメンバーは同街の浜辺に再合流し、休息を楽しむ運びになった。

 ホウエン地方は温暖な気候であり、いわゆるカントー圏の中ではより多くの期間で海を満喫できるのだ。

 提案したのはサトシとセレナ共通の知己であるハルカであり、セレナが少しでもサトシに対してアプローチ出来たらよいのではないか、という同性兼友人故のお節介からであった。

 3年前ならいざ知らず、多少なりともプロポーションに磨きがかかった今ならば、少なくとも当時よりは色香の破壊力も増していよう。

 そういった見立てがあったのだが…。

 

「よーしマサト、あそこまで競争だ!」

 

「ポケモントレーナーはたとえ火の中水の中草の中森の中、海の中だっていいポケモンを探す為に行かなきゃいけないんだ!負けないよサトシ!」

 

「へへッ!分かってるじゃん!行くぜー!」

 

「ぴぃかぴか〜。」

 

「しざり。」

 

 男女ではどうしても着替えに時間はかかるもの。

 セレナが気合いを入れた水着姿で色香を使ってモーションをかける間もなく、サトシとマサトはやってきて早々に海パン一丁で海に飛び込み、泳ぎ出していってしまった。

 ピカチュウはならずものポケモンシザリガーの背に乗っており、2人に続くよう声をかければシザリガーは了解し、猛スピードで泳ぐ2人を追いかけていく。マサトのポケモンだ。

 

「ホント、マサトってサトシに懐いてるんだから。」

 

「私の知ってる娘もあんな感じ。サトシって元気いっぱいで明るいから小さい子の人気者になりやすいんだと思う。」

 

「ちるぅ。」

 

 水着に着替えて更衣所から出てきたハルカとセレナは、泳ぐことなくビーチパラソルの下で日差しを避けて寛ぐことにした。紫外線は女の敵なのだ。

 ルチアも来ているには来ているのだが、相棒のチルタリスであるチルルの綿雲のような羽毛を枕に早々に寝てしまった。

 連日の営業で疲れが溜まっていたのだろう。それをよく知っている2人は傍で爆睡中のルチアを捨て置いている。

 ハルカは赤、セレナは黒のビキニ、ルチアはフリルのついた白のタンキニスタイルで、それぞれに魅力的かつ煽情的な姿だ。

 当然下心丸出しの野郎どもが度々近付くが、そこは彼女たちのポケモンが徹底的にガードしていた。

 強引に迫るような不埒な輩に待っているのはバシャーモに殴り飛ばされるなり、マフォクシーのサイコパワーで遥か彼方まで吹き飛ばされるなり手荒い応対である。

 

「リベンジ達成おめでとう、セレナ。」

 

「ありがとうハルカ。でも、アレでようやくお互い様、ってところなんだよね。」

 

 サトシの試合の直前に重なったミナモライブにて繰り広げられたセレナの雪辱戦。

 カロス時代、トライポカロンにて終始立ち塞がり続けた不動のカロスクイーンエルとの勝負。

 3年ぶりの対決、その軍配はセレナにあっさりと上げられた。その理由は至極シンプルなものであった。

 ホウエンに来訪したエルは、カロスクイーンとしての抜群のパフォーマンスを遺憾なく発揮し、瞬く間にマスターランクまで位階を上げていった。

 それは、セレナやルチア同様アイドルとしての営業と並行してのもので、過密スケジュールの中でコンテストライブのステージをハイスピードで駆け上がる強行軍であった。

 そのツケが、ミナモライブの直前に来た。

 レッスン中に左手首を痛め、本番のパフォーマンスにマイナスに作用してしまったのだ。

 それは3年前、トライポカロンマスタークラスにてセレナがエルに敗れた際の流れと、全く同じものであったのだ。

 

「ヤシオさんがエルさんのプロデューサーとして帯同してたなら、多分こうはならなかったと思う。」

 

 セレナが出す名前は、ハルカも知っていた。

 パフォーマー業界のみならず、ポケモンを携えた表現の世界に生きる人間ならば誰しもが聞く伝説的なプロデューサーである。当然エルも、彼女のプロデュースの下大成した存在だ。

 そんなヤシオは、エルのホウエン来訪に一緒には来ていなかった。正確には、来れなかった、と言う方が正しい。

 折悪く体調を崩してしまい、渡海出来る状況ではなかったのだ。

 恩師が病床に臥したこと、それもまたエルのオーバーワークを招いたのだろう。

 

「トライポカロンでは私が怪我してて、ミナモライブではエルさんが怪我してて、お互いそれを承知で全力を出し切って、今度は私が勝った。だから今度こそは、お互い万全な状態で競い合おうって約束したの。」

 

「じゃあコンテストへの復帰は…。」

 

「当分お預け、かな。」

 

 セレナにとってコンテストライブとは、コンテスト復帰のための経験を積む場と言うのが転向当初の目的である。それは今も変わらない。

 ただ、エルとの決着はその前にきっちり付け、乗り越えてゆかねばならない。

 そう語るセレナの笑みの携えた決意には揺らがぬ信念が見えた。

 

「なんかサトシみたいカモ。」

 

「そう見えるなら嬉しいかな。」

 

 憧れの相手との対等な形での決着を望むということはもちろんのこと、見果てぬ大きな夢へ走り続ける心根の強さをハルカはそう言葉にする。

 恋する乙女は、強いのだ。

 

「ハルカはこれからどうするつもりなの?やっぱりグランドフェスティバルの連覇?」

 

「ううん。ミクリカップに挑戦するつもり。3年前取り損ねちゃったままだし。」

 

 1年前、ハルカは故郷であるホウエンにてコンテストリボンを集め切り、そのままグランドフェスティバルを制覇してみせた。

 その実情としては、目下の強敵であった同業のシュウやハーリー、前回参加していた際の優勝者であるロバートら強豪選手が揃って休養期間であったため、そのシーズンにおいてほとんど現役としては活動していなかったから、というのが大きくはある。

 そのハルカも現在をポケモンコーディネーターとしては休養期間と定めており、テレビやラジオへの出演、各地のコンテストのデモンストレーションをメインに動き回っていたのだが、セレナに触発されて再始動の時期を明確にした。

 このオフが終わり次第本格的に活動再開することを話す。さしあたっての目標として定めたのは、ミクリカップ優勝。

 スマホロトムを弄り寛ぐハルカが見ているポケチューブの動画では、3年前にハルカのミクリカップ優勝を阻んだ張本人である、ポッチャマを相棒に連れた白のニットキャップをトレードマークに被った活発な少女が「大丈夫!」と決め台詞で企画を締めつつ、チャンネル登録を促していた。

 

「あれ?そう言えばサトシたち、どこまで泳いでいっちゃったのかな?」

 

「あー…まぁ大丈夫でしょ。サトシもマサトも水着にボールホルダーはつけてあったし、いざとなったら自分たちでなんとかするわよ。」

 

「むにゃむにゃ、叔父様急に脱いじゃ駄目だよみんな眩しがってるよー…。」

 

 いつの間にか泳いでる姿が見えなくなったサトシとマサトにセレナが気付くもハルカは特に心配することもなく、見ていた動画の高評価ボタンをポチリとしてからコメントに書き込みをしている。

 仮にも華美たるコンテストの世界で生きるにあたり、美容には最新の注意を払い、練りに練り上げた自分たちの水着姿、そこから連想出来るであろう肢体にピクリとも反応しないポケモン馬鹿どもは、それはそれで失敬カモ、というのがハルカの思うところであった。

 夢の中のルチアは、チルルの羽毛を枕に寝返りを打っていた。

 

「嘘でも"似合ってる"とか"可愛い"くらい言うべきよ。」

 

 それはセレナが不憫だからなのと、それともこの日の為に水着を新調した自分が馬鹿馬鹿しく思えたのがないまぜになった、ハルカの誰ともない呟きであった。

 水着を新調したのは、バスト周りがまたキツくなったから、というのがハルカとしての言い分である、大方のところは。

 

 

 

「へへへ、泳ぎも俺の勝ちだなーマサト。」

 

「くっそー!サトシ泳ぐの速すぎだよー!」

 

 女同士のひとときを完全に無視してのサトシとマサトは、女子陣が寛いでいるビーチエリアから遠く離れた別の浜辺まで泳ぎ着いていた。

 明らかな街外れな所まで来ており、彼方には慰霊地であるおくりび山が見えている。

 

「にしてもマサトのシザリガー、パワー凄そうだよな。」

 

「凄そう、じゃあなくて凄いんだなぁコレが。」

 

「しざり。」

 

 ふふん、とマサトは胸を張る。

 このシザリガーもジュカイン同様、サトシが進化前に当たるヘイガニをホウエン時代に愛用していたことがきっかけでその憧れのままにゲットしたことは、決して本人の前で口にはしない。

 

「じゃあバトルしてみないか?」

 

「やるやる!シザリガーのパワーでびっくりさせちゃうもんね!」

 

 遠泳の疲れなどこれっぽっちもなく、2人はポケモンバトルの為距離を取る。その時であった。

 

「きゅう〜。」

 

「きゅうううん。」

 

「な、なんだ?」

 

 2人の気配を察知したのか、一部は遠くから泳いできて、もう一部は海中から何事か?とばかりに顔を出す。

 浜辺に次々と集まってくるのはのりものポケモンラプラスの群れであった。

 

「そっか。きっとこの浜辺はラプラスたちの休憩ポイントなんだ。」

 

「そういうことか。ならバトルで騒がしくしちゃあ悪いよな。」

 

「そうだね。」

 

 耐水処理を施してあるスマホロトムを水着のポケットから取り出し、ポケモン図鑑のアプリを確認したマサトの分析に、サトシはあっさりバトルの意思を翻してはマサトもそれに同意する。

 ラプラスたちの邪魔にならないようにこの場を立ち去ろう、そう目配せし合った時、サトシの視線が群れの中のラプラスの1体に釘付けになる。

 感じる波導からして、それはすぐ確信に変わった。

 

「きゅ?くぅ〜ん!」

 

「ん?あっ!」

 

 群れのボス個体らしき一際大きな体格のラプラスが視線に気付けば、表情を輝かせながら即座に近寄って来る。

 それを迎えるサトシの表情は、旧友を迎えた再会の喜びに満ちていた。

 

「お前!俺たちとオレンジ諸島を旅したラプラスだよな!?」

 

「くぅーーーん!」

 

 サトシの言にラプラスは首肯の意を込め頭を差し出す。

 サトシはその大きくなった頭を全身を使って抱き、優しく撫でた。

 




 『エル』
 15歳。ポケモンパフォーマーで、カロス地方にて頂点に立つ『カロスクイーン』。
 セレナのホウエン遠征も、ゆくゆくは彼女とカロスクイーンの座を奪い合うためのものである。
 エースポケモンはセレナと同様マフォクシーで、トライポカロンやコンテストライブに向けて極限まで特化させているよ。
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