3 years later〜虹の向こうに〜   作:nami73

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 チャオブーは仲間のタイプエネルギーを糧に、エンブオーへと進化し、アデクのウルガモスを退けた。
 師の全身全霊でもって戦い抜いた姿に、シューティーが何を見出したのか、その答えはまだ先のことである…。


死闘!PWT 本戦開始、出揃う4強

「セイソウチュウ、セイソウチュウ。」

 

 サトシとアデクのエキシビジョンマッチの後、ロトムが入ったサービスロボットたちがフィールドの清掃、整備を瞬く間に済ませれば、定刻通りにPWTジュニアカップの本戦が幕を開けた。

 

 

 

「頑張れよーマサト!ユリーカ!」

 

「ぴっぴか〜。」

 

 サトシは大会スタッフに用意されたVIP席にて、試合を観戦することになった。

 観客席最前列でフェンスから身を乗り出しながら間近でルーキーたちのバトルを見たかったのだが、残念ながら立場がそれを許さなかった。

 好きなところで好きなように観戦したかった、という気持ちがありはしたものの、VIP席の快適な空調と、至れり尽くせりなルームサービスの前にとりあえずは水に流すことが出来た。

 何よりフィールド全体をより細かに見渡せるのが、バトルを見るのに都合が良かったのだ。

 

 

 

「そこだよシザリガー!クラブハンマー!」

 

「ざりあ!」

 

「しまった!」

 

ガツウン!

 

 

 

「シザリガーのクラブハンマーが決まった〜!これはギギギアル、耐えられない、ダウンだーッ!!マサト選手の勝利です!」

 

 

 

「で、でかすぎる…!」

 

「ガチゴラス、ドラゴンテール!」

 

「ぐぁらあああ!!」

 

ベチィン!!

 

 

 

「ガチゴラスの強烈なドラゴンテール!たまらずペンドラー、フェンスまで叩きつけられたーッ!!ユリーカ選手勝ち抜きーッ!!」

 

 

 

「ガブリアス、ドラゴンダイブッ!!」

 

「ばぁう!!」

 

「わわわ…。」

 

ドゴォン!!

 

 

 

「ガブリアスの圧力を前に、ブルンゲル吹っ飛ばされたー!!エキシビジョンに登場したアデク氏のお孫さんのバンジロウ選手!お祖父様に負けず劣らずの熱いファイトで勝ち上がりました!!」

 

 

 

「やるなーみんな。」

 

「ぴかぴか。」

 

 危なげなく勝ち上がってゆくマサト、ユリーカ、バンジロウの試合に、サザナミタウンで顔を合わせた時から、また一段とレベルアップしていることをサトシは感じ取る。

 特にアデクとバトルしたこともあり、バンジロウのセンスはまさに祖父のそれを彷彿とさせた。

 ピカチュウもサトシに頷いて見せながら、ケチャップを舐めている。

 

 

 

「さぁPWTジュニアカップベスト4、最後の枠をかけたベスト8第4試合!遠くパルデア地方のオレンジアカデミーより、はるばるやって来ましたオモダカ選手が勝つか、キリキザンの強烈なパワーで圧倒してきたベネット選手がまた超パワーを見せつけるか!」

 

「ポケモントレーナーたるもの、バトルで技の流れ弾が飛んで来たらばそれ相応の対処はしなければならないし、ポケモンが重大な負傷をしてしまいそうな場合は、その身を呈して保護する義務があります。しかしながらこの対面は、まぁ…。」

 

「バトルに直接関係はしないけどまぁ、言いたくなる気持ちも分かります。」

 

 

 

「対戦よろしくお願いします。」

 

「おうよ。」

 

 放送席のナンテとアイリスが話す眼下のフィールド中央では、その長い黒髪とは裏腹に、150cmほどの小柄な少女であるオモダカに対し、180cmに届かんばかりの長身に加え、筋骨隆々で、口髭を蓄えたベネット選手が、彼女の握手に応えながらニヤニヤと笑っている。

 このジュニアカップは規定として、10歳から12歳までが参加可能な年齢範囲であるため、これでも彼は少年なのだ。年齢上は。

 

「へへ、つい最近まで全国参入できてなかった田舎地方からはるばると俺様に捻り潰されに来るとは、ご苦労なこった。」

 

 不敵な、いや、小馬鹿にした笑みで、握手の握力をベネットは強めていく。

 一瞬、オモダカの目元がピクリと動いたが、反応はそれだけであった。

 

「お互いベストを尽くしましょう。」

 

「お、おぉ!?」

 

 グググ…!と涼しい顔のままオモダカも握力を強め返す。

 握り返されたのはいい。問題はその握力だ。

 

「(こ、このガキ、なんて握力してやがる!?)」

 

 ベネットとしては、完全に挑発を返され、盤外での先制攻撃を潰された。

 この小さな少女のどこに、これほどの握力があるというのか…。

 

「くッ!て、てめえなんか怖かねえ!!」

 

 握手を離し、トレーナーサークルにそれぞれ入ってゆく。

 まだ強烈な握力による痺れが残る手にベネットがボールを握れば、オモダカも先発のポケモンが入ったボールを構える。

 

 

 

「これまでの今大会の試合記録を見ますに、オモダカ選手はゴーゴート、クレベースの2体を投入、ベネット選手はキリキザン1体でそれぞれ勝ち上がってきております。情報アドバンテージ的にはベネット選手優勢とも思えますが、チャンピオンアイリスにナンテさん、どう見ますか?」

 

「はい。くさタイプのゴーゴート、こおりタイプのクレベースでは、ポケモンが持つタイプ相性的には、はがねタイプを持つキリキザンには有効打が与えられず、不利なように見えますね。」

 

「でもどちらもその強靭なボディを活かしてのパワフルなじめん技はむしろ得意分野ね。じめんタイプの攻撃ははがねタイプに効果抜群だから、必ずしもオモダカ選手側の開示されてる2体に勝ち目がない、なんてことはないと思います。」

 

 アイリスの補足に、ナンテはコクリと頷いて見せていた。

 

 

 

「いけぇ、キリキザン!」

 

「参ります。」

 

 互いに先発のボールを投げ込めば出てきたのは…。

 

「きるぁッ!!」

 

「ざんき!!」

 

 

 

「おッ、どっちもキリキザンだ!!」

 

「ぴかぁ〜!?」

 

 

 

「なんとこれは!オモダカ選手、ベネット選手、ともにとうじんポケモンキリキザンを繰り出したーッ!」

 

「はい。ミラーマッチになりましたね。」

 

「でもそれぞれ微妙に違いがあるわ。オモダカ選手のキリキザンは平均より少し小さいけど、ベネット選手のキリキザンはとっても大きい。それに1回戦の時からずっとだけど頭に何かついてる。」

 

 

 

「へへッ、まさかキリキザン対決を仕掛けてくるとはな!その自信を叩き潰してやるぜ!」

 

「いきますよ、キリキザン!!」

 

「野郎ぶっ潰してやるぁぁぁぁぁ!!キリキザン!!」

 

「「アイアンへッド!!」」

 

「「きりぁぁぁぁぁ!!」」

 

ガッツウウウン!!

 

 相対するトレーナーが互いに全く同じ技を指示すれば、キリキザンは駆け出し、額の斧のような刃をぶつけ合わせた。

 

「きらぁッ…!」

 

「くッ…!」

 

 その体格差から来るパワーの違いか、競り勝ったのは大きなベネットのキリキザンだ。

 

「ハッハァ!もらったぁ!キリキザン、かわらわり!!」

 

「きりぁぁぁ!!」

 

 競り負け、怯むオモダカのキリキザンに、ベネットのキリキザンは容赦なく効果抜群の手刀を振り下ろす。

 ベネットは完全に勝ちを確信し、ニヤリと笑った。

 

「キリキザン。」

 

「き、らぁっき!」

 

バッシィ!!

 

「な、なにィ!?」

 

 振り下ろされた手刀を、オモダカのキリキザンは真剣白刃取りの要領で受け止めて見せたのだ。

 これには驚かされるもののベネットの余裕は崩れない。

 

「へへッ、構うことはねェ。そのまま押し潰しちまえ!!」

 

「きらぁぁぁ…!!」

 

 

 

「あっ、まずい。」

 

 白刃取りで受け止められた手刀を、ベネットのキリキザンはそのまま押し込みにかかるのを見てナンテが呟く。

 その力押しは、命取りであると察したのだ。

 

 

 

「さすが、素晴らしいパワーです。1回戦から拝見させていただいた通りです。」

 

「ヘッ、負け惜しみかぁ?って、んんッ…!!」

 

 オモダカが涼しい顔のまま褒めてきたので、負けを認めたかとベネットはポケモンから目を逸らしてしまう。

 彼が見たオモダカの瞳の中には、今まさに獲物を仕留めにとびかからんとする獣の眼光があった。

 飛び上がってしまいそうなほどの殺気に、ベネットは震え上がった。

 

「だからこそこの手が決まる。」

 

 獣の眼光が、キラリと光る。

 

「キリキザン、メタルバースト。」

 

「あっ、しまッ…!」

 

「きらあああああ!!」

 

 白刃取りの体勢のまま、オモダカのキリキザンが激しく発光。その凄まじい光が、カウンターの一撃としてベネットのキリキザンを襲う。

 たまらず直撃を受けてしまっては吹き飛ばされ、背中から叩きつけられるフェンスに大きなクレーターを作り、頭部に装飾されていたかしらのしるしが砕け散った。

 完全に目を回している。

 

「ベネット選手のキリキザン、戦闘不能!オモダカ選手のキリキザンの勝ち!よって勝者、オモダカ選手!!」

 

ウオオオオオオオ!!

 

 審判がベネットのキリキザンに駆け寄り、状態を確認しては、すかさず試合終了のコール。オモダカの勝利に、スタジアムから歓声が上がった。

 

「おっしゃ!!ようやったで会長はーん!!」

 

 観客席の一角では、チリを始めとしたアカデミーの生徒たちが、オレンジ色の集団となり彼女を讃えていた。

 

 

 

「試合終了ーッ!オモダカ選手鮮やかなカウンター勝利を決めました!!如何でしょうかチャンピオンアイリス?ナンテさん?」

 

「あの娘、多分最初からこの展開を考えてたんじゃあないかしら。そうでもなきゃ、あそこまで淡々としたバトル運びはできないわ。」

 

「いや全く同意見ですね。ちょっとコレはなかなか、モノが違いますよ。」

 

 アイリス、ナンテともにオモダカを絶賛する。

 パルデア地方からやってきた挑戦者の底の知れなさが、強者の闘志をくすぐるのだ。

 

 

 

「きるぁぁぁぁぁ!」

 

「ご苦労様でしたキリキザン…おや。」

 

 勝利の興奮からか、咆哮するキリキザンを引っ込めようとオモダカがボールを向ければ、キリキザンの体が光りだした。

 それは、まさしく進化の光。輝きが収まれば、そこには威風堂々たる姿があった。

 キリキザン時代の額の刃は巨大な刀のようになり、口元から黒地に赤い刃の刀が左右に髭のように伸び、胴体は、陣羽織のような形状で、後頭部からは母衣のように髪が伸びている。

 

 

 

「あーっと、オモダカ選手のキリキザン、これは、進化かーッ?」

 

「確かアレは…だいとうポケモンドドゲザン。パルデア地方より発見された、キリキザンの進化系。」

 

「このタイミングで進化するなんて、やっぱ"持ってる"わ、あの娘。」

 

 

 

「これはこれは。より一層逞しくなりましたね。頼りにしてますよ、ドドゲザン。」

 

「どげし。」

 

 スマホロトムのポケモン図鑑アプリでデータを確認してから、オモダカはドドゲザンに微笑みかけ、ドドゲザンもそれに頷いた。確かな信頼関係がそこにはあった。

 

 

 

「さて皆さん、これにてPWTジュニアカップ、ベスト4が出揃いましたーッ!!」

 

ウオオオオオオオッ!コブシガアチーゼ!

 

 ジッキョーのアナウンスに、スタジアム全体が沸き立つ。

 イッシュ地方においては新人トレーナーの登竜門として扱われる大会である。

 これより先はテレビ局のカメラが入り、全国ネットでも放映されるのだ。

 

「まず準決勝第1試合!マサト選手vsユリーカ選手!」

 

 スタジアムの電光掲示板にマッチアップされた両者の顔と、これまでの試合のハイライトが映し出されてゆく。

 

「第2試合!バンジロウ選手vsオモダカ選手!30分のフィールド整備の後、準決勝第1試合が行われます!」

 

 PWTジュニアカップ、新時代の若い闘志がぶつかり合う死闘は、ここからが一番熱くなるのだ…。

 

 

 




 『オモダカ』
 10歳。パルデア地方出身のポケモントレーナー。
 オレンジアカデミーの1年生で生徒会長。常に冷静沈着ながら熱いポケモンバトルには目がなく、強者との戦いを至上の喜びとするタイプ。
 エースポケモンはパルデア地方で初めて見つかった、まだデータの少ないキラフロルとドドゲザン。
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