3 years later〜虹の向こうに〜   作:nami73

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 マサトとユリーカの死闘、エース対決。
 双方共に持てる全てを出し尽くし、最後の交錯で立っていたのは、マサトのサーナイトであった…。


死闘!PWT 死闘決着、すぐまた死闘

「こ、これはッ!?ナンテさん、一体、何が起きたのでしょうか!?完全に、ユリーカ選手側の優位であったように見えましたが…?」

 

「メガサーナイトの反撃の芽は、まひ状態による体のしびれで完全に断たれました。しかし、そのメガサーナイトにトドメを刺す前に、どくびしによる猛毒のダメージと、ここまで断続的に発動していた爆発加速の為に使用し続け、最後の一撃に用いたワイルドボルトの反動ダメージ…。これらの積み重なりによって、デデンネの体力が先に尽きてしまったのでしょう。」

 

「その前にじゃれつくのラッシュをメガサーナイトが持ちこたえてなければ、あそこで決着していたわ。コレはひとえに、ほんのちょっとの愛情の差、と言ったところかしらね。」

 

 

 

「さ、な…。」

 

 勝ち名乗りを受け、緊張の糸が完全に切れたメガサーナイトのメガシンカが解除され、ふらりと後ろに倒れ込む。

 その顔は目を回しており、ろくに受け身も取れない危ない倒れ方だ。

 

「危ない!」

 

 そこに素早く体を入れたのは、ユリーカであった。

 いち早くトレーナーサークルから飛び出し、限界を迎えた彼女の体を支える。

 

「ほうらデデンネ。モモンのみのエキスだよ。ゆっくりお飲み。」

 

「でね…。」

 

 同じくトレーナーサークルから飛び出していたマサトは、デデンネを抱え、解毒作用のあるモモンのみを擦り潰したものを飲ませている。

 毒状態により青ざめていたデデンネの表情が、幾分か和らいだ。

 

「毒への応急処置はしたけど、やっぱり集中的な治療はジョーイさんにしてもらうのが一番だね。」

 

「うん。そのつもり。ありがとうねデデンネ。カッコよかったよ。ウォーグルもチルタリスも、これだけ戦ってくれたなら文句言うはずない。」

 

 マサトがデデンネをユリーカに引き渡せば、戦ってくれたポケモンたちに労いの言葉をかける。

 ユリーカに支えられていた文字通り満身創痍のサーナイトがマサトの側に行こうと歩くのを、マサトが歩み寄って抱き締めた。

 

「(マサト、ごめんなさい。上手に戦えなくて。)」

 

「そんなことないよ。下手を打ったのは僕の方さ。それに、きみが頑張れることを知ってるからこそ、バルジーナもフォレトスも、自分の役割を果たす為のチームプレーが出来たんだ。」

 

 愛するトレーナーの腕の中で、力無く崩れ落ちたまま動けないサーナイトがテレパシーで詫びれば、マサトもポケモンたちの活躍を労う。

 

「そして、これだけのバトルができたのも、相手がユリーカちゃんだったからさ。」

 

 マサトがユリーカをじっと見る。

 ユリーカも、マサトを見て深く頷いた。

 

「あたしも、相手がマサトくんだったからこそ、こんなハッスルできたんだよね。」

 

 互いに視線を合わせたまま、どちらともなく右手を差し出し、ガッチリと握手を交わした。

 

「「また戦おう、親友!そして、同じ時代に生まれた、熱きライバルよ!!」」

 

ウオオオオオオオ!ウオオオオオオオ!ユユウジョウパワー!!

 

 

 

 固く握手を交わしてから、それぞれ入場して来た出入り口よりフィールドを後にする。

 マサトとユリーカが立ち去ったのち、すかさずロトムが入ったサポートロボットが整備を始める。

 次に行う準決勝第2試合のための準備だ。

 

 

 

「お願いします。」

 

 フィールドより退場したユリーカは、スタジアム備え付けのポケモンセンターに直行していた。

 ロビーに出れば、すぐにジョーイさんにポケモンたちを預け、回復を依頼する。

 相当の死闘だった。間違いなく、これまで経験してきた中で、最も激しいバトル、ポケモンたちのダメージは、そう簡単に完治はしないであろうことは明らかであった。

 

「試合お疲れ様でした。それではお預かり致します。」

 

「よろしくお願いします。」

 

 ジョーイさんにペコリとユリーカは頭を下げる。

 その頭に、大きな手が置かれる。頭を下げた先の視界に、黄色い影が映る。ピカチュウだ。

 

「お疲れ様。いい試合だったぜ、ユリーカ。」

 

「ぴぃかちゅう。」

 

 サトシだ。

 試合が終わり、居ても立っても居られなくなって、VIPルームから飛び出して来たのだ。

 ピカチュウもユリーカを慰めるように、その足元に引っ付き、擦り寄って見せる。

 

「俺もさ。たくさんバトルをして、たくさん負けてきた。どれもこれも、すっごく悔しかった。」

 

「うん…。」

 

 サトシが言葉足らずながらに慰めようとしてくれている。その事実が、自分は負けたのだと否応なく直面させる。

 これは、優しさなのだ。

 同じポケモンバトルの世界に生きる知己への、敗北を知り、更なる高みを目指せという、サトシなりの激励だとユリーカには分かった。

 

「でも、そのたくさんの悔しい!って気持ちが、今の俺を作ってくれたんだ。ユリーカも、今日のことをパワーに変えてまた頑張ればいいんだよ。な?」

 

「うん…うん…。」

 

 悔しくて、悔しくて、涙がとめどなく溢れて来る。

 ユリーカが頭を下げたまま、鼻声で返事をするので、サトシは撫でていた頭から手を離す。

 泣くほど悔しいと思えるのなら、心配は要らない。

 これからまだまだユリーカは強くなる。そう、確信出来たからだ。

 

 

 

 フィールドを後にしたマサトは、満身創痍のサーナイトをボールに戻し、その足で一路大会本部のある部屋へ向かっていた。

 その道中、すれ違いの形でナンテと顔を合わせた。

 

「あっ、先生!いいんですか?放送席は。」

 

「トイレ休憩ですよ。準決勝、お見事な勝利でした、マサト。」

 

 恩師からの称賛に、マサトは頭を掻く。

 準決勝を勝ち抜き、あとは決勝を残すのみとなったにしては、勝利の余韻を感じている気配が見られない。

 ナンテは、マサトがあの決着に納得しきれていないのであろうことを察した。

 

「誰がなんと言おうと、最後までフィールドに立っていたのはあなたのポケモンです。そこは誇りなさい。」

 

「先生…はい。そうですよね。」

 

 ナンテにマサトが頷くも、なおも表情は煮え切らない。

 ここに来てナンテは、いち選手であるマサトが、この先の大会本部に用事があると言うことを見抜けば、その煮え切らない表情の意味もまた察してみせた。

 

「あなたの判断は、ポケモントレーナーとして正しいと思いますよ。私も同じ立場だったらばそうしたでしょう。そういう気持ちを持ったトレーナーになってくれて、私は嬉しい。」

 

「先生…。」

 

「早く済ませてしまいなさい。外から見た限りでは、シンプルなダメージだけなら、デデンネのそれよりサーナイトの受けた方がはるかに大きい。」

 

「はいッ!」

 

 迷い、葛藤から抜け出し、晴々とした表情でマサトは頷き、通路を駆け出してゆく。

 そのこれからも成長を重ね、大きくなり続けるであろう背中を頼もしく思いながらナンテは見送った。

 

 

 

「ちくしょう、ちくしょうッ!ちくしょうッ!!あいつら、すげーバトルしやがって!!」

 

 控え室で待機しているバンジロウが意味もなく飛び跳ねる。

 マサトとユリーカの試合を見て盛大に触発され、早く自分の試合の時間よ来い、と待ち侘びていた。

 マサトとは、彼がイッシュに上陸したばかりにバトルをして不覚をとっている。

 絶好のリベンジチャンスであったのだ。そんな中、施設内アナウンスが耳に入り、バンジロウは驚愕させられていた。

 

 

 

「緊張か?武者震いか?どっちにしてもらしくねェな。」

 

「グズマ先輩。」

 

 同じ頃、もう片方の控え室。

 様子を見に来たグズマは、オモダカが普段とは違う精神状態であることを見抜く。

 柔和な表情を向ける彼女には、確かに強張りがあった。

 

「半々、と言ったところでしょうか。どちらにしても試合となればやることは変わりませんが。」

 

「器用な真似できる性分してねェしな。」

 

 オモダカは、こと勝負事に関して、一切の手加減ができない性質である。

 大一番を迎え、不安定な性情を抱えてる現状において、ズバリと突き刺すグズマの物言いは、オモダカにとっては救いとなった。

 そこに、施設内アナウンスが入る。

 それを聞いたオモダカの双眸が一瞬丸く見開かれては、すぐにまた普段のものに戻った。

 

「こいつは…とんだビッグチャンスだな。」

 

「普段通り、全力を尽くすだけです。」

 

 

 

「ロトムたちによるフィールド整備が完了し、いよいよ準決勝第2試合が開始されます!実況は引き続きこのジッキョー!解説にポケモン評論家のナンテさん、スペシャルゲストにチャンピオンアイリスをお招きしてお送りします!お二方、よろしくお願いします。」

 

「はい。よろしくお願いします。」

 

「よろしくお願いします!」

 

「と、おおっと?ここで、準決勝第1試合を勝ち抜いたマサト選手より、大会本部に通達があったようです。」

 

「ふむ。」

 

「『先の試合によるポケモンたちのダメージがあまりに深刻な為、ポケモン愛護の観点から、決勝戦参加の辞退を申告、大会本部はこれを受諾した』とのこと!」

 

「エースのサーナイトがあれだけダメージ受けてたものね。」

 

 マサトの棄権に、アイリスはさもありなんと頷く。

 

「おっと、大会本部よりたった今、さらに追加で通達があったとのことでこれも読み上げさせていただきます。『準決勝第1試合で敗退したユリーカ選手も、マサト選手と同様の理由から3位決定戦への出場辞退を表明、これも大会本部は受諾した』ということです!」

 

「なら…これからやる第2試合が、今大会の優勝者と3位入賞者を決めるということですか。」

 

「大会規定に則り、そうなります!」

 

 ナンテにジッキョーは即座に切り返した。

 試合の上ではマサトが勝ったが、実質両者共倒れ。そこに力の差はありはしなかった。準決勝第1試合はそれを頷かせる顛末であった。

 そして、次代のホープが誰かを決めるPWTジュニアカップ、その優勝トロフィーを掲げるのはバンジロウか、オモダカかの二択と相なった。

 

「つまり、この試合に勝った方とあたしはバトルする、ってことね。」

 

 にわかにアイリスの視線が鋭くフィールドに注がれる。

 ジュニアカップ、オープンカップ問わずPWTの優勝者とは、表彰式の後にエキシビジョンマッチを戦うことになるのがイッシュチャンピオンの責務である。

 自分と戦うことになるであろう相手を、徹底的に見定めようというのだ。それは、完全に戦う者の目をしていた。

 

 

 




 ユリーカのデデンネの『瞬速ワイルドボルト』
 ワイルドボルトの技で発生するでんきエネルギーを身体能力強化に振り分けて瞬間的に凄まじいスピードを叩き出す。
 弱点は従来のワイルドボルト同様発動するたびに体力を消耗してしまうことだ。
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