3 years later〜虹の向こうに〜   作:nami73

83 / 302
 ポケモンハンターに追い詰められていたリーリエを救ったのは、ポケモン評論家の男であった。
 騒ぎがひと段落したタイミングで雪崩れ込んできたのはリーリエの兄グラジオで…?


スカーレットアドベンチャー 不穏な影と狙われる災厄、集う者たち

 リーリエ同様、家族一丸になっての父親探しの旅にガラル地方カンムリ雪原にて終止符が打たれた後、グラジオはアローラリーグの第2回大会に参加し、見事優勝を果たした。

 イリマにカキという、地方有数の実力者を破っての文句なしの結果と言えた。

 その勢いのまま、彼は四天王への挑戦権をかけたチャンピオンリーグへと駒を進める…。

 

「シルヴァディ、戦闘不能!ピカチュウの勝ち!よって勝者、セキエイ大会代表ヒロシ選手!」

 

 アローラの外の強者たちも集まる全国の舞台、その壁は、流石に高く、厚かった。

 それが実感できたことにより悔しくもあり、臨むところと燃え上がることが出来たのも、グラジオを支える家族の問題が全て解決しているのが大きいだろう。

 

 

 

「リーリエ1人では母さんも心配してうるさくなるだろうからな。」

 

 更なる飛躍のために新たな力、強さを求めるグラジオにとって、リーリエのパルデアへの進学は渡りに船と言えた。

 母親のルザミーネは、子供たちが揃って親元を離れるという選択にそれはそれは難色を示したが、帰ってきた父親のモーンがそれを宥め、兄妹の背中を押してくれた。

 オレンジアカデミーの寮に入ってすぐの頃は、ほぼほぼ毎日あった母からの電話は、今は月に1回程度までに落ち着いているのは、ここだけの話である…。

 

 

 

 閑話休題。グラジオは、リーリエからのSOSをポケラインで受け取り、すぐに急行してきたのだ。

 その瞳は、ナンテにあからさまな敵意を剥き出しにしている。

 

「お前も"L"とかいうやつらの仲間か!?」

 

「L…?」

 

 グラジオがボールを握る手の人差し指をナンテに向ける。

 L、という単語にナンテは『枯葉被り』を見る時同様、首を傾げるよりない。

 

「ちょっと兄様やめてください!この方はわたくしとこの子を助けてくれたんです!」

 

「なに…?」

 

「カ…シ…?」

 

 食ってかかるグラジオの前にリーリエが躍り出る。

 兄の口振り的に、ナンテを助けを呼ぶハメになった張本人と誤解していると見た故である。

 この辺りは流石に兄妹、考え方からして筒抜けと言えるのだろう。

 

「むう…。」

 

 リーリエが頬をむくれさせ両手を腰に置きにじり寄ってくるのを見てグラジオは、妹の言が真実であると認識する。

 改めてナンテを向き、頭を下げた。

 

「申し訳ない。ここに来るまでに、怪しい輩に足止めをされて気が立っていた…。」

 

「それが、Lとか言う奴ですか?」

 

 ナンテにグラジオは首肯する。

 そこに、ドスドス、と地面を揺らすかのような足音が近付いてきた。

 

「な、なんだ!?」

 

 グラジオがリーリエを守るように前に出て身構える。

 ナンテはというと、自然体のままであった。

 チラ、と顔色を窺ったギャラドスのグルーヴも、ライチュウのテディも、危険を察知している様子はないのを察したからだ。

 

「うおおお、リーリエさぁ〜ん!!」

 

「ぱちち〜!」

 

 地鳴りの主は、服の上からでもわかる逞しいボディをアカデミーの制服にパツパツに閉じ込めた、強面だがダンディズム溢れる顔立ちの少年であった。

 とてつもなく濃い雰囲気を漂わせながらその足元にはでんきリスポケモンのパチリスが並走していた。

 

「あっ、サワロさん!」

 

「おぉ、リーリエさん!ご無事でしたか!グラジオさんも来られていたならワガハイは不要でしたかな?」

 

ムッワァァァァ…

 

 むせかえるような筋肉の圧に、グラジオは一瞬立ちくらみを覚えながらも踏み止まる。

 この強面の少年、サワロは兄妹とクラスメイトである。

 リーリエが飛ばしたSOSを知らせるポケラインは、クラスグループに発信されていた。

 だからこうして彼も助けに馳せ参じたのだ。

 

「ぱちぃ。」

 

 パチリスが眠りこけたままのシロンを見ては、近くの木陰へ走り、きのみを抱えて彼女の鼻先に置いた。

 

「ぐう…ぐう…きゅわ?」

 

 きのみの渋めな香気を吸って、シロンが飛び起きる。

 パチリスが持ってきたのは、ポケモンのねむり状態を解除する効果があるカゴのみであった。

 

「シロン!ありがとうございますパチリスさん。」

 

 リーリエにお礼を言われ、パチリスは得意げに胸を張る。

 その時だった。彼方にナンテが振り向く。

 

「テディ!」

 

「らーい!」

 

 ナンテの号令にライチュウのテディが空高くジャンプする。

 

バッチチチチチィッ!!

 

 その丸々としながらも俊敏な動きを見せた橙色のボディに引き寄せられたのは、膨大なでんきエネルギーを内包した砲弾…。

 

「でんじほうだと!?」

 

「ライチュウさんが!」

 

「心配ご無用!」

 

 不意に放たれた1発にグラジオは驚愕し、リーリエにナンテが即座に答える。

 

「らぁぁぁい!」

 

 その言葉通り、テディは着弾したでんじほうを吸収して見せる。

 そのエネルギーをそっくりそのまま己がパワーアップに繋げたのだ。

 

「これは特性ひらいしん!」

 

「不意打ちは失敗しましたが、どうしますね?」

 

 ナンテの呼びかけに、シュバ、と姿を見せた相手にグラジオは目を見開いた。

 

「お前は…ポケモンハンターL!性懲りもなく!」

 

「はて、あなたとは初対面のはずですが?」

 

「ぴろぴろ〜ん…。」

 

「なにィ…!?」

 

 姿を現し、名指しされた黒ずくめの衣装にサングラスをかける黒髪の青年は、グラジオを見て首を傾げて見せる。

 その隣にはバーチャルポケモンポリゴンZが、不可思議なボディで宙を飛んでいる。

 

「彼ですか。妹さんを助けに来る道中に出くわしたのは。」

 

「あぁ…その取り巻き共々、確かに倒したはずだが…。」

 

「ほーん…。」

 

 グラジオの言に嘘はない、そうナンテは直感した。

 ならばこの目の前にいる男はなんだ、という話にはなるのだが…。

 

「んもぉ〜!!」

 

バッ!ドシィィィン!

 

「今度は何事!?」

 

 サワロが仰天する。

 対峙していたポケモンハンターLとグラジオらの真っ只中に降り立ったのは、ケンタロス。

 その背には、サトシとオモダカがいた。

 

「やっぱり、リーリエとグラジオだ!久しぶり!」

 

「サトシ!?」

 

「おや。」

 

「ワールドチャンピオンですと?」

 

 ポケモンハンターLの表情が曇る。サトシの登場は完全に予想外であったようだ。

 

「サトシ、あの人、ポケモンハンターです!」

 

「ポケモンハンター!?確かにあの格好は…。」

 

 リーリエが指差す黒ずくめの男、そのコスチュームにサトシは既視感を覚えた。

 

「(あいつに…Jにそっくりだ。)」

 

 ポケモンハンターJ…シンオウ地方の3つの湖に眠る伝説のポケモン、ユクシー、アグノム、エムリットを狙って暗躍し、幾度となくサトシたちを追い詰めた難敵である。

 

「どうします?このまま一丁やり合いますか?」

 

 サトシがLを睨む中、ナンテが挑発をする。

 それにLは、首を横に振った。

 

「冗談でしょう。"三鳥越え“に加えてワールドチャンピオンまで来られてはどう考えても無事では済まない。ここは、退散させていただきます。」

 

 LはポリゴンZをボールに戻し、とりもどきポケモンシンボラーを出してはその背に乗る。

 一気に飛び去るつもりだ。

 

「逃がすものかッ!ルガルガン!」

 

 グラジオが投げ込んだボールから飛び出したのは、暗い赤色をした体色の人狼を彷彿とさせるオオカミポケモンルガルガンだ。

 退却を図るLを捕まえる算段で飛びかかるだったが…。

 

「トリックルーム。」

 

「ぼらららら〜ん…。」

 

「ぬううッ!?」

 

 シンボラーが展開した特殊空間により、ルガルガンのスピードが完全に殺されてしまった。

 スローモーションになったルガルガンを嘲笑うように、シンボラーは飛翔する。

 

「ごきげんよう!また近いうちにそのさいやくポケモンはいただきに参りましょう!」

 

「待てぇーッ!」

 

 Lを乗せたシンボラーが離脱していく。

 

「くっ!逃げられた…!」

 

「わおーん!」

 

程なくトリックルームが解除され、獲物を失ったルガルガンはそのまま着地し、悔しそうに吠えるしかなかった。

 

「さいやくポケモン…。」

 

 ナンテが『枯葉被り』を見る。

 組織立ったポケモンハンターが狙いを付けるこのポケモン、いったいどれほどのものなのか…。

 

「大丈夫でしたか皆さん?」

 

「生徒会長さん!」

 

 ケンタロスから降りたオモダカがリーリエたちに駆け寄り、安否を確認する。

 彼女もその後に『枯葉被り』を見た。

 

「このポケモンは…?」

 

「急に祠から出て来たんです。そこをポケモンハンターたちに襲われて、無我夢中で、一緒に逃げてたんです。」

 

「そうでしたか。大変でしたね。」

 

「ともかく、この場に留まり続けるのは悪手ですな。彼奴等がまたやってくるやも知れませぬ。」

 

 急いでテーブルシティへ戻ろう、そう提案するサワロがそらとぶタクシーを手配する。

 

「こいつはどうする?」

 

 グラジオが『枯葉被り』を指して問う。

 ポケモンハンターの狙いがこの子である以上、放置して帰るわけにもいかないのだ。

 

「流石にボールに入れないままイキリンコさんたちに運んでもらうには無理がありますよね…。」

 

「ならリーリエがゲットしてやればいいじゃん。」

 

 最初に出会って、一緒にいたのがリーリエなんだろ?そうあっさりとサトシは言ってのける。

 重大な事象に巻き込まれた野生ポケモンを、人道的観点から一時的にゲットし、危機から救い出す…。

 サトシもかつて、ラプラスや、密猟者により離れ離れになっていたいわはだポケモンヨーギラスを保護目的でゲットしていたことがある。

 その経験からの提案であった。

 

「わたくしが!?でも…。」

 

 リーリエがチラ、と『枯葉被り』を見る。

 ポケモンゲットはトレーナーだけではない。ゲットされるポケモンあっての話だ。

 いくら状況が差し迫っているからとは言え、当事者の気持ちを確かめたいというのも当然の理屈であった。

 

「カシ〜…。」

 

 当の『枯葉被り』はと言うと、のそのそと這いながらリーリエに擦り寄って見せる。

 そこに敵意は感じられなかった。

 

「決まりですね。」

 

「リーリエ。」

 

 オモダカが頷き、グラジオが促せば、リーリエは覚悟を決める。

 ボールを取り出しながら語りかけた。

 

「あの…あなたさえよければ、わたくしたちと来てくれませんか…?」

 

 リーリエがボールをそっと置けば、『枯葉被り』は鼻先で触れ、ボールの中に入ってゆく。

 

モニョモニョモニョモニョ…ポーーーン…。

 

 自分から入ったのもあり、『枯葉被り』はすんなりと捕獲機能によるボール契約を受け入れた。

 

「ありがとう。あなたのこと、絶対に守ってみせますから。」

 

 ボールを拾い上げたリーリエは、しっかりと腰のホルダーに収め、皆に大きく頷いて見せた。

 ちょうどその時だ。そらとぶタクシーが到着したのは。

 




 『サワロ』
 10歳。オレンジアカデミー1年生。
 大柄で筋肉質な体格とは裏腹に甘いものや可愛いものが大好きな少年。
 ポケモンもパチリスのような可愛らしい系統をゲットしているよ。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。