3 years later〜虹の向こうに〜   作:nami73

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 ステルスロックを逆用してパワー全開のマリルリの猛威が迫る。
 オモダカは踏み止まり、クレベースの超耐久と巨体を生かしてその進撃を食い止めるのだった。


スカーレットアドベンチャー チャンピオンテスト ミシェリvsオモダカ④

「500キロ台のクレベースの巨体に押し潰されたマリルリはたまらずダウン!オモダカ選手がまたリードを奪いました!シゲルさん、挑戦者はこのままペースを掴んでいけるでしょうか?」

 

「うーん。なんとも言えませんね。ただ言えるとしたら…。」

 

「言えるとしたら?」

 

「リーグチャンピオンの座にある実力者の底力は、まだまだこれからが本領でしょう。」

 

 

 

「おそらくここからトップは本腰を上げてくるだろうな。」

 

「そうなのですか、兄様?」

 

 

 

「カエンジシとマリルリは様子見ぐらいのテンションだな。この辺りから本調子のギアを入れてくるはずだ。」

 

 シゲル、グラジオ、グズマはオモダカがまた数的有利を取れたことに対して少しも楽観していない。

 トップチャンピオンの放つ覇気に籠る殺気を感じ取っていた。

 

 

 

「気をつけろよオモダカ。ミシェリさんはここから本気を出してくる。」

 

「そのようですね。」

 

 感じ取る波導の形質が変化し、シゲルたち同様サトシもオモダカに注意を促す。

 ミシェリと直接対峙するオモダカからすれば、放たれる殺気を一番間近で浴びているのだ。

 

「(恐ろしい…同時に、ワクワクもしている。)」

 

 新たに繰り出すポケモンの入ったモンスターボールを互いに見せ、それぞれ大きく振りかぶる。

 

「そろそろ"取り"に行かせてもらおうか!!」

 

「臨むところです!!」

 

 同時に投げ込まれたボールからポケモンが飛び出す。

 

「がぁぁるぉ!!」

 

「おっ、ブリガロンか!」

 

「ぴかぁ!」

 

 オモダカの4体目は、トゲが生えた外殻を鎧のようにまとった姿が特徴のとげよろいポケモンブリガロン。

 サトシの仲間シトロンや、ライバルのアランも愛用するカロス地方初心者用ポケモンのうち1体である。

 

「アカデミーに入学した際支給された子です。タフさならピカイチ!」

 

 オモダカが太鼓判を押せば、ブリガロンは任せろ!とばかりに頷いて見せる。

 対するミシェリの3体目は…。

 

「あぁる?」

 

 黄色い鎧を装着している人型のポケモンだ。

 体色は胴体は黒色だが、円筒型の腕や脚は先へ行くほど赤くなってゆく。頭部中央は、3つの穴が空いた黒色の板状の防具で覆われ、顔の縁は赤色で、耳は黄色で鋭く尖っている。後頭部からは赤色の炎が噴き出し、胴体には黄色を基調として胸と脇腹に赤い筋の入った鎧を装着しており、肩のあたりには大きい肩当てが浮いている。

 

「あれは…。」

 

 初めて見るポケモンに、サトシはポケモン図鑑アプリを起動させる。

 

『グレンアルマ。ひのせんしポケモン。カルボウの進化系。多くの武勲を立てた戦士の鎧によって進化した姿。忠誠心の厚いポケモン。』

 

「ん?」

 

「ぴかぴ?」

 

「いや、なんかあのグレンアルマ、目元の炎の色が図鑑と違うなって。」

 

 図鑑でみる瞳の炎は灼熱とした赤、ミシェリの繰り出したグレンアルマの瞳は、青白く輝いていた。

 

 

 

「さぁ前半から後半に差し掛かろうというこのタイミングでトップチャンピオンミシェリ!エースポケモンを投入ーッ!!一気に畳み掛ける算段かーッ!?」

 

「学術的に見れば単なる色違い…だけど、トップチャンピオンとともに凄まじい戦いを潜り抜けてきたことでいつしかついた異名が、"蒼眼極炎のグレンアルマ"…。ただでさえタイプ相性で出し負けた上に、エースとぶつかるとは。」

 

 定石で考えるなら、今すぐにでもブリガロンを引っ込めて然るべきだろう。しかし、当たり前のことを当たり前にするだけで栄冠を掴めるならば誰も苦労はしない…。

 

「ある意味ここが、挑戦者がチャンピオン足り得るかどうか、その資質の有無を測る分水嶺かもしれないね。」

 

 

 

「(交代は、出来ない。)」

 

 オモダカは、この『出し負け』を前にブリガロンのまま戦う決意を固めた。

 キラフロルを始め、タイプ相性で考えればグレンアルマを相手に有利に立ち回れるポケモンはしっかり用意してきてある。

 しかし、ことチャンピオンを相手にセオリー通りの戦いだけで全てをまかり通せるかと問われれば、答えはNOであろう。

 

「(良い目をしておる。)」

 

 ミシェリからも、オモダカに交代の意思がないのが見て取れた。絶対的な相性不利を背負わされ、セオリーに逃げない選択をする挑戦者に対し、また評価を上げていた。

 

「(勝てるかどうかはまた別じゃがの。)グレンアルマよ!」

 

「るぉぁ!!」

 

ブッピガン!

 

 グレンアルマが肩当てを両腕に移動させ、重ね合わせる。

 腕全体を大砲にした一撃必殺のキャノン・モード。その姿は、オモダカが幾度となくテレビや動画サイトで見てきたものと全く同じ、いや、実際に見る分、それら以上の凄みを押し付けてくる。

 

 

 

「おーっと蒼眼極炎のグレンアルマ、早々にキャノン・モードに移行!挑戦者の威を認めたかーッ!!」

 

「元々相手を舐めてかかるタイプでもないみたいだけどね。だからこそ付け入る隙が少ないんだ。」

 

 

 

「ブリガロン、突撃形態を!」

 

「がぁろッ!!」

 

 オモダカの指示に頷き、ブリガロンは顔の前に両手の拳を合わせる。すると両腕の棘の部分の甲殻が半円状に広がって左右で組み合わさり、巨大な円形の盾を形成した。

 相手の攻撃を防ぐニードルガードだ。

 

「突撃ッ!」

 

「がろっしゃーい!!」

 

 ブリガロンはニードルガードを展開したまま走り出す。

 狙いは当然グレンアルマ。接近して殴り合おうという算段が周りには見えた。

 

「猪突猛進ときたか。」

 

 爆弾の爆発が至近距離で直撃してすら本体を防ぐという鉄壁の盾を構えながら突撃を開始するブリガロンを前に、透き通った声がまるでナイフのような切れ味を帯びたかのような錯覚を、聞こえたものたちに感じさせる。

 ミシェリの瞳は、獲物を捉えた獅子の眼光を携えていた。

 

「グレンアルマよ、構わぬ。撃てぃ!!」

 

「るぁま。」

 

 肩当ての砲口を迫るブリガロンへ向ける。グレンアルマからすればいつもと変わらぬ作業であった。

 標的に狙いを定め…撃つ。

 

「"獅子王炎陣大爆破"!!」

 

クワッ!ドドォォォ!!

 

 それは、蒼白い光の奔流だった。

 ほんの一瞬、砲口が煌めいたかと思えば、青白い光が瞬く間にブリガロンを飲み込んでゆく。

 

「り、ぁがぁ…!」

 

「ブリガロンッ…種をッ…!!」

 

 甲殻ごと焼き尽くされ、吹き飛ばされるブリガロンは、最後の力を振り絞って植物の種子をフィールドに残す。

 

「が、ぁ…がく。」

 

 それが、精一杯であった。

 全身黒焦げになり、仰向けで倒れたブリガロンの容態をチェックし、審判のハッサクがコールする。

 

「ブリガロン、戦闘不能!グレンアルマの勝ち!!」

 

ミシェリ…残りポケモン4体。

 

オモダカ…残りポケモン4体。

 

 

 

「一撃必殺、凄まじい威力のアーマーキャノンが炸裂ゥーッ!!ニードルガードの防御ごとブリガロンを焼き尽くしたーッ!!」

 

「タイプ相性、レベルの差など条件はあれど、まもるに類する防御系の技すら突き破る…まさに獅子王の異名が銘打たれるに相応しい一撃だ。」

 

 

 

「今の技…カキのZワザと同じくらい凄い威力に感じた。」

 

「奴のZワザも確かに蒼眼獄炎のグレンアルマが放った獅子王円陣大爆破とは威力だけなら五分と五分だろう。だが、奴に限らずZワザはポケモンもトレーナーも多大な体力消耗が避けられん以上、撃てるのは1試合に1回が限度だ。そもそもルールからしてそうなってるんだが。」

 

「兄様。」

 

「だが奴は…通常のグレンアルマがアーマーキャノンを撃つのとさほど変わらんリソースであの技を使える。そこが、脅威だ。」

 

「カキのZワザと変わらない威力の技を、何発も…。」

 

 リーリエが呟いたところに、珍しくグラジオが多弁に語る。それだけ戦慄し、同時に胸を躍らせる。

 紛れもない本当の強者を前に、武者震いまでしていた。

 

 

「Hey、ブラザー。あの一発、アンタのグソクムシャならどうだい?」

 

「…どうだかな。」

 

 それは否定ないしは無理だ、というニュアンスの返答であることをライムは付き合いから知っていた。

 グズマは認めざるを得なかった。あのグレンアルマの一撃は…今の自分ではどうすることもできない、と。

 だからこそ今より強くならねばならないと、改めて誓っていた。

 

 

 

「ご苦労様でした。ブリガロン。」

 

 最低限の仕込みは出来た…そう思いながら一瞬フィールドを見る。

 そしてすぐにポケモンを投入する。繰り出したのは…。

 

「ぱるぁ〜!」

 

「「めしゃ〜!」」

 

「ぴかぴ!」

 

「あぁ、ドラパルトだ!」

 

 サトシが対等な再戦を願う最大の目標、ダンデが切り込み隊長として愛用するドラゴンポケモンであった。

 すぐさまドラパルトはグレンアルマ目掛け、真っ直ぐ突撃を開始する。

 

「シャドーボール、一斉射撃!!」

 

「らぱぱぱぱぱぱぁ!!」

 

「「めしゃしゃしゃしゃしゃあ!!」」

 

 スピードに乗りながらドラパルトが口を開き、左右の突起カタパルトに待機させたドラメシヤと共に闇球を連射する。

 その弾幕を前に、グレンアルマはたまらずガードさせられる。

 

 

 

「あーっと挑戦者オモダカ、ドラパルトを繰り出してはまた距離を詰めに行ったーッ!!」

 

「迂闊に動けばまた焼き払われるのがオチだろうけど…。」

 

 シゲルは、ブリガロンが倒れる前にフィールドに残した種子が気になっていた。

 そしてそれはミシェリも同様であった。

 

 

 

「何を狙っておるかは知らんが…撃ち落とせグレンアルマよ!サイコショック!!」

 

「るぁま〜…カッ!!」

 

 グレンアルマの蒼眼から放たれたサイコパワーが、ドラパルトの飛行ルートに爆発を起こす。

 

「めしゃあ!?」

 

「ぱるぅッ…!」

 

 爆発に呑まれ、頭部左側面の突起内に待機していたドラメシヤが脱落する。

 ドラパルト自身の前進も止められ、撃墜されてしまった。

 

「今じゃ!」

 

「今だッ!」

 

 ミシェリが右手を突き出せばグレンアルマはドラパルトに砲口を向け、オモダカは指をパチンと鳴らす。

 

ズオオオオッ!!

 

 鳴らされた指に呼応して、ブリガロンの残した種子がツタを伸ばし、グレンアルマを絡め取った。

 ドラパルトを狙い撃つ際に意識を向けたその一瞬、そこを突かれてはかわしようがなかった。

 

「なんとッ!?」

 

 やどりぎのタネか!そう脳裏で呻く。

 

「るぁまぁぁぁ…。」

 

「のろい攻撃!」

 

 ツタに全身を絡め取られ、身動きを封じられるグレンアルマ。

 それを見るドラパルトの全身から、ドス黒いオーラが放たれた。

 のろい、即ち呪い。やどりぎのツタに加え、呪いのスピリチュアル攻撃を叩き込んだのだ。

 

「小癪なッ!!」

 

 ほんのわずか、ミシェリの声色に苛立ちが混ざる。

 ツタに絡め取られたグレンアルマの砲口が、再度蒼白い光を発していく。

 

「すべて焼き払え!"獅子王円陣大爆破"!!」

 

「る、るぁぁぁま!」

 

カッ!ドワァァァァァッ!!

 

 再度放たれた蒼の奔流が、自身を絡めとるツタを焼き払い、フィールド全体に大熱波を撒き散らす。

 

「くうううッ!?」

 

「オモダカ!!」

 

 オモダカの華奢な身体が強烈な熱波にさらされては、たまらずトレーナーサークルから吹き飛ばされたのを、セコンドエリアで待機していたサトシが受け止め、大事を回避した。

 

「大丈夫か?」

 

「私より、ドラパルトは…。」

 

 ブリガロンに放たれたものより、さらに出力の強まった獅子王円陣大爆破を間近で叩き込まれたドラパルトはひとたまりもないであろうことは、オモダカも薄々分かっていた。

 

「フフ、まさか…大爆破を前半のみで2度切らされるとはのう。」

 

 ぐったり倒れ込むドラパルトに駆け寄るハッサクを視線で追いながら、ミシェリは仁王立ちで腕を組んでいる。

 豊かに実った胸が組まれた腕により強調されているが、彼女は気にも留めない。

 元より練り上げられた自らの肉体もまた誇りであり、隠す道理もないのだ。

 

「ドラパルト、戦闘不能!グレンアルマの勝ち!!」

 

ミシェリ…残りポケモン4体。

 

オモダカ…残りポケモン3体。

 

 ハッサクのコールにより、オモダカの残りポケモンが3体となったのを聞き、ミシェリはセコンドエリアに引っ込んでゆく。

 ドラパルトをボールに戻したオモダカも、サトシに肩を借りながら同様である。

 ここで試合は一旦中断され、10分間のクーリングタイムに入るのだ…。

 

 

 




 チャンピオンテスト ミシェリvsオモダカ

 試合方式 フルバトル

 前半戦スコア表

 ミシェリ    オモダカ

 カエンジシ   キラフロル→クエスパトラ
 カエンジシ● クエスパトラ◯

 マリルリ◯ クエスパトラ●

 マリルリ● クレベース◯→ブリガロン

 グレンアルマ◯ ブリガロン●

 グレンアルマ◯ ドラパルト●
 
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