別・原神の世界に転生したので自由に生きたい   作:ヘルメットのお兄さん

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2 自由気ままに

 次に意識が覚醒するとそこは草原だった。

 俺はセスの名を与えられ、あの神の頼みを聞くことになったが肝心なことを忘れていた。

 

「ここはどこなんだ……?」

 

 ここがどこなのかも、そしてそもそも何の世界なのかも聞いていない、というか力を貸すと言われたがその具体的な内容も聞いていない。

 もしや最悪のスタートを切ってしまったのかと絶望的な想像を浮かべたが足元に黒電話が落ちていた。

 何故黒電話……? と思う間もなくけたたましい音が黒電話から鳴り響くと俺は恐る恐る受話器を耳に当てた。

 

「も、もしもし」

 

『セス、聞こえるか』

 

「あ、聞こえます」

 

『よし、これくらいなら干渉は無いか。いいか、説明を忘れていたから幾つか話しておく。まずお前の体だが、鏡か何かで見てみろ』

 

「鏡ですか……?」

 

 俺は慌てて周りを見渡すと、少し離れたところに人の像を囲う様に湖が出来ている事に気が付き俺は全身を確認しに行った。

 

「で……デカい……?!」

 

 そこに居たのはゆうに二メートルは超えるであろう巨体の男だった。

 シンプルな緑のシャツに暗めの青いジーパンを履き、腰には小さなポーチが付いていた。

 顔付きもまあ……悪くはなさそうだ、しかし何故こんな体にしたのか疑問がある、こんな無駄にデカい必要があるだろうか? 

 

『どうだ? お前の体を並大抵の男共よりも強くした、これで力の捜索に不便は起こらないだろう』

 

 どうやら効率を求めた結果らしい、ひとまず納得していると追加の情報が入った。

 

『それと今お前は虚……あーとにかく空間を操作できる筈だ。使い方は直感でわかるだろう?』

 

「直感と言ったって……」

 

 言われて少し考えてみる、空間を操作……かどうかはわからないが世界に何かエネルギーのようなものが漂っているのを感知した。これを弄ればいいのだろうか? 

 俺は手を前にかざしエネルギーの流れを止めてみる、すると目の前の空間が歪み停滞しているような状態になった。

 

「た、多分できました」

 

『その感覚を忘れるなよ、工夫次第で大抵の困難は解決できる』

 

「はい」

 

『最後に、私の力の在りかについてだが……今お前と繋がっているお陰で大まかにだが気配を見つけた、横を見てみろ』

 

 俺は神に従い横を見ると城壁と湖に囲まれた大きな城が見えた。

 

『あそこに私の力を感じる、期限は問わないから回収を頼むぞ』

 

 そしてその言葉を最後に、黒電話は消滅してしまった。

 

「……とりあえずあの城に行くか」

 

 俺は神の言葉に従い城に向けて足を進めるのだった。

 

 

 

 

 

 そして10分後、俺は謎の集団に襲われていた。

 

「Kuzi unu ya zido !」

 

 俺の膝程しかない集団は全員変な仮面を着け、棍棒を振り回しながら俺を威嚇している。

 中には俺に迫る巨体の奴までおり物騒な斧を構えこちらを狙っている。

 

「クソっ、城まですぐそこだってのに……」

 

 俺は逃げる手段を模索していたが考える時間を消費した代償に俺は囲まれてしまっていた。

 蛮族たちは武器を構えるといよいよ俺に襲い掛かろうとしてきた。

 

「まだ上手く使えるかわからないけど……!」

 

 目の前の空間と遠くの空間を繋げ、途中の空間を省略する。

 蛮族たちが瞬きをする間もなく、俺はその場から消えさってしまった。

 

 

 

 

 

 

 暫くして、蛮族たちは突然消えた俺に諦めたのか肩を落としながら去っていった。

 

「行ったか……さてどうしよう」

 

 冷や汗を拭いながら安堵する。俺は遠くにあった巨大樹の傍に向かって移動したつもりだったが、何かを失敗したのか木の上に引っかかってしまった。

 体を揺らしても木は俺を放してくれなかった、もう一度転移すればいいがまた失敗して木の中に埋まるのは嫌だ。どうしたものかと考えていると突然俺の上から声が聞こえた。

 

「大丈夫かい?」

 

 声の主は俺より高い位置にある枝に座り、情けなくぶら下がる俺を見下ろしていた。

 

「大丈夫に見えるか?」

 

「元気な返事が出来るみたいだし、大丈夫に見えるかな?」

 

「知らなかった。俺は演技派みたいだ、実は大丈夫じゃないから降ろしてくれないか?」

 

「いいよ? その代わり、後でりんごをちょうだいよ」

 

 そう言うと少年は俺の引っかかった服を掴み、少しずらすとあっさりと俺は解放された。

 

「ん……? おあああああ!!!」

 

 そして重力からも解放された。

 頭から地面に落ちた俺は暫く痛みに悶絶していると着地した少年が手を差し伸べてくれた。

 

「うーん、さっきも聞いたけど大丈夫かい?」

 

「……だ、大丈夫……」

 

 俺はゆっくりと立ち上がると少年は驚いた様な表情を見せた。

 

「わお……! 立ち上がると凄く大きいね、もしかして巨人の子だったりするのかい?」

 

「巨人? いや、正真正銘人の子だ……あ?」

 

 そこまで言ってから俺は目の前の少年から違和感を感じ取った、神と会話した時に感じた感覚に近いか? 

 

「どうしたんだい?」

 

「……い、いや。なんでもない」

 

「そう? そうだ! 君に聞きたい事があるんだけど、いいかな?」

 

「聞きたい事?」

 

「うん、実は君がさっきあそこでヒルチャールに囲まれてるのを見ていたんだけど……」

 

「(ヒルチャールっていうのか……というか俺見て見ぬふりされてたのか?)」

 

「突然君の姿が消えたと思ったら木の枝に引っかかっていたでしょ? 元素力も感じなかったし一体どうやったんだい?」

 

 この少年は俺の空間能力(仮)には気が付かなかったらしい、説明してもいいのだが上手く伝わるだろうか? 

 

「あれはこう……エネルギーみたいなのが空間に漂ってて……それをギュッとしてバッてやるとワープできるんだよ」

 

 自分なりに全力を尽くした説明は、少年の表情が全てを物語っていた。

 

 

 

 

 

「それで、君はモンド城に用があったのかい?」

 

「モンド城……っていうのか、うん。あそこに行きたいんだが」

 

 少年の問いに俺は素直に答えると少年は良い事を思いついた、という表情になった。

 

「僕が案内してあげようか? ある協力をしてくれたらね」

 

「本当か?」

 

「もちろん! そうだ、名前を言っていなかったね。僕はウェンティ、世界最高の吟遊詩人とは僕の事さ!」

 

「俺はセスだ、よろしくな」

 

 ウェンティと挨拶を交わした後、俺はウェンティの案内を受けモンド城へ向かった。

 

 

 

 

 

「ようこそセス! 自由の国、モンドへ!」

 

「おお……凄いな」

 

 城内に入ると俺はその街並みに思わず声を漏らした。

 俺の知識で表現するならば中世風の街並みだが、そんなありきたりな表現では足りない感情が襲ってくる。

 

「それで……ウェンティの協力ってなんだ?」

 

「まずはついてきて、そうしたら教えるよ」

 

 そして少し歩くと到着したのは……酒場だった。

 

「……酒場?」

 

 そこで俺はウェンティの考えに思い至る、ウェンティは確か吟遊詩人と名乗った。という事はここで歌いおひねりを貰う協力をしてくれと頼んできたのだ。

 それなら自分にもできる事が思い浮かぶ、詩に合わせて演奏するもよし、隣で踊りを披露してもいい、とはいえ知識しかない自分では失敗の可能性がある……いっそサクラをするだけでも効果はあるだろう。

 そんな考えを巡らせながらウェンティの言葉を待っていると、ウェンティは俺の手に何枚かの金貨を握らせた。

 

「……なにこれ」

 

「もしかしてモラも知らないのかい? これを持ってお酒を買ってきて欲しいんだ」

 

「……もしかして俺の協力って……」

 

「うん、僕一人だと門前払いされちゃうんだよね」

 

 ……勘違いした俺が悪いと思いつつ、ウェンティの為に酒を幾つか購入するのだった。

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