戦闘訓練を終えた次の日のHR。
「戦闘訓練お疲れさん。
映像と評価を見たから、一言ずつ言ってくぞ。」
相澤先生から戦闘訓練の講評を一言ずつ述べられていく。
「禪院、動揺を誘うのは手段として有りだが、相手で遊ぶのは辞めろ。」
「はい。」
相澤個人としては禪院のやり方は評価していた。
相手のメンタルを揺さぶるやり方は実際に有効であるし相澤自身も手段として活用している。
しかし、摩虎羅は完全に轟で遊んでいた。
敵役とかではなく、純粋に轟のトラウマを抉って愉しんでいた。
「轟、お前はコスチュームを見直せ。
戦い方は個人の裁量だが、見た目から欠点が見えるのはヒーローとして論外だ。」
「…はい。」
クラスでも実力者として認識し始めてる二人に対して厳しい評価であった。
因みに二人は隣同士の席だが、朝から目も合わず挨拶もない。
「以上だ。
さて本題だが。」
((また、臨時テストか?))
相澤の本題という言葉に勉強が苦手な生徒が反応する。
「学級委員長を決めてもらう。」
「「「学校ポイ事キターーー!!」」」
相澤の言葉に今度は殆んどの生徒が湧き上がる。
雄英高校のヒーロー科の学級委員長という立場は普通なら魅力的なポジションだ。
ヒーローを目指すならリーダーシップを養えるし、集団を導く立場に興味を持つのが当然だ。
実際、委員長に立候補してないのは摩虎羅と轟、甲田だけで他の全員が立候補し自己主張している。
摩虎羅は学級委員決めと分かった瞬間に寝た。
学生生活に既に飽きてる摩虎羅の身としては雑用は御免である。
摩虎羅が寝ているとトントンと机を叩かれた。
「(これ、投票用紙。)」
「…ん?」
前の席の口田から差し出された白紙の紙と黒板を見比べると、摩虎羅と轟を除く全員の名前が書いてあった。
(どうでもいいな。)
受け取った紙を握りつぶして教卓に置いてある、恐らく八百万が用意したであろう投票箱に投げた。
吸い込まれるように投票箱に入ったのを確認した摩虎羅は再び寝ようと頭を伏したが。
「腕良い!!
てっイヤイヤ流石に雑過ぎひん!?」
ゴミを投げ捨てるが如く投票した摩虎羅に思わず麗日お茶子はツッコミを入れた。
「別に誰でもいいだろ。
雄英に入れる頭なら仕事は出来る。」
「えぇー…」
摩虎羅と周囲の温度差に麗日は引いた。
「禪院君!
委員長というクラス引いては君自身を引率する立場を適当に決めては行けない!!」
「アホか。」
「ケロ、でも飯田ちゃんの言う通りだわ。」
「そうだそうだ〜!」
「膝上30センチを実現しようぜ!!」
「チッ」
舌打ちをしながらも、教壇に向かい渋々投票箱から投げ入れた紙を取り出した。
(…取り敢えず女は無し。)
禪院的思考で雄英女子は一票を失った。
果たして摩虎羅は三年間で禪院的思考を取り除くことが出来るのだろうか。
(煩いのは論外、バカも論外。
…緑谷で良いか。)
一番静かという理由で緑谷に一票入った結果を含め、緑谷はクラスメイトの中で5票を得て委員長に、副委員長は八百万に決まった。
勿論、禪院摩虎羅に入れた人間は一人も居ない。
時間が経ち、昼食の時間。
(こんなもんか。
腕は良いが、食材を考えたらこの程度か。)
ランチラッシュの作る料理をそれなりと評しながら摩虎羅は食事を摂っていると誰が声をかけてきた。
「お、禪院めちゃくちゃ食うな!!」
声をかけてきたのは切島鋭児郎だった。
後ろには瀬呂範太と上鳴電気そして爆豪がいた。
「…食事中だから静かにしろ。」
「おう、悪いな。
空いてる席座るぜ。」
瀬呂が一言詫びて摩虎羅隣に座ると切島鋭児郎は正面、その隣に爆豪がおり上鳴は瀬呂の隣に座った。
「それ特盛だろ?
その上でハンバーガーまで行くのかよ。」
摩虎羅の前には特盛カツ丼とアメリカサイズのハンバーガーが置いてある。
特盛カツ丼は異形系やエネルギー消費が激しい個性向けのランチであり米で1kg、カツで500gという規格外でありハンバーガーはアメリカ基準サイズかつパティ三倍、トマトマシマシ、ソースダクダクのスペシャルバーガー。
家では和食の多い禪院摩虎羅にとって雄英高校のランチは貴重なジャンクを食べるチャンスだったりする。
「そんだけ食うのってやっぱり個性関係する訳か?」
「ま、そんなとこだ。」
摩虎羅の現在の肉体は細胞単位でその寿命や強度は人間とかけ離れた強さを持ち、内臓は消化能力及び吸収能力に優れており、超低燃費高出力を実現している。
しかし、入学前の禪院直哉との戦闘による肉体の損失に対する適応として肉体の密度の高まりと栄養の貯蓄量が増えて肉体の50%を失った状態で再生しても元の密度と体格を維持できる仕様になり、現在摩虎羅はその貯蓄を行うために食事を行っている。
「相変わらず、そっけないな。」
「ケッ、テメーの個性がバレんのにビビッてんだろ。」
「俺の個性を説明するのは面倒くさいんだよ。
別に俺が強いって事だけ知ってれば良いだろ。」
一応、事実であるがそれを許さない人間が一人いた。
「アぁン!?
口だけの強さ何か認める訳ねぇだろ!!」
爆豪も轟との試合は映像で見ていたが、情報としては冷気に強いと言う事と見た目以上に早く動けるという事だけ。
目立っていたのは煽りのレベルの高さで身体能力についてはまだ未知数であるが、爆豪は勝てると踏んでいた。
「あんまり上ばかり見てると疲れるぞ?」
「半分野郎に勝ったくらいで、調子乗ってんじゃねぇぞ!!」
焚き火にガソリンを撒くが如く、摩虎羅の言葉は爆豪の逆鱗に触れる。
「この二人はだめだな。」
「ああ。」
瀬呂と上鳴はこの二人が一緒の時は逃げようと心に決めた。
食事が再開され、徐々に口数が少なくなった頃。
激しいアラームが雄英高校内を駆け回った。
「!?
なんだ??」
「避難訓練とかじゃねぇよな!?」
摩虎羅を除く全員が立ち上がり、周囲を確認する。
『セキュリティ3が突破されました。
生徒は速やかに野外に避難してください。』
「侵入者!?」
「やべーよどうする!?」
「…。」
雄英高校に侵入者が入るという前代未聞の事態に慌てる三人。
爆豪は周囲を見渡して状況を把握しているようだ。
「食事中に騒ぐな、恥ずかしい。」
「いやいや、何呑気に食事してんだよ!!
侵入者だぜ!?」
摩虎羅は周囲のパニックを気に返せず、食事を続けている。
その姿に上鳴や切島は驚愕した。
「今動いた所で入口のアホ共と混ざるだけだ。
最悪敵が来ても広い食堂ならやりようはある。」
確かに摩虎羅の言う通り、警報でパニックになった生徒たちが一斉に入口に詰め寄り逆に動くことが出来なくなっていた。
「天下の雄英生が聞いて呆れる。」
嫌味を言う余裕を見せる摩虎羅を見て、三人は落ち着きを取り戻していた。
爆豪も摩虎羅の言い分に理があると判断したのか、静かにその場に留まっていた。
「…何かいつも通り過ぎて落ち着いて来たわ。」
「それな。」
その後、食堂でのパニックは飯田の機転で何とか落ち着きを取り戻し、一連の行動で飯田が学級委員長になったとさ。
早く敵を煽らせたい。