USJから数日達、A組は授業再開の日となった。
幸い怪我人が居ない為、全員無事に集合となる筈だった。
「あれ、摩虎羅は?」
瀬呂が摩虎羅の席が空いてる事に気付く。
「禪院は家庭の事情で暫く休みだ。」
摩虎羅は今回の襲撃に禪院家の人間が関わっている可能性が高いため、京都の本邸へと戻っていた。
「それと、この間の事件でお前らは禪院の実力を知ったと思うが、参考にするなよ。
アイツはそうだな、『素行不良で免許取り消されて再取得の為に学校通いなおしてるプロヒーロー』位の気持ちで接しとけ。」
((素行不良で免許取り消されて再取得の為に学校通いなおしてるプロヒーロー!?))
余りにも的確かつ酷い評価であった。
「お前らも除籍になるような振る舞いをしなければ、三年間でアイツと並ぶヒーローに成れると思っている。」
生徒達は相澤の言葉が慰めでは無いことは、今までの付き合いで分かっている。
摩虎羅の強さが露呈してなお、自分達に可能性があると本気で思ってくれている。
「まあアイツの事は置いといて、次の戦いが迫っている…!」
クラス中が暖かい気持ちになっていると、次の戦いという言葉にまだ、USJの戦いは続いているのかと気が引き締まる。
「…雄英体育祭が迫っている!」
「「学校ぽいのキターー!!!」」
盛り上がり間違い無しのイベントにA組が揺れた。
一方その頃、禪院家本邸の座敷牢にて。
「で、何かお前は情報持ってんの?」
捕らえられた禪院扇は手首を落とされた上で、拘束されていた。
尋問をするのは禪院摩虎羅と直哉の二人だ。
結論から言うと扇は直毘人によって泳がされていたのだ。
だからUSJ事件の後、多少の反抗はあったが即座に捕らえられた。
「にしても情けねぇな。
折角身内の足引っ張って個性を複数貰ってんのに親父の腕一本落とすのが精々とはな。」
禪院家の被害は禪院直毘人の左腕一本。
兄弟の義理として直毘人自らが捕縛しようとした際の扇の反抗によって落とされたのだ。
投写には影響が出るだろうが、そもそも次代が決まっており現役を退くつもりだったので影響は薄い。
「黙れ…!」
「言っとくけどお前が思う以上の実力差だからな?
親父は一応ヒーローだから生かすつもりでいて、お前は敵で殺すつもりで挑んで負けたんだぞ?
本当に惨めだな。」
「…!!」
ここで歯を食いしばり、怒号を挙げなかったのは最期の矜持なのだろうか。
「で、お前は何を知ってんの?」
「…何も知らん。」
「だろうな。」
そもそもの話、禪院家の情報は闇社会において高額で取引される情報の一つであり『禪院家の人間が情報を流したがってる。』という話は一瞬で広まり、ブローカーが群がる。
その誰かとAFOの繋がりを証明するのは不可能に近い。
(AFO自身がバラした時点でコイツは不要な駒。
襲撃の一件の罪をコイツに被せて本命のスパイを隠す算段だろうな。)
状況からみて扇が渡した情報は摩虎羅の個性の概要程度の情報だろう。
「泳がされて、餌に釣られてまんまと裏切って。
本当にこれが俺の腕だと思ったのか?
頭でも親父に負けてて、何で勝ってんだお前?」
扇が掴まされた偽物の腕を適当に振るう。
豚の皮と肉で作ったそれっぽい模造品にまんまと扇は引っかかったのだ。
直哉と摩虎羅の決闘が秒読みと予測した直毘人は、AFOの存命の可能性が浮上した時点で仕込んでいた。
「で、情報の対価にAFOから個性貰ってクーデター成功したら俺の腕を送るって計画か?
あのさ、良い歳したおっさんなんだから家の事とか考えようよ。」
「考えた結果だ!!
あの御方に准じなければ、禪院家は終わりだ!!」
「…アホくさ。」
禪院家の価値観は一つ。
強者である事。
だから禪院摩虎羅は次期当主であり、納得の行かない直哉は挑み負けて認めたのだ。
何処かの誰かに頭を垂れる弱者は禪院には要らない。
だからこそ無個性や弱い個性は認められない。
肉体的に戦闘に向いてない女性は下に見る。
眼の前の存在に興味を亡くした摩虎羅は後ろで控えていた直哉へと顔を向けた。
「コイツってガキいる?」
「雑魚個性の女の子が二人やな。」
「じゃあ子供含めて除名でコイツは去勢して公安に渡すか。
コイツの個性系統はもう要らんだろ。
時期みて轟家から婿か嫁貰おうぜ。」
個性系統とは禪院家特有の呼び名で、効率よく個性を伸ばすために統制した血統図の事だ。
今、この場で禪院家の炎個性の血統が途絶える事が確定した。
「随分温い処置やん。」
「俺一人で片付けたもんだからな、公安に身柄をくれてやる。
つーか、この程度の事はお前がやれよ。
何の為に生かしたと思ってんだ。」
禪院だけで方を付けるなら、扇はとっくに病死扱いで死んでいる。
しかし、今回の一件はUSJへ襲撃してきた敵の本体を摩虎羅が制圧しAFOがバックに居ることを明らかにした。
ヒーロー公安委員や警察、雄英高校にも手柄を分配せねばならない。
「いやー次期当主の手を煩わしたくなかったんですけど、頭の骨粉々で昨日までベット上でして、堪忍つかーさい。」
ワザと敬語と適当な方弁で嫌味を言ってくる直哉の頭は顔も含めて全面包帯が巻かれており、その上から骨を固定するためであろう革ベルトで縛られている。
「今の方が男前じゃん。
良かったな良い面になって。」
「眼科行けや、次期当主。」
『フフフ、兄弟仲が良くて羨ましいよ。』
「「!?」」
突然、扇の気配が変わった。
『やあ、会いに来たよ禪いん゙ー』
「ダルい。」
AFOの挨拶への返答は拳だった。
ニヤリと笑みを浮かべた扇の顔に拳がめり込んでいた。
物理的に口を潰され、扇も意識が飛んだのか力が抜けて気絶していた。
「ええんか?」
「こういう輩は話を聞くだけ無駄だろ。
どうせ狙いは雄英高校だし、用があるなら向こうで声かけてくる。」
「オールマイトか。」
「それ以外に襲う価値無いだろ。
じゃ帰る。」
本当は摩虎羅と直哉と直毘人の三人からゲラ笑い浴びせようかと思ってました。
光の扇さんルートなら多分、ギガントマキアの腕落としていた。