僕のまこーらアカデミア!   作:ボリビア

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こういう話書くの好き


保護者同士の話し合い

 観客席はある男により酒の匂いで満ちていた。

 

「退屈極まって、遊んでおるのう。」

 

 観客席1列を堂々と占拠し、寝転び、騎馬戦終了後に激怒するお茶子に対して適当に流している摩虎羅を肴に酒を飲む男。

 義手を器用に使い、酒入れの瓢箪をグビグビ飲む姿は完全に球場にいる酔っぱらいにしか見えないのだが、着崩している着物や艶のある瓢箪が放つ上品なオーラ、それらを自然と使いこなす様が只者ではない事を示していた。

 暫くすると、得体のしれない酔っぱらいを警戒するように観客が避けて出来た空白に一人のヒーローが近付いてきた。

 

「…ちょっと良いだろうか、ご老人。」

 

「あ?

 おー、エンデヴァー!

 久しいな!」

 

 エンデヴァーが声をかけた酔っぱらいは禪院直毘人であった。

 

「来い、話がある。」

 

 会場の人気の居ない、通路の奥に二人は移動するとエンデヴァーは直毘人の胸倉をつかみ壁に叩きつけた。

 

「アレは何だ!?

 どう掛け合わせればあのような怪物が生まれるのだ!!」

 

 エンデヴァーの怒気を涼しい顔で流し直毘人は余裕の笑みを浮かべていた。

 

「カッカッ!

 焦っておるのう、エンデヴァー。

 最高傑作とやらが活躍せんで不安か?」

 

「黙れ!!!」

 

 エンデヴァーにとって禪院摩虎羅の存在は晴天の霹靂であった。

 自身の最高傑作たる轟焦凍すら霞む圧倒的な個としての強さに脱帽し絶望を感じざる負えなかった。

 禪院家が代々個性婚を行う一族である事は知っていた。

 しかし、己の作った最高傑作ならば禪院家を超えてオールマイトを超えるものだという自信があった。

 

(なのに、なのに何だあの怪物は…!

 アレは向こう側の人間…!)

 

 オールマイトを本気で越えようとしていたからこそわかる。

 強さだけなら完全に向こう側の存在。

 

「アレは正に突然変異の特異点、オールマイトに並ぶ怪物。

 貴様の子供の様な凡百の延長線を超えた存在よ。」

 

「あれが突然変異だと!?

 そんな訳が…!!」

 

 正直に突然変異だという話す直毘人を信じられないエンデヴァーに対して直毘人は更に饒舌になっていく。

 

「ワシの名を賭けて断言してやる。

 禪院家の個性系統から完全に外れた異端中の異端にして禪院家の極限、アレが生まれる為に禪院家があったと吠えても良い!」

 

 突然変異と言い切った直毘人だが、摩虎羅は禪院家でなければ生まれていない存在、初代から続く数多の個性の掛け合わせ、積み重なってきた坩堝があったから故の摩虎羅であると直毘人は確信していた。

 

「なら、なんで、俺は…!!」

 

 オールマイトに並ぶ逸材の存在がエンデヴァーの心に皹を入れていく。

 脳裏に過るのは最悪の未来。

 摩虎羅の後塵を拝する己の最高傑作の姿。

 

(それなら、一緒じゃないか…!

 焦凍はオレと同じ立場…!

 俺は、なんの為に今まで!!)

 

 家族すら投げ入れて燃やしてきた野望が潰えていくばかりか、己と同じ立場に追い遣られる息子を幻視し、蓋をしていた己の弱さが溢れ出そうとしてくる。

 後、一歩で折れる。

 だが…

 

「のう、エンデヴァー。

 最強が欲しいか?」

 

 項垂れ、弱まったエンデヴァーの腕から開放された直毘人の声がスルリと染みていく。

 

「摩虎羅の血が欲しいか?」

 

「…なんのつもりだ。」

 

「何、摩虎羅はまだ種を残しておらぬし候補が居らぬ。

 奴自身が見つけても構わんが、それとは別に家として複数の受け皿が欲しい。」

 

 直毘人は禪院家の当主だった立場として摩虎羅の血統を残しながら発展させるためにも、複数人の血が必要だと考えていた。

 

「貴様の家ならいくらでも用意出来るだろう!」

 

「儂の話をもう忘れたか?

 アレは禪院家の極限、次を迎えるには外の血が必要なのだ。

 お主には娘が居るだろう?」

 

 たしかに、禪院家の人間を用意するのは簡単だ。

 しかしその血統から生まれてくる子供は摩虎羅に並ぶことはあっても超えることはない。

 停滞は退化。

 摩虎羅の個性を発展させる、あるいは一点でも超えられる個性を生み出すためには禪院家から離れた優秀な血が必要。

 即ちエンデヴァーの血筋を寄越せと言っているのだ。

 

「…貴様。」

 

「悪い話ではない。

 アレは確実にオールマイトに並ぶ逸材。

 その子供なら十分に強く、その血筋は将来を期待できる。」

 

 お前の息子が駄目なら野望を孫に託せ。

 摩虎羅を超える、炎の個性。

 未来を見据えた直毘人の提案は心が折れかけたエンデヴァーにとって魅力的に感じてしまった。

 

「氷叢を紹介した縁故にお主に一番に話を持ってきた訳だが、どうする?」

 

 別にエンデヴァーで無くても構わない。

 何故なら、禪院家の力は途方もなく、優秀なヒーローの血縁者を用意するのは簡単である。

 

「では、息子の晴れ舞台が残ってるからな。」

 

 顔色から種を蒔けたと確信した直毘人は答えを聞かずに横をすり抜け立ち去っていく。

 泣きそうな顔で轟炎司はその背中に震える手を伸ばそうとして固まる。

 

「俺は……」

 

 暫くその場から動けなかった轟炎司はやがてフラフラと力無く会場を去っていった。

 一定の成果を得た直毘人は酒盛りの続きをすべく意気揚々と観客席に戻ると己の用意したツマミを食べている摩虎羅がいた。

 

「競技はどうした?」

 

「本戦以外に出る訳ないだろ。」

 

 レクリエーションが行われている会場で摩虎羅を探す声が聞こえる気がしなくもないが、二人はスルーした。

 

「で、何しに来た。」

 

「カワイイ息子の応援以外にあるか?」

 

 巫山戯た事を抜かし、本心を隠す直毘人に呆れながら摩虎羅はツマミを噛み千切る。

 

「面倒事作るなよ。」

 

 一応、釘を差したが直毘人は笑い飛ばし酒を飲むだけであった。

 

「ハッハッハ!

 体育祭を目茶苦茶にしておいてよく言うわい!

 そう言えば、女は作ってるのか?」

 

「今は興味ねえな。」

 

 一般的な禪院家の人間ならば、ヒーロー科に入るような自己主張が激しい前に出る女を嫁に迎える事は恐らくない。

 あるとしたら徹底的に心を圧し折って従順にして漸くそばに置くか考える。

 だが、摩虎羅は圧倒的強さ故に誰であろうと自然と三歩以上後ろに控えさせられる為、A組女子は十分に可能性はあるのだ。

 

「つまらん。

 騎馬戦で組んだ女子ならゲロの詫びだと言って上手く仕込めるだろうに。」

 

「丸顔が微妙。」

 

 候補が居ないと知った直毘人は先程の話をしてしまうことにした。

 

「そうか、ならエンデヴァーに吹っ掛けたのは正解か。」

 

「面倒事作るなって言ったよな?」

 

 先程の話題からしてそういう話である事を摩虎羅は察した。     

 轟家の人間を嫁に取れば、轟焦凍と親戚になる訳で摩虎羅個人としては十分な面倒事に当てはまる。

 

「この程度の事、当主なら面倒に入らん。

 それにエンデヴァーと氷叢家の混血が手に入れられるチャンスを見逃す程、儂は阿呆ではないわ!」

 

「チッ。」

 

 直毘人の考えに一定の利があると思った摩虎羅は腹いせに直毘人の瓢箪を叩き壊してその場を後にしていった。

 

 

 

 

 

 

 

 




 普通に考えたら氷と炎の個性因子持ちとか禪院家が見逃すはず無いよね。
 エンデヴァーは曇ってこそ美しい。
 書いてみたけどやっぱり本家が一番だわ
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