摩虎羅がブラブラと適当に出店で暇を潰しつつ、会場に戻るとA組の女子がチアガールの格好をしていた。
「何してんだ?」
「摩虎羅も見ろよ最高だろ!!」
「ヒーロー目指してる女が媚びた格好すんのは悪くないな。」
「ズレてるけど、最高って事だろ!!」
近くで興奮している峰田と上鳴に対してズレた同意をしながら摩虎羅は改めてチアガールを観察すると、殆んどの女子が恥ずかしそうにしているが葉隠だけがポンポンを振り回している。
透明人間である葉隠は視線に鈍く、羞恥心も薄いからか周りを気にせずチアガールを楽しんでいた。
摩虎羅には全部見えているのだが、その事実を本人は知らない。
何となく摩虎羅が眺めていると葉隠と目が合う。
「あ、摩虎羅君!
何処行ってたの!?
レクリエーション全部サボったよね!」
摩虎羅がレクリエーションをサボった事で迷惑がかかったらしい葉隠がポンポンを振りかぶって怒りを示しながら近付いてくる。
「やる訳無いだろ。」
「代役探すの大変だったんだから!」
「俺の分も目立てて良かっただろ。」
「そういう問題じゃないって…?
…ねえさっきから『目』合ってない?」
反省する気がない摩虎羅に怒っていた葉隠は気付いてしまった。
「服着てるからだろ。」
服を着てるから何となく顔の位置が分かると言い訳をするが、葉隠はある証言を突き付けてくる。
「緑谷君が摩虎羅君の個性に対して考察してたけど。」
『…外部からの刺激に対して個性が発動するなら、葉隠さんも見えてる可能性があるのか…』
とある日に緑谷に個性を聞かれて『適応』の触りだけを教えた事があったのだが、どうやら緑谷のオタクっぷりを舐めていたらしい。
(本戦で戦う時に殺すか。)
心の中で緑谷の人生を終わらせる事を決定しつつ、どう切り抜けるか考えていると葉隠が更に追撃してくる。
「初めての戦闘訓練の挨拶の時に何回か背中のソレ、鳴ってたよね。」
「…鳴ってない。」
摩虎羅は誤魔化すが、葉隠の疑いの目は更に強まっていく。
「見えてるの?」
葉隠の疑いの目が更に強まっていく。
「…。」
「ねえ、見えてるの?」
(チッ。)
この状況が面倒だと判断した摩虎羅が心中で舌打ちをしながら口を開く。
「…別に、減るもんじゃないだろ。」
開き直りながら肯定した摩虎羅の言葉に葉隠の顔が真っ赤に染まる。
「ーーー!!」
声に鳴らない悲鳴を上げながら、手に持ったポンポンを振りかぶり摩虎羅に殴りつけるが摩虎羅にダメージは無い。
されるがままに放置していると、息を切らした葉隠の手が止まる。
「はぁ、はぁ、何処まで見えてるの!!」
「全部。」
輪郭どころか肌の色も髪色も表情も全て見えていると摩虎羅は正直に話すと再び葉隠の攻撃が再開した。
「ーーー!!!!」
葉隠の脳裏には今まで授業風景や、授業中に見えないから良いかと欠伸したり等ちょっとだらしない行為をしていた光景が浮かぶ。
初めての戦闘訓練から今までこの男には全部見えていたと言う事実に羞恥が沸く。
「仕方ねぇだろ、見えたんだから。」
ここまで一切の謝罪の無く開き直る姿も葉隠の怒りに油を注ぐ。
「その場で言ってくれても良いよね!!!」
「そうだな。」
「最低!」
ポンポンを投げ捨てて思いっきりビンタするが摩虎羅の頬には紅葉は付かない。
葉隠はこれ以上話しても無駄な事を悟り、怒りを隠さずにその場を離れていく。
「…めんどくせぇな。
あ?」
その場に残された摩虎羅は面倒臭いと思うだけで反省する気も謝罪する気も全くなかった。
そんな摩虎羅の背中をつつく感触で下を向くと峰田が居た。
「なあ、後で教えてくれよ葉隠フェイスとかリアルおっぱい。」
「お前ヤバいな。」
今のやり取りを何処まで聞いてたか知らないが、聞いたうえでこの質問をしてくる峰田は素直にヤバい。
(…このままだと俺は同類になるのか?
仕方ねぇ、フォローするか。)
そんなヤバイ奴と同類に思われるのは禪院家としてのプライドが許せる筈もなく、峰田から視線を反らして摩虎羅は葉隠を探しに行こうとするが。
『まもなく本戦が始まるZEー!
出場者は会場に集合しろよー!!』
集合のアナウンスにより、葉隠の一件は後回しにされた。
地雷は序盤で爆発させとけって誰かが言ってた。