『さーて!!
一回戦、第6試合!
選手宣誓からここまで圧倒的な力と性格を示したヤベー奴!
禪院摩虎羅ー!!』
(どうすっかな。)
プレゼント・マイクの紹介に盛り上がる観客を尻目に摩虎羅はフィールドに上がりながら、葉隠に対するフォローを考えていた。
(一般人は幾らで納得するんだ?)
先程、急いで探し出した出店でビールを飲んでいた父親の意見を思い出す。
『親父、女の裸みたらいくら払えば良い?』
『そんなもん、谷間に札束一本挟ませれば解決よ。』
(未成年でヒーロー科の生徒だから一般人よりは払うべきだよな…。
2倍、いや3倍か?)
『対するは、1-A組副委員長!
クールビューティでクリエイティブリッチガール!!
八百万百ー!!』
(女の事は女に聞くか。)
「なあ、八百万。
お前の裸って幾らだ?」
葉隠と八百万では未成年と雄英高校のヒーロー科という情報が同じで令嬢という身分がある分、上位互換の八百万の裸の値段が分かれば、判断が付くだろうという思考の結果からはじき出された最低な質問が摩虎羅の口から飛び出した。
「はい?」
いきなりの意味不明かつセクシャルに関わる質問に八百万の頭は一瞬真っ白になったが。
(裸?
!!…これはもしかして試合前のマイクパフォーマンスという奴ですわ!!)
このご令嬢、体育祭本戦の予習として過去の大会映像だけでなく何故かプロレスや格闘技の映像も予習した結果、斜め上な発想を持っていた。
「…ゴホン!
私の裸体、お金程度で買えるとお思いですの?」
八百万の精一杯頑張って煽りとしてそれっぽい台詞に対して摩虎羅は顔を顰めた。
「…親父、適当こいたな。」
『試合開始〜〜!!!』
(金じゃないなら何で解決するんだ?)
眼の前の相手ではなく別のことを考えていると摩虎羅に対して八百万が仕掛ける。
(摩虎羅さんへの中途半端な攻撃は意味がない!
けど、これは試合!)
両肩から作り出したのは二門の大砲。
普通なら反則間違い無しだが、相手は摩虎羅。
その強度を知っている八百万は躊躇なく砲丸を放つ。
『初手から大砲!?
ありかよ!』
『摩虎羅相手なら有りだろう。
ま、ダメージよりも場外に押し出すのが目的だろうがな。』
(まだですわ!
砲身を使い捨てて、連続で放つ!)
使い終わった砲身を体からパージし、新たな砲身を体からどんどん作り出しては放つ。
隙のない一点集中の轟音が会場に響き続ける。
(300kgの重さがあるとは言え、これだけの砲身と連射が直撃すればダメージはともかく場外に押し出せる筈!)
やがて轟音が止まる。
八百万の体力が尽きたのだ。
「ハァ、ハァ…!」
肩で息をしながら、砲撃による煙の先を睨みつける八百万の視線の先からゆっくりと影が近付いてくる。
「…俺の裸は幾らだ?」
あれだけの砲撃を受けたにも関わらず上半身のジャージの全損以外に摩虎羅へのダメージは無かった。
『禪院摩虎羅!
まさかのノーダメージ!!』
「くっ!
…降参ですわ。」
多くの体力を失い、摩虎羅を場外に押し出せなかった事実が気力を削り、何とか立っていようとするがガクッと膝を付いた八百万は降参を宣言した。
『ここで八百万降参!
よって禪院家摩虎羅、二回戦進出!!』
大砲の連射と無傷という試合内容に観客席のヒーロー達がざわつく。
「傷一つないぞ…。」
「身体能力だけじゃないのか…!」
「あの女の子もいきなり大砲連射するとか凄い個性だな…!」
「ふむ、『創造』と『適応』…有りだが八百万家か。
絡め手より正攻法の方が良いか。
…おお!良くやった!」
外野のざわめきを知ってか知らずか、摩虎羅は八百万を横抱きにし共に会場を後にしようとしていた。
(…八百万家の女だし、運ぶか。)
完全な打算であったが、内心を知らないプレゼント・マイクが激しく動揺しながらも実況をする。
『おお〜っと!
まさかの禪院摩虎羅、疲れて動けない女子を運ぶ、紳士な面があるだと!?
アイツが!!?』
『素が出てんぞ。
まあ、成長だろう。
(多分、打算だな。)』
相澤は本心を見抜きつつも、ちょっと前なら俵抱きとかだったであろうから一応成長として処理していた。
「すいません、有難うございます。」
「気にすんな。」
そんな二人をみてA組が集まっていた観客席で葉隠は一人苛立っていた。
「むーー!!」
(何でそういう態度を私には取らないの!?)
ヒント:禪院家でも侮れない財力
一応シャツを着せてもらったりしていた事もあるが、それはそれ。
裸を黙っていた理由にはならない。
葉隠が一人不満気にして暫く経つと保健室に八百万を預けた摩虎羅が近づいて来た。
「おい葉隠。」
「…なに。」
「関西と関東どっちが良い?」
「は?」
いきなりの意味不明な質問にA組の面々が反応する。
「どうした摩虎羅?」
「ケロ、関西と関東って御出汁かしら?」
「電圧とか?
ちょっと感覚変わるし。」
「それはアンタだけでしょ。」
「ちょっとコッチ来て!」
摩虎羅が自分に声を掛ける理由を察した葉隠はこの場で話を進めるべきではないと摩虎羅を通路へと連れ出した。
「…で、関西と関東って何?」
「裸の詫びに土地をやろうかと思ってな。
どっちも一等地だし、テナントに貸してるから死ぬまで金に困らん。」
金で駄目なら土地。
短絡的かつ経済的な答えに葉隠はドン引きした。
「何で、そうなるの!?
普通は謝罪でしょ!!
いや、でも見られること無いと思ってた私も悪かったけどさ〜!!」
葉隠としても時間が立って少し冷静なればこの個性社会で視られる可能性が有るという事は十分にあると反省し、流石にビンタは謝ろうとは思っていた。
が、まさかの土地である。
摩虎羅は色々とスケールや常識が違うと改めて認識した葉隠は溜息を吐いた。
「は~もういいや、今度摩虎羅君の知る限り最高のデザートビュッフェ奢って。
それでチャラ!
後、ビンタしてごめんね。」
「分かった。
手配しとくから空いてる日連絡しろよ。」
摩虎羅の言葉に葉隠の女の勘が働いた。
「…待って、一人で行かせる気?」
「いや、ちゃんと送迎用の飛行機と現地での足とガイドは付ける。」
この男、本気スイーツビュッフェに一人で行かせようとしていた。
「…摩虎羅君も来るのが普通だから!
待って、飛行機とガイドって何?」
「最高級なら取り敢えず海外だろ?」
摩虎羅はデザートに興味がない。
しかし、最高級と言うわけであるから最低ラインは海外だろうと判断していた。
「国内で良いから!」
葉隠の懸命なツッコミにより海外行きは無くなった。
だか彼女は後日、国内最高級ホテルのレストランを貸し切りにして海外の各デザートのトップシェフを呼び付けて用意させた葉隠専用のデザートビュッフェに案内される事を未だ知らない。
ロシアとか中国なら個性婚は当たり前の様にやってそう。
後、個性目当てで人身売買が世界中でやってるよね絶対。
貧困層の成り上がり手段で個性目当ての多産とか。
何でだろう、ヒロアカ世界の設定を考えると希望より闇が深い。