振替休日が終わり、1-Aクラスでは体育祭の結果が提示された。
「今回の結果がこれだ。」
禪院 摩虎羅 2
轟 焦凍 4122
爆豪 勝己 3556
etc…
「摩虎羅少なっ!」
「禪院家の次期当主を迎えたい事務所なんてないか。」
「つーか爆豪と轟やっぱりすげーな!!」
「私も結構入ってる〜!」
芦戸三奈や八百万百の二人は摩虎羅に対する過激な攻撃が評価されて百票程の指名を受けていた。
各々が指名結果に反応を示す中、結果を見て唯一摩虎羅だけが、怪訝な顔をしていた。
氏名が入った生徒に対して配られた指名した事務所の一覧を見ると、摩虎羅を指名した事務所の一つは勿論『禪院』、もう一つはホークスの事務所であった。
(…公安か。)
指名してきた意味を計りつつ摩虎羅は職場体験の事務所を決めた。
そして職場体験初日。
駅構内にて各々、同じ地方の事務所に向かう為にグループを作りながら移動を開始していると、爆豪に対して摩虎羅が声をかける。
「おい、爆豪はこっちだ。」
摩虎羅が指を向けたのは明らかに高級感溢れる3両で構成された車両。
既に禪院家の使用人がお辞儀をして摩虎羅を迎えていた。
「「「専用列車!?」」」
クラスメイトの驚きを尻目に摩虎羅は当たり前のように使用人に荷物を預けて車両に乗り込むと爆豪が黙って乗り込む。
荷物を自分で持とうとしたが、自然に取り上げられて用意された席に座ると当然の如くグラスに爆豪が好きな飲み物が注がれて用意された。
「何緊張してんだ?」
摩虎羅にとって専用列車も使用人がいることは当たり前であるが一般家庭で育った爆豪には初体験であり、側に人が控えた環境にソワソワとしていた。
「誰が緊張するか!!
テメーみたいに人様を顎で使う育ち方してねぇんだよ!!」
「アホくさ。
強くなること以外の無駄を省かねぇとウチでやってけないぞ?」
爆豪の主張に対しての育ちの違いを見せつけるズレた回答をしたり、禪院家について話したりと時間が過ぎ、爆豪が現状に漸く慣れ始めた頃、使用人から京都に到着したとの声掛けがあった。
「じゃ、頑張れよ。」
「テメーは降りねーのか。」
「ああ、俺職場体験別にしたから。」
「巫山戯んー」
車窓から激励をする摩虎羅に爆豪が突っかかろうとするが、車窓は閉じて爆豪を京都に置いていき福岡へと車両は移動した。
「やあやあ、福岡にようこそ!!」
「何のようだよ公ー」
専用列車の到着とそれを迎えるホークスの姿に注目が集まっている中で裏の立場を堂々と話す摩虎羅をホークスが翼を広げて隠すように遮った。
「おっと!
…いきなり喧嘩腰は辞めてよ。
今回はそういうの無しで個人的な興味で声掛けしたから。」
己の立場を知られている事を想定済みであるホークスは冷静に飽く迄も今回はヒーローとしての立場で声をかけている事を伝えるが、そんな政治摩虎羅には関係がなかった。
「公安絡まねぇなら帰るぞ。」
踵を返して帰ろうとする摩虎羅をホークスが肩を掴んで必死に止めた。
「早い早い!
そうは言わずに親睦深めましょうよ〜。
どうせAFO関連で足並み揃えるかもしれませんし。」
AFOの一言で摩虎羅は立ち止まり、仕方なく面倒なという顔でホークスと改めて向き合った。
「さてと、取り敢えず歓迎会〜!」
二人はホークス御用達の焼き鳥店へと移動した。
高層ビルの一室にて誰の邪魔も入らない歓迎会が始まった。
「で、何処まで分かった?」
歓迎会だろうと個人として興味があろうがなかろうが、摩虎羅にとって関係なかった。
読み合いもクソもない。
こちらが聞きたいことに答えろ。
シンプルかつ傲慢な意志にホークスは折れた。
「…ハァ。
取り敢えず、禪院扇と脳無が複数の個性を持ってた事実からみてAFOが動いているのは間違いなし。
襲撃事件の時の大量の敵は仲介人の紹介って事位しか分かってない。」
差し出した写真は1枚。
「一人だけか。」
「いや、彼が全員を手配した。
過程で何人か仲介人を挟んでるけど、全体の手引はこの義爛という男。」
襲撃事件で捉えた敵を手配した仲介人を更に捕らえて尋問した結果得られたのが義爛という人物の存在だけという事実はホークスとしても眉を潜める結果だった。
「闇の業界じゃ有名人なのに本名、国籍、その他一切不明。
中々のやり手で、AFOに関わらなければ協力者に欲しいくらいだよ。」
「次はコイツと繋がりのある組織やネームドの監視か。」
「その通りだけど、既に後手も良いところ。
恐らく襲撃事件の段階で使い捨てと別に繋がりを作ってあるみたいで動きは無し。」
「…合図を出した頃には敵連合は動いている。
つまり、次の行動に対する動き次第か。」
既にAFOは次の仕込みを終えていると公安は見ていた。
ターゲットは間違いなく雄英高校。
完全に後手に回った形になるが、まだ手段があった。
「その時は国の総力で当たれるように足並みを揃えたい。」
総力、即ち表と裏の垣根を超えた正義によるAFO逮捕。
そのための準備が着々と進んでおり、勿論その中に禪院家も組み込むつもりである。
「親父に言えよ。」
「今の禪院家の核は君でしょ。
どんなに面倒くさくても既に禪院家の形は君を軸に動けるように整い始めている。」
事実であった。
体育祭で既に禪院摩虎羅の実力を示した禪院家は総力の全てを摩虎羅の手足となるべく統一が図られていた。
もはや摩虎羅の意思に関係なく、禪院摩虎羅という一つの総体として公安含めて周囲に認識され始めていた。
「…そこら辺含めて直哉に投げてるからソッチに言えよ。」
「ではその許可を。」
「好きにしろよ、面倒臭い。」
摩虎羅の許可を得たホークスは早速公安へと連絡をかけて準備を進める指示をだした。
「よし!
連携の下準備は出来た所でパトロール行こっか。」
「ダルい。」
「けど、サボったらバレるよ?」
一応、学生であり体育祭で有名人となった摩虎羅が職場体験で活躍を一切見せないのはサボり認定間違いない。
ホークスの説得に応じて渋々摩虎羅は街へと繰り出した。
「いやー良い街でしょう!」
「風情が無いな。」
ディスりながらも摩虎羅は街の犯罪に対処していく。
ホークスは摩虎羅をサポートする形で剛翼の羽を追わせて自分はファンサービスに勤しんでいく。
ある時は歩行者に突っ込もうとする赤信号を守らない車を摩虎羅が止めると、車に驚いて転びかけた歩行者を剛翼が支える。
銀行強盗が起これば、摩虎羅が鎮圧して翼で敵を捕縛していく。
ホークスはファンサービスをしながらも禪院摩虎羅を紹介して知名度を上げていく。
「いやーやっぱりすごかね〜禪院家最強は!」
パトロールが終わり、事務所に戻ると分かりやすいゴマすりをするホークスに顔を顰めていく。
「あの程度なら誰でも出来る。
で、見極めは終わったか。」
ホークスはパトロールを通して摩虎羅を見ていた。
笑みを浮かべる様子にどうやらお眼鏡には叶ったらしい。
ホークスが本題を口に出した。
「摩虎羅君、オールマイトの引退後に社会はどうなると思う。」
「ツケを払う。」
摩虎羅の答えは単純明快。
個人に依存した安全神話の崩壊。
では安全神話を守るために何をすべきか。
オールマイトが緑谷出久に託したように、公安も『次』を探していた。
「次のNo.1になる気は?」
「無い。」
摩虎羅からしたらコレ以上の面倒は御免であった。
「エンデヴァーがいるだろ。
劣るが脇を固めれば上手く『個人』から『チーム』に移行できる。」
原作の展望を話すが、ホークスの表情は硬いままだった。
「そうなるには君は障害になり得る。」
摩虎羅の言う『個人からチーム』という流れが成立するには摩虎羅は強すぎた。
「俺の中身を知ってソレを求める馬鹿なんざ知らねぇよ。」
「君臨はするが統治はしないって事かい?」
「ソレ良いな、楽できそうだ。」
裏で爆豪は色々と地獄を見てる模様。