京都に置いてかれた爆豪は使用人によって本家へと案内されて早々に訓練場へと通された。
待っていたのは禪院直哉。
実力権力共に禪院家No.2の実力者である。
(強え…!)
「あんまりパッとせんな君。
取り敢えず基礎から仕込みなおそか。」
個性ありきの実戦稽古は当たり前だが直哉の圧勝だった。
影すら踏む事を許されずに徹底的に叩きのめされたのだ。
「…く、そ。」
何とか無理矢理にでも起き上がろうとする爆豪を見て直哉は目を細める。
「気概があるのはええけど、アレを超えたいならこの程度でゲロ吐くようじゃ寿命迎えるで。
取り敢えず明日から炳部隊に混じって稽古と警邏に行って貰おうか。」
明日からの内容を伝えて直哉が去ると、入れ替わる様に使用人が現れて爆豪を介助していく。
『強くなるために余計な事を省け。』
一瞬、爆豪は一人で歩けると振り払おうとしたが、摩虎羅の言葉と既に職場体験が始まっており禪院家の人間として扱われている事と先程の直哉との実践訓練で体力が限界だったのもあって爆豪は任せるように気を失った。
「…ここは。」
爆豪が目を覚ますと和室に寝かされていた。
ふと左腕に違和感を感じて視線を向けると点滴がされていた。
点滴をされていることに疑問を感じていると、和室の襖が開く。
「失礼します。
この度、爆豪勝己様の使用人となりました真依です。
宜しくお願いします。」
深々とお辞儀をする使用人を名乗る少女に爆豪は面を食らった。
「…客じゃなくて職業体験で来たんだが。」
「はい。
炳に所属していますので、私が使用人としてお仕える事になりました。」
どうやら炳に所属すると使用人が手配されるらしい。
禪院家と現代社会の常識の違いに戸惑いながらも、爆豪は仕方なく受け入れる事にした。
「面を上げてくれ。
後、そこまで構えるのは辞めてくれ。
取り敢えずこの点滴は何だ?」
爆豪の命令に従って顔を上げた真依は淡々と爆豪の疑問に答えていく。
「そちらは栄養剤でございます。
炳の皆様は治癒の個性を受けた上に栄養剤を取ることで早期に体力回復を行い、次の鍛錬や警邏に努めるのが義務となっています。」
禪院家には個性を伸ばす、或いは個性に耐えれる肉体作りのノウハウが多数ある。
その一つとして鍛錬や警邏によって壊された体を治癒系個性で治癒しつつ栄養剤を添加することで超回復を起こしやすい環境を整えているのだ。
こうして爆豪の禪院家での初日は同年代の女性にカシコマラレルという不快感を味わいながらも強くなれる確信を感じながら終わった。
二日目も爆豪の姿は修練場にあった。
サーキットトレーニングと呼ばれる全身運動で高負荷を付与するスーツを着たまま限界まで行うというシンプルな内容だった。
「ギ…ギ…ギギ…!!」
一回一回を行うだけでも体が悲鳴を上げる。
周りの炳の隊員は涼しい顔でこなしていく姿を見て負けん気で何とか数をこなす。
「そんなんじゃ警邏の仕事に行けへんで?
なにしにきたん?」
隣で涼しい顔で炳の中で最速で終わらせた直哉が仕事の合間にやってきては隣で煽ってくるのに耐えながら何とかノルマを終わらせると、待機していた使用人がやってきて介抱していく。
体を洗われて治癒系の個性で体を癒やされながら必要な栄養を点滴によって補給される。
次の日にはトレーニングを終える迄の時間が半分になった。
(スゲー…!
昨日とは確実に違う!!)
「ほな、警邏行こか。」
警邏という名の見回り。
直哉の担当は京都の神社仏閣。
「土地柄、奉納されてるモンの価値は計り知れへん。
各建物に人と機械を置いて誰も盗めないようにしてるけど、こういう馬鹿は幾らでも湧いてくる。」
竹藪の中で倒れ伏す強盗集団。
彼らは長年の下調べと入念な計画を立ててとある仏像を盗もうとしていた。
「長く狙われると盗もうとするやつの思考や計画は丸分かりや。」
(早いだけじゃねぇ、静かすぎる!)
直哉についていき竹藪に入った瞬間、個性による高速移動で瞬殺したのだ。
「風情ある京都で戦闘音なんてもっての外、最短最速最小で倒さなアカン。」
涼しい顔で数十人を倒してみせた直哉は爆豪に今回の職業体験の目的を話す。
「君には人体の効率的な壊し方と肉体改造。
それと、汎ゆる人間の動きの起こりを捉える目を仕込んでいく。
ええな?」
「上等…!」
摩虎羅とは違う、歴史に裏付けされた最高峰の技を学べる最高の環境に身を置けた事実に爆豪は深い笑みを浮かべた。
治癒系の個性を使う前提の訓練とか皆やるよね。