「さて!今回の入試の1位を決めようか!!」
根津校長、ネズミが個性を持つという貴重な存在ながら雄英高校の校長という社会的立場を確保している、ある種現代を象徴する人物の一声で会議は始まった。
「爆豪勝己と禪院摩虎羅、ふたりとも撃破Ptだけでこの点数ですか。」
各教員の手元にある受験生の成績でダントツのトップに位置する爆豪勝己と禪院摩虎羅である。
互いに撃破Ptだけで同率1位を叩き出すという雄英史上、稀に見ない結果となった。
爆豪勝己の総評はすでに終わっている。
個性の使い方とタフネスを高く評価させれ、粗暴な態度はこれから矯正していけば良いという結果に収まった。
「禪院摩虎羅、禪院家の人間が雄英の入試を受けるとは…。」
成績と然ることながら、禪院という名字に注目が集まる。
禪院家の本家は京都にあり、士傑高校に行くのが慣例となっている中で敢えて雄英高校を一般受験で受けると言う事自体前例がない。
「珍しいわね、ご実家と疎遠なのかしら?」
「入試会場に禪院家の家紋入りのリムジンあったZE?」
何かしらの事情があるのかと勘繰られるが、家紋入りのリムジンで送迎されている事から懸念は無いと思われていた。
ちなみに摩虎羅は京都から新幹線のグリーン車で東京に着くと禪院家のリムジンがあって普通に引いた。
「…ハァ、成績評価に家柄は関係ないだろ。」
非合理的な会話に溜息を履きながら苦言を呈した相澤の一言で実技の評価が始まった。
『はい、よーいスタート。』
スクリーンに映し出された実技映像では、気の抜けた開始の合図に受験生の殆どが面を食らった中、飛び出した黒い影は最初に現れる1ptロボットの群れを飛び越えて3ptのロボットに突撃していく。
最初に接敵したロボットは中心を貫き、腕をもいで即席の棍棒として振り回し、時には蹴り壊しと体術で周りのロボットを圧倒していく姿は教員であり現役ヒーローの彼らの目を引くものだった。
「躊躇なく高ポイントのロボットを狙いに行くだけはあるわね。」
「禪院出身だから武術の心得はあるとは思ったが、それ以上にあの身体能力は何だ?」
「…ソレモソウダガ素手デ金属ヲ貫イテルゾ。」
一度の踏み込みで10m程離れたところにいるロボットまで近付き、貫手でロボットを貫いて破壊し、スピードを殺さずに滑らかな重心移動で次のロボットへと向かっていく姿は達人の動きに近い。
「個性『適応』ね、ダメージへの耐性獲得と書いてあるけど、疲労や運動負荷にも適応しているのかしら。」
「個性は常時発動型だから発現してから今まで『適応』し続けた結果か!」
「最早、適応ではなく進化の領域ですね。」
すでに映像は30分を過ぎているが、速さはスタートの時と変わらず汗一つ流さずに淡々と破壊していく。
「0ptロボに対しても躊躇なく挑んでますね。」
「…挑むというか泳いでるな。」
試験終盤に現れた0ptの巨大ロボに対して摩虎羅は躊躇なく足の装甲を突き破り中へと侵入した。
内部での摩虎羅の移動によって装甲の内側から歪んでいき、関節からは煙が吹き出し火花が飛び始める。
『ブ、ブブブッコココ…コ…』
ガコン!
『まぁまぁだな。』
足元から広がる破壊は胸元を進みロボットの頭部を突き破る形で禪院摩虎羅が顔を出した。
その姿はオイルに濡れながらも疲れは見せず余力を十分に残していた。
「余裕綽々と言った感じですか。」
「驚異的な身体能力に無尽蔵のスタミナ、金属を貫く頑丈さ。
スペックでこれだけ驚かされるが体術のレベルも高い。
爆豪みたいな派手さは無いが基礎的な能力がずば抜けている。」
一通り評価が終わった所で根津校長から決をとった。
「0ptを倒した上で爆豪君と並ぶなら彼が1位で問題ないのでは?」
『異議なし!』
「よし、なら今年の新入生代表は彼で行こう!
それとクラス分けだけど相澤先生に任せていいかな!?」
「まあ、個性が優れてますが体術メインなら俺が見たほうが合理的でしょう。」
クラス分けも決まり、新入生代表も決まり弛緩した空気が流れるなか、山田もといプレゼント・マイクが疑問に思った事を口にした。
「にしても禪院リスナーの体から鳴るガコンって音は何だ?」
「さあ?」