AFOの一撃は先程の比ではない破壊を生み出した。
一点に集中したせいか広さは無くとも、長さ数十kmに渡る大地を深く抉り無に返し、多くの命を奪った一撃は摩虎羅に届いた。
射線上、目の前にいた摩虎羅の姿はどこにも無く、方陣が一つ転がっているだけだった。
「ハハッ、ハッハハッ!!!
ざまあみろ!!!
僕の勝ちだ!!」
勝者であるが、強力な一撃を放ったAFOも無事では済まない。
反動により肉体は砕け、個性エネルギーを吐き出した個性達は摩耗し、肉体は崩れ始めている。
それでもAFOは嗤っていた。
身勝手に魔王の如く振る舞っていたガキを殺せたのだ。
己の高笑いが肉体の崩壊を早めていようと気にせずに嗤い続ける。
「魔王と勇者を倒して、格を示す??
嗤わせるぜ、とっくに勇者も魔王も出涸らしだってのにさぁ!!
計画は一部破綻したが僕の次は既にいる!!
君は出涸らし風情に粋がって自滅したのさ!!!」
今の己はサププランに過ぎない。
本命は生き延びて、成長し新しい器へと完成する。
寧ろ今後の事を考えると、このタイミングで摩虎羅を完全排除出来たのは僥倖と言えるだろう。
AFOの覇道に何ら支障はない。
故に高笑いをしながら、勝ち逃げしてやろう。
そう思っていた。
「…は?」
方陣が宙に浮くまでは。
真っ黒な空間で摩虎羅の意識は目覚めた。
(ここ、何処だ?
確か、AFOの一撃浴びて…
あー死んだかこれ?)
AFOの決死の一撃。
膨大な個性エネルギーによる攻撃は摩虎羅の『適応』を超えたらしい。
ただ真っ暗な闇の中、摩虎羅の意識は宙に揺蕩うような感覚を感じながら浮いていた。
(死んだのならここは地獄か?
…なるほど、退屈を憂いていた俺に『真の退屈』ってか。)
地獄の罰としてこれほど相応しいものも無いと摩虎羅は笑う。
形式的な地獄ではなく、己の行いに対する罰としてなら何もない、自由もない、只そこに揺蕩う事しか許されないというの摩虎羅にこそ相応しい罰である。
(…あん?)
甘んじて受け入れようとした時、摩虎羅の意識が何処かへと引っ張られる様に流れていく。
下か上か、或いはその場を回っているだけか暫くすると摩虎羅の前にそれは現れた。
「ああ、そういうやお前は俺の中にいたんだっけか。」
その体躯は人を超えた巨人の如き、目に当たる場所に二対の羽の生えた異形。
別世界における最強格の一つ。
八握剣異戒神将魔虚羅。
本来の摩虎羅がそこにいた。
「……。」
言葉は無い。
巨人と一人の間には穴が一つ。
その穴の中には見下ろすような形で神野が見えていた。
「代わりに出るってか。」
人の摩虎羅は巨人の摩虎羅の意図がわかった。
今回の『適応』ならば巨人の摩虎羅と人の摩虎羅は入れ替わる事が出来る。
もし、人の摩虎羅が復活を拒むなら巨人の摩虎羅が出現するだろう。
しかし、担い手の居ない巨人の摩虎羅は只そこに佇み誰の制御も受け付けぬ地蔵となる。
そして人の摩虎羅はこのまま眠りにつく。
それは人のように死ねる最期のチャンスであった。
「人として死ぬか、蘇って今まで通りの退屈で終わらない人生かって訳か。」
一瞬、このまま眠るのも有りだと思った。
「いや、考えるまでもねぇ。
ドラゴンになるって決めたんだった。
あんがとよ。」
己の個性に礼を言って摩虎羅は躊躇無く、穴へと飛び込んで行った。
個性はそれをニヤリと笑い、見つめていた。
ガコンッ!!!
方陣が回るとその場に摩虎羅は復活した。
「よう、いい夢見れたか?」
「は?
…何だよ、それ。」
「あーくっそ服は無しか。
お、方陣が上に付いたか。
ドラゴンぽくないが、ヘイローって感じで乙だな。」
AFOの驚愕を無視して、摩虎羅は自身の状態を確認していく。
先ずは全裸。
そして頭上後方に浮く方陣。
背中の模様という形から宙に浮かぶ形に変更された。
それ以外は姿形は何も変わっていない。
取り敢えず服を着ようと辺りを見渡すが、周囲は瓦礫の山であり目の前には死にかけのAFOと瓦礫の上に転がっているボロボロのオールマイト、そして頭上で報道ヘリが飛んでいるだけだった。
「裸は何度目だ?」
「無視するな…!!
お前は一体何なんだ!!!」
己を歯牙にもかけない態度と目の前の現象に苛立ちAFOは吠えるが摩虎羅はゴミを見るような目を向けて一言。
「ドラゴンだって言ってんだろ、マヌケ。」
その一言が決め手になったのかAFOの肉体は完全に崩れた。
というわけでコイツは方陣が本体です。
案としてはAFOに吸収させてキャパオーバーで肉体が破裂して個性処理完了プラス滅茶苦茶頑丈な無個性になってヒロアカエンジョイ勢になるルートを考えていましたが、そうはならなかった。