僕のまこーらアカデミア!   作:ボリビア

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次期当主に適応する。

「…何で生きとるんや?」

 

 病室で目が覚めた直哉は先ず自分が生きてる事を疑問に思った。

 最後に殴られて吹き飛んだ所から記憶は無い。

 全身に激痛が走り特に頭に至っては常に針でも刺さってるのかと驚く位に痛い。

 包帯で右目が覆われていて、左目だけで辺り何とかを見渡し、ようやく机に置かれたカレンダーをみると数日が経っていた。

 

(悪運が強かった?

 いや、アレなら即死なんて簡単やろ。)

 

 ぼんやりと今の状況について考えているとノックの音が響いた。

 看護師辺りだと辺りだと思いシカトすると、現れたのは禪院家の使用人、それも摩虎羅の担当の使用人であった。

 

「次期当主様が目が覚めたら連絡を取りたいとの事でしたので、此方です。」

 

 直哉の耳元に当てたスマートフォンから忌々しい声が聞こえた。

 

『よう、生きてたか。』

 

「何で生かした?」

 

 直哉にとって当然の疑問。

 摩虎羅にとって直哉を生かすメリットは少ない。

 ましてや殺そうとした相手だ。

 自分なら、ソイツの友人や恩人含めて全員地獄に落として後悔させる。

 

『生かしたつもりはねーよ。

 逆にぶん殴って顔と一緒に頭蓋も割ってんのに何で生きてんだよ。』

 

 加減せずに殴って生きてたから生かした。

 直哉も同じ場面で多分する。

 というか敵相手によくやる。

 なお、警察からの評判が悪くて公安に目を付けられてるのを本人は気づいてない。

 

「…で、なんのようや。」

 

『お前、当主補佐な。』

 

「は?

 何でそんなモンやらなあかんねん。」

 

『禪院家当主の看板は欲しいけど実務は要らん。』

 

「謀反起こしたろか。」

 

『じゃあ絶望をくれてやる。

 俺の適応と解析は一回きりじゃねぇ。』

 

「クソが!」

 

 適応が一度で済まないという予想はしていたが、摩虎羅の発言を素直に受け取るなら、今もなお『投射』を生かした戦闘に対して最適化が行われているという事だ。

 つまり、直哉の勝ちの目は無いに等しい。

 

『いやー、最強の看板は欲しいけど当主の仕事は興味ないからさ、生きててラッキーだよね俺。

 じゃ、よろしく。』

 

 言いたいことを言って切れたスマートフォンを思わずぶち壊したくなったが体は動かない。

 自分を生かした理由を雑用として使うためだと知って頭に血が上るが、痛みで顔を顰め留まった。

 そんな直哉を尻目に摩虎羅の使用人はスマートフォンを回収して立ち去ろうとして、扉を開けて立ち止まった。

 

「それと、摩虎羅様と当主様から帰り際に伝えろと言われたので伝えます。

 『本邸の修繕費は直哉の財産から天引きな。』

 との事です失礼いたします。」

 

「ドブカスがぁ!!」

 

 直哉に言いたいことを一通り言った摩虎羅は食事を取っていた。

 

「全く兄弟で争うとは…やれやれ。」

 

「親父も止めなかった時点で同罪だろ。」

 

 場所は京都にある高級中華料理屋。

 円卓に座り、100年物の紹興酒を壺から直飲みしている男は禪院直毘人、禪院家現当主である。

 反対側に座っている摩虎羅の周りには大量の料理が並べられており、味わうより腹に入れる事を優先した食べ方で空き皿が出来ると直ぐ様回収されて新しい料理が運ばれてくる。

 

「まあ、お前が直哉を生かしとったお陰でワシも無事隠居出来そうで良かったわい。」

 

 直毘人は直哉がプロヒーローになってから活動を自粛し近々引退する事を表明している。

 

「ヨロイムシャ見習えよ。」

 

「フン、アイツは只の老害よ。」

 

 因みに直毘人は活動時期で一度もランキングでヨロイムシャに勝てた事がない。

 

「僻みだな。」

 

「そもそも禪院の人間が一般受けするわけなかろう!」

 

 禪院家の起こりは『個性を極める』事に重きをおいた超実践派の成り上がり一族。

 始まりからしてヒーロー活動は二の次になりがちな一族なのだ。

 

「で、体の調子はどうだ。」

 

「ボチボチかな、雄英入学する頃には戻ってるだろう。」

 

 既に摩虎羅の体は直哉と戦った時より肉付きが良くなっている。

 長年の適応により摩虎羅の肉体は超消化効率で吸収したカロリーを即座に肉体に反映する事ができる。

 

「そういえば俺の体は処分したか?」

 

「ん?

 ああ、きっちり血痕含めて全部扇に燃やさせた。

 で、直哉はどうだった?」

 

「終盤かなり滑らかに動いてたぜ?」

 

「そうか。」

 

 滑らかな動きという言葉の重大さを同じ個性を持つ直毘人は良く知っている。

 親としても同じ個性を持つ者としても己の先に進んだ事実は喜ばしい。

 摩虎羅に関しては意味不明過ぎてヤバいと思っている。

 

「これで家のゴタゴタは片付いた。

 直哉も生きて今こそ禪院家の最盛期と言っても過言ではない!」

 

 直毘人含む三名のベテランヒーローに数多のサイドキック、期待の若手として活躍する直哉に禪院家の始まって以来の怪物的個性持ちの摩虎羅。

 組織としてみても禪院家の総力は頭ひとつ抜けるだろう。

 

「あっそ。」

 

「そうだ、どうせ雄英に行くなら八百万家のご令嬢辺りといい仲になっておけ。」

 

「なんで入学生が誰か知ってんだよ。

 つーかそういう情報もう回ってんの?」

 

 既に雄英に入学が決定した情報は周り始めている。

 そもそも、有力な個性持ちはどの高校もスカウトに気合を入れて調査しており候補は絞られている事が殆どだ。

 さらに禪院家の人脈を使えば、雄英の合格者程度なら簡単に手に入る。

 八百万家は資産家であり、個性も優秀。

 禪院家としては繋がりを持つ価値はある。

 

「…それと、青山家のボンボンには気を付けろ。」

 

「お?」

 

 意外な名前に摩虎羅は思わず皿から顔を上げた。

 

「儂の知る限り、青山家の息子は無個性の筈。

 個性の発現が遅かったらしいが少しきな臭い。」

 

「へぇ。

 親父が言うってことは心当たりがあるってわけだ。」

 

 青山家の息子というのは十中八九、青山優雅の事であろう。

 摩虎羅の持つ原作知識では青山優雅はAFOによって個性を与えられた対価として雄英の情報を流していたスパイである。

 上流階級に伝手があるとはいえ、情報だけで青山優雅を怪しいと睨む父親の慧眼には素直に尊敬の念が湧いた。 

 

「まあ、死んだと聞いているが、生きてても不思議ではない。

 …今言えるのは、世の中には『個性を与え奪う』個性もある。

 お前の適応も知らない事象では抗えん、気を付けておけ。」

 

「あいよ。」

 




禪院家は碌でもないです。
一応、扇とか甚一とトップヒーローレベルの実力者ですが、家系的にヒーロー活動が得意ではないので人気は無いです。
逮捕率で稼ぐエンデヴァーみたいな感じ。
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