僕のまこーらアカデミア!   作:ボリビア

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皆の扇への信頼の厚さよ。


氷は適応済み

 摩虎羅が葉隠の裸に対して慣れた頃、対戦相手の轟障子ペアは作戦を立てていた。

 

「それで、どう動く。」

 

「取り敢えず俺がビルを凍らせる。」

 

 荒唐無稽に聞こえる作戦だが、轟焦凍なら可能だ。

 彼の個性は火炎と冷気を放出する。

 小さなビル程度なら問題なく氷点下まで落とす事は容易である。

 

「できるのか…。

 まて、葉隠はどうする。

 彼女は多分裸に近いぞ。」

 

 誰がどう見ても透明人間の葉隠透のコスチュームはそれを生かす姿であり、クラスで一番露出が多い。

 ビル一つ凍らす冷気を浴びればどうなるかは明白であった。

 

「…ヒーロー目指してるなら覚悟の上だろ。」

 

 一瞬、障子の指摘を考慮するか考えて切り捨てた。

 今の轟にとってクラスメイトの安否を考える余裕はなかった。

 優先事項は父親を否定する事。

 それ以外の事に目を向ける余裕は無かった。

 

「やるぞ。」

 

「待て!」

 

 スタートの合図と共に轟は個性を開放する。

 障子の静止を聞かずに右半身から放たれる膨大な冷気かビルを凍りつかせるのは一瞬の事であった。

 ビルが凍りついたのを見届けた障子は直ぐ様複製腕で耳を作り出し中の様子を探った。

 

(起きてしまった事は仕方ない、今は俺の出来ることをする。

 …これは。)

 

「…氷の砕ける音がする。

 多分、禪院だろう。」

 

「なら近付いて凍らせる。」

 

 状況を聞いた轟は直ぐにビルの中に入ろうとするが、その背中に障子が声をかけた。

 

「待て、俺に考えがある。」

 

 障子の個性『複製腕』は分類としては異形系に入り身体能力も高い、その上で両肩から伸びた触手の先端から感覚器や腕を生やしたりと応用の効く個性でもある。

 現在、障子は追加した腕で轟を背負いながらビルの壁を登っていた。

 その速度はかなり早く、既にビルの真ん中まで登っていた。

 

「このまま、一度屋上にでて上から侵入して奇襲でいいな?」

 

「ああ頼んだ。」

 

 壁をよじ登り、最上階からの爆弾の確保或いは奇襲という作戦はこの状況では上等な選択肢であり通常であれば気付かれる事は少ないだろう。

 しかし、相手をしているのは禪院摩虎羅だ。

 

「み〜っけ。」

 

 突如、障子の視界が暗くなった。

 それは腕だった。

 一本の腕がコンクリートの壁から突き出て障子の顔を掴んだのだ。

 

(掴まれている、不味い!)

 

 危機を感じるより早く、その巨体は引っ張られるままに壁を突き破り室内へと、そして反対側の壁へと投げられて叩きつけられた。

 

「!!?」

 

(何だこれは!?

 ビルの中から俺を片手で引き抜いて投げ飛ばした!?

 轟は無事か!?

 …何で禪院は半裸何だ?)

 

 破壊されたビルの壁、自分が投げ飛ばされた衝撃、上半身裸の禪院摩虎羅。

 何もかもが障子に混乱を与えるには十分だった。

 全身に痛みが走りながら身体を動かして轟の安否を確認する。

 既に轟は立ち上がっていた。

 障子の腕がクッションとなったお陰で打撲こそしたが十分に戦える様子だ。

 

「…良かった。」

 

「取り敢えず、そこで休んでてくれ。

 俺はコイツをやる!」

 

 轟は既に摩虎羅に対して冷気を放っていた。

 

「奇襲ばっかだな。

 折角オールマイトが見てるんだから、正々堂々と来いよ。

 …にしても、温い氷だなエンデヴァー二世?」

 

 全身に纏わり付く氷を一切気にする素振りを見せずに、気怠げな顔で呆れたような声を掛けてくる。

 完全に禪院摩虎羅は轟を舐めていた。

 摩虎羅の台詞を聞いて轟の顔が憎悪に歪む。

 摩虎羅の態度は勿論だが、その台詞が何よりも気に入らなかった。

 

「おいおい、偉大なヒーローの二代目だろ、もっと嬉しそうな顔しろよ?」

 

 薄ら笑いを浮かべながら、確信を持って摩虎羅は轟の地雷を踏み潰していく。

 

「…黙れ!」

 

 怒気とは反対に更に冷気を強めて、摩虎羅を押し潰さんと迫る氷壁に対して摩虎羅は軽く腕を振るうだけで砕いてみせた。

 

「炎はどうした?

 二代目エンデヴァー?」

 

「その巫山戯た名前で呼ぶんじゃねぇ!!」

 

 氷が通じなくても轟には炎を使う選択肢はない。

 しかし、氷は摩虎羅に届かないし通じない。

 

「ハッハッハ、ブチギレても氷だけかよ。

 ほら、エンデヴァーの真似して威力高めろよ?」

 

 更に煽る。

 冷気でエンデヴァーと同じ事をやれと言う言葉は轟の心を掻きむしる。

 

「アイツの名前を出すんじゃねぇ!!」

 

 轟だって分かっている。

 冷気を極める為にはエンデヴァーと同じ技術が必要な事を。

 しかし、それはエンデヴァーを完全に否定出来ない矛盾を抱えてしまう事も。

 

「俺は嫌いじゃないぜ、エンデヴァーは!

 泥臭い感じは嫌いじゃない!」

 

 最早、轟の攻撃は子供の癇癪と変わらなかった。

 炎を使わない。

 冷気を強くする事も出来ない。

 八方塞がりな様子に対して、摩虎羅はニヤニヤとエンデヴァーを持ち上げ始めた。

 

「黙れぇ!」 

 

「イイネ!

 お前を見てより気に入ったよ!

 ヒーローとしての素質が欠けてるのに良くNo.2に上り詰めたもんだ。」

 

 個性を鍛えるという点においてエンデヴァーを上回るヒーローは居ない。

 No.2がヒーローとしての資質に欠けているのは眼の前の轟を見れば明らかだ。

 ヒーローとしての資質に欠けているのにNo.2に登りつめたエンデヴァーの実力自体、純粋に摩虎羅は気に入っていた。

 マジでオールマイトよりもエンデヴァーの方が好きなのだ。

 それはそれとして轟の最大出力を味わうために容赦なく煽りの道具にはするが。

 煽りによって憎悪が膨れ上がるが、反対に轟の体には霜が降り始めて冷気の出力が落ちていく。

 

(ここまでか。

 憎しみ煽って出力ましたけど技術すら憎んでるとか、禪院と良い勝負だな轟家。)

 

「なあ、俺の背中の音が鳴ってないのに気づいてるか?」

 

 氷を其の場から一歩も動かず、片手で弾きながら語りかける。   

 

「俺の適応が完了した合図でな。

 簡単に説明すると、その場に必要なステータスを足したり尖らせたりするわけだが…。」

 

 適応が行われない。

 この場でそれが指す事実は一つだけ。

 

「お前と遊ぶのには必要ないって訳だ。」

 

 今の轟は適応すべき事象ですらない。

 経験値を得られない戦い程、退屈な事はない。

 摩虎羅が動く。

 弱まった冷気の中、正面から迫った摩虎羅の拳が轟の腹に刺さる。

 

「退屈だよ、轟。」

 

 轟は気絶し、障子は途中から膨れ上がった轟の冷気で眠りについている。

 退屈そうな顔をした摩虎羅だけが立っていた。

 

 




 因みに摩虎羅が上半身裸なのは、冷気から助けた摩虎羅が葉隠に着せたからです。
 葉隠は上の階で爆弾防衛に努めてました。
 因みに轟の個性は普通にヒーロー界隈詳しければ入ってくる情報だと思う。
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