レイジオブドラグーン   作:鉄血

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プロローグ

巨大な竜が戦場の兵達を口から吐き出す炎で焼き尽くし、灰へと変えていく。

怒号、悲鳴、怨嗟、苦しみの声を上げる者は少なくない。そんな絶望的な状況下の中、一人の軍服を着た少女が刀を携え、竜の前に立つ。

竜が少女に気付き、その獣の目で少女を睨みつけた。

竜にとって人とは脆弱な存在だ。竜のように強固な鱗があるわけでもなく、鋭く巨大な牙や爪があるわけでもない。何処までも下等な存在だ。

そんな人間のそれも女となれば竜にとって障害になりえない。 

そんな強大な竜に対して、少女は銀の髪を靡かせながら竜を見た。

 

「目標対象発見。暴走した【レギルス】と断定」

 

少女がそう言った瞬間、腕につけられていた腕輪が光を放つ。

眩い光と共に、少女の身体に装甲や武装が顕現する。

巨大な大砲がその銃口を鈍く光らせ、少女が纏う黒い装甲が戦場の炎を写す。そして少女の背中には巨大な機械で出来た鋼鉄の翼が存在していた。

少女は赤い瞳で竜を見つめると、まるで祈るようにその唇を開いた。

 

「かつて、私達の同胞であった名も無き兵よ。そして、竜になった私の同胞よ。我が力、しかと刮目せよ」

 

そして少女は刀を抜刀し、刀の切っ先を空へと向ける。

 

「滅ぼせ───《ウロボロス》」

 

少女がその刀を竜に向け、黒い破滅の光が放たれた。

 

『グオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!』

 

その光に竜も口から業火を吐き出し、破滅の光と業火が激突した。

破滅の光と業火が僅かに拮抗する。が、すぐにその拮抗は崩れ去った。

 

『グオオオオオオオオオォ!?』

 

竜の業火が破滅の黒い光にかき消される。その光は業火を打ち破ったあと、スキだらけの竜の左半分と片翼を消し飛ばした。

空気を轟かしながら竜が絶叫する。

地面に倒れ伏す巨大な竜に対し、少女は最後の言葉を破滅の光と共に乗せた。

 

「もし、生まれ変わりがあるのなら・・・また、一緒に買い物に行こう。■■■■」

 

軍服の少女は竜にそう言って、その黒い光を竜に放った。

そして────

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

座り心地が悪い椅子に揺られながらロートスは装甲車の外に視線を向ける。

荒廃した大地に廃墟と化した建物。その風景が見渡す限り広がっている。世紀末のようなこの世界は俺達人類が住んでいる壁の向こう側にある世界だ。

そして、俺はその壁の外側にいる存在を『殺す』為に此処にいる。

 

「おいロートス!もうすぐ目的地に到着するぞ!」

 

「はいはい、分かってるよ」

 

ロートスと呼ばれた男はそう答えながら固くなった身体を伸ばす。

そんな余裕そうな彼に運転手の男は言った。

 

「今回の敵は分かってると思うが、竜化した【レギルス】だ。"元"同胞と戦う事になるが・・・今なら引き返してもいいんだぞ?」

 

自身の心配をしてくる運転手の男にロートスは言う。

 

「平気だっての。これでも処刑人なんだぜ?俺」

 

運転手の心配にロートスはそう言って笑う。

 

「・・・分かっているがそれでもな。処刑人は汚れ仕事なんだ。俺はお前が壊れないか心配なんだ」

 

「嫌になったらこの仕事を辞めてるっての」

 

「それもそうか」

 

そんなくだらないやり取りをしていると、いつの間にか目的地についていた。

 

「到着だ。これ以上車で近づくと気づかれちまう」

 

「サンキュー。これ終わったら飯食べに行こうぜ。何時もの所でいいか?」

 

「ああ。お前が生きて帰ってきたらな」

 

そんなやり取りをやりながらもロートスは身を翻し、目的地へと足を進める。

そして岩陰に身を隠しながら、ロートスは双眼鏡を取り出して覗き込んだ。

 

「・・・あれか」

 

双眼鏡のレンズの先に見えるのは半ば竜となっている男の姿があった。自分達【レギルス】は壁の外にいる存在、【ジークリンデ】と言う怪物を倒す為に竜の遺伝子を取り込んでいる。

神話の神々の名を持つ【ジークリンデ】を殺すためには同等の幻想の力を持つ必要があった。そして、遥か昔に人類が倒した『竜』の遺伝子を使い、人類は神々を殺している。

だが、その竜の力は人類には手に余る代物でもあった。

何故なら竜の遺伝子に適応出来たとしても、一度暴走させたら最後、狂える竜になってしまうからだ。

そんな力を暴走させた【レギルス】を殺すためには同じ力を持つ【レギルス】か、【ジークリンデ】しか出来ない。

故に、こうやって俺達【レギルス】は常にリスクと隣合わせなのだ。

もちろん、他の仕事もあるにはあるのだが、【レギルス】は主神級の【ジークリンデ】を殺すと英雄になれる。国でも街でも世界でも。そして莫大な金をもらえる事から志願者が後を絶えない。

それでも、なれる可能性はほんの一握り。英雄になろうと考えるなら、さらにもう一握りだ。現実的ではない。そんな【レギルス】が暴走した結果があれで、更には討伐対象になってしまうのだから皮肉でしかなかった。

 

「気の毒だが、痛みがないように殺すか」

 

ロートスはそう呟き、腕輪を軽く擦る。

そして、ロートスの右腕に巨大な機械でできたアギトが顕現した。

 

「『バハムート』部分顕現。ロックシステム作動。『裁きの息吹』の発動準備完了」

 

融解するエネルギーの本流が銃口に集まり、その中でチャージされていく。後は自身の好きなタイミングでトリガーを引けば、破壊の一撃があの男を襲うだろう。

ロートスは竜になりかけている男に狙いを定め、そして呟く。

 

「さらば名も知らない戦友。お前の名誉ある死を俺は決して忘れはしない」

 

ロートスは引き金を引いた。

臨界点に突破した破壊の一撃が放たれる。

 

『────────────────』

 

凄まじい轟音を上げ、破壊の一撃は竜化した男を包み込んだ。

着弾と同時、天に昇るように炎が空へと舞い上がる。そして遅れてやってくる衝撃波で周りの木々が吹き飛んでいった。

そして男が跡形も無く消し飛んだのを確認した後、ロートスは『バハムート』を消した。

 

「相変わらず威力がヤベえな。最小限にまで抑えてこれだから、最強の竜ってのは・・・」

 

独り言のように呟くロートスは帰るかと呟き、身を翻したその時だった。

 

「────グリンデ?」

 

「・・・・あ?」

 

いつの間にか少女が目の前にいた。

 

「────────────」

 

 目の前の少女を見て、ロートスは身体を強張らせる。なぜなら、【レギルス】なら誰でも知っている。その少女の名は───

 

「ロゼ・ヴァルトリュー・アイゼン・・・」

 

最強のレギルス。

彼女を説明するなら真っ先にそう言う人間が多いだろう。

主神級の【ジークリンデ】〘オーディン〙を殺し、そしてその力を操る事が出来る最強の人間。彼女の持つ竜の遺伝子は『ウロボロス』と言う。その竜の特性は死んでも生き返る事が出来るチートも真っ青な力を持つ。

そして主神級を倒した事から国の人間や市民からは絶大な人気を誇り、人々からは絶滅姫と呼ばれている。

女にその名前はどうかと思うだろうが、実際に黒い光で殲滅する様はそう言う言葉しかない。 

そんな彼女が何故此処にいる?ロートスは思考を巡らせていると、彼女は雪のような真っ白な手でロートスの頬に触れた。

彼女の恐ろしい程に整った顔がロートスの目の前で止まった。じーっと見つめる彼女に対し、ロートスは顔を引きつらせたまま何も出来ない。

そんな状況が数分続いた後、ロゼは目を閉じる。

やっと解放される。そう思った瞬間だった。

 

「────ん」

 

「!?」

 

彼女の唇がロートスの唇に合わされる。そんな彼女の行動にロートスは驚愕しすぐに仰け反った。

 

「プハっ!?オマッ!?何しやがる!?」

 

ロートスはロゼの行動に驚愕をあらわにしながら言うと、彼女はボソリと言う。

 

「覚えて・・・ないの?」

 

「はぁ?」

 

彼女の不思議そうな顔にロートスは怪訝そうな顔をつくるが、彼女は気にする事なくその唇を開く。

 

「昔・・・約束した。私達はずっと一緒にいるって」

 

「俺はそんなの知らねえよ。人違いだろ?」

 

ロートスの言葉にロゼは首を横に振る。

 

「私が間違える訳がない。写真もある」

 

「写真?」

 

そう言って彼女は服のポケットの中からロケットを取り出すと、その蓋をパカリと開けた。

そこに入っていたのは一枚の写真だった。

幼い彼女と金髪の少女。そして子供の俺だった。

 

「・・・なんで俺が?」

 

ロートスは彼女に見せられた写真を見てそう呟く。

 

「思い出した?」

 

無表情な彼女の顔がロートスを覗き込むが、彼からしてみればそれどころではない。

絶滅姫と見知らぬ少女、そして俺は幼少期の頃に一度会っていた?

いや、絶対にありえない。俺は幼少期の頃からずっと一人で生きてきたのだ。彼女達と知り合うことなど────

 

「グリンデ?」

 

彼女が俺をそう呼ぶ。

その瞬間に俺はハッと我に返る。そして俺をグリンデと呼ぶ彼女に言った。

 

「悪いけど人違いだ。俺にはロートスって名前があるんだよ。アンタが言うグリンデじゃない」

 

そう言ってロートスは身を翻す。

 

「じゃあな。もう会うことはないだろうよ」

 

そう言ってロートスは車が止まっている場所へと足を進める。だが────

 

「・・・・・」

 

「・・・・・」

 

後ろから彼女がついてくるのが分かる。

このままだと車までついてくるんじゃないか?

そう思った俺は振り返ると、ついてくる彼女に言った。

 

「お前、何処までついてくるつもりだ?」

 

「・・・・・?」

 

ロートスのその言葉に彼女はコテンと首を傾げてくる。

 

コイツ都市までついてくるつもりだ!

 

それを察した俺は人類最強に言葉を投げる。

 

「お前、帰りの車ねえの?」

 

「・・・・ない」

 

そう言って彼女は少しだけ顔を俯かせる。

人類最強、まさかの帰りの車が無しである。

 

「後、家もない。ずっと戦ってばかりだったから」

 

「マジかよ・・・」

 

悲報。人類最強、家もなかった。

人類最強に家もないってマジか。政府何やってんだよ。

ソレを知ってしまった以上、ここで彼女を置いていくのは流石に不味い。

ロートスは顔を引きつらせながら彼女に言った。

 

「じゃあ、家に来る?」

 

その言葉に彼女は無表情だった顔を少しだけ明るくする。

そんな彼女にロートスは参ったなぁと頭をかくしかなかった。

 

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