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「世界には色んなお茶がある訳だが、その中でも最高なお茶はなんだと思う?」
「まーた始まった、れんれんの熱弁」
「毎度思うが、よくそうも話題を持ってこれるな。しかも大して深くもない」
「聞き流す方が楽よ、ジャンヌ。蓮の無駄話は聞くだけ無駄」
「お前ら揃いも揃って酷くないか?」
東京にあるホテルの一室に、その四人の少年少女は集っていた。
話題を切り出した少年に、遠慮なく冷たい言葉を浴びせる少女三人。
少年は不満げに顔を顰めながら、世界で最高なお茶はな、と強引に話題を引き伸ばした。
「緑茶だ。伊藤園の緑茶。あれに勝るお茶はない」
「まさかの緑茶なの? 理子はてっきり抹茶だとばかり思ってたんだけど」
「私もだ。レンは抹茶をよく飲むし、食べる」
「確かに抹茶は好きだ。だがな、俺が飲食してるのは『抹茶味』であって普通の抹茶じゃないんだよ。普通の抹茶は嫌いなんだ」
世の抹茶愛好家にぶち殺されても文句は言えない発言を堂々とした少年の名は、
その発言に呆れながらも首を傾げる金髪の美少女は
それらを聞き流して、インクを付けた筆を漫画用紙へと走らせる黒髪にセーラー服の美少女の名前は
彼らは皆、『イ・ウー』と呼ばれる組織に属する者達である。
「れんれん、変な所で子供舌だよね。その癖に好きなのは和菓子」
「緑茶が好きだから、それに合う和菓子が好きなんだ。緑茶は最高だぞ、あれがあれば何でも飲み込める。トマトは例外だが」
「なに、蓮。貴方、トマトが嫌いだったの?」
興味があると言わんばかりに、走らせていた筆を止めて振り向く夾竹桃に、蓮はその通りだと苦笑する。
イ・ウーにおける単純な格闘戦であればトップクラスの腕前を持つ彼の嫌いなものがトマトなど、彼を知る者達が聞けば唖然とするだろう。
なんと子供っぽいのだ、と。
「あぁ、悪かったな! ガキみたいな好き嫌いで! まぁ、24にもなって泳げないお前にだけは言われたくないがねぇ?」
「…言ったわね、蓮。貴方は今言ってはならない事を言ったわ、表に出なさい」
小馬鹿にする様な笑みを浮かべていた夾竹桃だが、蓮の反論によってすぐに笑みは消え去り、不機嫌な表情だけが残る。
理子は相変わらずアツアツだね〜、と楽しげに笑い、ジャンヌは意外と子供っぽいのだな、と友人の新たな発見を心に刻んでいた。
二人共、止めるつもりは更々ないらしい。
「一人で行けよ。俺は暇潰しに忙しい」
「そもそも、此処は私の部屋なのだけど?」
「良いだろ、別に。同期のよしみじゃないか」
「女性のパーソナルスペースに入り込む男はモテないわよ」
「おいおい、本気かよ夾竹桃? お前には俺がそういう一般男子が気にする様な事を気に掛ける男に見えるのか?」
「くっ…! そうだった、貴方は天性の戦闘狂だったわね…!」
「ははっ、褒め言葉として受け取ってやるよ」
「褒め言葉でいいのか…?」
「まぁ、あながち間違ってないし良いんじゃなーい?」
イ・ウーの研鑽派筆頭、法月蓮。
とある傭兵会社に身を置いていた過去を持つイ・ウー切っての格闘家であり、国内外問わずありとあらゆる武術を追い求める武術家。
そんな彼は、超人揃いのイ・ウーでもかなりの戦闘狂として知られている。何せ、
「ふぅ…じゃ、話を戻そう。夏の縁側で飲む緑茶がどれ程美味いか、お前ら分かるか?」
「あー、それは分かるかもっ。夏に飲む緑茶は確かに美味しいよねぇ」
「だろ? ただし麦茶、てめーは駄目だ」
「そうか? 私は麦茶も好きだが」
「駄目だ、駄目駄目だぜジャンヌ。のび太くん並みにダメだ」
「なんでや、のび太関係ないやろ!」
「全く、ジャンヌちゃんは本当にダメだな〜」
「ぷっ、あっはははは!!!! 似てる、れんれん似てるよ! 最初の頃そっくり!」
「っ、くっ……!!」
「? 何故二人は笑っているんだ?」
「ドラえもんで調べてみろよ、すぐ出てくる。最先端技術が詰め込まれたポケットを持った青色のネコ型ロボットだ」
「青色のネコ型ロボット……?」
首を傾げながら、パソコンを使って調べる。カタカタとキーボードを叩き、ドラえもんと検索して動画を再生すると―――
三人の笑い声が、ホテルの一室を包んだ。
これは、武偵ではない男の物語。
法に縛られる事なく、己と仲間が為に動く超人の物語である。