陰の実力者『シャドウ』ちゃん   作:ちんすこー

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シド君じゃないよ。
ピアノの音階を2ずつ挙げてレミだよ。

まだレミちゃんは本格登場しないよ。


悪魔憑き『シャドウ』ちゃん

陰の実力者……

主人公でもなく、ラスボスでもなく、物語に陰ながら介入し実力を見せつけていく存在。

 

きっかけが何だったのかは覚えていない。

アニメだったのか、漫画だったのか、はたまた映画なのか。

ただ、物心ついたころには憧れていた。

 

皆が子供の時にヒーローに憧れるように、僕もまた“陰の実力者”に憧れていた。

皆と違うのは、それは一時の熱病などでは決してなく、もっと深い心の底で燃え続け、僕を突き動かした。

 

空手、ボクシング、剣道、総合格闘技。強くなるために必要な技術は、全力で習得し、そして実力を隠し平凡であり続けた。いつか来るその日まで……

 

だけど、いつしか不安を感じるようになった。現実と向き合う時が来たのだ。

 

巷にあふれる格闘技を学んでも、物語の世界にいた“陰の実力者”のように、圧倒的な力を手に入れることは出来ない。

精々が、そこらへんのチンピラをバールでボコれるぐらいで、飛び道具が出て来たら厳しい。完全武装の軍人に囲まれたら、それはもうおしまいだ。

 

いや、僕が何十年と鍛えて世界最強の格闘家になったら、軍人に囲まれてもボコり返せるのかもしれない。

だけど、それだけだ。

 

もし、頭上に核が降ってくれば蒸発する。

 

僕は断言する“陰の実力者”は核では蒸発しない。

だから僕も核に蒸発しない人間にならなければいけなかった。

 

Q. 核に蒸発しない為にはどうするべきか?

 

 

僕の出した答えは……

 

 

 

 

 

 

 

ガタンッ

 

 

ボクを乗せる馬車が悪路で大きく揺れ、それに合わせて思考が覚醒する。

 

随分と懐かしい追憶にふけていた気がする。

一体何だったのかは余り覚えていない。

 

前世の時、お花畑を全裸で走り回ったことか、はたまたは神秘を感じるため十字架に磔になったことか、もしかしたら魔力を知るため改宗を繰り返した時のことかもしれない。

 

まあそんなことはどうでもいい。

 

今は()()の操作に集中しなければ。

魔力……そう、魔力である!

 

今更だが、ボクは転生者だ。

 

夜の薄暗い山の中、全裸で頭を大木に打ち付けていた時、僕は道路側に魔力を確認し、そこに飛び込んだ。

恐らくそれが原因で、僕は転生の扉を開き中世っぽい異世界に転生を果たした。

 

辺境の貧乏男爵の女の子レミ・カゲノーに……

 

だが、そんなことはどうでもよかった。

生まれてすぐ、目を開くとそこらかしこに魔力が漂っていた。

魔力と引き換えにジョニー(息子)を失ったが、その程度安い物だった。

 

ボクは夢中になって魔力を探究し、剣を振るった。

 

そんなある日、背中に黒い痣があることに気づいた。

大したことはないと、無視し放置した。

それから1ヶ月以上たったころ、いつもの日課で魔力の操作をしていた時、途端に操作が困難になった。試しに大量の魔力をこめてみたところ、魔力暴走が起き、それに呼応するように痣もみるみると広がり、ボクの体を蝕んだ。

 

そうしてようやく気付く……これは、〈悪魔憑き〉だと。

 

〈悪魔憑き〉。はじめは同じ人間として生まれるが、ある日を境に体が腐り出す。放っておけばすぐ死ぬが、教会はそれを買い取り、浄化と称して処刑する。人々は平和が守られたと喝采を送り、教会の権威は上昇する。まさに中世って感じでテンションが上がる。

 

いや、上がらない。

 

今の自分がまさにその状態にあるのだから。

 

〈悪魔憑き〉の症状が出て1ヶ月と半月。それが露見し教会に売られたのが一週間前。

 

今まで魔力操作で何とか凌いできたが、そろそろ限界が見えてきている。

あと、少しで……

あと、少しで……

 

ボクは再び魔力操作に全力の集中を割いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

強い日差しの差し込む日中、森を貫くようにある悪路を商団が通る。

多数の荷物を積み込んでいる馬車は4つ、その周りを10人程の護衛が囲っていた。

 

「全く気味が悪いですね。旦那、元の値段じゃあ足りませんよ」

「ああ、わかっている。これを教会に届けるだけで思わぬ大金が入る。報酬ぐらい弾んでやる」

 

先頭を走る馬車で行われる会話。

片方は護衛チームのリーダー。もう片方がこの商団を率いる商人だ。

 

「おい!野郎ども聞いたか!旦那が報酬を弾んでくれるとさ!気張っていけよ!」

 

リーダーの声に護衛チームの面々から歓声が上がる。

暑い中、鎧も着込んで歩いているのに元気な物だ。これも魔剣士の特性なのだろう。

 

「全員魔剣士の冒険者集団“シュゴーシン”。報酬を弾まなくても高い金を払っているのだ。しっかりやってもらわなくては困る」

「まあまあ旦那。ここカゲノー領はまともな産業もないド田舎領地。そんな所にうちらを脅かすような盗賊なんていませんよ。それこそ、夜の間魔物に気を付けるだけですよ」

「だが、ここで()()()()の〈悪魔憑き〉が手に入ったのもまた事実。警戒することに越したことはない」

「まあ、それもそうですね。給料分の働き位はしますよ」

「期待しているぞ」

 

そこから暫く沈黙が響く。

木の葉が擦れる音、虫の奏でる合唱、それと……枝が踏まれ折れる音。

 

「全隊注意!何者だ!」

 

リーダーは腰に掛けた剣に手をやり、凄まじい剣幕で怒鳴った。

すると、目の前の木の影から一人の男が出てくる。

護衛の何れもが警戒し、男を見る。

 

「おっと、失礼失礼。驚かせたかな?」

 

十数人はいる商団から発せられる警戒の空気を、男は欠片も気にせず、おどけた様に手を上げながら近づいてきた。

 

「何者だ、といった!それ以上近づくと斬るぞ!」

「いや~おっかねぇ~。俺は唯の迷子の旅人だ」

「ほう、道があるのに、態々森の中を歩く旅人がいるのか?」

「いるじゃねぇか、目の前に」

「どうして森の中にいた。まさかやましい理由があるわけじゃないよな」

「ん~と、ほらあれだ。水を切らしてな。川を探したんだ」

「面白い冗談だ。おまえ、旅人じゃないな」

「あれ、ばれちゃった」

「ああ、だから……死ね」

 

リーダーはただそう言うと腰に差した剣を引き抜いた。

魔力で身体を強化し、男との間を瞬く間に潰し、その刃を首へ宛がおうとする。

だが、既の所で防がれた。

 

「おいおい、弱いな~お前ら本当に名の通った冒険者なのか?」

「なッ!?」

 

リーダーは驚愕したように男を見る。

届くはずだった。首まであと少しのところで男の剣は間に合い、リーダーの剣と衝突した。

リーダーはすぐに力では不利と悟り、剣を引こうとした。

だが、それよりも前に男は剣を握る手の力を緩め男の剣筋を受け流す。リーダーの体は一瞬でバランスを失い、崩れそうになるが何とか立て直す。

しかし、すでに遅かった。男はリーダーの剣筋が流れていくのを確認すると、剣をリーダーの持つ剣の内刃に沿うように進めリーダーの腕を切り落とした。

 

「ぐわッ!?」

「まじで弱いな~まあ、俺が王都ブシン流の免許皆伝で王都でも名が通っているから当たり前なんだが」

 

「おい、宴の時間だ!好きにやれ!」男が一息ついてそう言うと、森の中から何十人もの、浮浪者のような恰好をした男たちが飛び出し、護衛を殺し、荷台から物品を盗んでいった。

 




最初にやられるボスAを少し強化したよ。
頑張れ!ボスA!
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