陰の実力者『シャドウ』ちゃん   作:ちんすこー

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シャドウ♂がシャドウ♀になってもイプシロンは胸を盛るよ。
こ〇すばのエ〇スとオ〇ロのシャ〇ティアと一緒でイプシロンは胸を盛らなきゃイプシロンじゃないよ。


戦い方を教える『シャドウ』ちゃん

クレア・カゲノー。

ミドガル王国の辺境を守護する貧乏男爵家の長女。

小さい頃から剣の才能を見込まれ、次期当主として期待される存在。

 

そんな、私には妹がいる。

いや……いた。

今では、家系図にも公式の記録からも存在が抹消された妹が……

 

姉妹のはずなのに、彼女はよく狂犬なんて言われる私とは違って、おっとりとした雰囲気の少女だった。生まれはそこまで高貴でもない男爵家なのに、その姿は深窓の令嬢然としていた。

剣の腕も奇抜さはあっても大したことはなく、姉妹なのにあべこべな私と妹。

瞳の色だって赤と黒で違う。

唯一同じなのは、髪の色だけ。

 

だけど、私は妹を大切に思っていたし、家族の中で一番の愛を持っていた。

食事する時はいつも隣、トイレも心配だから着いて行ってあげてたし、お風呂にだって一緒に入っていた。寝るときも一緒。いつも一緒の仲良し姉妹。少し不満を上げるのならば、いつも抱き枕のようにして一緒に寝るのに、朝になると私の腕から自分のベッドに戻っていることだけ。

 

まあ、そんなことで私の妹に対する底なしの愛が無くなる訳がない。

 

妹の醸し出すポカポカ陽気に誘われ、私はまるで木の蜜に吸い寄せられるカブトムシみたいに抱きつく。

冬の日溜りのような心地よい感覚が身を包み、いつまでもここに居たいと思わせる。

 

そう、いつまでも……

いつまでも……

 

もう妹はいない。

私は姉ではない。

 

全ては私のせい。

いつものようにお風呂に入った時に見た妹の背中に広がる黒い痣。

私はまだ、それを知らなかった。

だけど、それが言い訳になることはない。

 

ただただ心配で、ハゲ*1と母さんに言ったときの、絶望の顔が今でも脳裏にこびり付いて離れない。

その日から妹はいなくなった。

 

私はハゲと母さんに静まる気配のない怒りと、果てることのない疑問をぶつけた。

 

なぜ、妹に黒い痣が出来たのか?

なぜ、妹はいなくなったのか?

なぜ、いなくなる必要があったのか?

なぜ、私から妹を取るのか?

 

〈悪魔憑き〉を知った今では無意味な事であると理解できる。

だけど、無知だったあの頃の私は絶えることのない自責の念と、矛先を失った怒りをどうするかで精いっぱいだったのだろう。

 

そんな言い訳をしても私の罪が消えることはない。

恐らくこれは、私に対する罰なのかもしれない……

 

 

「ふむ、1年前から定期的に体の不調と魔力の不調を感じると……」

 

私は目の前にいる30代半ほどで、灰色の髪をオールバックにした男、オルバ子爵を見る。

ブシン祭の決勝一回戦目でアイリス王女に無様に斬られた男だ。

だけど、今の私はこの無様な男にすら負けている。

冷たい石と鉄格子に囲まれた牢、その中に私は魔封の鎖でつなぎ留められている。

彼の魔力も籠っていない拙い殴り位なら受け流せるけど、彼の腰に差している剣を抜かれた時生き残れる可能性はほぼなくなる。

先程からオルバが医師の真似事をしているから生き残っているのだと考えると、屈辱で顔が歪む。

まあ、それも私への罰だと思えば、幾分か軽くなるが……

 

「ええ、そうね。不調を感じたと思って寝たら、次の日には収まってたりしてるわ」

「聞いたことのない現象だ……だが、症状が出たということは、まず適合者で間違いないか」

「適合者?どういう意味よ」

「貴様の知る必要のないことだ。どうせすぐ壊れる。ああ、一応貴様の家族も調査する……」

 

オルバはそこまで言った瞬間、私はたまらずそいつの鼻先を殴り飛ばした。

オルバが鋭い眼光で私を睨む。

 

「クレア・カゲノー、貴様!」

 

四肢を繋ぐ鎖の内、右手の鎖を何とか外して殴ったのだ。

 

「手の肉を削いで、指も外すか!?」

「これ以上家族になにかあったら!絶対に許さない!お前も、お前の家族も、友人も!一人残らず殺して……!?」

 

アルバの全力の拳が私の腹に決まる。魔封じの鎖で魔力を使えない私は、魔力で強化されたオルバの拳を防げず……

 

 

 

 

「小娘がッ!」

 

オルバは目の前に倒れる忌々しい少女に向かって吐き捨てた。

肉を削いだ時に付いたであろうクレアの右手首の傷から、血があふれ出ており、床に赤黒いシミを作っていた。

 

「まあいい、これでわかる」

 

オルバは膝を折り、床に広がるクレアの血に手を伸ばす。その時、兵士が息を荒げ走ってきた。

 

「オルバ様!大変です!侵入者です!!」

「侵入者だと!何者だ!」

「分かりません!ですが、我々だけでは手も足も出ず……」

「クッ、しかたない。私が出る」

 

 

 

 

 

 

 

オルバが石づくりの通路を走る。

 

化け物め!

 

オルバは先程の事を思い出す。

 

施設のホール。そこに折り重なる兵士たちの死体と広がる血の池。

自分と同格の存在の7人の少女。

 

オルバはすぐに戦うことを下策とし、せめて情報だけでも教団に届けるため疾走していた。

 

「先回りされていたか……*2

 

目の前にいる黒ずくめの者を見据えて言う。

 

「だが、一人なら容易い」

 

オルバは、口角を釣り上げ醜悪に笑うと、薬によって強化された肉体を加速させ消えた。否、常人では消えたと錯覚するほどの速さで動いたのだ。

そうして、黒ずくめの者に剣を振り下ろす。

 

「なッ!?」

 

まるで、剣が何処に振られるの分かっていたかのように、それを受け止める。

黒ずくめの者は軽くオルバの肩を押し、距離を取った。

 

「Lesson1」

 

黒ずくめの者が言葉を放つ。

低いが確かに少女の声。

オルバはその言葉の意味を理解できなかったが、何かの合図であることは分かった。

 

黒ずくめの者……少女が剣を軽く構え、ゆっくりと歩く。

1歩、2歩。そして3歩。

オルバは少女が自分の間合いに入った瞬間に剣を振るう、少女はそれに合わせ加速しオルバの剣は空を斬る。

少女の魔力も力も籠っていない剣はオルバの首の皮一枚を斬るだけに終わった。

 

「Lesson2」

 

オルバが出鱈目に振るう剣。

常人では捉えられない速度で振るわれるそれの戻りに合わせ少女は動く。

危険を察知したオルバであったが、動けない。

どんなに速くても、オルバの剣が少女よりも早くても、攻撃と同時に動くことはできない。

 

ほんの半歩。

 

少女にとっては遠い距離、オルバにとっては近すぎる距離。

一瞬の沈黙。

オルバは迷った末、間合いを外す選択をした。

それを少女は知っている。

だから、オルバの方が早くとも、少女の方が先に動く。

少女はオルバの後退よりも先に距離を詰め、刀の先でオルバの足を撫でた。先ほどよりも深めに。

 

「くッ……!?」

 

オルバは苦悶の声を漏らしさらに後退する。少女は追わない。

 

「Lesson3」

 

オルバは少女が何かをする前に動き出す。

上段に構えた剣が振り下ろされ少女に振るわれる。

少女は半歩横にずれ、自ら進んでくるオルバの横腹を先程以上に深く撫でた。

 

オルバはここに来てようやく悟った。今のままでは、この少女に勝てないと。

 

7人の少女、その内の一人であるアルファと対峙した時も、ブシン祭で王女に敗れた時も、これほどの差を感じることはなかった。

それこそ、子供の頃、まだ剣を握って間もない時に、師と対峙した時のような差。

子供と大人、素人と達人……勝負にもならない。

 

今オルバが感じる差とはそれほどのものだった。

 

決して強そうには見えない少女。先ほど対峙したアルファのような威圧感はない。そこにあるのはただ自然な形。

構えも、魔力も、剣筋も、何もかもが自然。筋力も、魔力も、速さも必要ない。絶望的な魔力差を少女はただの技量で覆していた。

 

だからこそ感じる圧倒的な敗北感。

 

オルバが未だ少女の前に立っていられるのは、彼女がそう決めているから。彼女が望むならその瞬間オルバの命は潰える。

 

今のオルバは薬の作用で体を斬られても再生する。もちろん限界はあるし、副作用も強い。しかし、多量の血を流し、肉を削がれれば回復も遅くなる。

だが、それほどの危機に陥っていてもオルバは生きていた。

 

否、生かされていた。

 

「なぜ?」

 

オルバの口から自然にその言葉が紡がれる。

 

なぜ、私を生かす。

なぜ、戦う。

なぜ、それほどの強さを。

 

黒……漆黒の装いの少女は言った。

 

「陰に潜み、陰を狩る者。我らはただそれだけの為にある」

 

低くとも少女特有の耳に響く声。

だが、そこには深さがあり、どこか哀しみを乗せていた。

 

オルバは理解した。この少女の在り方を。

 

「貴様、あれに抗う気か!?」

 

世界には裁けない者がいる。オルバもまたその一端にいると自任していた。

利権、特権階級、そして裏の顔。法の光は同時に闇も作り出す。

オルバもまた、その恩恵を得ながら、さらなる上位者に踏みにじられ、砕かれた。

 

「例え、貴様が、貴様らがどれほど強くとも届きはしない。世界の闇は……貴様の考えるよりもずっと深い」

 

オルバは忠告し、願った。この少女も自分のように、無様に敗れ、全てを失い、絶望すればいいと……

 

「ならば潜ろう、何処までも……」

 

少女の声には気負いもなく、気迫もない。あるのは不滅の覚悟と絶対の自信だけだった。

 

「容易くほざくな!」

 

オルバは少女とかつての自身を被せ否定した。

認められない。

 

オルバは懐から錠剤を取り出し全て飲み込んだ。

こうなれば、もう生き残れる保証はない。オルバは決心した。この少女に教えねばならんと。

自身の命を以て教えねばならんと。

 

この世界の闇を。

 

オルバの纏う気配が変わる。

先程まで暴れ狂っていた魔力は息をひそめ、体内にはさらに濃密な魔力が渦巻く。

血管が破裂し、筋肉が千切れ、骨が粉砕する。しかし、直ぐにそれらは修復される。

明らかに人間の限界を超えた力。

 

これを教団は“覚醒”と呼んだ。

 

「アアアアァァァァ!」

 

猿叫とともにオルバの姿が搔き消える。

そして鈍い音と同時に少女が吹き飛ばされた。

少女は壁を蹴り体勢を整える。

が、オルバは立て続けに少女を吹き飛ばした。

 

「軽い!遅い!脆い!これが現実だ!」

 

赤と漆黒が交わり、離れる。

濁流のように襲い迫る赤と、それに飲まれる漆黒。

誰が見ても漆黒の負けは確実だった。

 

だが、赤の刀は漆黒に届かない。漆黒の刀は赤に届く。

 

「何故だ?なぜ届かない!」

 

漆黒はただ自然であった。まるで濁流に流された落ち葉のように自然に赤い濁流に身を任せていた。

しかし、流されるだけでなく刺した。濁流の元であるオルバを。

 

「醜いな……」

 

漆黒の魔力がこの日初めて高まる。

人外の力を得たオルバですら実現できない圧倒的な魔力が。

 

一閃。

 

オルバは気づいた。

少女は何もかもを持っていた。

腕力が、速さが、魔力が、そして何より技量があった。

 

オルバの上半身が落ち、遅れて下半身が崩れ落ちる。

 

オルバを見下ろす少女と、少女を見上げるオルバ。

 

何も知らない子供だと思った。

だが違った。彼女は何もかもを知ったうえで、茨の道に進んだのだ。

 

オルバは思った。もしかしたら彼女なら……

 

「ミリ……ア……」

 

薄れゆく意識の中でオルバは今は亡き最愛の娘を思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ミリ……ア……」

 

筋肉モリモリのヤク中で中ボス風な赤目のおっさんが手から青い宝石の嵌め込まれた短剣を落とす。

それをボクが拾うと同時にアルファがやって来た。

 

「もう終わったの?」

「うん、まあね」

「さすがだわ」

 

それだけ言うと、アルファはイプシロン*3を手招きしてきた。

イプシロンを見ると、その腕にお姉ちゃん……クレア・カゲノーがいる。

ついでに、お姉ちゃんをそのスライム率99%の乳に当ててる。

 

「主さま、クレア・カゲノーを無事確保いたしました」

「ありがとイプシロン」

「ああぁぁ!主さまからの感謝!恐縮の至りです!」

 

感謝しただけでこれだけ盛ってくれる。

さすが、乳と話の盛り方ならイプシロンなだけあるね!

 

「ゴホン、シャドウ。クレア・カゲノーの処遇についてだけど、このままシャドウガーデンに所属させることにする?」

 

う~ん、それはないな。

だって見られたくないじゃん、肉親にごっこ遊びしてる様子なんて。

それに、今のカゲノー家はお姉ちゃんが居なくなると、後継ぎが消えてお家断絶の可能性が出てくるからな~

 

「いや、いいよ。牢の所に戻しておいてよ。起きたら自分で勝手に帰るでしょ」

やっぱり、貴女でも……

「どうかした?」

「なんでも。分かったわ、貴女の望み通りに……」

「じゃあよろしく」

 

アルファとイプシロンはお姉ちゃんを抱えて通路の奥に消えていった。

 

「ならば潜ろう、何処までも……」

 

うん、最高だ。

これを言わせてくれた筋肉モリモリのヤク中で中ボス風な赤目のおっさんには感謝しかないね。

僕は筋肉モリモリのヤク中で中ボス風な赤目のおっさんの遺体の前で手を合わせ黙とうを捧げた。

 

「願わくば、来世はミジンコ以上の何かになれますように……と」

 

よし、これでいいだろう。

それじゃあエア月光でも弾きながら帰るとしよう。

*1
父親のことです

*2
迷ってただけです

*3
青が差した銀髪ツインテールのエルフで5番目の七陰

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