全く投稿してなかったけど、お気に入りと評価増えててびっくり。
感想でも期待してくれるのがあったから、やるきになった。
感想くれた団長みたいな人。サンガツ
「なあ、お前知ってるか?王女さまを誘拐した美人の話」
「ああ、けどよ。まだ確定じゃないだろ?」
ミドガル王国の王都。
100万の人口を有する大都市、中世から近代への過渡期と思われる時代の文明にも関わらず、日の沈んだ大通りは煌びやかに眩く光り輝く。
馬車と人が、たえまなく行きかい活気に包まれる。
そんな明るい表から少し目を逸らし、薄暗い路地裏に目を移すと、二人の兵士が歩いていた。
「俺、聞いちまったんだよ。上司と騎士団のお偉いさんが言ってたんだ。あの美人の処刑は確定らしい」
「今のは聞かなかったことにするよ。にしてもあんな別嬪の首を刎ねちまうのか~、勿体ないな」
「そうだよな!だからよ、俺たちが当番の時には思いっきり楽しもうぜ」
「いいのか、そんなの?ばれたら大目玉だぞ」
「バカだな~。他の奴もどうせヤッてんだ。俺たちもヤらなきゃ損だぜ」
「それもそうだな。そいつが言いそうになったら、口を塞いでやればいいだけだもんな」
「ナニでふさぐんだよ」
「「ハハハハハ」」
路地裏に二人の下劣に染まった哄笑が木霊した。
その後も続く、品のない下品な話。見る者によっては目を背け、納税者はブチ切れる職務怠慢。
関係のない一般人が聞けば、話の中心となっている美人に心底同情したことだろう。
「――だからよ、俺は下がいいんだ。お前は上な」
「おいおい、かってに決めるなよ、俺だってし――
人間の愚かさをさらけ出し、恨みを買ったがための喜劇だったのか、はたまたは知らぬうちに闇に属してしまったための悲劇だったのか。
それらはどうでもいいとして、とにかく結果は二人の演者が首を刎ねられこの世から退場したことだけだった。
「下種どもが」
「ええ、本当に救いようのない下種ですね」
青を差した銀髪のエルフ、イプシロンが冷めた目付きで骸となった二人の兵士に吐き捨てた。
それに、銀髪のエルフ、ベータも同意する。
「主さまに対しての不敬な言いよう。苦しみのない死で済んだことを感謝することね」
イプシロンは許せなかった。
自分の恩人を貶されることを、自分が夢見る百合の園を貶されたことを。
兵士どもが話す聞くに堪えない言葉が耳に入るたびに、目の前が赤く染まっていった。それでも、何とか自分を抑え込めたのは、隣のライバルもまた我慢していると知っていたからであった。
二人の兵士が路地裏の最奥まで移動し、それに合わせ首を刎ねた時は爽快だった。
だが、この余韻にいつまでも、浸っていられるわけではない。
早急にシャドウを救い出さなくてはならないという焦燥感。別にシャドウを信頼していないわけではない。ただ、シャドウは目的のためなら何でもする。文字通り何でもだ。
イプシロンは焦燥に駆られながらも、現状が自身の野望を叶えるチャンスであると思っていた。
シャドウに姉がいた事を知った時、イプシロンは浅はかにも歓喜した。主さまから受けた恩を返せるかもしれない、と。
それからイプシロンは、シャドウの心にあいた穴*1を埋めるべく、積極的にアプローチを仕掛けた。
その後、目標は次第に変質し、シャドウの姉になるという物になった。
胸を盛るのも包容力を身に着けるためであり、背を盛ったのも姉となる以上、妹よりも低いわけにはいかないという考えからだった。
そして、イプシロンは思う。
囚われの妹、貞操に危機に瀕し、そこを姉が颯爽と助ける。
なるほど、中々いいシチュエーションである。
イプシロンは頬が緩みそうな自身の顔を何とか正し、隣にいる自身のライバルを見た。
ライバル、ベータはメモ帳に目にも留まらぬ速度で何かを書いていた。
「ベータ、早くして。いくわよ」
「少し待ってください。下っ端とは言え情報を持っているはずです。今、それを探しているので」
「わかったわ」
確かにベータは兵士二人の体を弄っている。
イプシロンはベータの几帳面すぎる性格に少し呆れながらも、その一生懸命な様子に珍しく感心した。
嘘である。
ベータは兵士たちの情報など書いていない。
描いているのは、快楽に顔を歪め、体を悶えるシャドウの絵だった。
もちろん、あのようなクズどもがシャドウに手を出すことをベータが許すことは無い。
けれども考えるのだ。もし、自分とシャドウ様が……
兵士二人の下種な話の時もそうだった。
度し難い憤怒を心の中で感じながらも、同時に、もし自分が……と色欲に頭を染めていた。
ライバルの目前だから、真剣な表情を顔に張り付けながらも、頭の中は緩み切っていた。
僅か1分足らず。
魔力で強化した腕で瞬く間に完成した作品は所要時間からは考えられない、恐ろしい程の出来栄えであった。
その下に書き加える。“シャドウ様は我々の為、世界の為巨悪と戦い。その為なら目的を選ばない。例え犠牲になるのが我が身でも……。去るβ月β日、シャドウ様はそのお心に深い傷を作りました。その時、銀髪青目泣きぼくろの可愛いエルフが――(これ以上は見るに堪えない)”
漸く書き終え、シャドウ様戦記完全版への挿入を決意し、ベータはメモ帳を胸に仕舞った。
「もういいみたいね」
「ええ」
短い会話のあと、二人のスライムボディースーツが変形を始め、幾分の後、そこに居たのは首の刎ねられた兵士と、それと瓜二つの二人組だけだった。
◇
「――こちら、特選牛フィレ肉のパイ包み焼きボルドー風です。そして、ワインはボルドーの最高級品をお取り寄せしました」
「うむ」
「壁にお掛けしてますは、かの巨匠が描いた“モンクの叫び”。シャドウ様の執務室にありました物をこちらに移動させました」
「うむ」
おかしい。
ボクは豪華絢爛に飾り付けられた長机に乗る数々の料理を見て思った。
とても文明レベル近代以下の留置場っぽい場所で出ていい料理ではない。ていうか現代の留置場や刑務所でもあり得ない豪勢な食事だ。
今いるのも今日放り込まれた拷問部屋みたいなとこではない、程々に飾り付けられたここの所長っぽい人の執務室だ。
因みに、ここにいた所長っぽい人はボクと入れ替わりで拷問部屋みたいな所にいるらしい。
どうしてこうなったのか。
ボクの横でスライム率99%の胸をこれ見よがしに張っているイプシロンを一瞥する。
ボクは夕方あたりに拷問部屋に押し込まれて椅子に縛り付けられた。
文明レベル的に間違いなく拷問される。だが、逆に考えればモブ式奥義四十九手を一斉解放するチャンスではなかろうか。
そんな事を考えてウキウキして待っていたら二人の兵士が入って来た。
刮目せよ我が奥義。
……とそんな調子で眺めていたら気づいた。
中の人、ベータとイプシロンだ。と。
その後は、シャドーガーデンの構成員が次々に入ってきて、留置所みたいな場所を制圧した。
所長っぽい人の執務室の入った時に、ベータとイプシロンが書類を手に取って『流石シャドウ様。これが目的だったんですね』とか『主さま流石です。ここまで見通していたとはその慧眼には感服です』とか言っていたけど、やっぱ演技うまいね君たち。
何でもすぐにディアボロス教団の設定と繋げられるんだから、もうそろそろボクも演技の練習をした方が良いかもしれないな。
構成員も、演技指導が行きわたってたし、スライム技術をつかった変身もかなりの精度だったよ。
もう一度、料理に目を向ける。
確か、ウナギ何とかの何とか添えと、旬のキノコの何とかと何とか巻の何とか焼きと、何とか産のかぼちゃと何とか風スープと、何とか牛何とか肉の何とか包み焼き何とか風とか、色々ある。
フランス料理っぽいからコースで出て来るべきだと思うけど、ここは異世界だししょうがないね。
「イプシロン、ベータはどうしたの?」
「ベータはカイと一緒にこちらにあった書類を調査しています」
「ふむ」
書類を調査か……
宝のありかとかあるのかな?
それとも、金庫の暗証番号とか。
まあ、ボクの心は広いからね、こんな豪勢の料理も出されたことだし、今回は目を瞑ろう。今度は誘ってもらうけど。
「主さま、あーん」
話が終わると、イプシロンは料理をナイフで切り分け、フォークに刺し、ボクの口に運んだ。
何か、陰の実力者っていう感じではないけど、イプシロンの世話焼きをここで拒否したら後がめんどくさいとボクは学習しているから、ここは大人しく口を開ける。
イプシロンの世話焼きは今に始まったことではない。
最初は肩を揉むとか、お茶を入れるとか可愛いものだったけど。
次第に、食事だとかお風呂とかでも世話を焼くようになった。挙句にはトイレにも押しかけ、寝る時も『寂しくないですか?』とか言ってベッドに潜り込もうとする。
イプシロンの演技とかは好きだし、マッサージとかお茶を入れるのも上手いから好きだけど、最近だとお姉ちゃん*2みたいな感じがして、距離を取っていたのだ。
というか、王都でトルコアイス屋をし始めたのも、イプシロンが原因だったりする。
「そう言えば、イプシロン。アレクシアは見つかりそう?」
先程まで、ニコニコと料理を食べさせていたイプシロンは、すぐさま真剣な顔になった。
「はい、現在。シャドーガーデンの全力を挙げて捜索を行っています」
「犯人はわかる?」
「恐らく、ディアボロス教団のフェンリル派によるものかと」
フェンリル派、フェンリル派ねぇ~
また、知らない単語だ。
アルファとか七陰の皆はこういう設定を作るのが得意だ。すでにボクを超えているかも知れない。
報告とかで、よく知らない単語を聞くけど、聞き返すのも場が冷めるから出来なくて、そういう知らない単語を恰もボクが知っている風に言ってくるから、なおさら聞けないんだよね。
「ところで、ボクはどうなるのかな?やっぱ、このままじゃギロチン?」
「はい、このまま犯人が見つからなければ、主さまが処刑台に上がることになります」
別に不思議なことではない。
アレクシアは第二王女。王位継承権も二位だ。そして、継承権一位には、圧倒的な支持でアイリス・ミドガルとかいう、チンパンジーでもわかる程のビッグネームがいる。
つまりは、情を除けば、政治的な価値も低くて、というか政戦の理由にもなりかねないから、アレクシアを国を挙げて全力で探す理由が乏しい。
だけど、国にも面子はあるから、ボクをスケープゴートとして、体制を保とうとしている。
まあ、こんなところだろう。
「ふむ、そうなるか。だけど、ボクじゃ役者不足じゃないの?」
だけど、ボクは平民だ。
それどころか、悪魔憑きとしてあらゆる記録を抹消されたから、それ以下かもしれない。
そんなのを処刑しても、あまり意味がない気がするのだ。
それこそ、田舎の貧乏貴族の子息くらいなら丁度いいかもしれないが。
「ええ、ですので。騎士団は主さまを拘束した時に一緒にいた男子学生二人も処刑するつもりのようです」
「ふむ」
ヒョロとジャガも巻き込んじゃったか、そう言えば二人は田舎の貧乏貴族の子息だったな。
あの二人じゃあ拷問に耐えれそうにない。
可哀想に。南無。
生きてたら、アイス一つおまけしてあげよう。
ボクは心の中であのモブ二人組に合掌し、食事を再開した。
美味しい筈のフレンチが少し薄味に感じた。
イプシロンが胸を盛る理由
原作→シャドウの寵愛を受けたい!せや、胸盛ろ
二次→シャドウちゃんの姉になりたい!せや胸盛ろ