七陰「助けなきゃ!!」(使命感
こんなところにディアボロス教団の拠点とアレクシアが!!
(突撃する七陰と意味が分からず困惑するシャドウちゃんの図)
あるとおもうんですよ
「あなたはどうしてそこに繋がれているのかしら?」
石造りでどこか湿っているような部屋。
どこに目線をやっても自然の光源が入って来るような隙間は無く、ここが地下だと何となく察することが出来る。
そこに、四肢が拘束され、硬い台座に寝かされている美人が一人。
ミドガル王国第二王女のアレクシアだ。
「あら、寝ているの?」
自分の言葉に返事がない事がわかると、アレクシアは目線を対象に移し、そう言った。
アレクシアの目線の先。
そこには化け物がいた。
かろうじて目と鼻と口が判別できるが、それ以外はひどく爛れた顔。全身は歪に肥大化していて、右腕はアレクシアの足より長い。
対照的に左腕はアレクシアのものよりも細く短く、何かを大切に抱えるように胴と癒着している。
一見すれば、黒いゴミにも見える姿をしている化け物は、その長い腕ならアレクシアに届く程度の距離で、胸を上下させ寝ていた。
常人ならその不気味で醜い姿に強い嫌悪を抱くと思うが、アレクシアはそんなことはなかった。
というよりも、アレクシアが少しおかしいだけなのだが。
太陽や月を見ることがかなわない場所なため、どれほど経ったが分からないが、少なくとも数日は経ったとアレクシアは考えていた。
「あなたも大変ね。こんな退屈なところにずっといるのだから」
答えが返ってくることはないとわかっていながら、アレクシアは化け物に話しかける。退屈は人をおかしくするのだ。
「それに、白衣がご主人さまなのも同情するわ」
白衣の男。
ここ最近、唯一理性的な会話ができる存在だ。
いや、出来ていない。
アレクシアは心の中でツッコミを入れた。
口を開けば王族の血。
手を動かせば、注射器を取り出しアレクシアの柔肌に突き立てる。
随分と血にこだわっているようだから、吸血鬼の研究でもしているのではないかと勘繰っている。
正直、自分を主人公でも一般人でもない、陰の実力者かなんかだと思っている狂人の方が話が通じるのではないかと、アレクシアは思った。
と、考えていれば何とやら。
部屋の鍵が開く音が鳴った。それも慌ただしく、落ち着きのない様子だ。
「ちくしょう、ちくしょう!」
白衣の男が勢いよく扉を開けて入ってきた。
「あら、ごきげんよう」
今までの鬱憤を晴らすように、男と正反対の落ち着いた様子で挨拶をするアレクシア。
「や、奴らが来やがった!おしまいだ!何もかもおしまいだ!!」
「奴ら?」
突然の単語に疑問符を付けたが、少し考えると合点がいった。
騎士団が来たのだと。
ふと耳を澄ませば、金属のぶつかり合う音と、複数の叫声が聞こえた。それも徐々に近づきながら。
それが分かれば、もう怖い物などない。
なるほど、隣に白衣の男がいるが、彼は自分の血を欲しているのだ。殺すことは無いだろう。
「諦めなさい、抵抗は無駄よ。私の拘束を解けば、多少の減刑なら頼んであげるわ」
頼むだけだけど、と小さく付け加えた。
それと、アレクシアは思う。これ程の大それた施設、そして王族を攫うことができる能力を考えれば、裏に巨大な何かがいるのは確実。白衣の男が研究者であることを考えれば、自分が頼まなくても、その裏の何かが彼を減刑どころか解放するだろう、と。
もし、その裏が“十三の夜剣”*1なら、とても面倒だ。
「や、奴らが減刑……減刑だと!そんなの死んだあと、首が繋がっているか繋がっていないかの違いだけだ!皆殺しだ……皆殺しなんだ……奴らは!!」
「騎士団は無用な殺生はしないわ。抵抗しなければ命は助かるはずよ」
そんなことはないけど、とアレクシアは心のなかで呟いた。
「騎士団だって?騎士団なんでどうでもいい!奴らは、皆殺しだ……全員、死ぬんだ……」
「騎士団じゃない……?」
騎士団ではないなら、一体何なのか?もしかしたらこの男が錯乱して、現実と妄想がごちゃ混ぜなだけかもしれない。
「どちらにせよ、もう終わりよ。抵抗はしないことね」
「嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!!僕はまだ終わらない!あ、あれさえ完成すれば……」
男は頭を掻きむしり、絶滅危惧の髪を数本散らしたところで、血走った目を化け物に向けた。
「ヶ、ヶヶッ……し、試作品は完成した。あとはこれを投与するだけ」
男は針の付いた装置を化け物の手に押し当てた。
「これで出来損ないのお前も役に立つ」
「やめた方がいいわ。何だか嫌な予感がする」
男はアレクシアの言葉を無視し、それを化け物に突き刺そうとした。
その瞬間、男の手が宙を舞った。
「へッ?……い、痛い、痛いイタイイタイイタイ……ぼ、ぼくのてが!!」
「ええ、本当にやめておくべきだったわね」
凛とした鈴の鳴るような声。
アレクシアは咄嗟にそれが聞こえる方向に顔を捻った。
「貴女……いえ、貴女たちは一体?」
そこには、十数人の黒づくめの女を背に、そこそこ際どいドレスを着た金髪エルフ。
アレクシアは驚愕した。
一体、いつからそこに!?
数日の間、鎖に繋がれ鈍っているとは言え、アレクシアは数多ある剣術の中でも、合理性を追求した王都ブシン流一部*2なのだ。
それが、声が発されるまで欠片も気づかなかった。驚くべきことである。
「あら、お姫さま。貴女には関係ないわ。観客は観客らしく舞台を見ていることが仕事よ」
アレクシアはムッとした。
自分を小ばかにしているような言葉使いもそうだか、それ以上に自分に対して微かに感じる心配の雰囲気がアレクシアの反骨精神を刺激した。
「私は観客じゃないわ。だって、そこに転がってる演者に無理やり舞台に連れ込まれたんだもの。私にも多少は知る権利はあるはずよ」
暫く両者の間に沈黙が流れた。少しすると、金髪のエルフがため息をついた。
「まるで、あの子みたい……」
「何か言った?」
「いえ、何も……でも、そうね。自己紹介だけしましょう。私はアルファ。ただのアルファよ」
「それだけ?他にも何かあるでしょ」
「これ以上は言えないわ。けど、そうね……それ以上知りたいなら自分で知ればいいわ」
アルファはそう言うと瞬く間に手に剣を出現させ、アレクシアを縛る鎖を破壊した。
「ほら、行きなさい。知りたいのよね?今、行けば何かわかるかも知れないわよ?」
「わかった。騎士団には言わないでおいて上げるわ」
「ふふ、そうしてくれたらありがたいわ」
数日のブランクなとないかのようにアレクシアは扉を開け、さらに続く地下の通路に飛び出していった。
◇
アレクシアが去った部屋。そこで黒ずくめの女たちは調査を行っていた。
その中で、アルファはある一点を澄んだ目で見据え歩を進める。
向かった先はアレクシアが拘束されていた台座の横、化け物の下だった。
「かわいそうに。痛かったでしょう」
アルファは慈愛に満ちた言葉で話かけた
「大丈夫よ、もう苦しむことも、悲しむこともない」
黒く変色した肉のような化け物、それをアルファは躊躇いもなく抱擁した。
「だから、怖がらないで」
アルファと化け物の間で青い魔力が溢れ出し、怪物を包み込む。
暫くした後、アルファの胸には一人の少女がいた。そして、先程まで胴に癒着していた左腕は力なく垂れ下がり、一振りの短剣が零れ落ちた。
それは、赤い宝石の嵌められた短剣。
『最愛の娘ミリアへ』
柄にはそう刻まれていた。
アルファは少女が寝息を立てているのを確認すると、シャドーガーデンの誰かが引いたであろう毛布に少女を寝かせた。
それを確認すると、一人の黒ずくめの女がアルファに近づいてきた。
「アルファ様、よろしかったのですか?」
「アレクシア王女を逃がしたことかしら?私たちの中で英雄の血にそこまで固執するのは若干一人を除いていないわよ」
「いや、あれは英雄の血というよりシャドウ様の力の解明なのでは……。いえ、そうではなく。アレクシア王女を――
「一人にして大丈夫だったのか、でしょ?」
ダークブラウンの髪をたなびかせる女性、シャドーガーデンのナンバーズ*3が一人、ニューはアルファの突然の茶目っ気に少し驚いたあと、ミツゴシ商会で鍛えた表情筋ですぐに顔をただした。
「はい、確か進路方向にゼノン・グリフィがいるはずでは?」
「大丈夫よ。だって彼女がいるもの」
「シャドウ様が!?」
「ええ、いつものことながら一人でどこか見当違いな所に行くものだから、迷ったと思ったけれど、まさかここまで見越しているとは思わなかったわ」
「さすが、才色兼備の言葉が最も似合うお方」
「ええ」
アルファは鷹揚に返事をしながらも目を細めた。
「けれど、何でも彼女に頼るのは間違っているわ。私たちは何としてもついていく必要がある。この組織を彼女に相応しい組織にすべく」
「はい、そのために誠心誠意精進していく次第です」
「頑張って頂戴」
話も一区切りし、ニューが調査に参加しようとした時、アルファは思い出したように言葉を発した。
「あ、そうだったわ。そう言えば彼女が言っていたのだけど、カーテンコールは盛大にするそうよ、貴女たちも巻き込まれないように早く出て頂戴」
「了解しました」
「お願いするわね」
アルファは慈母のような目で部屋内を一瞥したあと、静かに部屋から出て行った。
◇
「迷った」
雑魚狩りに飽き飽きして、先回りしてボスを討伐できないかと思って、アルファから離れたけど、それがいけなかった。一回成功した実績があるんだけどね。
周りを見渡してみる。石畳で出来た通路。石レンガで出来た壁と天井。右左、上下何処を見ても石、石、石の空間。
まさか王都の地下にこんな場所があったとは。
最近、陰の実力者コレクションが増えすぎて、借りてる賃貸における場所が少なくなってきたから、今度からはこの王都下の地下迷宮みたいなところに隠させてもらおう。
それにしても広い。
アルファたちは迷ってないだろうか。
まあ、大丈夫でしょ。ここに来るって言いだしたのはアルファだし。
そう、あれは留置場みたいなところで、ベッドに潜り込もうとするイプシロンと格闘していた時の話。
突然、外から爆音が聞こえてきた。
その瞬間、イプシロンがおもむろに姿勢を正して、『主様始まりました。ご安心下さい私たちだけでも大丈夫です』なんて言って、部屋から飛び出していった。
それと入れ替わるようにベータが来て、何でも王都にはディアボロス教団のフェンリル派の拠点がいっぱいあるからそれを同時襲撃しているらしい。
恐らく、ボクを助けるために王都を混乱させ、処刑日を延長させるためだろう。その間にアレクシアを見つけるのかな?
なんか民衆の不満を収めるために逆に早くなりそうだけど……
まあ、ベータが大丈夫って言ってたから大丈夫だな。
そんなことより、今は早くボスを見つけなくちゃいけない。
そんなことを思っていると、剣がぶつかり合う音が聞こえてきた。
アルファたちかな?
仕方ない、このままここでウロチョロしてもボスは見つかりそうもないし、そっちの方に行ってみるか。
シャドウちゃんが自分達のおひざ元にいたからね、七陰も安心して組織拡大できるね。
これで実験体227番ミリアフラグはへし折れたね(わかんない人は書籍6巻買おうね)
てか、原作じゃあ711番の子が繰り上がるからローズ先輩の666番フラグもへし折れちゃう。
まあ、未来の僕が考えるから大丈夫か()
あと、本編見て気になった人も少なくないと思うけど、アレクシアは外の喧騒は聞こえてないよ。
アニメ版のアトミック跡地を見てみれば、アレクシアはかなり地下深い所にいたみたいだから、普通に考えて聞こえないと思うんだよね。
って言うのは建前で、実際はハーメルンの規約が怖くて日和っただけ。