それでは、どうぞ
プロローグは簡単に
「これにて撮影終了でーす!」
「お疲れ様でしたー!」
とある日の撮影スタジオ、雑誌の撮影なのか多くのスタッフが集まっていたその空間はたった今、纏め役の号令によって緊張が緩んだような雰囲気に満たされていた。特にトラブルなどもなかったようで、和気あいあいと片付けに勤しんでいる。
「ん……モッキュモッキュ」
そんな中、スタジオの隅辺りに設置されている椅子に座っておにぎりを頬張る者が一人。
その格好や容姿は整っており、見る限り被写体となっていた様子である。そんな愛らしい少年がマイペースにおにぎり(鮭 税込150円)を食べ進めていれば、そこに紫色の長髪を翻す美女がやって来る。
「やぁ、お疲れ紫亜ちゃん。いつも腹ペコなのは相変わらずだね」
「ん、お疲れ先輩……モッキュモッキュ」
「ハムスターもびっくりの頬張り方してるな……とまあそれはそれとして。はい、これあげる」
先輩と呼ばれた美女……天音永遠が差し出したのは一つのパッケージ。
少年……上条紫亜は食べ終えたコンビニおにぎりの包装を小さく纏めて傍らのバックに入れてからそれを受け取ってマジマジと見つめた。
「ん、『シャングリラ・フロンティア』……?」
「そうそう、通称『シャンフロ』。日本のVRゲームの中でも最高峰のMMORPG作品、所謂神ゲーってやつだね」
「話ぐらいは聞いたことある……けど何故?」
「なぁに、事務所の可愛い後輩への誕生日プレゼントだよ。君も結構なゲーマーだろ?興味、あるんじゃない?」
「………」
「そーんな不安そうな顔しないでよ〜。大丈夫、面白さは私が保証するよ。君が求める物もね」
ボーっとパッケージを眺めていた少年の肩がピクリと動く。
何かの琴線に触れたようで、いそいそと貰ったゲームソフトを自分のバックに仕舞い込む。
「ん、それなら有り難くやらせて貰う………それで」
「ん?」
「何を手伝えばいい?」
薄く開かれた目は鋭く、先程までのポヤポヤとした雰囲気は消え去った。
そんな視線を向けられた方もそれまでの人の良さそうな表情から一転、悪巧みをする悪人のように口角を吊り上げた。
「さっすが〜、私の後輩は話が早くて助かるよ。けど、今はまだその時じゃない。計画の算段がついたらまた連絡するからよろしくね♪それまではシャンフロを楽しんでよ、ジョシュアくん?」
「ん、了解、永遠先輩」
「んー………」
スタジオから帰宅した紫亜の姿はリビングにあった。世間一般でも最新鋭かつ高級品の物ばかりが並んでおり、紫亜含めた一家の有する財産が相当なものであることを示している。
『兄さん』
「ん、どしたの」
『今日もやる?』
紫亜がソファに体を預けながら頭を悩ませていれば、いつの間にか側に一人の少年が立っていた。
紫亜によく似た顔立ちの……事実、彼らは血の繋がった兄弟である為に似ているのも当たり前なのだが……少年は手に持ったメモ帳に言葉を綴ってそれを見せる。
端的ではあるが彼らにとっては日常と化している事、態々主語を入れる必要も無いのだ。
「ん、すぐ行く」
『じゃあ表通りの団子屋で』
「わかった」
紫亜がそう言うと弟は満足そうに頷きそのまま2人揃ってそれぞれの自室に戻る。
そして手に取った近未来的なVRゴーグルを装着しベットへと身を委ねれば、意識はたちまち現実世界から仮想世界へと移ったのだった。
「「「ログイン天誅ッ!!」」」
「「「ログボ天誅ッ!!」」」
「………ふふっ」
意識の転送から解放され目を開ければ、見えるのは自分に向かって振るわれる数々の刀と飛んでくる銃弾。そんな危機的状況に置かれた紫亜はその整った顔に穏やかでありつつも何処か狂気的な笑みを浮かべる
「ん、天誅」
腰に差した刀を鞘から抜き放ち、そのままの勢いで周囲の存在を尽く斬り裂く。
人体、刀、銃弾関係なく、その刃の前ではただの試し切りの巻藁と変わらない。
「ゔっげ!?『レイドボス』さん!?」
「いやチゲぇ!最初からにこやかだから『裏ボス』さんの方だ!」
「こんにちは、今日もいい天気」
存在を知覚されたと同時に周囲のプレイヤー達に動揺と緊張が走る。
その一瞬の硬直は、さらなる被害が生まれるには十分すぎる油断であり、紫亜から半径数mの体を強張らせた者達は尽く首や心臓等といった急所を断ち切られる。
穏やかな挨拶を言い終わる頃には既に14人程が斬り捨てられて消滅した。
「…………ふふっ」
この世界は『辻斬・
世間一般には幕府側と維新側に分かれ協力し合い、相手を打ち倒すゲームだと認知されるように宣伝が行われているが、実情としては世紀末のモヒカンでさえも戦慄する治安の悪さを誇っている。
「天誅」
「グワーッ!?!」
「アバーッ!?!」
爽やかな初心者狩り、爆殺、謀殺、裏切り、騙し討ち、袋叩き、復讐、報復、制裁など当たり前、目まぐるしくプレイヤー間での結託と裏切りと仲間割れと同士討ちと袋叩きが行われ、ログイン時やログインボーナス確認、PKした後の僅かな余韻すら致命傷になりうるチート以外は何でもありの修羅の世界。
一般人からしたらクソゲー極まりないが、一部の適正ある人間にとってはまさに故郷のように感じられる、そんなゲームなのだ。
「肉盾式てn…「天誅」ウワラバッ!?」
「そ、装備は質y…「天誅」ギャヒンッ!?」
そんな世界で身の丈よりも少し長い刀を振るう上条紫亜……PNジョシュアもその一部に含まれる人間である。
強者であっても……むしろ強者であるほど他人から狙われやすい状況になる幕末の世界は、彼の中に眠る本性に途方もない程にハマったのだ。
「ん、殺し合う」
武器を振るい相手を斬る、拳を振るい相手を砕く、足を振るい相手を吹き飛ばす、体を捻り相手をいなす、行われ続ける全ての戦闘行為でジョシュアのボルテージは段々と上がり始める。
「………ハハッ!」
彼の本質は
ありとあらゆる戦闘を受け入れ、自分の技とし、全身全霊でもって敵と相対する、それに喜びと楽しさを見出した生粋のバトルジャンキーなのである。
「いた」
「!」
周囲のプレイヤーへの対処をしていた最中、自分の弟が操るアバター……レイドボスとも称されている『幕末』の頂点、ユラの姿を捉えた瞬間既にジョシュアは周囲のプレイヤーを置き去りにして走り出していた。
「フッ」
「せい」
本人達にとっては軽い一撃、しかし周囲から見れば即死技。
それが始まりの合図となり、刀同士が空気を裂きながらぶつかり合い、何回も何回も火花を散らす。
時折差し込まれる銃や蹴りの応酬も合わせれば、もはや小規模の戦争とも言えるレベルへと至っていた。
「ま、巻き込まれルゴっ!?」
「こ、こっち来ブォアッ!?!」
運の悪いことにまだ2人の近場から逃れられていなかったプレイヤーは剣戟に巻き込まれてポリゴンを撒き散らす。
「ん、そうだユラ。別のゲーム始めるから
「そう、なの?」
「大丈夫、やめる訳じゃ無い。多分3日に一回は帰ってくる」
「ならいいや、それで何するの?」
激しい戦闘の中でも日常のように言葉を交わす2人以外のプレイヤーが軒並み刈り取られた所で、一度間を置いたジョシュアが愛する弟の問いに答える。
「ん、『シャングリラ・フロンティア』、やってみようかなって」
はい、少しの間プロムン要素皆無ですがジョシュアくんの冒険が始まります。衝動で書き始めたので不定期更新になると思いますが、どうか気長にお待ち下さいませ。
上条紫亜 (PN:ジョシュア)
今作の主人公。基本的にポヤポヤとマイペースな大食い系男の娘。成人済みだが見た目や人懐っこい性格故に時折中学生と勘違いされることも多い。モデルの仕事をしており、天音永遠と先輩後輩の関係。
本性は重度の戦闘狂であり、流石に普通の人間相手には余程のことがない限り手は出さないが突っかかって来ようものなら戦闘してもいい相手と判断し容赦なく再起不能になるまでボコボコにする生粋のバトルジャンキー。リアルでも一度やらかして死にかけて病院に担ぎ込まれた経験アリ。
幕末の『レイドボス』ユラの実の兄。波長が合ったのか昔から関係が良好で互いに結構なブラコン。
イメージ→金髪になって獣耳がなくなったシロコ(ブルアカ)の性格にタルタリヤ(原神)成分をぶち込んだ感じ
戦闘時に気分が一定以上高揚すると北条時行(逃げ若)の逃走時のような感じの笑みを浮かべる。そこ、メスの顔とか言わない
座右の銘 「ん、身体は闘争を求める」
元鯖癌ギリシャ文字サーバー出身かつ二つ名持ち
後書きにシャンフロ劇場ミニや小ネタシリーズは
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いる
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いらない
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セルマァ……