司書補J、シャンフロにて奔走する   作:ゲガント

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いつの間にかヴァルプルギスが来ましたね。
正直、あのハーモニーEGO滅茶苦茶好みです
しかもEGO改造なんていう滅茶苦茶そそる物まで出てきましたし、そのうちこの作品内でも出すやも………



それでは、どうぞ


森での語らい

貼り付いた御札が一斉に破裂し呪いが鳥達を飲み込んだ後、2羽は先に消えた『審判鳥』と同様に光る頁となって消え去った。

その光景を見届けたジョシュアは残心で構えていた状態からスッと戻り一つ深く息を吐く。

 

「んー、やっぱり同調はちょっと疲れる。レベルが上がればもう少しマシになるのかな」

 

そんなボヤキが身に纏っていた『紅籍』と共に宙へと解けて消えていく。

実際肉体的には何の後遺症も無いのだが、脳内に垂れ流された情報の塊に若干疲労感が残っていた。

 

グルグルと肩を回して気を紛らわせながら相変わらず暗い森を歩いていれば、黄昏時特有の赤い空が段々と暗くなっていく。

どうやら日が完全に沈むらしい。

 

「……微妙に光ってるんだよねこれ」

 

月明かりどころか星の瞬きすら無い完全な暗闇が訪れたものの、ジョシュアがずっと身に着けていた『懺悔』が仄かな光を灯し周囲を照らす。

カタログスペック自体はパッとしないものの「対霊体特効」「精神防護」「ランタンの代替品」とかなり機能が盛り込まれているEGOギフトに触れながら、一寸先すら見えない闇の森を進んで行く。

 

「……ん」

 

探索を始めてから数分、周囲が暗すぎて時折大木が突如として現れたような感覚に陥ったりしながらも宛もなく進んでいれば、不意に引き寄せられるような温かい光がボンヤリながらも見えた。

そちらへとトコトコ歩いていくと、案の定先程ジョシュアが打倒した森の守護者達が大鳥のランプを囲むようにして地面に座り込んでいた。

 

『『『…………』』』

 

丁度表情が見えない程度の塩梅の位置だが、雰囲気から酷く落ち込んでいるのが雰囲気から分かる。

どうやら

 

『ッ!お前!』

『……ッ!』

『まだ、続けるか……!』

 

自分達が灯すランプの火以外の明かりに気が付いた三鳥達はザザッと警戒態勢を取りジョシュアを睨みつける。

 

「んー……ねぇ、鳥さん達一つ聞いて良い?」

 

しかし、既にジョシュアは闘争心が失せたように棒立ちしており静かに首を傾げていた。

 

「この森に居る怪物って君達のこと?」

『違う!!』

 

ジョシュアの質問に食い気味に答えるのは翼をはためかせる『罰鳥』。

 

『僕らは森を守る為に居るんだ!森のみんなは怪物を恐れて出て行っちゃったけど、また戻って来れるように怪物を探し出して退治しなきゃいけないんだ!』

『パニ、落ち着くんだ』

 

屈辱を受け、感情のまま叫ぶ仲間を落ち着かせる『審判鳥』も無言でコチラを睨みつける『大鳥』からも若干の怒りの感情が滲み出ている。

所謂心外、という奴なのだろう。

 

「あー……やっぱり?」

 

そして返答を聞いたジョシュアは少し苦笑いしながら無意識に取っ手に手を掛けていたデリバリーキャリアをインベントリに仕舞い込む。

 

『………何故武器を仕舞う?』

「ん、だって僕が君達と戦う理由はもう無いから」

『何?』

 

ふわりと微笑み、一歩歩み寄る。

 

「僕は君達の言う例の"怪物"に会いたい、会って殺し合いたい。それでもって君達はその"怪物"を追っ払うか仕留めたい。ね?対立する理由なんて何処にもないでしょ?」

 

あっけらかんと言い放ち微笑む部外者に対し、森の守護者達は困惑している雰囲気を漂わせていた。

 

『………既に殺し合った相手にそれを言うのか?』

「そりゃあ住処に余所者が入ってきたら警戒はするだろうからね。流石に殺意が高すぎるとは思ったけど相互理解が足りてないが故の事故ってことで。僕も早とちりで君達を思いっきり殴っちゃった訳だし」

『『………』』

『……信用出来ない!怪しい余所者め!』

 

奇妙な物を見た感じの眉を顰めた表情を浮かべる大きな2羽を他所に、警戒心を募らせる『罰鳥』は声を荒げて羽ばたき自分の存在を誇示し、やる気満々といった様子で威嚇する。

 

「んー…じゃあココで自決してみせた方が良い?」

『…はぇ?』

 

しかし、それを遥かに超えてくるのがジョシュアクオリティである。

予想外の返答で固まる『罰鳥』を前に取り出したのは赤い刃がランプの光を反射して輝く鋸だった。

 

「自分殺し、いっきまーす」

『待て、待たんか!』

 

そのままギザギザの刃の根元を首に当て、一切の躊躇なく引こうとした所で『審判鳥』が咄嗟に天秤を傾けた事で現れた縄が致命の鋸を絡め取って動きを止めさせる。

 

『いきなり何をしている…!?』

「敵対の意思が無いことの証明だけど」

『だからと言って何故改めて私が罪を測る前に自ら死ににゆく……!?対話を試みたのはそちらだろう……!?』

「ん、殺される前じゃないと自死は出来ない」

 

何言ってんだお前、と言わんばかりのノリでそう宣う人間(気狂い)幻想体(本来であれば異端側)が常識を説く、あまりにもチグハグな事態に僅かばかりに残っていた敵対の気配は完全に霧散してしまった。

 

『確かに怪物に殺される事から逃れるには一番早いが……』

『自分から自分に罰を下しに行く奴初めて見たや』

 

『罰鳥』や『大鳥』も若干引いたような目でジョシュアを見ていた。

 

「というかそもそもその天秤じゃ有罪確定でしょ、道具の手入れぐらいはちゃんとしなよ」

『………?』

「なんで首傾げるの」

『必ず判決を下せる天秤を、という要望からこのような形にしたのだが……』

「傾かなかったらどっちも同じだけの罪を抱えてるって事だから両方しばき倒せば良かったんじゃない?その役目果たせそうなのは君の仲間にいる訳だし」

『む………それは、確かに……?』

 

考え込む様子を見せる『審判鳥』を横目にチラリと『罰鳥』を見る。

先程の『啄み』は過剰な威力だが、分かりやすい「罰」としては確かに機能してるだろう。

 

「そもそも有罪=死刑執行は早くない?せめて半殺しまでに留めたほうが良かったと思う」

『む、僕も真面目に役目を果たしてたんだ!けど、森の皆が僕の小さな嘴だけじゃ到底罰にならないって言われたからお腹裂いてでっかく挟めるようにしたの!』

「ん、振り幅がデカいし思い切りが良すぎる。君も止めなかったの?」

『何故だ?私とて見回りの質に疑問を持たれたから目を増やして自らの羽で消えないランプを作ったのだが』

「OK、そもそも詳しく話を聞かない事には何も意見は言えないね」

 

大きな価値観の壁を感じて一度会話を切ったジョシュアは、手に持っていた鋸を側に置きながらランプを囲む輪に加わるように座り込んだ。

 

「だから、君達の事を聞かせて欲しい」

 

 

 

 

 

 

〜NowLoading〜

 

 

 

 

 

 

「んー………成る程」

 

ジョシュアから質問をして三鳥達がそれに答える。

そのような形で語られた過去に、ジョシュアは何とも言えない表情を浮かべていた。

 

──曰く、かつては温かみに溢れた森で平和に暮らしていた

 

ある時、一人の旅人が森を訪ねて来た際、その怪しさから追い返した結果一つの予言を残していったらしい。

 

『やがてこの森に悲劇が訪れるだろう。

森は悪行と罪に染まり、争いが絶えぬだろう。

悲劇が終わるときは恐ろしい怪物が森に現れ、すべてを飲み込んだ時だ。

二度と森に太陽と月は昇らぬ。森は決して元の姿になることはないだろう』

 

何とも不吉な事ばかり並べ立てられたそれを「嘘だ」と一蹴するのは容易いものの、森の守護者としては無視する事は出来なかった。

 

予言の怪物から森を守る為に奮闘した3羽

 

しかしいつからかその努力が捻じ曲がり始め歪なルールで動くようになった

 

小鳥は自ら腹を裂き、長鳥は天秤を歪ませ、大鳥は消えない灯を作り出した

 

守るべき筈の森の仲間達との関係も悪化していった

 

それでも尚、3羽で力を合わせて森を守ろうと必死になって

 

 

そしてその末路がこれである、と。

 

「君達も大変だったんだね」

 

元々はあんなにもえげつない方法を取るような存在では無かったのだろう。

話を聞いていくにつれ彼らが純粋にこの黒い森を守る為に力を行使しているのが伝わって来たものの、それでも言いたい事がある。

 

「言っちゃ悪いけど中々に民度が悪い」

 

奮闘する彼らの活動に不安を溢し、その結果厳しくなった法にに文句を宣う。

まぁ三鳥達の行動が理不尽極まりないものだったのは間違いないのだが、その原因となった自覚も無く自分たちを守護する存在を責め立てるというのは些か無神経というか、愚かしいと思わざるを得ない。

 

「………一つ言えるのは最終的にこういう事態に必要なのは「納得できる理由」と「価値観のすり合わせによる妥協点」だと思う。人間である僕と、動物である君達の価値観は違うものだからそこら辺は何とも言えないけど」

『納得……』

『妥協点?』

「例えば『大鳥』」

『む?』

 

呼ばれた『大鳥』は首のような部位がない為体全体を捻る。

 

「「監視が厳しすぎて自由」っていう文句があったみたいだけど、何故やり方を変えなかったの?」

『それはそうなのだが……皆、予言の怪物に不安を覚えていたんだ』

「確かにそれはそう、君は「怪物」の出現を見逃さないようにする為に1羽で頑張ってた……けどね」 

 

ビシリと指を突きつけられる。

 

「君が森の仲間を殺したら本末転倒にも程があるでしょ?」

『……何故だ?私の手で殺してしまえば怪物に殺されることは無いだろう?』

「君からしたらそうかも知れないけど、僕…というか普通の生物からしたら殺される時点で嫌なんだよ?」

『………何故だ????』

「あ、うん、この話は一旦止めよう」

 

至極真面目に首を捻る大鳥にこれ以上常識を説いても無駄だと悟り、一つ咳払いをして話題を転換させた。

幻想体は何かしらが常軌を逸した歪み方をしていたが、恐らく『大鳥』はその死生観が該当する物なのだろう。

『捨てられた殺人鬼』のように共に受け入れる等ならば兎も角、根っこの部分を無理に矯正すればどんな化学反応が起きるか分からない、故にその部分には触れないようにする。

 

「あと、『罰鳥』とか『審判鳥』にも言える事だけど、他の仲間達に頼る選択肢は無かったの?例えば監視なら他の仲間にも手伝って貰って報告して貰うとか」

『むむむ、そう言われたら、確かに……?』

『しかし、この天秤を使えるのは私だけだったからな……』

「何事も工夫だよ、罰は何も直接的な体罰でなくてもいいし、全てを天秤に委ねなくてもいいんじゃないかな」

 

全てを見通す『大鳥』、どんな罪でも裁ける『審判鳥』、何でも飲み込める『罰鳥』、彼らの特異性は幻想体になる前から有していたものであるが故に、他の森の住人達と比べて担える役割が大きかったのだろう。

 

「1人で全てを担っていたら、歪みに気づくことは出来ない。ずっとワンマンでやってた君達には受け入れ難いかも知れないけど、他の仲間達にも仕事………というより手伝いを任せてみたら良かったんじゃないかな………まぁ守護されたいた立場をただ甘受するだけして仕事を放棄する奴もいるかもしれないけど」

 

しかしそれは彼らだけに負担を掛けて良い、と言うことでは無いのである。

 

「君達に必要なのは学んで考える時間なんだと思う。正しさっていうのは揺るがない物何だろうけど全てが不変な訳じゃない。色んな事を知ってからでもまだ間に合うんじゃないかな」

『むむむ………』

『ふぅむ』

『………成る程』

 

そう締めくくったジョシュアの言葉に、3羽は唸るように思考の海に沈んでゆく。

 

「だから怪物をぶっ倒した後、戻って来た仲間達と改めてちゃんと話をしよう。僕も協力するから、ね?」

 

微笑みながら差し出される手、そこに悪意などは存在しない。

 

 

『『『……………』』』

 

 

逡巡の思考の末、森の守護者達はその手を取った。

 

 

 

「ん、良かった………

 

 

 

 

 

ジョシュアは安堵したように息を吐き、

 

 

 

 

 

 

 

それで、この結末は君が望んだ物だった?」

 

 

 

 

そしてそのままくるりと振り向いて、明後日の方向に問い掛けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おや、お気付きでしたか」

 

 

 




※ジョシュアがアレ過ぎて鳥達がマトモそうに見えますが、彼らも中々なイカれポンチ共です。


三鳥があんな風になった原因は色々あると思いますが、『それぞれの役目を1羽で担っていたから』って言うのもあると思うんですよね。
黒い森の規模がどんなものかは分かりませんが、彼ら自身が『広すぎて自分たちだけじゃ森を守れない』って言ってるので、より効率的に全て仕事をしようとしたら苛烈になるのも仕方ないのかも

後書きにシャンフロ劇場ミニや小ネタシリーズは

  • いる
  • いらない
  • セルマァ……
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