それでは、どうぞ
ソレは一瞬の出来事だった。
『『『ーーーーーツ!!!!!!』』』
「ゴッ!?」
割れて消えていった核の奥、ドス黒いと表現出来る程の奈落のような喉らしき部分の闇から爆音の咆哮が放たれる。
衝撃が全身走り、擂り鉢を横にしたような口内から弾き出されたジョシュアは、射出されたような勢いで地面に打ち付けられて残存していた【奮進再臨】のバリアが0枚となって強化値が限界まで高まったものの、ソレよりも気に掛けるべき事象が目の前にあった。
「……ッ!?」
そこに居た『終末鳥』の姿は、誰がどう見ても瀕死だった。
巨大な翼は羽根が抜け落ち血濡れとなり拉げるように無残にも複雑にへし折れ、
先程まで周囲を薙ぎ破壊していた巨腕は纏っていた包帯が解け全体に罅割れの様な傷だらけになり、
ずんぐりとした胴体はその大口から裂傷が全体に走って、
元より紅かった頭部はその継ぎ接ぎの跡や巨大な目から涙のように血を垂れ流していた。
「ッ、ははッ、まだ動けるんだね……!」
『終末鳥』の『嘴』による死刑を潜り抜けて身の内に格納した核に槍を突き立てて破壊した。
ソレを成せたのは目視と聴覚で確認しているし、手にもその感覚が確かに伝わって来ていた。
あの苦しみ様から核が全て崩壊すれば、『終末鳥』の存在を維持できずにそのまま終わるとジョシュアは予想していた。
事実、本来であれば『罰鳥』、『審判鳥』、『大鳥』の3羽を模した核を壊した時点で『終末鳥』はその存在を保てず崩壊する筈だった。
そもそも幻想体は、往々にしてそれぞれが突出した個体差……個性とも言い換えられる物を有しており、その対価としてか定められた性質や在り方が変わる事は余程の事が無い限りは無いのである。
例え国一つでさえも軽く滅ぼすような力を持つ幻想体でさえその事実から逃れられない。
『『『…まだだ』』』
でも、何処かで何かが捻じれたようで
特異な者と関わった故か、
3羽の話が調律する者によって紡がれ直した故か、
それとも本になってから過ぎ去った膨大な時間故か、
その『余程の事』が起きたようだ。
『『『まだだ………!』』』
既に彼らの中核を成す3つの卵を破壊したにも関わらず、黄昏を齎す存在は未だ暴れるのを止めない。
不変である筈の存在の内側は狂乱で満たされ、
今この世界にて限界を超えてもなお、終末の化身として相応しい存在として君臨した。
『『『まだだッ!!』』』
これ以上なく「瀕死の重体」という言葉が当てはまる様相でありながら敵に向けている瞳にはソレだけで相手を殺せそうなほどの殺意が宿り、
世界のルールによる死を覆す程に強固な「自我」を有した『終末鳥』の様子に、ジョシュアは一瞬気圧されてから直ぐに蕩けるような笑みを浮かべる。
「いいね、これが本当の最終ラウンド…ッ!?」
それに応えようと姿勢を低くし駆け出そうとしたその時、ジョシュアの足の力がガクンと抜ける。
正しく言えば今まで込めていた力が霧散した結果、急激に力が抜けたような錯覚に陥っていた。
(このタイミングで……!)
無慈悲にも定められた【奮進再臨】の制限時間を迎え、1週間に渡る
しかし何時までも過ぎた事に気を向けていては即座にあの世行きだと思考を修整し即座に離れるようにその場から背後に向けて飛び退いた。
しかしスキルによって齎されていた強化が全て消え失せた結果、先程に比べればその動きにキレはない
そこに『終末鳥』が滑り込むように迫り、
「ッ!しま『『『倒れろォッ!!!』』』
何の特殊能力も無い、けれどもその巨体に見合わぬ速さでもって放たれた決死の一撃は、
バキャッ!
漸く、
『終末鳥』と相対した時から、ずっと体の内側で何かが膨らみ続けるような感覚を感じていた。
最初こそ規格外の存在を前にした時の威圧感だと考えていたが、それにしては少しばかり違和感があった。
疼く。
理由のわからない、けれど悪い物ではない事は分かる何か
この世界に来てからほぼずっと共にあった何かが
どうしようもなく疼いていた。
そんな疑問を抱きながらも怪物に成り果てた鳥達を鎮めるために挑み、
死力を尽くし、
切り札も消費して、
そしてたった今死に直面しようとしている。
果汁が詰まった果実が弾けるには十分過ぎる状況だろう。
かつて存在していたという『都市』、その中でも一際新しい時代にて『光』がばら撒かれた後にとある技術が生まれた。
罪を自覚した者のみが扱うことを許された、
己の精神を糧とし、身体に力を齎す術。
使い手達はそれを『
『『『はぁッ……はぁッ……はぁッ……!』』』
体勢を立て直そうとした敵を剛腕で殴りつけ、地面へと叩き付けた『終末鳥』は全身から血を垂れ流しながら息切らせる。
ボタボタと森の地面に赤い染みが出来るのが視界に入るがソレを気に掛ける余裕は今の彼らには無い。
まぁ瀕死の重体の状態でいながら精神力だけで無理矢理身体を動かしていたのだから仕方のない事だろう。
「かッふぅッ……!はぁ、はぁ……!」
それに、もっと余裕を奪うような事実があるのだから。
『『『ッ!!!』』』
声が聞こえた瞬間に痛む身体に鞭を打って顔をバッと向ける。
地面に叩き付けて沈黙させた筈の敵が息を整えながらのっそり起き上がり、コチラを見て笑いを漏らしていた。
「あっはは……!流石に死んだかと思った……!」
『『『何故だ!何故死んでいない!?お前はたった今潰した筈だ!』』』
火事場の馬鹿力………というより自身の崩壊すら厭わぬ決死の攻撃を直撃させたにも関わらず、当然のように起き上がった敵に、浮かんでくる感情は驚愕と若干の恐怖のみである。
「確かに、僕も負けたかと思ったんだけど……」
EGOの同調はHPか0になる際、条件を満たしているのならば強制的に同調を解除する代わりに必ず食いしばりが発動する副次効果がある。
しかしながらその効果は一度きり。
そしてその食いしばりの権利は空中で殴られた際に消費され、地面に叩きつけるように潰された時には既に命は風前の灯よりも酷い状態となっていた。
『水袋』の効果でストックしていた回復効果はあったとしてもその有無の差は本当に微々たる物だった。
「どうやらこの『光』は僕を生かしたかったみたい」
そんな中、まるでジョシュアを守る様に現れた光の靄は、その身体を覆い地面と『終末鳥』の剛腕によるサンドイッチという致命的なダメージを負わせる攻撃をほんの僅かなダメージに押し留めたらしい。
そうして自身から溢れるように出て来るナニカを見て、その理由を察したジョシュアはクスリと笑った。
何がトリガーとなったのか厳密に理解するのはまだ先の話であるが、今そんなのは気にする事柄ではない。
もっと重要な事があるのだから
「さて、じゃあやろっか鳥さんたち」
周囲の血まみれの惨状とは対象的に、ただ静かにそれでいて今にも弾かれようとする思いを押し留めながらインベントリから致命の包丁を取り出し構えを取る。
「どうしたの?ほら立ちなよ、折角のオーバータイムだ。出し切ろうよ、最後まで」
そう言って浮かべた笑みは晴れ晴れとしており、構えられた刃にブレは無い。
『『『……』』』
「……」
最早言葉は不要だった。
互いに無言で体勢を整え、それぞれが自身の獲物を構える。
方や巨大な敵相手には些か小さいと思えてしまう包丁で、もう片方は特殊な能力を全て削り取られたボロボロの身体のみではあるものの、
暫しの間、黒い森が静寂に包まれる。
その静まり返った時間を破ったのは『終末鳥』だった。
『『『がぁぁぁァァッ!!』』』
全身から血を垂れ流し身体は今にも崩壊しそうになっているにも関わらず、その巨体に見合わない速さの一撃が正確に敵を仕留めるための最適なルートを通って放たれる。
「ッ!」
対するジョシュアは迫る死を眼前にしても尚怯まない。
迷わず跳躍して剛腕のストレートを跳び越しその上へと着地、そのまま本体目掛けて走り出した。
無論『終末鳥』も黙って接近される訳もなく、纏わりつく虫を払うように腕を振るう。が、その動きはぎこちなさが見えていた。
駆けながら次々と飛び移り段々と接近していくジョシュア、その視線が向けられていたのは『終末鳥』の頭部である。
『『『ぬぅッ!』』』
もう胴体付近まで迫られた末に『終末鳥』が取ったのは頭突きだった。
不自然にまでに細い首を撓らせ、丸みを帯びた頭部を振りかざして叩き付けようとする。
「あっは!そっちから来てくれたね!」
『『『んなッ……!?離れろッ!』』』
「そんな悲しい事言わないでよ!」
しかしソレを読んでいたのか、ジョシュアは軽やかに避けると頭部に生えた羽根を掴み取る。
敵を振り払おうとする『終末鳥』は頭を振るが、その行為も苦とせずジョシュアは丁度いいポジジョンを探りながらしがみつき続ける。
そして大きく頭を振りかぶった際、見開かれた瞳の前にぶら下がるように現れたジョシュアと視線が合わさった。
「ありがとう!最ッ高に楽しかった!」
晴れ晴れとした笑顔でそう告げたジョシュアは鮮血のように紅い包丁を振り上げ、
充血したその巨大な一つ目へ目掛けて突き立てた。
本来であれば『終末鳥』戦は核を3つ破壊した時点で終了してましたが、ジョシュアくんは色々と条件を満たしていた為に別ルートへと入りました。
詳しくは語れませんが条件の一つは
・『The Tale of The BlackForest 』の攻略が初回である事
です。
三鳥達と『終末鳥』戦は初見殺しとスペックの暴力で溢れてるけど頑張ろうね!
後書きにシャンフロ劇場ミニや小ネタシリーズは
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いる
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いらない
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セルマァ……