司書補J、シャンフロにて奔走する   作:ゲガント

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ヴァルプルギス、まさかの夜明け事務所勢揃いとなるとは……本編にもワンチャン出て来たりしませんかね?


それでは、どうぞ


闇の黄昏を過し者

「……ん、ただいま」

 

浮かんだ朝日が一際輝き出し、辺りを包み込むような一際強い光が放たれた直後、思わず目を瞑ったジョシュアの姿はいつの間にか図書館へと戻っていた。

若干光がチラつく為目をシパシパさせながらそこにいるであろうビナーへと声をかければ直ぐに返事が来る。

 

「お帰り、その顔を見るに随分と魅力的な道楽だったようだな?」

「ん、すっごく楽しかった。けどいきなりあの世界にぶち込むのはやめて欲しい、せめて武器の修理したかった」

「お前が喪ったのはあの獣の頭を模した大鎚程度だろうに、全てを自ら手放した守護者達と相対した損失としてはこれ以上無い程に軽微だと私は思うが」

 

そう若干つまらなそうに述べるビナーは相変わらず何を考えてるのか分からない笑みを浮かべながら紅茶を飲む。

矢張りというか、オルトが「人が苦しむ姿を娯楽にしている」と言うだけあって性根が捻くれてるなと再確認していたジョシュアだったが、そこで漸く自分とビナー以外の存在が居ることに気が付いた。

 

「ん、アンジェラだ、おはよ」

「……貴方さっきまでAlephクラスの相手してたのよ?よくそんな呑気に挨拶出来るわね」

「そう?照れる……」

「今の私の言葉の何処に褒める要素があったかしら」

 

呆れるアンジェラと会話もそこそこに、ジョシュアは改めてコチラを見ているもう一人の存在について尋ねる。

 

「所でこのとっても強そうな人はどなた?」

「あぁ、説明が遅れたわね………彼女はゲブラー、この『図書館』の指定司書の一人よ」

「指定司書…ビナーみたいな立場ってこと?」

「おいその言い方はやめろ、虫唾が走る」

「じゃあ幹部?」

「そんな所ね」

 

ふむ、ともう一度紹介された者の姿を見る。

赤い長髪は雑にポニーテールに纏められ顔には古傷が残っている女傑、立ち姿からは強者の風格が醸し出されておりそれだけでも普通の人間から見ても只者では無いのが伝わってくる。

 

「僕はジョシュア、よろしくね」

「……ゲブラーだ」

 

そんな軽い挨拶を交わして暫しの間無言で互いを観察し合う2人。

 

「ん、凄いあの鳥さん達が合体した時の姿とは別ベクトルで勝てるビジョンが見えないや」

「ハッ、そりゃどーも」

「気が向いたらで良いんだけど1回殺し合いたい」

「いや普通に断るが?」

 

凄い自然な流れでとんでもなく物騒な提案をしてきたジョシュアは即座に断られショボンと肩を落とす。

 

「……ダメ?」

「逆に何で了承されると思ったんだ。私は意味も無く殺し合いをする趣味は無い」

「意味ならあるよ、僕が楽しい」

「おいアンジェラ、コイツ頭大丈夫か?」

 

あまり動かない表情のまま気狂い発言を繰り返す新たな後輩(ジョシュア)へ奇妙なナマモノを見るような目を向けながら上司的な存在である司書へと問い掛けた。

 

「貴女には悪いけど、ジョシュアはソレが通常運転よ。用事を与えればそっちを優先するけど根本にあるのは「全力で殺し合いがしたい」っていう欲望だもの」

「素面で私にも殺気を向けてくる童は珍しい…何、外面は人であろうとし続ける者だ、お前も案外気に入るやも知れんな?」

こいつ(イカれ女)にか?危機感欠如してるのか、それとも自殺願望者か何かか?」

「だって向こうが態々殴っていい理由作るから、つい」

 

アンジェラとビナーから返ってきた答えに嘗ての苦々しい記憶が蘇ったのか顔を顰めるゲブラーが、本気で理解不能といった表情を見せる。

まぁそもそも嘗てあったとされる『都市』にて絶対的強者と言えた存在の一人であるビナーに刃を向けるという行為自体殆どの人間からすれば考えすらしなかった事なのだ。

例外側に属するゲブラーといえど、『都市』で生きた記憶がある者としてはジョシュアがとんでもねぇ異常者に見えた事だろう。

 

というかビナーという存在がつい、で手を出すべき相手でない事はジョシュア自身も分かっている。

 

分かった上で普通に殺意を向けて殺しに行ってるのだ。

 

だって楽しいから。

 

「別に僕は誰かを殺したい訳じゃない、死力を尽くした命のやり取りがしたいの。その点『図書館』はとっても良い、強そうな人とか怪物がゴロゴロ居るし」

「………」

 

嬉しそうに語るジョシュアとは対象的にゲブラーは静かに目を細めた。

 

「おい」

「ん?」

 

声を掛けてからコンマ数秒後、ほぼノーモーションで投げられたナイフが頭部に迫る。

しかしそれが予め分かっていたかのように眼前でナイフの柄を掴み取ったジョシュアは流れるように投げ返してそれと共に肉薄して蹴りを放つ。

ゲブラーは胴体に向けられた蹴りを身体を捻ることで受け流し、その回避先に置くように投擲されていたナイフをジョシュア同様掴み取るとそのまま伸ばされた足を削ぎ落とそうと刃を振るった。

その凶刃が足に触れそうになった瞬間、身体を翻して受け流しつつその勢いを利用して体を捻りアッパーカットを放つ。

 

「成る程、口先だけなら叩き潰してやろうかと思っていたが……アンジェラの判断も納得出来る程度には手慣れてるな」

「ん、随分と熱烈、そんな風にされたら僕も答えなくちゃいけないね」

「はっ、やってみろ」

 

ポワポワとした笑顔とはかけ離れた速度で放たれたジョシュアの拳を受け止め獰猛に笑うゲブラー。

そこから互いに更なる攻防を続けようとしたその時、別方向から放たれた殺気を感じ取った2人が弾かれたように下がった。

 

「それ以上暴れるなら首撥ね落とすわよ」

「何、ほんの挨拶代わりだ、お互いにな」

「ん、殴り合いは古来から伝わるコミュニケーションツールの一つ」

「全く…ジョシュアは兎も角、いつの間にここまで野蛮になったのかしらゲブラー?」

「まだ目覚めたばっかりだ、少しは鈍ってる身体を動かしたいと思うのも仕方ないだろ」

 

腕を振るおうとしていた様子のアンジェラはそんな言い分を聞いて呆れたように溜息を一つ、それとは対象的にゲブラーの表情からは若干ながらも警戒の色が薄れていた。

これ以上戦闘を続けるような雰囲気も霧散し、改めてジョシュアから差し出された手を握り返す。

 

「試すような真似をして悪かった」

「ん、楽しかったから全然いい。また今後組み手でもいいからしてほしい」

「あー……気が向けば相手してやる」

「ん、約束」

 

ニッコリといい笑顔で握手した手がブンブンと振られる。

先程から情緒が忙しいジョシュアに何と言えば良いのか分からないゲブラーは掴みどころのない新人の扱いに困りつつ、久方ぶりの『図書館』外の存在との交流を僅かながらも楽しんでいるようだった。

 

「あぁ、そういえば()()を渡すのを忘れていたな」

 

そんな雰囲気の中、唐突に思い出したかのようにビナーが徐に机の上に開きっぱなしだった本を手に取った。

 

「褒美?」

「お前は私の課した試練(クエスト)を成し遂げたのだよ、報酬もあって然るべきというものだろう?此方においで」

 

その手招きに警戒しつつも近寄り、椅子に座ったままのビナーの前に立つ。

 

「これって、鳥さん達の本?基本的に図書館外には持ち出し禁止じゃなかった?」

「あの箱庭では綴じられた本がその役目を果たす本に囚われている守護者達……いや、お前が新たに道を示した者達も、この鍵を有する事を望んでいるようだな。さて、お前はどうする?」

「んー……」

 

チラリとアンジェラを見る。

怪訝そうに此方を見ているが、特に何も言わずただ事の次第を見守っていた。

 

「ん、分かった」

 

取り敢えずは問題無しと判断して報酬を受け取ろうとするジョシュア。

 

 

 

 

 

「あぁそうだ、一つ言い忘れていたな」

 

 

 

ジョシュアが伸ばした両手の指先が本に触れる。

 

 

 

 

 

 

 

「今のお前の器では些か、かの黄昏を受け止めるには脆い。故に漏れ出た昏い光に呑まれぬようにな」

 

 

 

 

 

 

 

 

瞬間、内側から何かが食い尽くしていくような感覚に襲われた。

 

 

「ッ!?ぐぅッ…!」

 

コレまで何度か体験してきた侵食現象の感覚、だがしかし今回のソレは『夢貪る濁流』による物とは比較にならない程の強制力が働いており、瞬きの間に両肘の辺りまで血のような赤黒い液体が染み込んだ黒い羽根に覆われ両手が鳥の足のような異形に変化する。

 

「ッ!」

「シィッ!」

 

ほぼ反射とも言える速度で右手に取り出した致命の包丁で自決しようと腹と心臓を貫くも何故か死ぬ事は無い。

 

更には悪寒を覚えたゲブラーが手に持ったナイフを振るって浸食する腕2本を豪速で斬り落とすものの、既に中枢に入り込んだのか黒い羽根の侵食と異形化の勢いは留まる事を知らずそのまま胴体まで蝕み始めた。

 

両腕を失ってバランスを崩し前方に倒れ込んだジョシュアはヒョコと顔を上げる。

 

「ごめん、誰でもいいから首撥ね飛ばしてもらえる?早めにやってもらわないと完全に飲まれちゃいそう」

「何でそこまで冷静なんだお前は……一応存在が食われかけてるんだよな?」

「だって侵食されるのコレで3回目だし、2回目は自分から侵食されに行ったし……」

 

そんな呑気な会話の最中も絶えず浸食は進んでおり、鮮やかな金髪も段々と鴉羽のような艶やかな黒に染まって行く。

 

「多少なりとも抗うコツは掴んだけど凄いねあの子達、ユメの時よりもすんごい精神的にキッツイ。あ、やば、あと5秒位で完全に飲まれちゃう……」

「はいはい、さっさと首出しなさい」

 

首元まで異形化が進んでプルブルと震え出したジョシュアに向けてアンジェラが腕を水平に振るえば、まるで空間そのものを裂いたかのように綺麗に頭と胴体が切り離される。

「ふぃー」と安心したように息を吐きながら首をすっ飛ばされたジョシュアの身体は倒れ伏し、そのまま全身がポリゴンとなって崩壊し始めてそのまま最初から何もなかったかのように消えてしまった。

ソレを見届けたアンジェラはクルリと若干混乱しているゲブラーへと向き直る。

 

「それじゃあ着いてきて頂戴、ゲブラー」

「……今のは何だ、ココで死んだ奴は本になるんじゃ無かったのか?」

「そこも含めて、ちゃんと説明するわ」

 

 

 

 

尚今の間、ビナーはまるで茶番劇を観ているかのようにクツクツと笑いながら紅茶を飲んでいた

 





下心や野心の一切無い純粋な闘争心ってプロムン世界じゃ早々お目にかかる事は無いと思うんですよね。

あの世界、戦闘はあくまでも手段でしかなく、その先にある目的の為に強くなるのが殆どというか当たり前なので。

後書きにシャンフロ劇場ミニや小ネタシリーズは

  • いる
  • いらない
  • セルマァ……
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