それでは、どうぞ
「『指』……『指』かぁ」
移動の最中、そんなボンヤリとした呟きがジョシュアの口から溢れる。
先程のゲブラーとオルトのやりとりを思い出しつつ、そういえば自分の知る情報の中に無かったと改めて前を歩く相方に尋ねた。
「確か『都市』の……裏路地だっけ?その領域を牛耳ってた組織なんだよね」
「もっと言えば数千すらも超すほどに多い裏路地の組織の中でも頂点に君臨する5大組織の総称なのです。その影響力や戦力は『都市』の各地区を統治する『翼』に匹敵していたのです」
そうして語られるのは本に綴られた『都市』の情報より抜き出した『指』の詳細、
『都市』の中核を成す『翼』、その恩恵を受ける『巣』から外れた『裏路地』にて幅を利かせていた彼らの話。
─「規律」を絶対的に重んじる『親指』
─「指令」を盲信的に重んじる『人差し指』
─「義理」を執拗的に重んじる『中指』
─「芸術」を狂気的に重んじる『薬指』
─「約束」を秘匿的に重んじる『小指』
1000年程にも及ぶらしい『都市』の歴史の中で何度も入れ替わった末の、最も新しい5本の指の名を冠する彼らは間違いなく『都市』の一部であり、残酷で歪ながらも人間的なかの世界では必須とも言える存在だったのだろう。
「ただ勘違いしてはならないのは、彼らはいわゆるアウトローと呼ばれるタイプの方々なのです。『都市』自体を運営する「社会」の側面が『翼』なら、『指』は己に課した物に従い生きる「個人」の側面と言えるのです」
「んー………」
フンスと胸を張るオルトがそう言って解説を締め括る。
そんなこんなで一通り詳細を聞いたジョシュアが暫く思考を巡らせた後、一つポツリと呟いた。
「『都市』の大凡終わってるとしか言いようがない倫理感が備わってる時点で『翼』も『指』もどっこいどっこいじゃない?」
「ソレは言っちゃいけないお約束なのです」
オルトはそっと目を逸らした。
片や人間を消耗品としかカウントしてない何処までも利益と権利を求める機構、もう片方は自身のエゴを命尽きるまで強制し続ける独裁。
困った事に反論の余地が何処にもなかった。
オルトの先導で歩くこと数分後、ジョシュアは先日『宇宙の欠片』の本を見つけた場所……『芸術』の領域へと足を踏み入れていた。
他エリア同様立ち並ぶ本棚以外にも画材の山のような物が置かれており、一つ試しに取ってアイテムとして取得してみればまだちゃんと使用できる状態の品質を保っているのが分かる。
「ん、前来た時も思ったけど『芸術』エリアらしいオブジェクト、種類も豊富」
「館長様に聞いた所、元々はそのような物は無かったそうなのです。曰く、「ソレは可能性、あり得たかも知れない道筋から溢れた物が形を成した物」らしいのです」
「可能性…形を成す………あの購買コーナーと似たようなのかな」
「というより、『図書館』がそういう場所なのです。これらは全て『都市』の情報由来の代物、このエリアならば『都市』の人間が芸術を修めるに当たって手にした物が積み重ねられているのです」
「ふーむ」
記憶を辿ってみると前に訪れた『歴史』のエリアには視界の端に何やら歴史を感じさせるような古物が転がっていたし、『社会科学』エリアには測量機等の現代的な道具が所々に置かれていたのを思い出す。
「……ソレにしたってこの装飾はアウトじゃない?」
そう言いながら道具の山から鳥のようになった手で引き摺り出したのは一本の糸鋸。
ソレだけならばまだ「大掛かりな木彫りの彫刻に使っていた」等と思えただろう。
ボロボロになった刃の部分が赤黒い液体で染まってさえいなければ。
「仕方ないのです、彼ら『薬指』の芸術は人体を
「人体を
「ワタクシもあまり理解出来なかったのです。多くの書物の中でも彼らの思想は『都市』においても異常と称される事が多かったのです」
「あぁ良かった、ソレがスタンダードじゃないんだね」
ポイ、と拾い上げた鋸を元の場所に投げ戻しつつオルトの解説に耳を傾ける。
「彼らはあらゆる技術を集めて研究し、それらを用いて己の持つ思想を形として残すことを至上としていたのです。『都市』という場所において、思想を表すのに一番適していたのは「人間」だったようなのですね」
「なんで頭のネジが外れた輩ってやたらと人体に芸術を見出そうとするんだろうね」
「ふむむ、そこら辺はワタクシにも分からない……おっと、通り過ぎる所だったのです!」
視界の端にお目当ての本を見つけたのか身を翻して本棚に近付いたオルトはそのまま一冊の本を抜き取ってジョシュアの方に差し出した。
「『薬指』………合作?」
受け取った本の表紙に載っていたのは今までの戦闘記録にも描かれていた所属組織を表すロゴ。
指輪をしたステンドグラス調で描かれた指の先から血のようにカラフルな絵の具のような物が飛び出したデザインはなんとも芸術に傾倒する『薬指』らしい物だと言える。
しかしながら、この本の表紙には更に別の絵……少し筆先が特殊な形をした筆と獣の頭部の剥製のような物が描かれており、タイトル部分も『薬指 スチューデント 点描派野獣派 合作』と少しばかり特殊な並びになっていた。
「『薬指』には様々な派閥があるのです。それらは各自が選んだ芸術技法によって分かれており、所属する中でも末端組織員である「スチューデント」は上から課される課題で他派閥の「スチューデント」と共に合作を行う事もあったそうなのです」
「この「点描派」とか「野獣派」とか書かれてるやつ?印象派みたいな物かな」
現実の知識とすり合わせて考察してみるが内容を流し読みしてみれば少しばかり様子が違う。
現実における「〇〇派」とは主に書く対象や使用する技術、対象の描き方、そして流儀や主義の違いで分かれた物なのだが、『都市』の派閥はそれらより直接的なものである。
例えば現実にも『都市』にもある「野獣派」、
現実に存在した「
「獣と例えられる技術を持った派閥」と「獣を模する技術を追求する派閥」と書けばその違いが分かるだろう。
まぁ長々と解説したが重要な事では無いので更に詳しい事は割愛する。
「ここまで芸術家としての側面を色々押し出してるけど強さに関しては……まぁやってみれば分かるかな」
ざっと目を通していた本を閉じ、戦闘が出来る区域に移動する。
立ち並ぶ樹木のような本棚が避けたようにポッカリと空いたスペースの真ん中で、ジョシュアは渡された本を掲げた。
「接待開始」
例の如く言葉に反応したように本の頁が光り始めて周囲に撒き散らされて景色を遮る。
バサバサと音を立てて舞う紙の嵐の中、ジョシュアが自身の意識を戦闘時の物に切り替えたその瞬間、
ヒュッ
ジョシュアの心臓を狙ったかのような刺突が未だ宙を舞う頁を貫きながら放たれていた。
「良い不意打ちだね、幻想照視」
しかしながらその一撃は標的に届くことは無く、
この程度造作もないと言わんばかりに身体をずらして避けたジョシュアは、呼び出したハンマー……『大鳥』から受け取ったEGOである『ランプ』を振るって凶器を弾き飛ばした。
「■■■■■■」
「まさかステージが始まった直後に攻撃されるとは思わなかったや……まぁ
紙の嵐が疎らになったその先、変わった形のペンをそのまま巨大にしたような武器を持って体勢を崩しながらも飛び退く人影が見えた。
「けどまぁ……」
視界が確保出来たと同時に
手に握っているハンマーの重量など関係ないと言わんばかりに軽やかに走り出して肉薄し、床を砕く勢いで踏み込んだ。
「そういうのもたまには良いよねッ!!」
「■■■!?」
逃げようとする相手の胴体へ1発、抉るような回し蹴りが入る。
レベルアップで得たステータスはまだ割り振っていない筈だが『終末鳥』に侵食された故か身体能力は以前の倍以上になっている感覚があり、ソレに伴って蹴りの威力も増幅したのか蹴りを入れた相手……『薬指 点描派』のスチューデントを大きく後ろへと吹っ飛ばした。
重い一撃を食らった芸術家は身体をくの字に曲げながらも両足で着地し手の武器を地面に突き刺して無理矢理勢いを殺して止まる。
若干ながらも蹌踉めいている辺り多少ダメージはあったようだが倒れるにはまだ足りない。
「卑怯な戦法?卑劣な不意打ち?どうぞご自由に、殺し合いにルールなんて無いから構わない」
芸術家達を前にして、ジョシュアはカラカラと笑いながら歩み寄る。
先程蹴り飛ばした、いかにも芸術家といった服装の人物とそれと同じ格好をしたもう一人、そして獣や鳥を模した被り物と腕全体を覆うグローブを身に着けた白スーツ2人の計四人。
不意打ちを何の苦もなしにいなし完璧な反撃までしてみせたジョシュアを警戒しているのか闇雲に突っ込んでくる様子は無いものの、今にもコチラに襲い掛かって来そうな鋭い殺気を受けて、ジョシュアは心を躍らせていた。
「さぁ、君達の強さを魅せて」
蕩けるような笑みが浮かぶ
翼に生えた黄金の瞳が爛々と輝く
腹の大口が獲物を求めて蠢く
御伽噺から出て来たような怪物は悍ましくも美しく、凶刃を敵対者達へと向ける。
「ソレごと全部踏み潰してあげるから、ね?」
『ランプ』に灯った火が、一際強く火の粉を散らした。
ジョシュアと相性の良い『五本指』ランキング
1位『小指』
そもそもジョシュア自体が『指』と相性がそこまで良くない為他よりも縛りが少ない所が一番良い。
主要武器が結構使い込んでいる刀剣類なのも良き。
ただまだ情報が少ない為もしかしたら順位は変わるかも。
2位『中指』
ジョシュアが身内には滅茶苦茶甘いタイプなので割と理念と合っている。『中指』の基本戦闘スタイルであるステゴロファイトは得意だし、所属してれば上からは可愛がられて下からは慕われるタイプ。
ただ態々仕返しとかに拘る性格でもないので2位。
3位『親指』
可もなく不可もなく。
ちゃんと礼儀作法はしっかり出来るが多分性には合わない。
正直一番コメントしづらい。
4位『人差し指』
昔なら兎も角自我が頑強になった今のジョシュアは盲信や諦観を持つ事は無いので理不尽な指令が来た場合普通に反逆する。
というよりその御蔭でツヨツヨな代行者が来て戦えるので所属どころか寧ろ積極的に敵に回す。
5位『薬指』
残酷さとかではなくとある理由の為に『薬指』自体に致命的なまでに向いてない。
場合によってはマエストロ達を宇宙猫にする事が出来るのである意味向いているのかも知れないが、そもそもジョシュアは「殺し合う」のが好きなのであってグロテスクは平気でもそういう趣味は一切無い為、ソレも含めて『指』の中では多分一番相容れない。
結論 多分『指』と殺し合うのが一番本人が楽しめるパターン
後書きにシャンフロ劇場ミニや小ネタシリーズは
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いる
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いらない
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セルマァ……