司書補J、シャンフロにて奔走する   作:ゲガント

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タイトルが思いつきません。毎話こういうのを考えている方はホントに凄いですね。






それでは、どうぞ


目覚めと真っ黒兎

「はいもしもし、上条紫亜です」

『あぁ、紫亜ちゃん。ちょっといいかしらん?』

「ん、マネージャーさん、どしたの?」

 

シャンフロデビューを果たした翌日、朝食を済ませた紫亜は自室に戻り寛ごうとした所で鳴った電話を取った。

 

『明日の現場についてなんだけど、ちょっとトラブルがあってスタジオが変更になってね……』

「ん、自分はバイクで行くから場所だけ教えて貰えたら大丈夫」

『ごめんなさいね、後でメールで送るから確認してちょうだい』

「了解……そういやトラブルって?」

 

電話の相手である紫亜のマネージャーは申し訳無さそうにしながらも話を続けていく。互いの声色に緊張等はなく、親しい友人のようだった。

 

『本来使うはずだった場所が前回使った事務所と修繕費云々で揉めててね……何でも照明の一つが完全に壊されてた〜とかでその責任が誰にあるかって話らしいのよ』

「あぁ、巻き込まれたらたまった物じゃないね。ん、仕方ない」

『そう言って貰えると助かるわぁ。他の手配は済んでるから安心して来てね』

「分かった。そういえば明日の仕事ってメンズファッション系だっけ」

『そうよ、今は春真っ只中だけどそろそろ暑くなるでしょ?今年の夏も暑くなる筈だし、紫亜ちゃんが先行して涼しげなファッションで皆を釘付けにしちゃうのよ』

 

マネージャーからの言葉に嬉しさを感じつつも困惑が混ざった様な雰囲気が感じられる紫亜は頭を掻きながら首を傾げる。

 

「モデルとして売れてるのは理解できるけど何で僕ってこんな人気出てるんだろ」

『それは貴方…メンズレディース両方いけるモデルなんて早々居ないわよ?貴方の先輩の永遠ちゃんだってカッコいいファッション滅茶苦茶似合うけど、メンズとなったらまた話は別じゃない』

「僕からしたら似合ってたら何でもいいと思うけど」

『んもぅ、贅沢な事言っちゃって。それだけ貴重な人材なのよ貴方は、だから胸を張って堂々と自分を魅せちゃいなさい』

「ん、ありがとマネージャー」

『どういたしまして。それじゃあまた明日ね♪』

 

ツーツー、という音と共に通話が終了した携帯の電源を切って傍らに置いてぼんやりと天井を見上げる。

 

「………ん、自分が言えた義理じゃないけど、あの人も大概インパクトあるよなぁ」

 

脳裏に浮かぶのは自身のモデル活動を支えてくれるマネージャーの姿。

趣味の筋トレと武術を極め、そこらのアスリートすら負かす肉体を持つ『漢女』というとんでもない個性を持つが、それ故か男女等を気にせず色んな仕事を受けている紫亜とは相性が良く、時折オススメの飲食店を教え合い共に向かう程度には打ち解けていた。

 

なおマネージャーは既婚者であり、夫婦仲は良好である事をここに記しておく。

 

「さて、今日も暇だし書類整理終わったらまたシャンフロやろ」

 

そう言って自身の部屋のデスクに腰掛ける紫亜。

カーテンを開けた窓からは朝日が差し込んで部屋を照らすのだった。

 

 

 

 

 

「ふ〜ふ〜ふ〜……♪」

(………うさぎがいる)

 

昨日リスポーンに設定したベッドに横たわる形で目覚めたジョシュアがいの一番に感じ取ったのは誰かの鼻歌。そして目だけでそちらを見れば部屋の中程にあるソファで本を読む真っ黒な兎らしき生物が見えた。

口には煙を吹かすパイプを咥えてる上、ジョシュアの纏う司書補のコートを白黒にしてデフォルメしたかのような格好をしているのがなんとも気になる所だ。

 

「およ?」

「……はじめまして?」

「ややッ、これはこれはお初お目にかかるのです、貴方が館長様の仰っていた新たにこの図書館の一員となった開拓者なのですか?」

 

ジョシュアが起き上がった音を察知したのかクルリとこちらを向いた黒兎?に挨拶をすれば、読んでいた本を仕舞いやや大ぶりな動きを見せながらジョシュアの方へと近づいて来た。

 

「多分そう、僕はジョシュア。よろしく……えーっと」

「おっと、自己紹介を忘れていたのです。ワタクシこの図書館で司書としての勉強をさせて頂いている、ヴォーパルバニーのオルトと申すのです。以後お見知り置きをなのです、ジョシュア様」

「ん、よろしくオルト」

 

名乗りながらペコリと丁寧に頭を下げた黒ヴォーパルバニー……オルトに対してしゃがみながら右手を差し出せば、その意図を察したかのように握り返され、握手を交わす。

ファーストコンタクトを好印象に終われた所でジョシュアは本日の行動を始めることにした。

 

「アンジェラは今何処に?ちょっと聞きたいことがあるんだけど」

「でしたら中央の書斎の方なのです、館長様は普段からあそこで新たに追加されていく本の中身を確認していらっしゃるのです」

 

こちらなのです、と部屋から出ていくオルトを追って昨日見たばかりの風景の中を歩いていけば、直ぐに目的の場所へと辿り着く。

 

図書館の主であるアンジェラは書斎机に本を積み傍らの椅子に座りながら本を読んでいた。

 

「おはよう、アンジェラ」

「あら、起きてたのね……その様子だと、もう自己紹介は終わったのかしら」

 

1人と1羽の存在に気付いて本に栞を挟んで立ち上がるとそのままジョシュアに向き直る。

そしてオルトが自身の横に移動したのを確認すると改めて口を開いた。

 

「改めて紹介するわ。この黒兎はオルト、昔からの知り合いの所から預けられた……というか押し掛けて来たヴォーパルバニーよ」

「押し掛け?」

「ワタクシ、何分本が大好きでして……しかしながらワタクシの趣味を理解してくれる者が少なく、話が出来るのも使い捨て魔術媒体(マジックスクロール)を扱う書店を営む妹位。故に何処か良い場所は無いかとワタクシの父様に相談した所、館長様の図書館を勧められた為訪れた次第なのです」

「私としてはせっせと働いてくれるなら拒む理由も無いわ、だから今は司書見習いとして此処に置いてるの」

「成る程、趣味の為に一生懸命になれるのは良い事」

「そう言って頂けるなら幸いなのです!」

 

自身の趣味を肯定されたのが嬉しいのか、ピョンピョンと跳ねるオルトはとてもうさぎらしく大変可愛らしいものである。

 

「それで、何か聞きたい事でもあるのかしら」

「そうだった、ここから元の世界に戻るにはどうすれば良いか聞きに来たんだった……出来るよね?」

「当たり前よ。出来なきゃ幻想体の収集なんて依頼しないわ」

 

呆れたように頭を振るアンジェラは徐ろに1枚の栞を取り出す。淡い光が灯るそれは何処か不安定そうな雰囲気を出しながらも温かみのある存在感を放っていた。

 

「この紙片は貴方専用の鍵、貴方の記憶の中から飛べる場所を引き出して2箇所を繋ぐ物よ。片方はここである必要があるけど」

「つまるところ図書館を介せば一度訪れたことのある場所にファストトラベル出来ると」

「幻想体が潜む場所は私にも把握してないわ、だからこそ手軽に移動が出来た方が捗るでしょう?」

「ん、有り難い」

 

今は開放されている場所は数少なくとも、これから先の冒険で大いに役立つのは間違い無い代物である。いそいそと栞をインベントリにしまうジョシュアをよそに、アンジェラは隣に立つオルトの方を向いた。

 

「それとオルト」

「むむ、どうかされたのです?館長様」

「貴方もジョシュアについていきなさい」

「!!」

 

時折ピコピコと動くだけだったオルトのうさ耳がピンッ!と立つ。その表情は驚愕、そして歓喜に染まっていた。

 

「も、もしや、ワタクシにも幻想体の収集の任務を任せて頂けるのですか!?」

「えぇ、今の貴方なら真正面から幻想体とも戦えるだろうし、幻想体を目覚めさせる役割が出来る奴が来たもの。その代わり、仕事はきっちりしなさい」

「〜ッ!了解したのです!めいいっぱい頑張るのです!ジョシュア様、よろしくなのです!」

「あぁ、うん、よろしく」

 

興奮の度合いを表すようにピョンピョンと跳ねながら迫るオルトに気圧されながらも何とか返事をする。そんな状況の中でもアンジェラは極めていつも通りの声色で話を続けた。

 

「昨日言いそびれた事もあるのだけど……後の案内はオルトに任せるわ、私はまだ本の選別が残ってるもの」

「承知したのです!ささっジョシュア様、こちらなのです」

 

さぁさぁ!と手を引かれて体勢を崩しかけながらも書斎から去ったジョシュア達の背中を見届けた後、アンジェラは再び椅子に座り、栞を挟んだページから読書を再開するのであった。

 

 

 

 

テンションのぶち上がったオルトに書斎から連れ出されて数分後、ようやく落ち着いたようでゆったりと歩を進める中、ふと気になった事を尋ねてみる。

 

「そういえば。君も幻想体関係の本の対処をしてるの?」

「そうなのです。何を隠そう、このパイプも幻想体の方の一人から頂いた物なのですよ」

 

オルトが初対面時に咥えていたパイプを誇らしげに見せる。材質等は分からないものの、見た目だけでも一級品であると言えるレベルだろう。しかしそれよりも気になるのはこのギフトの元となった幻想体である。

 

「強かった?」

「そりゃあもう、今では対話が可能な程には打ち解けて下さりましたが………本の中で死んだとしてもこの肉体には影響が無いとはいえ、何度も体や頭を貫かれる感覚というのは味わいたく無いものなのです」

 

黒毛であっても青褪めているのが分かる顔とブルルと体を震わせる姿からは当時の恐怖がありありと伝わって来た。

言葉の端々からもその苛烈さが読み解ける

 

「開拓者様方とは違いワタクシ達は一度きりの命、本来ではあり得ない現象が起こるのは、偏に館長様の力が行き渡るこの『図書館』という空間のお陰なのです」

「ん、不思議」

「同意するのです……っとと、ここなのです」

「……他と若干雰囲気違う、けど大して変わらなそう?」

 

そんなこんなで思考を巡らせていればいつの間にか目的地に着いていたのかと周囲を見れば、切り離されたように少し空いたスペースの中央には一際装飾が豪華な本棚が鎮座していた。

それにピョンピョン近づいていったオルトはそこから一冊の本を取り出してこちらに差し出した。

 

「ここは所謂ショップの様な物なのです。例えばこの本をご覧になるのです」

「ん、回復ポーションの絵」

「こちらこの世界の回復ポーションがどのようにして生まれたか、どの様な変遷を経て今の形態となったのかがしたためられた一冊なのです」

「成る程……」

 

試しに手渡された本を読んでみれば、中身はしっかりとした歴史書のようになっており、ココまでの作り込みにジョシュアは感心しながらも本を閉じた。

 

「ん、確かに詳しく書かれてる。けど、これがショップとどういう関係?」

「ではでは少々お借りするのです」

 

ジョシュアから返された本を開き、どこからか取り出した金貨を翳す。

するとみるみると金貨が消え去り、代わりにその手に回復薬の入った瓶が握られていた。

 

「おぉ〜」

「このようにリソースを注ぎ込むとそのアイテムが出てくるのです。わかりやすいのはマーニとかなのです」

「お金やアイテムを何かに変換してそれでアイテムを生成してる感じかな」

「ちなみにマーニに変換する場合はあそこの端にある本なのです」

 

オルトが示した先にある本を手に取ればまず目に入ったのはデカデカと描かれた金貨のイラスト。非常に分かりやすくこの世界の通貨である『マーニ』についての本であると自己主張するそれを何となく読み始める。

 

(ここの素材とマーニの変換レートがどういうのかにもよるけど、向こうの街で売るよりよっぽど効率が良かったりするのかな………というか上限無し?)

 

そう考えながらインベントリからモンスターの素材……マッドフロッグの皮を取り出して試しに本に突っ込んでみる。

数秒後、ジョシュアの手には少量のマーニが入った袋が握られていた。

 

「便利だね、これ。内容もしっかりしてるし」

「そうなのですそうなのです。あ、因みに持ち出しは厳禁なのでお気を付けを」

「ん、分かった。ラインナップとかは増えたりするの?」

「むむむ……そこの辺りはワタクシでは何とも。ですが館長様曰く「この図書館の蔵書量が増えれば自然とここの種類も増える」とのことなのです」

「なら頑張らないと、やる気出てきた」

「ワタクシもお手伝いするのです!」




オルト

とある場所から来て図書館に居候してる喋る黒毛レッキス種のヴォーパルバニー(♂)
口調は丁寧だが本の為なら単身未開の地に突っ込んでいくタイプ
兄弟姉妹が沢山いる
パイプを咥えてるのは父親の真似だったりする

CV.内田真礼


マネージャー

「男は度胸、女は愛嬌、オカマは最強」を地で行く敏腕マネ。メイクをバッチリキメた姿はかなり様になっているとモデルや同業者間では話題。
イメージはfgoのペペロンチーノ

後書きにシャンフロ劇場ミニや小ネタシリーズは

  • いる
  • いらない
  • セルマァ……
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