司書補J、シャンフロにて奔走する   作:ゲガント

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ネズミたちの戦闘シーンはユザパられました


それでは、どうぞ


接待と暴力は結び付く物である

「…………」

 

数分後、総記エリアの開けた空間にはジョシュアがポツンと立っていた。その顔は戦闘前とは違い、何とも微妙な……納得していないような表情を浮かべている。

 

「お疲れ様なのです!」

「……うん、ありがと」

「んう、どうかされたのです?」

「いや、うん、なんというか……弱かった」

 

その困惑の元となるのは先程の戦闘。

気合を入れて刀を抜き放ち斬り掛かった結果、特に苦労すること無く前にいた男の首を刎ね、そこに飛び掛かって来た女を回転蹴りで蹴り飛ばし、こちらを窺っていた大柄な男の攻撃を弾いて返す刃で袈裟斬りに。

最後に残った女に関しては蹴り飛ばされた先でスタンしていた為そのまま《シュートヴェイン》で太刀を投げた結果そのまま突き刺さり、3人揃って本の頁となって消えてしまったのである。

 

想像の数倍あっさり終わってしまい、いかにも不完全燃焼ですといった様子のジョシュアにオルトは苦笑いを浮かべた。

 

「そりゃあ、あの方々はほぼ一般人なのです。所謂チンピラ、と呼ばれる人種だったと本には記載されていたのです」

「なら仕方ないか…別の戦闘記録もやってみよう」

「そう仰ると思って、次の戦闘記録も用意してるのです!」

 

地面に落ちた『ネズミの本』を広い上げている内にオルトがいそいそと取り出したるは別の本。こちらは『ネズミの本』よりかはかっちりとした雰囲気を感じる。

 

「こちらの方々はフィクサーと呼ばれる所謂何でも屋のような職業に就いているのです。何でも様々な荒事も請け負ってたとか」

「ふーん……今この世界にもあるの?フィクサーって」

「いえ、ワタクシもこの図書館で初めて知った職業なのです。開拓者様方にもそのような職に就いていらっしゃる方は居ない筈です」

「そっかぁ」

 

フィクサーとは何か?そもそもこの戦闘記録はいつの物なのか?彼らの顔が塗りつぶされているのは何故なのか?そんな疑問が増えていくものの、直ぐに解決する訳でもないので意識を切り替えて受け取った本を見る。

 

「『ユン事務所の本』…後で色々読んでみないとな」

 

 

 

VSユン事務所

 

 

「っ、確かにさっきの3人よりかは強い、っと!……もしかしてWAVE制?」

 

事務所と書かれていた時点で察していたが、統一された雰囲気の制服を身に纏うフィクサー達が敵として立ちはだかった。

4WAVEに分かれて合計7人と戦ったが、『ネズミの本』の3人の強さに+αされた程度だった為難なく勝利。

2WAVE目に出てきた1人とラストWAVEに出てきた2人、特に巨大な電動鋸を担いだ女性は他の面子よりも若干強かったが、それでも幕末を始めとした他ゲームで鍛え上げられた対人戦闘術が火を吹き、気分で変更していた獣岩鎚で叩き潰した。

 

 

 

VS鉄の3兄弟

 

「おぉ、機械だ。アンドロイドかな?なんか動きがぎこちないけど」

 

体全てが機械仕掛けの3体だが、何処となく動きにラグがあり、電動鋸等といった物騒な装備もあまり脅威にならなかった。

機械らしく少しはタフだったが、それだけである。

あと撃破した後に本を読んでみたが、どうやら純粋な機械ではなく脳以外を義体という機械に置き換えたれっきとした……というのは少々可笑しいかもしれないが人間だったらしい。どういう経緯でそうなったんだろ。

 

 

 

 

VS鈎事務所

 

「あ、この装備の元になった人だ」

 

ずっと付けっぱなしだったコアページの元になったであろう背中から鎌を生やす青年とそれと似たような服を来て機械仕掛けの双剣を構える者、そして鉈を持った大柄な男の3人。

前3つの戦闘記録と比べ明らかに殺意が高い攻撃が多く、何処となく「殺し慣れている」ような感覚があったものの、幕末のランカーや弟に比べれば微風と似たような物だった。

 

 

 

 

「はい、天誅」

『ーーーーーー!』

 

他の2人を倒し終え、1人残った青年の生体装備による刺突を体を捻りながら太刀で受け流し、返す刀で斬り上げる。

体と繋がる刃が弾かれた事でバランスを崩した男を前にその隙を逃すことはなく、湖沼の太刀を脳天目掛けて振り下ろせばそのまま肉体は一刀にて両断された。

何か叫んでいた気もするが、その声は規制されたかのようにジョシュアに届くことはなかった。

 

 

 

VICTORY

 

鈎事務所 接待完了

 

 

 

 

「ふぃ〜、最後のは中々だったかな」

 

腰に据えた鞘に太刀を収めながらそう感想を漏らす。人体の弱点を狙った攻撃にテンションが上がり、つい『幕末』のノリでやってしまったが後悔はしてない。

 

「ジョシュア様、お見事なのです!素晴らしい剣捌きだったのです!」

「うん、ありがとオルト」

 

戦いを観戦していたオルトはキラキラとした目をしながらピョコピョコと近づいて来る。そんなオルトに手を振って返すジョシュアは徐ろに地面に落ちた本を拾い上げ、そのままパラパラと流し読みし始めた。

 

「うーん……さっきの義体3人組とかネズミ達といいこの鈎事務所?といい物騒な事しか書かれてないなぁ。少なくとも現在のシャンフロの世界とは似ても似つかないし」

「ふむむ……確かにそうなのです。ワタクシもここの本を色々と読み漁っておりますが、このような文化が根付いた土地など知識に無かったのです」

「物知りそうなオルトも知らないとなると僕からアプローチできる方法はなさそうかな」

 

何はともあれ、このままこの戦闘記録を読み解いていけばいずれ理解できる時が来るやもしれない、そんな思いを馳せながら次はどうしようかと悩んでいれば、やるべき事は向こう側からやってきた。

 

「あら、戻ってたのね」

「館長様!」

「ん、アンジェラ。オルトから戦闘記録を勧められて、読み解きながら色々やってる」

「館長様からジョシュア様があのリュカオーンと戦い、頭を強制的に垂れさせたと聞き及んではおりましたが、その事実に偽り無しと言わんばかりの戦いだったのです!」

 

興奮したオルトがブンブンと腕を振りながらの主張し、それに対し真顔で照れるような仕草をするジョシュア。

そんなジョシュアの手に収まる本のタイトルをチラリと見たアンジェラは少し思案したかと思えば改めてジョシュアに向き直った。

 

「…そう、そこまでやったのならこれを渡しても良いわね」

「ん、それって幻想体の?」

「えぇ、今の貴方のレベルに合わせた物を持ってきたの。やるかどうかは貴方が決めなさい」

 

そうして差し出されたのは2冊の本。何処か呑まれるような雰囲気は昨日渡された『たった一つの罪と何百もの善』の本と良く似ていた。

 

「『捨てられた殺人者』に『マッチガール』…」

「どちらもクラスはTETH、『たった一つの罪と何百もの善』みたいに軽く済む事は無いから気を付けなさい。まぁこの程度はちゃんとこなして貰わないと後が困るけど」

「クラス?TETH?」

 

聞いたこともない言葉に首を傾げる。

 

「幻想体の危険度を分かりやすく5段階で表したのがクラス、その一つがTETHよ。順序としては下から2番目ね」

「罪善さんは1番下?」

「そうよ、比較的安全なZAYINに該当するわ」

「……比較的ってことは危険性はあるんだね」

「幻想体の存在を貴方の基準に当てはめない事ね」

 

そう言い切ったアンジェラはもう用は済んだと言わんばかりに踵を返して直ぐに視界の中から消えてしまう。

その背中を何となく追っていた視線を手元の本に向ければ、その特徴的な表紙が目に入った。

 

片や全身を拘束着で締め付けられ、全てに絶望しているかのように項垂れる男を真正面から捉えた絵

 

片や雪の降り積もった暗い街の片隅らしき路地、その少し深い場所にある焚き木の跡と何かの燃え滓

 

相も変わらず不穏そうではあるが、兎にも角にもやってみないことには何も判断出来ない。先に右手に持つ『捨てられた殺人者』を開くためにもう片方の方を置こうと周囲を見回せば、少し離れた場所…戦えるスペースから少し離れひっそりとした場所に置かれていた円形の小さなテーブルを見つけた。

そこに『マッチガール』の本を置こうとした時、不意に目に入った代物が2つ。

 

(……?なんだろ、手袋と……仮面、でいいのかなコレ)

 

光を吸い込むかのような黒い仮面に材質の分からない手袋がそっと並べられた光景に一瞬呆気にとられるが、今はそれよりも優先すべき事がある。

 

 

「さてと、それじゃあ……」

 

 

 

『しかし、君は本当に哀れな人だ。私に殺されるのだから』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「相変わらず切り替わり方が独特だなぁ……で、なんだろここ。研究所?」

 

2度目の空間の塗り替え、しかしながら目に映る景色は前とは比べ物にならない程に暗く、悍ましい物だった。

壊れかけ、廃墟となった施設といった雰囲気の場所に居ながらもただ物珍しいという感想しか出ないジョシュアの精神構造はさておき、探索を始めようと一歩踏み出した所で何か液体を踏んだような感覚がした。

 

「……これは」

 

自身が踏み入れた水溜まりを構成していたのは大量の赤。シャンフロでは馴染みのない、それでいてジョシュアは他ゲームで大量に見たそれは、認識した瞬間から強烈な鉄臭さを醸し出し始めた。

中々のリアリティに少しだけ顔を顰めたジョシュアの前に一つの画面が出てきた。

 

『嗅覚制限が一部解除されました』

 

「ん、五感が現実より鈍くされてるとは聞いてたけど、こんな形で解除されるなんて……まぁ別に良いか」

 

錆びた鉄の臭いもそこそこに、ジョシュアは改めて施設の探索を始める……といっても、目的地は既に定まっていた。

 

「さっきからガンガン煩い音は何だろ、金属同士がぶつかり合ってる?」

 

嫌に頭に響く音を頼りに進み、段々と騒音が奏でられている方へと近づいていく。途中、頭がぶっ潰れて倒れている死体や血で染まった何かのレポートらしき物もあったが、情報になりそうな部分は全て塗りつぶされたようなモザイクが入っていた。

 

音源に近付けば近付くほど鼻につく鉄の匂いが強くなっていく中、遂にその音を出す存在の居場所らしき部屋の前に辿り着く。

 

「さて、と。装備は…致命の鋸で良いかな」

 

目の前にあるのはいかにも頑丈かつ厳重な扉。それこそ比較になるのは大型の金庫位であろうそれはジョシュアが何か操作するまでもなく既に開いていた。

 

いや、正しくは()()()()()()()()()()

扉の残骸が立て掛けられただけで既に封じ込めなど成功していないそれを退かせば、部屋に入るのは容易だった。

 

ガンッ ガンッ ガンッ ガンッ

 

「………」

 

ガンッ ガンッ ガンッ ガンッ

 

ジョシュアが部屋に入り、最初に目にしたのはそこそこの広さのある無機質な部屋の中にいた1人の男。

青白い肌とスキンヘッドのみを晒し、拘束服で動きを制限されたような格好のその人物は部屋に入ってきたジョシュアに気付いていないのか、はたまた存在を無視しているだけなのか、ただひたすらに己の頭を壁に打ち付け続けていた。

 

 

幻想体(アブノーマリティ)

『捨てられた殺人者に遭遇しました』

 

 




ユニークシナリオ『Library Of Ruina』

良い点
・このシナリオ限定の装備やスキルが大量にある
・序盤から入手出来る物でもかなり有用
・ファストトラベルが簡単に行える
・ショップの自由度が高い
・NPCが個性的(カワイイ!)


悪い点
・発生させる難易度が頭可笑しいレベル
・一部コンテンツの難易度が途方もなく高い
・通常プレイの難易度が爆上がりする









・血液や死体など、本来であれば規制されているスプラッタな要素がこのシナリオ内に限り限定的に規制が解除される 
・余程のことが無ければ爆発はしないが、下手すればシャンフロ世界が終わりかねない地雷を抱えている

後書きにシャンフロ劇場ミニや小ネタシリーズは

  • いる
  • いらない
  • セルマァ……
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