司書補J、シャンフロにて奔走する   作:ゲガント

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そろそろドンキホーテの尊厳破壊人格が出ますね。とても楽しみです。




それでは、どうぞ


マッチの火は絶えぬまま

『なん、で?』

「何が?」

 

優しくあやすように頭を撫でるジョシュアに一番困惑しているのは撫でられている『マッチガール』当人だった。そんな動揺が隠せない少女からの問いにジョシュアは不思議そうに返す。

 

『私は、君を殺そうとした。叶わなかったけど、私と同じに、なるように』

「うん」

『だったら、君は、私を殺すべき、じゃないの?』

 

ポツリポツリと、恐る恐ると尋ねる少女に対し、ジョシュアは何でもないようにフワリと笑い掛けて口を開いた。

 

「君は只夢を見たかった、たとえそれが君の身を焦がし焼き尽くす幻影だとしても、君にとっては間違いなく救いだった」

『…………』

「それを邪魔したのはコッチの方、ごめんね」

 

ジッと見つめ合う2人。しかし片方は虚に囚われたように、もう片方はそんな様子の相手に自身の意志を示すように。

 

「僕は君みたいにはなってあげられない、僕を焦がす炎は僕だけの物だから」

『……君も、夢を見てたの?』

「ん、そんな所。夢を見て、それに酔って、あと一歩で全てが終わる所で不格好で無理矢理だとしても踏みとどまった。案外君と似てたのかもね」

 

ジョシュアが抱える闘争欲は今もなお彼の中で燻り続け、燃え上がらんとする為に熱を蓄えている。現実にてその抑えが利かなくなった事もあるが、それでも今ここに存在しているのは間違い無いのだった。

 

「僕は、君という存在を忘れない。だから僕が君を覚えている限りは…少しで良い、力を貸して欲しい」

『………君が』

 

真摯に向き合い、己の希望を示す。その姿はしんしんと降り積もる雪と差し込む月光に照らされ、かつて少女が夢を見出した炎と同じ輝きを発していたのかもしれない。

 

『君が、居てくれたら、何か変わったのかな』

 

ふと顔を上げれば、ずっと呆然と泣いていたような少女の顔にほんの僅かばかりの笑みが浮かんでいた気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ………」

 

肌を刺す寒さと幻想体と向き合う時に生じる謎の圧が無くなり、漸く一息付けたジョシュアは『マッチガール』の本から飛び出した頁を抜き取る。自分の存在を赦してくれた少女に優しい笑みを零しながら、そのまま頭に新たに刻まれた言葉を紡いだ。

 

「幻想着火」

 

頁が解けた瞬間、手の内から炎が生じそのまま剣のような形状に変化していく。しかし数秒もしてしまえばその勢いは衰えて行き、最終的には燻る残火によって彩られた刃の波打つ剣となって実体化していた。

 

「これは……フランベルジュ?木製にも見えなくも無いけど……まぁE.G.Oだし大丈夫か」

 

中々洒落た見た目に興味が尽きないが、それはそれとして今度はギフト形態の検証である。

目を閉じ、心のなかで念じれば剣は光となって解け小さく凝縮されていく。

 

「むぐ」

 

そしてその光はジョシュアの口に突っ込んできた。

 

「ん、煙草?」

 

やがて光が収まれば、口元に一本のマッチが咥えられていた。頭薬部分の煙の燻り具合から見方によっては煙草に見えなくも無い。

 

「……吸えるんだ、なら煙草か」

 

ジョシュアはリアルで煙草を嗜んだ事こそ無いものの、昔やっていたとあるゲームでは回復手段の一つだった為吸い方は知っている。

見た目こそマッチだが、少し吸えば口の中に煙が充満し肺を満たす。どうやら機能的には煙草と相違ないらしい。

 

「何で煙草……マッチの用途の関係?」

「お疲れ様なのですジョシュア様!」

「ん、ただいまオルト」

 

迎えてくれたオルトへの礼もそこそこに一度思い切り伸びをする。ゲーム内でする意味はあるかは微妙だが、気分としてはコリが解れたような気がする。

 

「今日はそろそろ眠ろうかな」

「なら、休憩スペースに向かわれるのです?」

「ん、その前に色々と素材とかをマーニに変換しときたい」

「なら交換スペースなのですね」

 

先程までパイプをふかしていたのか若干煙の香りを纏うオルトの後を煙草マッチを咥えたまま移動し始めた。そして……

 

「やっぱりマーニとの交換レートは向こうの店の買い取り価格と殆ど変わらない………けどこっから取り出せる」

 

スペースにたどり着き、前日から試したかった素材の売却を行う。レベル上げの過程で入手し有り余っているマッドフロッグの皮やロックリザードの素材を『マーニの本』に突っ込めばセカンディルの店で売り払った時とそう遜色ない量のマーニが袋に入って自身の隣に現れた。

それを回収していると、不意に空腹度の減少を知らせる表示が現れ自身の体も空腹を訴えて来ていた。

 

「ん〜、ポーション類は殆ど使わなかったから良いとして………そろそろお腹が空いてきた」

「ややっ、それならばこちらがラインナップなのです!」

 

ゲームの世界と言えどここまで再現されているか、とある種の関心を覚えながらもオルトの案内で素材やポーション関係の本が並べられている本棚から移動する。およそ十歩で目的のコーナーに辿り着き、全体を見ればその蔵書量に若干圧倒された。

 

「ん、色々あるね」

「昔、館長様とそのご友人様が集めたらしいのです」

「ふーん、意外とグルメなのかな……ん?」

 

『ピエール特製ミートパイ』

 

「…………………」

 

色々と並ぶ本を流し見ていた時に一つ、少しだけ捉えた背表紙に何か引っかかる物を感じた。オルトが余分なコアページをマーニに変換しに戻っている間にその本を本棚から取り出してみる。

 

「……ん〜、何ともなさそう?」

「ジョシュア様、どうかしたので、す!?」

 

表紙を何となく見つめていた所に戻ってきたオルトだったが、ジョシュアが持っている本をみた瞬間にビシリ、と動きを止め目を見開いた。

 

「あ、あの、ジョシュア様、そ、そちらをお召し上がりになるのです?」

「ん?いや別に、何か気になったから手に取っただけ。今はパイの気分じゃないし」

「そ、そうなのですか」

 

明らかにホッとしてるオルトを尻目に『ピエール特製ミートパイ』の本を本棚に戻して他の本を物色し始める。『ハムハムパンパン』に『菩薩チキン』、『ジョンのパジョン』と様々なラインナップがあるがイマイチピンと来るものは無い。

 

「ねぇオルト、何かおすすめとかってある?」

「ふむ、ならばこちらのアイスクリーム等は如何でしょう。何と大樽に入っておりましてこれ一つでお腹一杯なのです」

「ん、流石にアイスだけでお腹を満たすのは……とっても楽しそう。おいくら?」

「お一つ5000マーニ……と言う所ですが今回はワタクシの奢りなのです!ホントに量が多いので2人で食べちゃうのです」

「わぁい」

 

 

 

 

 

 

 

 

「パジョン……何処の料理だっけ。君は知ってる?あ、天誅」

「いやしら…ぬベラッ!?」

 

あの後、味覚制限に邪魔をされて何とも言えない雰囲気で大雑把な甘さのアイスクリームを食べ終え、シャンフロの世界から帰ってきた紫亜は諸々の必要事項を済ませた後、今度は『幕末』の世界に訪れていた。

料理の本棚にあった料理名が記憶に引っ掛かったのかボンヤリと考えながらも体は自然と襲い来る志士たちを天誅し続ける。

システムアシストを利用せずほぼほぼ本人のスペックでそれを成し遂げている辺り、ジョシュアの幕末の感染度合いが伺えるものだろう。

 

「うーん……団子天誅」

「「「ギャァァァッ!?」」」

「うぉぉぉっ!上空奇襲式袋叩き天「投げ天誅」オゴッ!?」

「ん、次弾装填、発射天誅」

「いやそれかたnゲブッ!?」

 

刀身が長いだけのレアリティの低い太刀で3人のプレイヤーの頭を串刺しにした後そのまま抜き取った勢いで上空から降ってきたプレイヤー達の脳天目掛けてぶん投げて天誅する。それによってドロップした刀を指に挟み、角に隠れていたプレイヤーに投げて刺したりしていれば、次第に周囲に人影が増え始める。

 

「まぁいっか、かかっておいで?」

「「「「「天ッ誅ッ!!!」」」」」

 

ぽやぽやしていた思考を振り払い、フワリと笑って見せれば周囲の人間が一斉に抜き放った刀をジョシュア目掛けて振りかぶる。

そんな状況の中、自ら標的になった当人は心底楽しそうに笑い、握りしめた大太刀を持って迎え討つのだった。




オルトはヴォーパルバニーなので『特殊な肉が使用されている事』自体は特に何も思ってませんが『調理過程』と『同族食い』の方にはドン引いてます。あの本に詳細に書かれていることもあり、何も知らず読んだ際に若干トラウマになっております。意地で最後まで読み切ってますけど

まぁあの方々『美味しくなるから』とか言う理由で生きたまま足から粉砕してるのでしょうがないですよね。
あとどっかの考察で見ましたがあの世界の一部で食人が流行ってる理由って人体にほんの僅かに中毒性の高いエンケファリンが含まれているからだったりするんですかね。

後書きにシャンフロ劇場ミニや小ネタシリーズは

  • いる
  • いらない
  • セルマァ……
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