司書補J、シャンフロにて奔走する   作:ゲガント

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F『エルデンリング新作出まーす』



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やったぜ



それでは、どうぞ


外食は一種の非日常

「お疲れ様、紫亜ちゃん。はいコーヒー、微糖で良かったわよね?」

「ん、大丈夫。ありがとう時成さん」

 

『図書館』にて新たな力を手に入れた翌日、仕事の現場にて漢女……マネージャーである燐堂時成から渡された缶のプルタブを小気味良い音と共に開封し、そのまま喉を潤す。

 

「ふぃ〜……今回の企画ってカジュアル系だったけど今年はそっち方面が流行になる?」

「流行になるってより流行にするのが貴方達の仕事何じゃない?ほら、流行色って国際組織で決められてる訳だし、あとはそれを仕立てるデザイナーとそれを着こなして魅力的に見せるのが貴方達モデルの仕事よ」

「ん、確かに永遠先輩はそれが自然に出来てる」

 

時成の説明に納得したように頷く紫亜。しかし、その返答に対し、時成は少し困ったように笑っていた。

 

「あれは極端な例よ。あの娘の場合、本人のカリスマ性とか容姿とかが絶妙に噛み合った結果流行を決める側に立ってるし」

「先輩が着た服大抵えげつない売れ方してるもんね」

「貴方だって活動し始めてまだ1年過ぎた位なのに固定のファンが多いじゃないの。貴方が載った雑誌の売れ行きが良いって良く連絡来るわよ?」

「それは有り難いんだけど変な贈り物は勘弁して欲しい……パック詰めされたキビヤックとか初めて見た」

「贈られてくるプレゼントの中身を検めてた子が悲鳴上げて事務所がてんやわんやになっちゃったものねぇ。私も悪趣味な嫌がらせかと思っちゃったわ」

 

ふと脳裏に横切るのは段ボールに入った野鳥の腐乱死体的なナニカの姿。偶々提出書類関係で事務所を訪れていた為にそれを直接見た時の衝撃は忘れるのも難しいだろう。

 

「同封されてた手紙で悪意は無いって分かったけどそのまま廃棄処分だったっけ?」

「シュールストレミングと同等の悪臭がするって話だし、珍味とは言えど食べる気は起きないわよねぇ……」

「んん……」

 

ジト目か苦笑いかの違いはあるものの2人揃って微妙な表情を浮かべながらつい最近の出来事を振り返っていたその時、不意に辺りに電話のコール音が鳴り響く。音の出所は紫亜の隣だった。

 

「あら、私のだったわ」

「奥さんから?」

「えぇ、ごめんなさいちょっと出てくるわね」

「ん、ごゆっくり」

 

申し訳無さそうに断りを入れて携帯電話を手にその場を離れる。1人スタジオのある建物のエントランスに残った紫亜は壁際にあるソファに座りながら空になった缶を手慰みに弄くり始めた。

 

「えい」

 

そんな軽い調子の掛け声と共に力を込めた手の内からメキャ、という可愛くない音が響く。再び手を開けばそこには見事に潰されたコーヒーの缶が存在していた。引き続き角度を変えながら握り締めて丸く圧縮していれば、電話を終えた時成が小走りで近付いて来ていた。

 

「ごめんなさいね、仕事帰りの買い物のお願いだったわ」

「ん、大丈夫。撮り直しとかも無さそうだし、今日はこれで解散?」

「えぇ、ついでに確認してきたけど貴方の今日の分の撮影はもう終わったみたいよ」

「分かった、今日もありがとう。またよろしくね」

「えぇ、こちらこそ」

 

紫亜は途中のゴミ箱に球状になった缶をぶち込みながら、スタジオから出てから近くの駐輪場に停めてあった自分のバイクに鍵を差してエンジンをかける。シートの下にある収納スペースからヘルメットを取り出して代わりに持ってきた荷物を詰め込み、諸々の準備を整えるとバイクに跨ってアクセルを捻った。

途中、すれ違ったマネージャーに手を振ってそのまま紫亜は帰路につくのだった。

 

「毎度思うけど、あの子の乗ってるバイクって結構古い車種なのよね。収集癖のある父親からのお下がりって言ってたけど……バイクとかライダー系の仕事も行けるかしら?ちょっと企画提出して売り込んでみましょうか」

 

 

 

 

 

「んぃ……お昼御飯どうしよっかな」

 

バイクのエンジン音をBGMに街中を走る紫亜の脳内は既に空腹をどうやって満たすかの一点に思考が割かれていた。

 

「ラーメン、パスタ、丼物……定食屋って手も、ん?」

 

近くの店を頭の中でリストアップしながら風を切る感覚を味わっていれば、不意に視界の端に映ったのは『とんかつ』の文字。

 

「…………」

 

腹の音が獣の唸り声の如く鳴り、脳内では様々な料理が浮かんでいた筈なのにその全てが一秒も経たずにソースのかかった揚げたての分厚いトンカツに塗りつぶされた。

 

「ん、運命のお導き」

 

善は急げという言葉に従い、早速ハンドルを切って駐車場に入る。

出来る限り目立たない端にバイクを停め、ヘルメットを脱ぐと同時に変装用のキャスケットと丸メガネを装備、肩掛け鞄を提げて店へと足を踏み入れた。

 

「……ん、良い香り」

 

入口から入って直ぐ、鼻腔を擽るのは濃いソースの香り。仕事が終わったのが正午辺りだったこともあってか店の中には多くの客でごった返しており、その分至るところから香ばしさが迫り来ていた。

入口付近でキョロキョロとしていれば、従業員らしき人物が話しかけてきた。

 

「いらっしゃいませ、何名様でしょうか?」

「ん、1人で」

「畏まりました。現在カウンターが満席でございまして、テーブル席でも問題ございませんか?」

「大丈夫」

「ありがとうございます。それではご案内致しますね」

 

通されたのは角にある4人用のテーブル席。椅子と壁を兼ね備えた席の存在もあり、周りからの視線も気になることは無いだろう。

 

「ご注文はこちらのタブレットからお願いします」

「ん、ありがと」

 

案内を終えて去っていく店員から受けた説明に従い、席についてタブレットを操作し始める。

ざっと内容に目を通して今の気分に素直になって注文を済ませれば、訪れるのは暇な待ち時間だった。

 

「ん、沼掘り(マッドディグ)、『ソロ殺し』……オルトと一緒に行くことになるだろうから気にしなくていいかな」

 

その間、自分の携帯電話でシャンフロの攻略サイトや掲示板を開いて己が挑むエリアボス……沼掘り(マッドディグ)の情報を集める紫亜。

周りの揚げ物の香りを誤魔化す目的も兼ねて情報収集をしていると、

 

「申し訳ございませんお客様……現在満席でございまして、もしよろしければ相席をお願い出来ますか?」

「ん、大丈夫」

「ありがとう御座います」

 

一応マネージャーや事務所から言われて変装擬きはしているが、紫亜自身は目立つ事に頓着は無い。相席をノータイムで承諾すると、店員は頭を下げて入口へ戻って行く。

 

「や〜、すいませんね、何処もかしこも並んでて……ん?」

「あ」

 

店員に連れられてきたのは若い男女2人組。どちらも気まずそうにしており青年の方が紫亜に声を掛けたのだが、その青年と紫亜が互いに顔を見た瞬間に声を漏らして固まった。

 

「リアルでは久しぶりだねカッツォ、記事見たけど調子良さそうで何より」

「な~んでここにいるんですかねぇ……」

「え、えぇっと…?」

「ん、取り敢えず座ったら?」

 

先程までの腰の低そうな敬語から一転、紫亜がカッツォと呼ぶ青年……魚臣慧はジト目になりながらも紫亜の向かいに座る。そんな態度の変化に戸惑う女性も困惑しながらそのまま慧の隣に腰を下ろしたのだった。

 

 

 

 

 

「それで?何でここにいんのさ」

 

2人の注文が終わり、慧は紫亜に話しかける。

 

「何でって……お昼御飯?」

「そういうことじゃなくって、確か今モデルやってるんだろ?トンカツとか、そう気軽に食べられるもんなのかなって」

「ん、一応ここ女性向けのメニューとかも多いし人気なんだよ?チートデイにここ選ぶ人も多いって店教えてくれたマネージャーも言ってたし」

「へぇ〜、初めて入った店だけどそんな感じなんだここ」

「お待たせしました」

 

慧の納得したような声を遮るように店員が紫亜の前に料理の乗ったトレーを置いた。

 

「特ロースカツ定食ご飯大盛り、ミックスフライ追加でございます。ご注文で以上でよろしいでしょうか?」

「ん、大丈夫、ありがと」

「お二方のご注文の品も直ぐにご用意致しますので少々お待ち下さい」

 

それでは、と頭をペコリと下げてそのまま戻っていく店員が持ってきたのは皿に大量に盛られたキャベツとそれ以上に盛られた揚げ物の山。

そんな見るだけでも胃もたれしそうな光景を前にルンルン気分で割り箸を割って早速とんかつの端の部分から食べようとしていると、不意にこちらへドン引きしたような目線を送られている事に気が付き顔を上げた。

 

「まぁ僕はガッツリ食べるけど」

「さっきの話何だったのさ」

「モデルとアスリートの一般論。僕の場合身体の燃費が極悪なせいでコレぐらい食べないと体型維持が出来ない。下手に激しく動くと直ぐにガス欠起こす」

「お前の身体そんな古いディーゼルエンジンみたいなの?」

「その分馬力はあるけどね」

 

むん、と力こぶを作るようなポーズをとるが、見た目は完全に華奢な少女である為微笑ましさしか感じない。そして話題は紫亜の事から先程から戸惑いっぱなしの女性へと移った。

 

「で、そちらは彼女さん?」

「かのッ!?」

「違うよ、所属チームのチームメイトの「Nu2meg(ナツメグ)」。オレの記事見てるんなら聞いたことある筈だろ?」

「あぁ、あの。ん、こんにちは」

「こ、こんにちは……」

 

女性……夏目恵は紫亜の発言に顔をボッ、と紅くしてワタワタとし始め、慧の返事に若干落ち込む様子を見せて挨拶にもあまり良い反応を示さない。その一連の様子から「ん、カッツォはクソボケ」という言葉が出そうになるも、それをみそ汁で口の中の油ごと流し込んで押し留めることにした。

己の知る限り、この魚類に好意を寄せている人物はあと数人居たはずだが、自分がわざわざ首を突っ込む事でも無いだろう。 

 

「あの、お二人はどういうご関係で?」

「ん、ゲーム友達。格ゲーの大会で仲良くなって他のゲームでもオンラインで遭遇してたら仲良くなってた」

「コイツプレイスタイルが俺とは真逆だからやってて楽しいんだよ。あの外道どもと違って煽ってもこないし、シルヴィア対策としてのスパーリングにも丁度いいし」

「真逆?」

 

気安そうな2人のやり取りにどんな感情を抱いたのかは知らないが、おずおずと尋ねてくる恋する乙女への返答はとてもあっけらかんとしたものだった。

 

「僕は格ゲーとか自分の身体を動かして相手をぶっ殺すゲームとかしかやらないけど、ゲーム自体はほぼフィーリングでやってるから、徹底的に理詰めで攻めるカッツォとはホントに真逆だね。相手の分析とかはするけどそれを踏まえた上で全力で殴りに行く」

「それで俺から勝ちもぎ取って行くんだから溜まったもんじゃないよね」

「ん、僕の勝率4割行かない位だからまだまだ。というか攻め方がいやらしいカッツォに言われたくない」

「これでも、日本ではダントツトップのプロゲーマーだからね、アマチュアなのにオレから4割取ってる時点で十分お前もバケモノだよ。というかなーんか言い方に悪意があるよねぇ?誰に吹き込まれたのかなぁ?」

「こないだサンラクが言ってた」

「よーし今度会ったら初手ドロップキックだあのクソゲーマニア」

「お待たせしました」

 

慧が紫亜と共通のゲーム仲間であるサンラクへの怒りを募らせていれば、後から来た2人の注文した物が届く。

 

「取り敢えず食べない?ここのトンカツ美味しいよ」

「まぁそーだね。ほら、オレの奢りだから、遠慮なく食っていいよ」

「は、はい!ありがとうございます先輩!」




ジョシュア(上条紫亜)との外道3人組との関係まとめ

・サンラク(日務楽郎)
→ゲーム内での友人。リアルでは会ったことは無いが、互いに殺り合ってて楽しい相手として認識してる。


・ペンシルゴン(天音永遠)
→同事務所の可愛い後輩と良い先輩。素直で可愛く、本性を見せても変わらず慕って来るので「愚弟じゃなくてこの子が弟なら良かったのに」と常々思ってる。恋愛感情とかは一切無い、沸かない。


・カッツォ(魚臣慧)
→本編でも書いた通り、格ゲーの大会を通して知り合ってそのままリアルで交友関係が生まれた。ゲームの好みが割と似通っている分、オンラインで対戦する頻度が高いし話が合う。多分3人の中で一番仲が良い

後書きにシャンフロ劇場ミニや小ネタシリーズは

  • いる
  • いらない
  • セルマァ……
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