司書補J、シャンフロにて奔走する   作:ゲガント

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仕事か忙しすぎて休みの日もクッタクタです。
皆様も体調管理はお気をつけて




それでは、どうぞ


沈み浮かんで息継ぎを

「ん、生きてる」

 

全てを押し流すような水流を生み出した爆発の後、ジョシュアの視界は暗闇に閉ざされ気がつけば自身の体が水中に居るような浮遊感を身に受けていた。息ができるか確かめるが、どうやら今現在は呼吸が必要無い状態のようで口をパクパク開けても特に口の中から空気が漏れ出るような事は無かった。

 

「ジョシュア様〜!」

 

ふわふわと揺蕩うジョシュアが自身の状態を確かめていると何処からともなくオルトがワタワタと泳ぎながら寄って来て、ひっつきながらポコポコと叩き始めた。

 

「いきなり爆発するからびっくりしたのです!」

「ごめんごめん……回りが黒いせいで擬態してるみたいで見えにくいね」

「反省して欲しいのです!」

「ごめんて」

「プンスコ!」

 

頬を膨らませるオルトをなだめながら周囲を伺うジョシュア。自身とオルトの回りがほんの少し白く光るのみで暗黒のみが支配する視界の中、不意に弱々しい蛍光が過った気がした。

 

「ねぇオルト、ここってやっぱり…」

「恐らく、あの幻想体『夢貪る濁流』の領域なのです。図書館にて本に封じられた幻想体を鎮圧した際に訪れる事が出来るあの空間と同じだと思うのです」

「だよね、ってことは僕は勝った瞬間に飛ばされたって事で良いのかな。爆発の至近距離に居たけどダメージ貰ってないし」

 

水中判定ということもあって少々勝手が違うが自分の身体を捻ってもどこにも焼けた跡も無い上背中にある二本の鈎も健在である。

確認を終え、先程視界の端に見えた光の方向を見やったジョシュアはそのままそちらをジッと見つめると徐ろに動き出した。

 

「向こうかな。行こうオルト」

「分かったのです!」

 

暫くの間、闇の中を泳ぐジョシュア達。

 

「ん、居たね」

「ですが何か様子が……?」

 

一人と一羽の目線の先にいる探索目標だった『夢貪る濁流』は蹲ったような姿勢で大人しく、孤独に揺蕩っていた。

 

「ん、こんにちは」

『………見えない、何も見えないの、苦しいの。息が、苦しいの』

 

軽く挨拶をすれば帰ってきたのは複数の少女が同時に話しているような声。茫然自失と言えば良いのか、それともコチラの言葉が通じていないのか、どこか独白に近いその言葉はそのまま紡がれてゆく。

 

『わたしたちはどこにいるの?わたしたちはどこを目指せば良いの?』

「ど、どうどう、なのです」

「…………オルト、ちょっとこの子の事お願い」

「ジョシュア様?」

「少し上に光が見えた、何かヒントがあるかも」

「任されたのです!」

 

 

 

「とは言ってもどうしたものなのです……?」

『ふわふわ……?』

「むむ?およ!?ちょ!?ま、まってほしいのです!あなや〜!?」

 

 

 

 

 

 

「ただいま……何やってるのオルト?」

「た、助けてほしいのです……」

『ふわふわ、もふもふ……』

 

数分後、帰ってきたジョシュアが見たのは『夢貪る濁流』にその大きな口の先でハミハミされているオルトの姿だった。甘咬みなのか痛がる様子などはないが動けないようで、半泣きになりながらも何とかジョシュアによって救出された。

 

「とりあえず成果持ってきたよ、はいこれ」

「ふむむ?これは、先程の蛍光灯?」

「うん、呼吸をする為の命綱。多分この子も例外じゃ無かったんだろうね」

 

そう言ってこちらをジッと見つめているような感じがする『夢貪る濁流』の背中を見やると、そこには先程の戦闘で割り砕いた蛍光灯の破片の根本が刺さっていた。

ぼんやりと光っては居るもののその明るさは非常に弱々しく、灯にしては心許ない。

そんな損壊した蛍光灯の元へと泳いで回り込んだジョシュアは採取した新しく採取したらしい蛍光灯を繋ぎ合わせるように近づけた。

 

「ん、ビンゴ」

 

その瞬間、割れた部分同士がもとに戻るように繋がり、僅かにヒビは入っては居るものの元の万全な蛍光灯の姿に限りなく近くなった。

 

『苦しく、ない』

「これが正しいかは分からないけど悪い方向には行かないと思う」

 

重苦しさの無くなった声は相変わらず幼気で無邪気な気配がする。セリフの端々に闇を感じるその子供は警戒を解いたのか首を傾げるように体を捻った。

 

『けど、どこに行けば良いの?私たち分からないの』

「……ん、なら安心できる場所に行こうか。オルト、先導するからこの子に寄り添いながらついてきて」 

「承ったのです!」

 

『夢貪る濁流』の疑問に対しジョシュアは行動を起こした。一つ残しておいた十字形になるように紐で繋ぎ巻かれた蛍光灯は暗い闇の中でもその存在を示し、ジョシュア位置を知らせる誘導灯の役割を果たしていた。

 

『誰かと話すのはひさしぶり、うさぎさんと話すのなんて私たちはじめて』

「ワタクシはオルトなのです!先導してくださっているのはワタクシの相棒のジョシュア様なのです!」

『オルト、ジョシュア……』

「あなたのお名前は?」

 

会話がまともに成立することに安堵しながらも、共に上を目指して泳ぐ幼子のようなその蛍光鯱に問いかければ返ってきたのは少しの混乱と寂しさを感じさせる言葉だった

 

『……分からない、わたしたち、なんてよばれてたんだっけ?』

「およよ……」

「ユメ、で良いんじゃない?」

 

落ち込む様子を見せる『夢貪る濁流』。しかし先を往くジョシュアはあっけらかんと答えを返した。

 

「ふわふわと揺蕩うし、君の識別名称にも『夢』が入ってる。それにユメは一つじゃないでしょ?」

『わたしたちは、ユメ?』

「そう、嫌だった?」

 

目もないのっぺりとした顔面であっても、ポカンと呆けているのが察せられる。暫く沈黙した後、やがて納得したような声色で名前を繰り返し始める。

 

『ううん、わたしたちは、ユメ、すてき』

「ん、気に入って貰えたなら良かった……さ、そろそろかな」

 

そんなやり取りをしていれば、気付けば周囲には漂流した蛍光灯のような物がチラホラと現れ始め、自身を覆っていた闇の深さもマシになっていた。

 

ドッパン!

 

そのまま突っ切るように泳ぎきった結果、ジョシュアとオルト、そして『夢貪る濁流』はタールの如く黒い泥のような世界から脱出し、透明感のある水の中へと飛び込んだ

 

『明るい……』

「先程のフィールドよりも暖かみがある気がするのです!」

「蛍光灯の明るさは人工的で刺々しい刺々しいからね、まだちょっと漂流物が多いけど、陽の光はいいもの」

 

空を……水面らしき物を見上げれば確かにそこには水中すら照らす恵みの光が降り注いでおり、屈折によって直接届くことこそないもののその眩しさはとても幻想的だった。

 

「ん、ここならまた沈まなければ迷うことは無いと思う。お望みの場所はここだった?」

『うん、わたしたちの夢は、まだあるけれど、おひさまを見れたから満足』

 

揺蕩いながら水面を眺める『夢貪る濁流』は暫くの間その景色を…暖かい陽の光を感じてじっとしていたが、少し経ってからジョシュア達の方へ向き直り、1人と1羽に対して優しく頭を擦り付けた。

 

『またね、ジョシュア、オルト』

 

そんな言葉を最後にジョシュアとオルトの視界は再び闇に覆われたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「ん、戻って来れた」

「日差しが懐かしい気がするのです」

「さて、ドロップアイテムは……ん?」

 

幻想体の領域から解放され、沼地ではない岩場にいつの間にか降り立っていたジョシュアは天から降り注ぐ直射日光に目を細める。

明順応によってぼんやりとする視界が戻るのを待ってから周りを観察すれば、明らかにこの場には似つかわしくない存在が堂々と鎮座していた。

 

「………卵?」

「卵なのです」

 

そこにあったのは卵だった。しかしながらその大きさ、形状は何の変哲もない、とはとても呼べない物であり、それが更にジョシュア達の困惑を加速させる。

 

「何だかあの子っぽいね」

「む、むむ?少々お待ちを」

 

改めてデザインを見てみれば、その卵の表面には先程まで戦い、対話していた『夢貪る濁流』の鰭や蛍光灯が生えたりぶっ刺さってるような状態になっている。

それを見てかえーと、えーと…と何処からか取り出した分厚いメモ用のノートをペラペラとめくり出すオルト。

表紙には「幻想体」と書かれており、ジョシュアがチラリと眺めると様々な書物から集めたらしい情報が纏められていた。

 

「そうでした!これはアブノーマリティの休眠状態の姿なのです!」

「てことは、これをアンジェラに届ければ良いのかな」

 

自分の首辺りまでのサイズはあるその卵型の物体に触れてインベントリに回収した後、一度体を軽いストレッチで解す。

大きく伸びをし、張り詰めた力を解いて肩の力を抜いたジョシュアは、隣でいそいそとノートを仕舞い込むオルトに微笑みかける。

 

「それじゃあ次はサードレマ、楽しみだね」

「はいなのです!」




リンバスの濁流くんのイベントはもっと硬い話し方をしてますが、この世界では長い間放置された結果幼く……というよりも根底にある物が表出しています。
可愛いね。

後書きにシャンフロ劇場ミニや小ネタシリーズは

  • いる
  • いらない
  • セルマァ……
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