司書補J、シャンフロにて奔走する   作:ゲガント

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書きたい事が多すぎます。
助けてください。





それでは、どうぞ


紐解く記録は今は亡き者 1

「ん、今日は前の続きをする」

「続き、ということは戦闘記録の再演なのです?」

「ん、アンジェラから許可貰ったから早速やる」

 

ペンシルゴンとの会合の翌日、仕事の後ログインしたジョシュアは図書館で目覚めてからオルトと共に戦闘が行えるスペースへと足を運んでいた。

 

「でしたら、こちらの方々からやるのをオススメするのです!」

 

そうして差し出されたのは表紙にパイらしき料理が切り分けられた様子が描かれていた。断面を見ればミートパイであることが分かるが、それよりも気になるのは何故かその周囲に飛び散った血飛沫の存在である。

 

「『ピエールのミートパイ』……ってこの前の食品関係のコーナーにあったアレの?」

「そうなのです。その本に書かれた名前は店名で、相対する事になるのはそのオーナーシェフと助手になるのです」

「ふーん……それじゃあ早速やってみよ」

「ワタクシは他の本を揃えて来るのです。ご武運を!なのです!」

 

 

 

 

 

早速本を翳して戦闘記録の再演を開始する。頁が飛び出し宙を舞ったかと思えば直ぐに2人の料理人らしき人影が現れた。

 

「いかにも料理人って格好………にしては赤い汚れがベットリついてる。肉の解体でもしたのかな?」

 

しかしその女の真っ白だったであろうコックコートや男の汚れが目立たない筈の黒いエプロン、そして両人がそれぞれ持つナイフや鉈のような中華包丁の全てに赤い液体が大量に跳んでおり、とてもマトモな料理人とは言えなさそうな風貌に成り果てていた。

嗅覚の感覚が少し解放された結果か鼻に入ってくる空気には錆びた鉄の香りが混じり、少しばかりジョシュアの表情が引き締まる。

ただし、その肝心の表情は険しさとは無縁だった。

 

「良い、良いね。包丁の構え方が手慣れてる、人を殺し慣れてる。ならこっちも応えないと」

 

今まで戦った者達と同様に顔には赤いボールペンでグチャグチャに書き殴ったようなモザイクが掛かっているものの、こちらに向けられる殺意は何にも変換させられる事無くこちらに突き刺さる。

負の感情が一切ないどころかコチラを見てウキウキしている気配すら感じるそれにジョシュアもまた頬を上げた。

 

「あの()の……どれだったっけ?リストランテ……あぁ、λ。あそこみたいな気配がするね」

 

思い起こされるのは過去に存分に楽しみまくったとあるゲーム。

既に運営陣が捕まりオンラインサーバーも封鎖され過激な表現も厳しく規制されてしまい、今はもう当時の面影だけを残すだけのそれは間違いなく当時のジョシュアの心を躍らせた存在だった。

そして、今目の間に立つ2人からはそんなかつて心躍らせた世界の住人と同類の気配がした。

 

「『捨てられた殺人鬼』の本の中の血といい、ここ(図書館)だけ規制ゆるゆるなのは何でなんだろ。まぁ僕としては一向に構わないんだけど」

 

リアリティのある殺し合い、戦いに狂う己自身が求めてやまないそれを実行出来る事に感謝しつつ、インベントリから獣岩鎚(ビースト・ロック)を取り出して軽く振り回し感覚を手に馴染ませる。

 

「■■■■■■」

「■■■■■■」

「ん、声まで聞こえないようになってる」

 

モザイクの向こう側から何かを話したようだが記録が不完全になっているのか、それとも世界自体に修正されたのか今は無きテレビの砂嵐か何かが掠れた音にしか聞こえない。

何故そのような状態なのか、等の予想は幾らでもできるがそれは後からでも出来る事である。

 

「それじゃあ殺し合おうか。目的は違えども手段は同じなんだし、遠慮なんて要らないよね?」

 

微笑みと共に徐ろに足を踏み出し次々とスキルを点火し始める。戦闘中のみステータスを壊れた倍率で上昇させる《光の種》、筋力と敏捷を上げる《アクセル》、そして先日の幻想体戦にて果たしたレベルアップで新たに習得した装備した武器の体感重量を若干軽くさせる《ウェポンライト》。

岩を纏うモンスターの頭部をそのままハンマーにしたかのようなデザインの獣岩鎚をパフォーマンスのように軽々と振り回した後、両手でしっかりと握り込んで構えて走り出し、

 

「《ムーンジャンパー》ッ!」

 

相対する2人目掛け鎚を振り上げながら跳び上がる。

表情は見えないが獲物と定めたジョシュアから目を離していなかったようで即座に下がろうとする男女だが、

 

「《ハードクラッシャー》ッ!」

 

それよりも先に空中で反らした身体を戻す反動を乗せた一撃が振り下ろされた。

《ショットスタンプ》から進化したスキルである《ハードクラッシャー》は敵に直撃こそしなかったものの、スキルに付随して発生した衝撃波が避けた2人を更に後方へと吹き飛ばした。

 

「■■■■■■」

「先ずは貴方?いいね、殺ろう!」

 

復帰が早かったのは体躯が大きかった故か吹き飛ばされた距離が短かった男の方で、手に持った血濡れの中華包丁で肉を斬り裂こうと振り上げながら迫ってくる。

前回の戦闘記録の再演の最後に戦った鈎事務所の面々よりか技の鋭さは無いものの、慣れや経験から来る類の迷いの無さは()()()()()()()()()一撃を放つという形で現れていた。

 

「よっ、ほいっと」

「■■■■■■」

「ん、甘い、もっとコンパクトにやった方がいいよ。貴女もね」

 

しかしその程度でジョシュアが惑わされる訳もなく、横薙ぎの中華包丁の側面を獣岩鎚の柄の先で突いて軌道を逸らし、ついでにいつの間にか背後に回っていた女の包丁による刺突を身体を傾けて避ける。

振り抜いた体勢で隙を晒した2人を避けた勢いのまま身体を回転させてのハンマーのスイングで殴り飛ばしたジョシュアはそのまま最初に攻撃を仕掛けてきた男の方へと追撃の為に走り出した。

 

「ラァッ!」

「■■■■」

 

ギリギリ攻撃に腕を挟み込めたのか若干ダメージか少なそうな男の攻撃に合わせて獣岩鎚のフルスイングを放つ。包丁とハンマーが正面からぶつかり合うが、武器の重量の差も合ってか包丁の方が男の腕ごと呆気なく弾かれる。

 

「もう一発……っと」

「■■■■■■」

「読めてるよ!」

 

即座にハンマーの勢いを殺し切り返すようにして振るおうとした所で相手がエプロンのポケットに手を突っ込んだのを視認、そこから攻撃する事を察知してかハンマーを引いたような姿勢から振り抜くのではなく身体の捻り方を変えて柄を刺すように突き出した。

柄の先端は左腕の二の腕を捉え、男はポケットから取り出していた鉄串を反射的に離してしまう。

 

「それ貰うね」

 

パッとハンマーを手放したジョシュアはそのまま懐に潜り込んで取り落とされた鉄串を掴むとそのままの勢いでタックルをかまして押し倒す。

 

「■■■■■■!?」

「ん、残念」

 

弾かれた後漸く動かせるようになった右腕で包丁を振るい抵抗する男だったが、それよりも早く腕を止めて刃を届かないようにしたジョシュアはそのまま鉄串を逆手持ちに握り直して

 

「君が料理になるんだよ」

 

そのまま男の眉間に当たる部分に《スパイラルエッジ》で突き刺した。

モザイクのせいでちゃんと当たったかは目視では分からないが、ゲームでの殺し合いに慣れたジョシュアからすれば人体の弱点にピンポイントで針を刺すこと等容易く行えるので問題は無い。

生物として致命的なダメージを受けた男は一度ビクリと身体を震わせるとそのまま振り抜いていた腕の力が抜けて倒れた瞬間、

 

バサバサッ

 

地面と腕がぶつかると同時に光る頁となって宙へと消えていった。

 

「まず一人……《旋風陣》」

「■■」

 

いつの間にか背後にいた女が振り下ろした包丁が届く前に背中の生体装備で弾き、男にトドメを差した膝を付いた姿勢からブレイクダンスの如き動きで回転蹴りを放つ。《旋脚》から進化したスキルは風のようなエフェクトを残しながら尋常ではない加速を見せ、そのまま女の胴体に食らいついた。

 

「囮、不意打ち、大いに結構。そんなに手慣れてるって事は何回もしてたって事だよね?」

 

刃を向けられてもなお緊張どころか気分が高揚するだけであるジョシュアは余裕の笑みを浮かべながら蹴り飛ばした女の方を見ながら傍らに落ちる獣岩鎚を拾い上げる。

一方で女は少しよろめきながらも包丁を構えており、まだ戦意があるとありありと示していた。

 

「でも速さが足りないね。本職が料理人だから解体と狩猟には慣れてるけど戦闘においては一歩劣る、って所かな。まぁそもそも包丁は戦う為の物じゃないって言えばそれまで何だけど」

 

そう言葉を紡ぎ、ゆっくりと歩み寄る。張り詰めた雰囲気、NPCである筈の女もそれを感じ取ってか若干緊張した様子で包丁を構える。

そして、

 

ドスッ

 

「■■■■■!?」

 

突如として女の腕に鉄の串が生えた。正しくは突き刺さったのだがそれを正しく認識できる余裕はジョシュアに意識を向けていた今の女には無かった。

 

「ん、グッバイ」

 

その隙を死神が逃す筈もなく、振りかぶられたハンマーはスキルを重ねられて光り輝きながら軌跡を残し、そのまま女の頭を文字通り吹き飛ばした。

 

 

 

VICTORY

 

ピエールのミートパイ 接待完了

 

 

 

 

 

「ん、接待完了。ちょっと物足りなかったかな」

「お疲れ様なのです!最後のアレはお見事だったのです」

「あぁ、見えてたんだ」

「ワタクシもそれなりに戦闘経験を積んでいるのです。あの投擲の動作の少なさと精密さは流石にワタクシにも真似出来ないのですが、それでもそれを捉える位は造作もないのです!」

「ん、流石」

 

フンスと胸を張るオルトの頭を撫でるジョシュアに疲労した様子は見られない。

鉄串を最低限の動きで棒手裏剣のように投げつけた技巧と軽々と大鎚を振り回すパワーを併せ持つ死神も、可愛い子供の前ではただのお兄さんになってしまうのである。

そんなほっこりする雰囲気もソコソコに、オルトは背中の背負子に乗せた本を差し出す。

 

「さてさてジョシュア様。他の戦闘記録も集めたのですが……続き、なされるのです?」

「勿論。どんどん行こうか」




オルトは身体のサイズがエムルと同じかそれより若干小さいので沢山の本の持ち運びの際には背負子を使ってます。
ステータスはレベルカンスト目前なので数十冊位は軽々と持ち上げられますが、流石に体躯の問題はどうしようも無いです。
可愛いですね。

後書きにシャンフロ劇場ミニや小ネタシリーズは

  • いる
  • いらない
  • セルマァ……
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